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解説記事2020年08月31日 税制改正解説 令和2年度における消費税・間接諸税関係及び新型コロナウイルス感染症緊急経済対策に関する改正について(2020年8月31日号・№847)

税制改正解説
令和2年度における消費税・間接諸税関係及び新型コロナウイルス感染症緊急経済対策に関する改正について
 山本 仁

消費税関係の改正

1 法人に係る消費税の申告期限の特例の創設
(1)改正の背景及び改正前の制度の概要

 消費税の確定申告については、原則、課税期間ごとに一定の事項を記載した確定申告書を各課税期間の末日の翌日から2月以内に提出することにより行うこととされている(消法45①)。
 法人税の確定申告書についても原則として各事業年度終了の日の翌日から2月以内に提出することとされているが(法法74①、81の22①、144の6①)、法人税の確定申告は「確定した決算に基づき」行う必要があるため各事業年度の決算を確定させるために必要な定時総会が、
・ 定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるものの定め
・ 特別の事情があること
により、当該各事業年度終了の日の翌日から2月以内に招集されない常況にあると認められる場合には、その法人の申請に基づき、各事業年度の確定申告書の提出期限を原則として1月間(連結親法人の場合は2月間)延長することができることとされている(法法75の2①、81の24①、144の8)。
 これまで消費税法では、取引ごとに課税関係が明らかになるという消費税の性格上、必ずしも法人税のように確定した決算に基づき確定申告を行う必要がないことから、原則として確定申告書の提出期限を延長する特例は設けられていなかった。
 このように制度上の違いがあるため、法人税の確定申告書の提出期限が延長されている法人では法人税と消費税の確定申告書の提出期限に差異が生じることとなるが、そうした法人においては、
・ 決算期末から2月の間に、決算書作成、決算発表、有価証券報告書への対応、消費税の確定申告書の作成等の業務が集中することにより、相当程度の時間外労働が発生している
・ その後の法人税の確定申告書の作成の過程で、消費税の申告内容に誤りが見つかった場合には、消費税の修正申告書の作成又は更正の請求に必要な書類の作成が必要となり、これらに伴う事務負担が発生している
といった実務面での負担についての指摘が産業界から寄せられていた。
(2)改正の内容
 今般、働き方改革関連法の施行により、時間外労働の上限規制の導入等の措置がなされたこと等を踏まえ、上記のような申告に係る事務負担を軽減する観点から、法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例により法人税の確定申告書の提出期限が延長されている法人について消費税の確定申告書の提出期限を1月間延長する特例を創設することとされた(消法45の2)。
 制度の具体的な内容は以下のとおりである。
一 適用法人等
  消費税法第45条第1項の規定による申告書(以下「消費税申告書」という。)を提出すべき法人(消費税法第60条第8項の適用により消費税申告書の提出期限が延長される法人を除く。)のうち、法人税法第75条の2第1項(同法第144条の8において外国法人に対して準用する場合を含む。)の規定による法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける法人が、消費税申告書の提出期限を延長する旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その提出をした日が含まれる事業年度以後の各事業年度で法人税法第75条の2第1項の規定により法人税の確定申告書の提出期限が延長されている事業年度(同条第9項の規定により同条第1項の規定の適用がないものとみなし、同法第75条及び国税通則法第11条の規定により申告期限が延長される事業年度を含む。)の終了の日が含まれる課税期間の消費税申告書の提出期限については、1月間延長して、その課税期間の終了の日の翌日から3月以内とすることとされた(消法45の2①)。
(注)例えば、3月決算法人で消費税法第19条第1項第4号の規定による課税期間の特例の適用を受ける場合、課税期間が4月〜6月、7月〜9月、10月〜12月、1月〜3月の4つとなり、それぞれの課税期間ごとに課税期間終了の日の翌日から2月以内に消費税申告書の提出が必要となるが、本特例はその法人の事業年度の終了の日(この例でいえば3月末日)が含まれる課税期間(1月〜3月の課税期間)のみが対象となることに留意が必要である。
二 連結法人への適用
  本特例については、法人税法第81条の24第1項の規定により連結確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける連結親法人も対象となる。また、連結子法人については、法人税の確定申告を行う必要がなく、同項の規定の適用を受けることはないが、連結子法人も消費税申告書の提出は必要なため、連結親法人が同項の規定による連結確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける場合には、その連結子法人についても、本特例の対象となる。
  連結親法人及び連結子法人が本特例の適用を受けるためには、それぞれの法人が消費税申告書の提出期限を延長する旨を記載した届出書をそれぞれの納税地を所轄する税務署長に提出する必要がある。
  連結親法人及び連結子法人が届出書を提出した場合、届出書を提出した日が含まれる連結事業年度(法人税法第81条の24第1項の規定の適用を受ける場合の申請書の提出期限が適用を受けようとする連結事業年度終了の日の翌日から45日以内となっていることから、本特例においても、届出書を提出した日が適用を受けようとする連結事業年度終了の日の翌日から45日以内である場合のその連結事業年度を含む。)以後の各連結事業年度で以下の連結事業年度の終了の日が含まれる課税期間に係る消費税申告書の提出期限については、1月間延長して、その課税期間の終了の日の翌日から3月以内とすることとされた(消法45の2②)。
・ 連結親法人の場合は、法人税法第81条の24第1項の規定により連結確定申告書の提出期限が延長されている連結事業年度(同条第4項の規定により同条第1項の規定の適用がないものとみなし、同法第81条の23及び国税通則法第11条の規定により申告期限が延長される連結事業年度を含む。)
・ 連結子法人の場合は、その連結親法人が法人税法第81条の24第1項の規定により連結確定申告書の提出期限が延長されている場合におけるその連結子法人の連結事業年度(連結親法人につき同条第4項の規定により同条第1項の規定の適用がないものとみなし、同法第81条の23及び国税通則法第11条の規定により申告期限が延長される場合におけるその連結子法人の連結事業年度を含む。)
  なお、法人税法第81条の24第1項の規定による連結確定申告書の提出期限の延長期間は、原則として2月間であるが、これは連結納税制度固有の事情によるものであることから、消費税申告書の提出期限の延長期間については連結法人においても1月間となる。
三 適用取りやめ等の届出
  本特例の適用を受けることをやめようとするときや事業を廃止したときは、その旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出しなければならないこととされた。この届出書の提出があったときは、その提出をした事業年度(連結事業年度)以後の事業年度(連結事業年度)終了の日が含まれる課税期間については、一又は二の届出は、その効力を失うこととなる(消法45の2③④)。
四 利子税の納付
  利子税については、国税通則法第64条に「延納若しくは物納又は納税申告書の提出期限の延長に係る国税の納税者は、国税に関する法律の定めるところにより、当該国税にあわせて利子税を納付しなければならない。」と規定され、具体的な内容は個別の税法で規定されることになる。
  法人税法においては、同法第75条の2第1項及び第81条の24第1項の規定の適用を受ける法人は、その事業年度や連結事業年度の法人税の額に、本来の提出期限の翌日から延長された提出期限までの期間の日数に応じ、年7.3パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税をその計算の基礎となる法人税に併せて納付しなければならないこととされている(法法75の2⑧、81の24⑥)。
  消費税法においてはこれまで利子税に関する規定は設けられていなかったが、本特例の創設に伴い、その適用を受ける課税期間の消費税の額に、本来の提出期限の翌日から延長された提出期限までの期間の日数に応じ、年7.3パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税をその計算の基礎となる消費税に併せて納付しなければならないこととされた(消法45の2⑤)。
五 中間申告等の特例
  消費税については、直前の課税期間の確定した消費税額に基づき、年11回、年3回又は年1回の中間申告を行う必要があり、原則として中間申告対象期間の末日の翌日から2月以内に中間申告書を提出する必要がある。ただし、例えば、3月決算法人で年11回中間申告の場合、直前の課税期間の消費税額が確定するのは、直前の課税期間の確定申告書の提出期限である5月末日となることから、1回目の中間申告対象期間の末日である4月末日の段階で直前の課税期間の確定した消費税額が存在しないため、その分の中間申告書の提出期限は消費税額が確定する5月末日の翌日から2月以内とされている(消法42①)。
  上記の例と同じ条件で直前の課税期間につき本特例の適用を受ける場合には、直前の課税期間の消費税額の確定が6月末日となるため、1回目のみならず、2回目の中間申告対象期間の末日である5月末日の段階でも直前の課税期間の確定した消費税額が存在しないこととなる。
  そこで直前の課税期間につき本特例の適用を受ける場合の11回中間申告の1回目と2回目の中間申告書の提出期限については、上記の例でいえば直前の課税期間の消費税額が確定する6月末日の翌日から2月以内とすることとされた。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和3年3月31日以後に終了する事業年度及び連結事業年度終了の日が含まれる課税期間について適用することとされている(所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号。以下「改正法」という。)附則1、45)。

2 外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充
(1)改正前の制度の概要

 納税地を所轄する税務署長の許可を受けた輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者(以下「外国人旅行者等」という。)に対して、当該外国人旅行者等がその出国の際に海外に持ち出す一定の物品(最終的に輸出される物品)を所定の手続により譲渡した場合には、消費税を免除することとされている(消法8)。
 これは、輸出物品販売場における資産の譲渡等は、国内において行う資産の譲渡等ではあるが、外国人旅行者等がその出国の際に国外へ持ち出すことを前提とした販売であり、その実質は輸出取引と変わることがないと考えられることから、輸出取引と同様に消費税が免除されているものである。
 この輸出物品販売場の類型にはその免税販売手続の方法により一般型輸出物品販売場及び手続委託型輸出物品販売場があるが、免税販売手続をその販売場でのみ行うこととなる一般型輸出物品販売場については、購入者に対する本人確認や非居住性の判定等についての適正な免税販売手続の履行を確保する観点から「免税販売手続に必要な人員を配置すること」がその許可の要件の1つとされている(消令18の2②一ハ)。
(2)改正の内容
 上記のとおり、一般型輸出物品販売場には必要な人員の配置が求められているが、近年、外国人旅行者等向けにお土産等を販売するIoT技術を搭載した自動販売機が開発され、これに伴ってこのような自動販売機で行われる販売についても免税の対象としてほしいという事業者のニーズが高まりをみせているとして、観光庁から税制改正要望が提出されていた。
 こうした事業者からのニーズや近年の顔認証やOCRといったIoT技術の活用・進展を受け、外国人旅行者の利便性向上等の観点から、今般の改正では、免税販売手続が可能な一定の基準を満たす自動販売機を設置した場合、その設置に係る輸出物品販売場の許可については人員の配置を不要とすることにより、自動販売機による免税販売を可能とすることとされた。
 具体的には、輸出物品販売場の許可の類型に、新たな許可の類型として自動販売機型輸出物品販売場を加えることとされ(消令18の2②三)、その許可要件は以下のとおりとされた。
① 次の要件の全てを満たす事業者が経営する販売場であること。
 イ 現に国税の滞納がないこと。
 ロ 輸出物品販売場の許可を取り消され、その取消しの日から3年を経過しない者でないことその他輸出物品販売場を経営する事業者として特に不適当と認められる事情がないこと。
② 現に非居住者が利用する場所又は非居住者の利用が見込まれる場所に所在する販売場であること。
③ 免税販売手続を行うことができる機能を有する自動販売機として財務大臣が定める基準を満たす1台の指定自動販売機(国税庁長官が観光庁長官と協議して指定するものに限る。)のみを設置する販売場であること。
 上記③の財務大臣の定める自動販売機の有すべき機能の基準については自動販売機基準告示が定められた。
 この自動販売機型輸出物品販売場の許可を受けようとする事業者は、当該許可を受けようとする販売場の所在地及び当該販売場に設置する指定自動販売機を識別するための情報等を記載した申請書に、当該販売場に指定自動販売機を設置することを証する書類等の必要書類を添付して、その納税地を所轄する税務署長に提出することとされた(消令18の2①、消規10①三、②三)。
 また、自動販売機型輸出物品販売場の許可を受けた事業者が、当該許可に係る指定自動販売機を変更した場合は、遅滞なく、変更前及び変更後の指定自動販売機を識別するための情報等を記載した届出書を、その納税地を所轄する税務署長に提出することとされた(消令18の2⑯、消規10の2⑧)。
(3)適用関係
 上記改正は、令和3年10月1日以後に行われる輸出物品販売場の許可及び臨時販売場を設置しようとする事業者の承認について適用される(改正消令消費税法施行令等の一部を改正する政令(令和2年政令第114号)附則1三)。

酒税関係の改正

1 輸出用清酒に係る製造免許の特例
(1)改正前の制度の概要

 酒類の製造については、酒税の保全を図る観点から、製造場ごとに免許を受けることが必要とされているが、その免許を受けるに当たっては、免許後1年間の製造見込数量が酒類の品目ごとに定められた一定の数量(最低製造数量)以上であることが要件とされている。
 この最低製造数量の基準は、酒類製造者が所得の有無にかかわらず酒税を納付する必要があることから、納税の確保のためには、一般に採算のとれる程度の規模の製造が必要であるとの前提の下で、酒類の製造に要する設備投資などのコストを確実に回収するのに必要と考えられる水準とされており、清酒やビール等については60㎘、単式蒸留焼酎やみりんについては10㎘、果実酒やリキュール等については6㎘とされている(酒法7①②)。
(2)改正の内容
 清酒をはじめとした日本産酒類の輸出振興については、国税庁において、国際交渉を通じた輸入国の関税や規制の撤廃・地理的表示(GI)の保護の取組みに加え、国際的プロモーション活動や酒類総合研究所による技術的支援のほか、中小企業に対する経営改善等に向けた支援など、様々な施策が行われている。また、既存の酒蔵による長年の取組みなどにより海外需要が増加するなど、日本産酒類を取り巻く輸出環境は大きく変化している。
 そのような中で、今般、日本産酒類の輸出環境整備の一環として、日本産酒類の輸出における中核である清酒の更なる輸出拡大に向けた取組みを後押しする観点から、輸出用の清酒の製造免許を新たに設けることとされた(酒法7③五)。
 具体的には、酒税法に定められている清酒の最低製造数量基準(年間60㎘)を、輸出用の製造場を新設する場合に限って適用除外とすることで、最低製造数量に達しない少量からの製造を可能とするよう製造免許の特例を設けることとされた。これにより、清酒のブランド価値の確保・向上や海外向けの生産を国内生産に誘導・回帰させること等を通じて、更なる輸出拡大につながっていくことが期待される。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和3年4月1日以後に行われる申請による免許について適用することとされている(改正法附則1)。

石油石炭税関係の改正

1 地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例に係る免税・還付措置の延長
(1)制度の趣旨等

 地球温暖化防止のための温室効果ガスの削減が地球規模の重要かつ喫緊の課題となっていること等を踏まえ、我が国においても税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、平成24年度税制改正において、広範な分野にわたりエネルギー起源CO2排出抑制を図るため、全化石燃料を課税ベースとする石油石炭税にCO2排出量に応じた税率を上乗せする「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」が設けられた。
 この特例による税率は、原油及び石油製品については1㎘当たり2,800円(760円の上乗せ)、ガス状炭化水素は1t当たり1,860円(780円の上乗せ)、石炭は1t当たり1,370円(670円の上乗せ)とされている(措法90の3の2)。
 ただし、一定の分野については、エネルギー集約度が極めて高いこと、地域雇用に重大な影響を与え得ること等に配慮し、所要の免税・還付措置が講じられた。その後、平成26年度税制改正において、3年間の延長措置が講じられ、平成29年度税制改正において、還付措置の対象に苛性ソーダの製造業を営む者(子会社等を含む。)が自ら発電(苛性ソーダの製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供した重油等を追加するとともに、その適用期限が3年延長され、令和2年3月31日までの措置とされた。

(2)改正前の制度の概要
一 特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置
  苛性ソーダの製造業を営む者(子会社等を含む。)が自ら発電(苛性ソーダの製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供する石炭及び塩製造業者が自ら発電(イオン交換膜法による塩の製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供する石炭について、令和2年3月31日までに保税地域から引き取られるものについては、その引取りに係る石油石炭税の税額は、「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」の規定にかかわらず、本則税率(1t当たり700円)により計算した金額とすることとされていた(旧措法90の3の3①)。
二 特定の石油製品等を特定の運送、農林漁業又は発電の用に供した場合の石油石炭税の還付措置
  下表に掲げる者が課税済みの原油又は粗油から国内において製造された特定用途石油製品等(下表に掲げる石油製品等をいう。)を令和2年3月31日までに下表に掲げる用途に供した場合には、これらの用途に供した特定用途石油製品等につき、「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」による税率((1)中、下部記載の額。原油・石油製品は2,800円、ガス状炭化水素(LPG・LNG)は1,860円、石炭は1,370円)により計算した石油石炭税額と本則税率((1)の図中「本則税率」の額。原油・石油製品は2,040円、ガス状炭化水素(LPG・LNG)は1,080円、石炭は700円)により計算した石油石炭税額との差額に相当する金額をその特定用途石油製品等の製造者、その特定用途石油製品等を採取場から移出した採取者又はその特定用途石油製品を保税地域から引き取った者に還付することとされていた(旧措法90の3の4①)。

(3)改正の内容
 「特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減」及び「特定の石油製品等を特定の運送、農林漁業又は発電の用に供した場合の石油石炭税の還付」については、その適用期限を3年延長し、令和5年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の3の3、90の3の4)。

航空機燃料税関係の改正

1 航空機燃料税の税率の特例措置の延長
(1)改正前の制度の概要等

 平成23年度税制改正において、航空業界のグローバル競争が激化する中で、平成23年度から3年間を「集中改革期間」と位置づけ、航空会社のコスト削減や航空行政の改革(徹底的なオープンスカイの推進、首都圏空港の機能強化等)を行い、我が国航空会社の国際競争力を強化していくこととされ、その施策の一環として、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税について、その税率を航空機燃料1㎘当たり18,000円(本則26,000円)に軽減する措置が講じられた。
 平成26年度税制改正において、3年間の「集中改革期間」を経て、我が国航空会社の収益は本措置の効果や航空会社のコスト削減努力等により改善したものの、国内航空ネットワークについては、リーマンショックの影響等により、地方間の路線を中心に、路線が廃止されたり、運行回数が減少している状況にあり、地方住民等の利用者利便の向上を図るためにも国内航空ネットワークの回復・充実を図るという観点から、3年間の延長措置が講じられた。
 平成29年度税制改正において、令和元年度における国内ローカル路線の目標運行回数を確実に達成する観点から、その適用期限が3年延長され、令和2年3月31日までの措置とされた(旧措法90の8)。
(注)国内ローカル路線とは、幹線(新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、関西国際空港、大阪国際空港、福岡空港、那覇空港を相互に結ぶ路線)以外の路線をいう。
(2)改正の内容
 本措置については、航空会社各社が国内ローカル路線の充実に加えて、令和2年に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックを契機として訪日外国人旅行者の地方誘客を拡大するため、新しい施策や利用者利便向上につながる投資等に集中的に取り組むこととしていることを踏まえ、こうした取組みを後押しする観点から、適用期限を延長することとされた。これらの取組みは短期間で集中的に行われるものであり、また、後述する沖縄路線航空機に係る特例措置の延長期間が2年とされることも踏まえ、本措置の延長期間も2年とし、令和4年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の8)。

2 沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長
(1)改正前の制度の概要等

 平成9年度税制改正において、沖縄振興策の一環として、沖縄の重要な産業の一つである観光の一層の振興を図る観点から、本土ー那覇路線(本土ー沖縄本島間)の航空運賃引下げのための措置として、空港使用料の引下げ及び航空会社による協力とともに、当該路線航空機に平成14年3月31日までに積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率を1㎘当たり15,600円(本則の5分の3)に軽減する措置が講じられた。
 平成11年度税制改正において、一層の沖縄振興を図る観点から、航空運賃の更なる引下げに資するため、税率を更に引き下げることとされ、1㎘当たり13,000円(本則の2分の1)に軽減する措置が講じられた。
 平成14年度及び平成19年度の税制改正において、沖縄県の社会経済状況等を考慮して、5年間の延長措置が講じられた。
 平成22年度税制改正において、沖縄県外における県特産品の流通・販路拡大に寄与し、観光地としての沖縄の認知度を向上させるなど、観光振興上の効果を有する面があるとの観点から、旅客便に限定されていた本措置の対象範囲に貨物便が追加された。
 平成23年度税制改正において、「航空機燃料税の税率の特例」が創設され、航空機燃料税の税率が18,000円に引き下げられたことに伴い、沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料については、その軽減割合(本則の2分の1)に応じて1㎘当たり9,000円とすることとされた。
 平成24年度税制改正において、本土ー沖縄本島間と同様に、沖縄県の観光振興策の一環として、本土からの観光客の確保を図り、地域の経済活性化を促進するという観点から、本措置の対象に、本土ー宮古島、石垣島又は久米島間の航路(那覇経由便を除く。)を追加した上で、2年間の延長措置が講じられた。
 平成26年度税制改正において、更に沖縄の観光振興を進めるためには、沖縄の離島が有する豊かな自然・文化への接触機会の拡大や観光客の滞在日数の増加等が重要であり、本土から沖縄本島に来訪する観光客を沖縄県内の離島へと誘客する観点から、本措置の対象に沖縄県の区域内の各地間を航行する航空機を追加するとともに、3年間の延長措置が講じられた。
 平成29年度税制改正において、沖縄県の社会経済状況等を考慮して、その適用期限が3年延長され、令和2年3月31日までの措置とされた。
 令和元年度税制改正において、平成31年3月30日の下地島空港旅客ターミナル開業に伴い、沖縄の観光の振興を図る観点から、本措置の対象に、下地島と沖縄県以外の本邦の地域(離島振興法に規定する離島振興対策実施地域に含まれる離島等を除く。)との間を航行する航空機を追加することとされた(旧措法90の8の2)。
(2)改正の内容
 本措置については、沖縄振興特別措置法に基づく沖縄振興計画が令和3年度末までの計画であり、その期限において、同法に基づく特例措置である本措置の効果等についても検証されることから、その適用期限を2年延長し、令和4年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の8の2)。

3 特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長
(1)改正前の制度の概要等

 平成11年度税制改正において、離島については本土との地理的な隔絶性等の特殊事情があり、離島住民の生活の安定を図る上で航空交通の安定的な確保について政策上の配慮が求められていたこと等に鑑み、2年間の措置として、特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率を1㎘当たり19,500円(本則の4分の3)に軽減する措置が講じられ、その後、期限の到来に伴い適用期限が延長された。
 平成23年度税制改正において、3年間の措置として、航空機燃料税の税率が1㎘当たり18,000円(本則:26,000円)に引き下げられたことに伴い、特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料については、その軽減割合(本則の4分の3)に応じて、航空機燃料税の税率を1㎘当たり13,500円とする措置が講じられ、その後、平成26年度税制改正において、3年間の延長措置が講じられた。
 平成29年度税制改正において、その適用期限が3年延長され、令和2年3月31日までの措置とされた(旧措法90の9)。
(2)改正の内容
 本措置については、その適用期限を延長することとされ、また、前述の沖縄路線航空機に係る特例措置の延長期間が2年とされること等を踏まえ、本措置の延長期間も2年とし、令和4年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の9)。

印紙税関係の改正

1 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の延長
(1)改正前の制度の概要等

 平成9年度税制改正において、他の税制上の諸措置(住宅取得促進税制の見直し、登録免許税の特例措置の拡充等)と相まって、住宅・土地取引等の活性化を図るとともに、景気対策にも資するとの観点から、2年間の措置として、住宅・土地取引等に伴って作成される「不動産の譲渡に関する契約書」及び「建設工事の請負に関する契約書」に係る印紙税の税率を軽減する措置が講じられた。平成11年度以降の税制改正においては、それぞれ2年間の延長措置が講じられた。
 平成25年度税制改正において、住宅・土地取引の現状や消費税率の段階的な引上げが予定されていること等に鑑み、本措置の適用期限を5年延長し平成30年3月31日までの措置とした上で、建設業における重層的な下請構造の下での印紙税の課税状況等を踏まえ、平成26年4月1日以後に作成する契約書については、軽減割合及び対象範囲を拡充することとされた。
 平成30年度税制改正において、その適用期限が2年延長され、令和2年3月31日までの措置とされた(旧措法91)。
(2)改正の内容
 本措置については、住宅・土地取引の現状等を踏まえ、その適用期限を2年延長し、令和4年3月31日までの措置とすることとされた(措法91)。

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置

1 消費税の課税事業者選択届出書等の提出等に係る特例措置の創設
(1)制度創設の趣旨

 今般の新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置が納税者に及ぼす影響の緩和を図る観点から、消費税については、以下の特例が設けられた。
・ 課税事業者選択(不選択)届出書の提出に係る特例
・ 新設法人等に係る納税義務の免除制度の不適用に係る特例
・ 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除制度の不適用に係る特例
 これは、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響(以下「新型コロナウイルス感染症等の影響」という。)により、課税期間の開始前に届出書を提出できない又は課税期間の開始後に適用を変更する必要があるといった不測の事態が生じた事業者が想定されることを踏まえ、このような事業者に係る届出書の適用関係については、税務署長の承認を前提に、届出書が課税期間の開始前に提出されていない場合においても、その課税期間の開始前に提出した場合と同様の効果が生ずるようにする等の措置を講ずる必要が生じたことによるものである。
 新設法人等に係る特例及び高額特定資産を取得した場合等に係る特例についても同様に、新型コロナウイルス感染症等の影響により、その事業者の経営状態に不測の事態が生じたことに対応するための措置を講ずる必要が生じたことによる。
 なお、簡易課税制度選択(不選択)届出書については、既に「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合の特例」が設けられている(消法37の2)ことから、今般の特例法においては、特段の措置はされていない。
(2)特例の対象となる制度の概要
一 課税事業者選択制度
  事業者のその課税期間の基準期間(法人については前々事業年度、個人事業者については前々年をいう。以下同じ。)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、そうした小規模事業者の事務負担に配慮し、当該課税期間中に行った課税資産の譲渡等につき消費税の納税義務を免除する事業者免税点制度がある(消法9①)。この制度の適用を受ける事業者(以下「免税事業者」という。)であっても、課税事業者を選択する旨の届出書(以下「課税事業者選択届出書」という。)を、原則としてその課税期間開始前までに提出することにより、課税事業者となることを選択することができる制度(以下「課税事業者選択制度」という。)が設けられている(消法9④)。
  この場合、課税事業者選択制度の適用を受けた事業者については、2年間は事業者免税点制度を適用できないこととされている(以下「2年間継続適用要件」という。)(消法9⑥)。さらに、2年間継続適用要件の期間中に調整対象固定資産(棚卸資産以外の固定資産で100万円(税抜)以上のものをいう。以下同じ。)の仕入れ等を行った場合には、その調整対象固定資産の仕入れ等を行った課税期間以後3年間は、事業者免税点制度を適用できないこととされている(以下「3年間継続適用要件」という。)(消法9⑦)。
  また、課税事業者選択制度により課税事業者を選択した事業者が、その選択をやめようとする場合には、その旨を記載した届出書(以下「課税事業者選択不適用届出書」という。)を、原則としてその課税期間開始前までに提出する必要がある(消法9⑤⑧)。
二 新設法人等に係る納税義務の免除制度の不適用
  新設法人についてはその法人の設立当初の2年間は基準期間がないため、基準期間における課税売上高の判定では免税事業者となるが、その基準期間のない事業年度開始の日において資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人又は基準期間のない事業年度開始の日において資本金の額又は出資の金額が1,000万円未満の法人であっても一定の大規模事業者等が設立した法人(以下「新設法人等」という。)については、当該基準期間がない事業年度につき事業者免税点制度を適用しないこととされている(消法12の2①、12の3①)。また、当該基準期間がない事業年度中に調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合には、その調整対象固定資産の仕入れ等を行った課税期間以後3年間は、事業者免税点制度を適用できないこととされている(以下「新設法人等の調整対象固定資産特例」という。)(消法12の2②、12の3③)。
三 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除制度の不適用
  事業者が、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産(棚卸資産又は調整対象固定資産で1,000万円(税抜)以上のものをいう。以下同じ。)の仕入れ等を行った場合には、その高額特定資産の仕入れ等を行った課税期間以後3年間は、事業者免税点制度を適用できないこととされている(消法12の4①)。
  また、高額特定資産である棚卸資産について、棚卸資産の調整措置の適用を受けた場合にも同様に、その適用を受けた課税期間以後3年間は、事業者免税点制度を適用できないこととされている(消法12の4②)。
(注)棚卸資産の調整措置とは、免税事業者が課税事業者となる日の前日に、免税事業者であった期間中に行った課税仕入れ等に係る棚卸資産を有している場合、その棚卸資産に係る消費税額を、課税事業者となった課税期間の課税仕入れ等に係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなして仕入税額控除の対象とする措置をいう(消法36①③)。
(3)特例の内容
一 特例対象事業者
  本特例の対象となるのは、新型コロナウイルス感染症等の影響により、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち任意の1月以上の期間に事業としての収入の著しい減少(前年同期比概ね50%以上の減少)があった事業者(以下「特例対象事業者」という。)である(新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(令和2年法律第25号。以下「新型コロナ税特法」という。)10①、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令(令和2年政令第160号。以下「新型コロナ税特令」という。)7、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律の施行に伴う消費税の取扱いについて(国税庁法令解釈通達(令和2年4月30日課消2ー7)2)。
(注)新型コロナウイルス感染症等の影響により事業としての収入の著しい減少があったとは、事業としての収入の著しい減少が新型コロナウイルス感染症等の影響に因果関係を有することをいい、例えば、事業者又はその親族、従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したことによる影響のほか、イベント開催又は外出等の自粛要請、入国制限、賃料の支払猶予要請等の各種措置による影響等により、収入の減少があったことをいい、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち任意の期間(連続した1月以上のものに限る。)の事業としての収入金額につき、その期間の直前1年間におけるその期間に対応する期間(その期間に対応する期間がない場合は、令和2年1月以前でその期間に近接する期間その他その収入金額と比較する期間として適当と認められる期間)の収入金額(その期間に対応する期間の収入金額が不明な場合は、その期間の直前1年間の収入金額を12で除し、これを割り当てる方法その他適当な方法により算定した金額)に対して、おおむね50%以上減少していると認められることをいう。
  なお、この場合の「収入金額」の計算に当たっては、事業者の事業上の売上その他の経常的な収入についてはその額を含めるが、臨時的な収入である各種給付金や、給与収入など事業に関しない収入の額は含めない。
  また、新型コロナウイルス感染症等の影響により事業者が収入すべき対価の額を減免又は猶予した場合は、その減免額又は猶予額も「収入金額」に含めない。
  例えば、不動産賃貸人が政府の要請に基づき賃借人が支払うべき賃料の支払を猶予していると認められる場合における収入金額の計算に当たっては、その期間における賃料収入に計上される額からその猶予額を控除することとなる。
二 課税事業者選択届出書関係の特例
  免税事業者である特例対象事業者が、新型コロナウイルス感染症等の影響により、その収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間(以下「特定課税期間」という。)以後の課税期間につき課税事業者を選択することが必要となった場合で、その選択することについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象事業者は、課税事業者選択届出書をその適用を受けようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなされることとされた(新型コロナ税特法10①)。
  また、本特例により課税事業者選択届出書を提出したものとみなされた特例対象事業者については、その提出により課税事業者となる課税期間については、2年間継続適用要件及び3年間継続適用要件は適用しないこととされている(新型コロナ税特法10②)ので、これらの制限に関係なく、課税事業者選択不適用届出書を提出することができる。
  なお、この場合の、課税事業者選択不適用届出書については、原則として適用を受けることをやめようとする課税期間開始前までに提出する必要があることに留意が必要である。
三 課税事業者選択不適用届出書関係の特例
  課税事業者を選択している特例対象事業者が、新型コロナウイルス感染症等の影響により、特定課税期間以後の課税期間につき課税事業者の選択をやめることが必要となった場合で、そのやめることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象事業者は、課税事業者選択不適用届出書をその適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなされることとされた(新型コロナ税特法10③)。
  なお、この特例の適用を受けるに当たっては、2年間継続適用要件及び3年間継続適用要件は適用しないこととされているので、税務署長の承認を受けることによりこれらの制限に関係なく課税事業者の選択をやめることができる。
四 新設法人等に係る納税義務の免除制度の不適用に係る特例
  新設法人等である特例対象事業者が、新型コロナウイルス感染症等の影響により、特定課税期間以後の課税期間につき新設法人等の調整対象固定資産特例を受けないことが必要となった場合で、その受けないことについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、新設法人等の調整対象固定資産特例を適用しないこととされた(新型コロナ税特法10④)。
  なお、設立当初2年間の課税期間に資本金等の額又は一定の大規模事業者等が設立したことにより事業者免税点制度を適用しないこととする制度(消法12の2①、12の3①)は本特例の対象ではない。
五 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除制度の不適用に係る特例
  特定課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間までの課税期間中に高額特定資産の仕入れ等を行った特例対象事業者が、新型コロナウイルス感染症等の影響により、特定課税期間以後の課税期間につき事業者免税点制度を適用しないこととする規定(消法12の4①)の適用を受けないことが必要となり、その受けないことについて納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該規定は適用しないこととされた(新型コロナ税特法10⑤)。
六 高額特定資産等に係る納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産の調整措置の適用を受けることとなった場合の納税義務の免除制度の不適用に係る特例
  特定課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間までの課税期間に高額特定資産である棚卸資産等について棚卸資産の調整措置の適用を受けることとなった特例対象事業者が、新型コロナウイルス感染症等の影響により、特定課税期間以後の課税期間につき事業者免税点制度を適用しないこととする規定(消法12の4②)の適用を受けないことが必要となり、その受けないことについて納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該規定は適用しないこととされた(新型コロナ税特法10⑥)。
(注)上記四~六の場合における各課税期間の事業者免税点制度の適用の可否については、当該課税期間の基準期間における課税売上高等によって判定することに留意が必要である。
(4)適用関係
 上記特例は、この法律の公布の日(令和2年4月30日)から施行されている(新型コロナ税特法附則1)。

2 特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の創設
(1)消費貸借契約書に係る印紙税の概要

 事業資金などを金融機関等から借り入れる際に作成する借用証書などの消費貸借契約書については、その記載金額の区分に応じて、一通につき、200円から60万円まで(階級定額税率)の印紙税が課税されることから、公的貸付機関等又は金融機関が特定事業者(新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者をいう。以下同じ。)に対して低利等で融資する特別貸付制度において作成される消費貸借契約書についても、原則として、その記載金額に応じた印紙税を納付することとされていた(印法別表第一1号の3)。
(2)制度の概要等
一 制度の概要
  公的貸付機関等又は金融機関が特定事業者に対して新型コロナウイルス感染症等によりその経営に影響を受けたことを条件として他の金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で行う特別貸付けに係る消費貸借契約書のうち、特定日までに作成されるものについては、印紙税を課さないこととされた(新型コロナ税特法11、新型コロナ税特令8、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則(令和2年財務省令第44号。以下「新型コロナ税特規」という。)6)。
(注)特定日は、令和3年1月31日とされている(新型コロナ税特令8③)。
二 公的貸付機関等の範囲(新型コロナ税特法11①、新型コロナ税特令8①、新型コロナ税特規6①)
 ① 地方公共団体、株式会社日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人福祉医療機構
 ② 預託等貸付金融機関(地方公共団体等(地方公共団体、国から出資を受けた者から金銭の貸付けを受けた者又は地方公共団体から金銭の貸付けを受けた者をいう。以下同じ。)から金銭の預託又は指定を受けて当該地方公共団体等の定めるところにより特定事業者に対して金銭の貸付けを行う者をいう。以下同じ。)
(注)指定とは、信用保証協会がその債務の全部又は一部を保証し、かつ、その保証に係る保証料に相当する金額の全部又は一部について国が補助その他の助成を行う金銭の貸付けを行う者としての指定をいう。
 ③ 転貸者(沖縄振興開発金融公庫等から金銭の貸付けを受けて当該沖縄振興開発金融公庫等の定めるところにより特定事業者に対して金銭の貸付けを行う者をいう。以下同じ。)
 (注1)沖縄振興開発金融公庫等とは、沖縄振興開発金融公庫、株式会社商工組合中央金庫又は株式会社日本政策金融公庫をいう。
 (注2)株式会社商工組合中央金庫による金銭の貸付けにあっては、株式会社日本政策金融公庫法第11条第2項の規定により認定された危機対応業務として行う特定資金の貸付けに限る。
 ④ 指定金融機関(株式会社日本政策金融公庫法第11条第2項に規定する指定金融機関をいい、同法附則第45条第1項又は第46条第1項の規定により指定を受けたものとみなされた者を含む。以下同じ。)
(注)④の規定により対象となる者は、株式会社商工組合中央金庫及び株式会社日本政策投資銀行である。
 ⑤ 融資機関(農業近代化資金融通法第2条第2項各号に掲げる者又は漁業近代化資金融通法第2条第2項各号に掲げる者をいう。以下同じ。)
(注)⑤の規定により対象となる者には、銀行や信用金庫及び信用金庫連合会等がある。
三 公的貸付機関等に係る特別貸付けの範囲(新型コロナ税特法11①、新型コロナ税特令8②)
  二①~⑤で述べた金融機関等に応じて、それぞれ一定の要件を満たす貸付けが対象となる。以下①~④では、いくつかを抜粋して述べる。
① 地方公共団体が特定事業者に対して金銭の貸付けを行っている場合には、次のいずれかに該当する金銭の貸付け
 イ 地方公共団体が、一般事業者(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第1項に規定する感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者をいう。以下同じ。)に対する特別貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していなかった場合において、特定事業者に対する特別貸付制度を設け、当該特別貸付制度の下で行う金銭の貸付け
 ロ 地方公共団体が、一般事業者に対する特別貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していた場合において、特定事業者に対して当該特別貸付制度の下で行う金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で金銭の貸付けを行う制度を設け、当該制度の下で行う金銭の貸付け
 ハ 地方公共団体が、一般事業者に対する特別貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していた場合において、当該特別貸付制度の下では金銭の貸付けが受けられなかった特定事業者に対して当該特別貸付制度の下における金銭の貸付けの条件と同等の条件で金銭の貸付けを行う制度を設け、当該制度の下で行う金銭の貸付け
(注1)特別貸付制度とは、地方公共団体が行う他の金銭の貸付けの条件に比し有利な条件で金銭の貸付けを行う制度をいう。
(注2)貸付けの条件とは、貸付金の利率、据置期間、貸付限度額、償還期間、返済の方法、使途、担保(保証人の保証を含む。)の提供、借換えの可否又は保証料の料率をいう。
② 政府系金融機関(沖縄振興開発金融公庫、株式会社日本政策金融公庫、独立行政法人中小企業基盤整備機構又は独立行政法人福祉医療機構をいう。以下同じ。)が特定事業者に対して金銭の貸付けを行っている場合には、次のいずれかに該当する金銭の貸付け
 イ 政府系金融機関が、一般事業者に対する特別貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していなかった場合において、特定事業者に対する特別貸付制度を設け、当該特別貸付制度の下で行う金銭の貸付け
 ロ 政府系金融機関が、一般事業者に対する特別貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していた場合において、特定事業者に対して当該特別貸付制度の下で行う金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で金銭の貸付けを行う制度を設け、当該制度の下で行う金銭の貸付け
 ハ 政府系金融機関が、一般事業者に対する特別貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していた場合において、当該特別貸付制度の下では金銭の貸付けが受けられなかった特定事業者に対して当該特別貸付制度の下における金銭の貸付けの条件と同等の条件で金銭の貸付けを行う制度を設け、当該制度の下で行う金銭の貸付け
 ニ 政府系金融機関(独立行政法人中小企業基盤整備機構及び独立行政法人福祉医療機構を除く。)が、特定事業者(株式会社日本政策金融公庫法第2条第2号に規定する農林漁業者であるものに限る。)に対して行う特別貸付け(沖縄振興開発金融公庫法施行令第2条第1号に掲げる資金又は株式会社日本政策金融公庫法別表第一第8号の下欄に掲げる資金の貸付けであって一定の要件に該当するものに限る。)
 (注1)特別貸付制度とは、政府系金融機関が行う他の金銭の貸付けの条件に比し有利な条件で金銭の貸付けを行う制度をいう。
 (注2)貸付けの条件とは、貸付金の利率、据置期間又は貸付限度額をいう。
 (注3)一定の要件とは、償還期間が1年以上であり、かつ、当初5年間は実質的に利子が軽減され、その貸付金に係る担保が実質無担保であることをいう。
③ 預託等貸付金融機関が特定事業者に対して金銭の貸付けを行っている場合には、次のいずれかに該当する金銭の貸付け
 イ 地方公共団体等が一般事業者に対する特別預託等貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していなかった場合において、当該地方公共団体等が特定事業者に対する特別預託等貸付制度を設け、当該特別預託等貸付制度の下で預託等貸付金融機関が行う金銭の貸付け
 ロ 地方公共団体等が一般事業者に対する特別預託等貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していた場合において、当該地方公共団体等が特定事業者に対して当該特別預託等貸付制度の下で行う金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な貸付条件の預託等貸付制度を設け、当該預託等貸付制度の下で預託等貸付金融機関が行う金銭の貸付け
 ハ 地方公共団体等が一般事業者に対する特別預託等貸付制度を令和2年2月1日の前日に有していた場合において、当該地方公共団体等が当該特別預託等貸付制度の下では金銭の貸付けが受けられなかった特定事業者に対して当該特別預託等貸付制度の下における金銭の貸付けの条件と同等の貸付条件の預託等貸付制度を設け、当該預託等貸付制度の下で預託等貸付金融機関が行う金銭の貸付け
 (注1)特別預託等貸付制度とは、預託等貸付金融機関が地方公共団体等の定めるところにより金銭の貸付けを行う制度で他の金銭の貸付けの条件に比し有利な条件で金銭の貸付けを行う制度をいう。
 (注2)貸付けの条件とは、貸付金の利率、据置期間、貸付限度額、償還期間、返済の方法、使途、担保(保証人の保証を含む。)の提供、借換えの可否又は保証料の料率をいう。
④ 指定金融機関が特定事業者に対して危機対応業務として行う特定資金の貸付け
四 金融機関の範囲(新型コロナ税特法11、新型コロナ税特令8④)
  金融機関の範囲は、租税特別措置法施行令第52条の3第3項各号に掲げる金融機関及び株式会社日本政策投資銀行であり、具体的には、銀行や信用金庫等である。
五 金融機関に係る特別貸付けの範囲(新型コロナ税特法11②、新型コロナ税特令8⑤)
  上記四の金融機関が、特定事業者に対して行う金銭の貸付けであり、以下のもの等がある。
 ① 中小企業信用保険法第12条に規定する経営安定関連保証を受けた者(いわゆるセーフティネット保証4号を受けた者に限る。)又は同法第15条に規定する危機関連保証を受けた者に対する金銭の貸付け
六 特別貸付けであることの明示
  金融機関の行う特別貸付けについて本措置の適用を受けるためには、特定事業者に対する特別貸付けであることをその適用を受けようとする消費貸借契約書において明らかにしなければならない(新型コロナ税特令8⑥)。
(注)明らかにする方法には、その消費貸借契約書原本において明らかにする方法のほか、当該消費貸借契約書と紐づく約款や、金融機関が発行する証明書類等によって明らかにするといった方法がある。
(3)適用関係
 本措置は、特定事業者に対して新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けたことを条件として行う金銭の特別貸付けに係る消費貸借契約書について適用される(新型コロナ税特法11)。
 なお、新型コロナ税特法等の施行までに本措置が適用される消費貸借契約書が作成され、当該消費貸借契約書に係る印紙税が納付されている場合には、当該納付された印紙税は印紙税法第14条第1項の過誤納金とみなして還付することとする措置が設けられている(新型コロナ税特法附則6、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第206号。以下「新型コロナ税特令一部改正令」という。)附則②)。
 また、新型コロナ税特法施行前に既に多くの融資が実行されているという実態を踏まえ、過誤納金とみなされた印紙税の還付に係る事務負担を軽減する観点から、還付申請を行う際、本措置に係る消費貸借契約書の原本の提示がなくとも、公的貸付機関等又は金融機関が発行する証明書を提出することで還付手続を可能とする措置が設けられた(新型コロナ税特令附則4、新型コロナ税特令一部改正令附則③)。

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