カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2020年09月07日 税務マエストロ 新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(法人税関係)(2020年9月7日号・№848)

税務マエストロ
新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(法人税関係)
#252
熊王征秀(税理士)


略歴
学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会調査研究部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学教授

マエストロの解説

 新型コロナウイルス感染症に対する税務上の対応策として、「新型コロナ税特法」が創設された。消費税については、この新型コロナ税特法により、「課税事業者選択(不適用)届出書」の期限後提出が認められるとともに、課税事業者を選択した場合の「2年縛り」、調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合の「3年縛り」の制限も解除される。
 結果、課税事業者を選択して消費税の還付を受けた翌課税期間から免税事業者に戻ることや、課税事業者の選択後、これを取り消して免税事業者に戻ることも可能となる。
 また、新型コロナの発生を「災害」と認識し、「新型コロナ税特法」ではなく、消費税法第37条の2(災害等があった場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例)により、「簡易課税制度選択(不適用)届出書」の期限後提出と簡易課税を選択した場合の「2年縛り」の制限を解除することが認められている。
 結果、課税期間の初日にさかのぼって本則課税に変更し、消費税の還付を受けた後で再び簡易課税を選択することや、課税期間の初日にさかのぼっての簡易課税の選択も可能となる。
※新型コロナ税特法の成立を受け、国税庁消費税室では、法令解釈通達(新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律の施行に伴う消費税の取扱いについて)を制定するとともに、「新型コロナ税特法に係る消費税の特例に関するQ&A」を公表した。
  新型コロナ税特法による承認申請手続が非常に複雑で難解な法律構成となっていることが理由なのであろう……国税庁消費税室が作成したQ&Aは呆れるほど丁寧に解説がされており、法令や通達を片手にこのQ&Aを読み込んでいくと、新型コロナウイルスに関する消費税の取扱いはひととおり理解できるものと思われる。
  その一方で、コロナの終息が依然として不透明なこの時期に、新型コロナ税特法の全容を理解することは、実務家にしてみるとなかなか時間的にも厳しいのではないかと感じているところである。
  こういった理由から、本稿では、新型コロナ税特法について、実践的に、かつ、コンパクトにポイントを確認することを最優先することとした。目前に迫っている申告に、まずは備えるということである。よって、【具体例】は令和2年9月決算法人を中心に作成したことをご承知おき戴きたい。

1 課税事業者選択(不適用)届出書に関する特例(コロナ税特法10①~③)

【具体例1】課税事業者選択届出書の期限後提出
 9月決算法人が、事業収入が著しく減少した令和2年9月決算期(特定課税期間)から課税事業者を選択する場合の申請書・届出書の提出期限は、特定課税期間の末日の翌日から2月を経過する日(令和2年11月30日)になる(コロナ税特法10⑦一)。
(注)令和2年が特定課税期間となる個人事業者の申請書・届出書の提出期限は令和3年3月31日になる(コロナ税特法10⑦一)。

(提出書類)
・消費税課税事業者選択届出書
・新型コロナ税特法第10条第1項(第3項)の規定に基づく消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(別紙様式1)

※適用除外……新型コロナ特例法により、下記の制度が適用除外となる。

・「課税事業者選択届出書」を提出した場合の「課税事業者選択不適用届出書」の提出制限(いわゆる「2年縛り」の制度)
・強制適用期間中に調整対象固定資産を取得した場合の「3年縛り」による本則課税の強制適用

【具体例2】課税事業者選択不適用届出書の期限後提出(課税事業者選択届出書の取消し)
 事業収入が著しく減少した令和2年9月決算期(特定課税期間)から課税事業者を選択した9月決算法人が、課税事業者の選択を取り消して令和2年9月決算期から課税事業者の選択をやめる場合の申請書・届出書の提出期限は、令和2年11月30日になる。

(提出書類)
・消費税課税事業者選択不適用届出書
・新型コロナ税特法第10条第1項(第3項)の規定に基づく消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(別紙様式1)

【具体例3】課税事業者選択不適用届出書の期限後提出(その2)
 事業収入が著しく減少した令和2年9月決算期(特定課税期間)から課税事業者を選択した9月決算法人が、令和3年9月決算期から課税事業者の選択をやめる場合の申請書・届出書の提出期限は令和3年9月30日になる。

(提出書類)
・消費税課税事業者選択不適用届出書
・新型コロナ税特法第10条第1項(第3項)の規定に基づく消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(別紙様式1)

※適用除外……新型コロナ特例法により、下記の制度が適用除外となる。

・「課税事業者選択届出書」を提出した場合の「課税事業者選択不適用届出書」の提出制限(いわゆる「2年縛り」の制度)
・強制適用期間中に調整対象固定資産を取得した場合の「3年縛り」による本則課税の強制適用

□「課税事業者選択不適用届出書」を提出する場合の提出(申請)期限(コロナ税特法10⑦二)
 ① 特定課税期間から課税事業者の選択をやめる場合

   ……特定課税期間に係る確定申告書の提出期限(【具体例2】のケース)

 ② 特定課税期間後の課税期間から課税事業者の選択をやめる場合(その1)
  特定課税期間の末日が、「課税事業者選択届出書」の提出により課税事業者となった課税期間の初日以後2年を経過する日(2年経過日)以後に到来する場合で、その特定課税期間の翌課税期間以後の課税期間から課税事業者の選択をやめる場合……特定課税期間に係る確定申告書の提出期限

 ③ 特定課税期間後の課税期間から課税事業者の選択をやめる場合(その2)
   上記②以外の場合……ⅰとⅱとのいずれか早い日【具体例3】のケース)

2 3年縛りの制限の解除(コロナ税特法10④~⑤)

【具体例4】新設法人が2期目に調整対象固定資産を取得した場合
 平成29年10月1日に資本金1,000万円で設立した新設法人が、設立2期目(令和元年9月決算期)に調整対象固定資産を取得した場合において、事業収入が著しく減少した令和2年9月決算期(特定課税期間)から「3年縛り」を解除する場合の申請書の提出期限は令和2年11月30日になる。

○特定課税期間から免税事業者になるケース
 新型コロナ特例法による申請書を提出し、承認を受けることにより、「3年縛り」は解除される。
 結果、設立3期目(令和2年9月決算期)の基準期間である設立1期目(平成30年9月決算期)の課税売上高が1,000万円以下で、かつ、特定期間(平成30年10月1日〜平成31年3月31日)中の課税売上高と給与等の支払額のいずれかが1,000万円以下の場合には、特定課税期間である設立3期目(令和2年9月決算期)は免税事業者になることができる。
○特定課税期間から課税事業者になるケース
 設立3期目(令和2年9月決算期)の基準期間である設立1期目(平成30年9月決算期)の課税売上高が1,000万円を超える場合または特定期間(平成30年10月1日〜平成31年3月31日)中の課税売上高と給与等の支払額のいずれもが1,000万円を超える場合には、設立3期目は課税事業者となるので、「課税事業者届出書」を速やかに提出する必要がある。
 この場合において、新型コロナ特例法による申請書を提出し、承認を受けることにより、「3年縛り」は解除されるので、「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を期限までに提出することにより、設立3期目(令和2年9月決算期)は簡易課税制度の適用を受けることができる(「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」に期限については3を参照)。

□「新型コロナ税特法第10条第4項から第6項の規定に基づく納税義務の免除の特例不適用承認申請書」の提出(申請)期限(コロナ税特法10⑦三)

 ⅰとⅱとのいずれか遅い日【具体例4】のケース)

【具体例5】高額特定資産を取得した場合
 簡易課税制度の適用を受けている9月決算法人が、平成30年9月決算期に「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出し、令和元年9月決算期において高額特定資産を取得して本則課税により申告した。この場合において、事業収入が著しく減少した令和2年9月決算期(特定課税期間)から「3年縛り」を解除する場合の申請書の提出期限は令和2年11月30日になる。

 この場合において、新型コロナ特例法による申請書を提出し、承認を受けることにより、「3年縛り」は解除されるので、「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を期限までに提出することにより、設立3期目(令和2年9月決算期)は簡易課税制度の適用を受けることができる(「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」の期限については3を参照)。

□「新型コロナ税特法第10条第4項から第6項の規定に基づく納税義務の免除の特例不適用承認申請書」の提出(申請)期限(コロナ税特法10⑦四)

 ⅰとⅱとのいずれか遅い日【具体例5】のケース)

3 簡易課税制度選択(不適用)届出書に関する特例(消法37の2)

 新型コロナ(災害)の影響により事務処理能力が低下したため、本則課税による申告が困難となることが予想される。また、感染予防のための増設工事や備品の購入などが必要となるにも関わらず、簡易課税制度が強制適用となったのでは、消費税の控除あるいは還付を受けることができない。
 こういった事情に配慮して、課税期間の中途において災害が発生した場合には、その災害がやんだ後2か月以内に承認申請をすることにより、その災害があった課税期間の初日にさかのぼって、簡易課税の選択あるいは取り止めができることとされている。
 この場合において、課税期間の初日にさかのぼって簡易課税を選択する場合には、たとえ3年縛りの強制適用期間中であっても本則課税から簡易課税への変更が認められている(消法37の2①)。
 また、課税期間の初日にさかのぼって簡易課税制度の適用を止める場合には、たとえ簡易課税制度の強制適用期間を満了していなくとも、簡易課税を取り止め、本則課税に切り替えることが認められている(消法37の2⑥)。

□申請書の提出期限に注意する!
 承認申請書の提出期限は、災害がやんだ後2か月以内とされているが、災害がやんだ日がその承認を受けようとする課税期間の末日の翌日以後の場合には、確定申告書の提出期限までに申請書を提出する必要がある(消法37の2②)。
 なお、個人事業者の場合には、確定申告書の提出期限が3月31日であることから、災害がやんだ日の属する年の前年にさかのぼって承認を受けようとする場合には、2月1日以後に災害がやんだ場合についてだけ、申請書の提出期限が3月31日となる。たとえば、1月10日に災害がやんだ場合には、申請書の提出期限は3月10日になるのに対し、3月10日に災害がやんだ場合には、申請書の提出期限は、確定申告書の提出期限である3月31日になるということである(消基通13ー1ー8(1))。
 また、国税通則法第11条≪災害等による期限の延長≫の規定により申告書の提出期限が延長されている場合には、その延長された期限までに申請書を提出すればよいこととされている(消基通13ー1ー8(2))。

(提出書類)
・消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書
・災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(第35号様式)

□新型コロナ特例法との関係
 災害等による簡易課税の特例承認申請は、消費税法第37条の2(災害等があった場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例)に基づくものである。したがって、調査期間の事業収入が前期比で概ね50%以上減少していなくても承認申請をすることができる。
 ただし、災害等による簡易課税の特例承認申請が認められるかどうかの判断は、申請内容により個別に判断することとされている。


記事に関連するお問い合わせ先
記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索