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解説記事2020年09月14日 SCOPE 国、「純粋経済人の行為として、不合理、不自然な行為」と指摘(2020年9月14日号・№849)

ユニバーサル事件の上告受理申立て理由判明
国、「純粋経済人の行為として、不合理、不自然な行為」と指摘


 法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)の適用の可否を争点としたユニバーサル・ミュージック事件では、第一審・控訴審で敗訴した国が上告受理申立てを行っている(本誌843号7頁参照)。国は令和2年9月3日に提出した上告受理申立て理由書で、①本件借入れは、法132条1項の不当性要件を充足し、同項により否認されるべきもの、②原判決の判断は、法132条1項の解釈適用を誤っていること、③原判決の判断は、高等裁判所の判例と相反するものであり、本件は法令解釈に関する重要な事項を含むもの、と主張している。
 本稿では、企業再編等場面における同族会社等の行為・計算の否認に係る国の論理を、上告受理申立て理由から分析する。

上告理由①:不当性要件の充足

 国はまず、法132条の趣旨・目的を示した上で、「その趣旨・目的からすれば、同項の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」か否かは、経済的、実質的見地から、純粋経済人の行為・計算として不合理、不自然な行為と認められるか否かという客観的、合理性基準により判断されるべきであり(経済合理性基準)、その判断に当たっては、当該同族会社の行為等自体の目的、効果等について検討されなくてはならず、その行為等が複雑な企業再編等の一環として行われる場合のように一定の目的のために行われる一連の行為の一部である場合において、当該同族会社の資本主やその属する企業集団等において何らかの事業目的等を有していたとしても、それが当該同族会社の具体的な経済的利害と結びつかないのであれば、これを考慮することは許されないというべきである。」との判断枠組みを示した。
 そして、本件への当てはめでは、「本件借入れの経済的合理性を判断するに当たっては、一連の行為(増資、借入れ、買収、合併)の周辺事情、関連事情を踏まえつつも、本件借入れの目的、効果等を適切に評価する必要がある。そして、一定の目的を実現するために実際に行われた行為よりも経済的負担の少ないほかに採り得る手段があれば、同手段を選択することが純粋経済人とすれば合理的であるから、そのような場合に実際に行われた行為に経済的合理性は認められず、『不当』と評価されるべきである。」とした上で、「(事業承継という目的を達成するためには、)相手方には、大きな経済的負担もなくその目的を実現し得る手段があり、このような手段を採らずに行った本件借入れは、経済的、実質的見地から見て、純粋経済人の行為として不合理、不自然な行為といえ、『不当』と評価せざるを得ない。」としている。

上告理由②:原判決の法132条1項の解釈適用の誤り

 また国は、以下のとおり原判決が、法132条1項の解釈適用を誤っていると主張する。
 「原判決は、不当性要件の判断枠組みに関し、経済合理性基準を掲げ、本件借入れに関する事情を挙げつつも、企業再編等自体について、法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)の適否の判断で問題とされる考慮事情を挙げて検討を加えている。しかしながら、不当性要件に該当するか否かは、飽くまで法132条1項の適用により更正又は決定を受ける法人の行った具体的な行為・計算自体について、当該更正対象同族会社自身の経済的利害との関係で判断されなくてはならない。また、法132条1項は、もとより、法132条の2とはその趣旨・目的が異なり、法132条1項の不当性要件の意義は法132条の2にいう『法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの』とは異なるのであるから、法132条1項の適否の判断の場面において、法132条の2の適否の判断で問題とされる考慮事情を検討することは許されない。」
 「原判決は、相手方の具体的な経済的利害とは結び付かない、相手方の資本主やその属する企業集団の事業目的等を考慮して本件借入れの経済的合理性を是認するが、当該同族会社の資本主やその属する企業集団の事業目的等が当該同族会社の具体的利益に結び付かないのであれば、そのような企業集団全体の利益をもって経済的合理性を肯定することはできないし、原判決が認定する本件組織再編取引等に伴う効果は、(中略)相手方が、本件借入れを行うことに経済的合理性があるか否かを検討するに当たって考慮すべき経済的事情とはいえないものである。また、原判決の判断は、実質的には更正対象同族会社の資本主やその属する企業集団全体の利益をもって法132条1項の適用を否定する結論を採っているものと見ざるを得ず、同項の趣旨・目的に反している。」

上告理由③:判例相反・法令解釈に関する重要な事項

 さらに、国は、「原判決の判断は、高等裁判所の判例と相反するものであり、本件は法令解釈に関する重要な事項を含むものであること」について、下記のとおり主張している。
 「法132条1項の不当性要件の判断枠組みとして、経済合理性基準を掲げながら、その具体的な判断基準として、更正対象同族会社の資本主やその属する企業集団等の企業再編等の事業目的やそれに関連する行為の手順、方法、態様等の経済的合理性を考慮すべきであるとし、また、同合理性を欠く場合に、独立当事者間の通常の取引と異なっている場合なども含まれると解することは相当ではないとする原判決の判断は、経済的合理性の判断においてこれと異なる手法を採用し、その判断に当たって独立当事者間取引基準を採用する高等裁判所の判例の判断と相反する。そして、法132条1項の不当性要件の解釈・適用の在り方は、同族会社と非同族会社の税負担の公平を図り、適正公平な法人税の課税を実現するに当たり極めて重要であり、原判決の判断は課税実務に多大の影響を及ぼすものであるから、本件は法令解釈に関する重要な事項を含むものであることが明らかである。」

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