企業法務2014年12月10日 ゴルフ会員権の譲渡 執筆者:野口雅史
1 ゴルフ会員権の譲渡に対する課税
ゴルフ会員権とは、ゴルフ場の所有・経営に係る法人の株式等を所有すること又はゴルフ場の所有・経営に係る法人に金銭を預託することにより、ゴルフ場を一般の利用者に比し、有利な条件で利用することができる権利(プレイ権)をいいますが、ゴルフ会員権の形態には、①株主又は出資者でなければ会員になれないもの、②株主又は出資者であり、かつ、入会金を支払わなければ会員になれないもの、③入会金を支払えば会員になれるものがあり、これらの譲渡による所得は、いずれも総合課税による譲渡所得(所法33①)となります。なお、株式の譲渡所得については、「ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利に類するものとして政令で定める株式又は出資者の持分を除く」(措法37の10②)とされていることから、ゴルフ会員権が株式形態のものである場合においても、その譲渡は株式の譲渡所得から除かれているため、預託金制ゴルフ会員権と同様、申告分離課税の対象とはならず、総合課税の対象となります。
2 プレイ権が消滅した預託金制ゴルフ会員権の譲渡
東京地方裁判所は平成26年7月9日、原告らが譲渡した預託金制ゴルフ会員権が、譲渡所得の基因となる「資産の譲渡」に該当し、他所得との損益通算ができるか否かを巡り争われた事件について、本件預託金制ゴルフ会員権は、ゴルフ場運営会社におけるプレイ権の債務履行が不能(つまりプレイ権の消滅)となっていたと認められることなどから、本件預託金制ゴルフ会員権の譲渡は、預託金返還請求権(=金銭債権)のみの譲渡であるため、譲渡所得の基因となる「資産の譲渡」に該当しないと判断しました(平成25年(行ウ)第1号,第2号・現在、原告側が控訴中)。このように、金銭債権の譲渡は譲渡所得の基因となる「資産」には該当せず、金銭債権の譲渡による利益は、その債権の元本の増加益(キャピタルゲイン)ではなく、事業所得又は雑所得に該当する金利に相当するものであると考えられることから、金銭債権は、譲渡所得の基因となる資産には該当しないこととされ(所基通33-1)、その譲渡により生じた利益は通常雑所得に区分されます。また、預託金返還請求権については無利息であるため、譲渡による利益は生じず、仮に損失が生じたとしても、雑所得の金額の計算上、必要経費に算入されないことになります。
3 ゴルフ会員権の譲渡損失の取扱い
ゴルフ会員権の譲渡により損失額が生じたときは、その譲渡が平成26年3月31日以前に行われたものであるときは、その損失額を他の所得から差し引くことができますが、平成26年度税制改正により、その譲渡損失を他の所得との損益通算及び雑損控除を適用することができない「生活に通常必要でない資産の範囲」(所令178)に、「主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産」が加えられたことから、平成26年4月1日以後に行うゴルフ会員権等の「主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産」の譲渡により生ずる譲渡損失については、他の所得との損益通算(所法69①②)ができないこととされました。
(2014年11月執筆)
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