税務ニュース2020年10月02日 売買は譲渡価格でしか通常成立しえず(2020年10月5日号・№852) 新争点を設定し、差戻し控訴審で争うことに
控訴人(納税者)はまず、差戻し後の控訴審で、最高裁判決の拘束力の範囲について主張した。控訴人が勝訴した差戻し前の控訴審判決の控訴人勝訴部分は最高裁で破棄されたが、「下級審はそれ(最高裁判決の判示)以外の可能な法律上の見解をとって、前の判決と同一の結論を導くことは妨げられない。」とし、判決理由は変わろうとも、差戻し後の控訴審でも課税処分の取消し判決を求めている。
実体としては、「本件取引は利害関係のない第三者間の売買であり時価による売買であること」を主張していると言える。具体的には、「同じ原告が一審で勝訴(確定)した相続税訴訟において、被相続人(譲渡人)と譲受人(法人)との間に、何らかの特殊な支配関係等はなかったと認定されている」とした上で、「第一審判決には事実認定に矛盾があり、本件株式譲渡は相続税の軽減目的でなされた取引ではないこと、その結果、本件株式譲渡は利害相反する第三者間で成立した売買として、時価による取引と解される」とし、この結論に本件最高裁判決の拘束力は及ばないと訴えている。
また、本件譲渡価格でしか売買は通常成立しえないこと、譲渡人である被相続人にとって本件株式には支配的価値はないこと、譲渡人にとっての時価は譲受人にとっての時価と同一となるべきことなども主張し、譲渡人に対して仮に原則的評価方式により算定した価額とするのであれば、譲受人の法人税法上の時価と矛盾することについて、第一審判決が判示した時価二元論を批判。さらに、「本件株式については、非上場株式であることもあり、取引相場がそれほどあるわけではないが、本件株式譲渡の直近には、以下の取引が行われているとして、譲渡人が従業員で譲受人が持株会の取引が2件ほど配当還元価格(@75円)で行われている」と指摘している。
控訴人は、「本件株式譲渡について、本件譲渡価格(配当還元方式により算定した価格)でしか売買は通常成立しえないのであり、換言すれば、譲受人としても、それ以外の第三者としても、本件株式を原則的評価方式により取得しようとすることは通常考えられない。」と結論付けている。
国は11月初旬に開かれる公判での反論を予定している。
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