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厚生・労働2014年09月12日 精神保健福祉法改正、障害者雇用促進法改正及び障害者差別解消法の成立に想うこと 執筆者:池原毅和

◆障害者権利条約批准と国内法

 平成25年に精神保健福祉法、障害者雇用促進法が相次いで改正され、障害者差別解消法が新たに制定されるなど医療福祉分野の法律が今大きく変化してきています。こうした法律の動きは平成18年に国際連合で障害者権利条約が採択され、同条約の批准のために関連国内法の整備を進めてきたことが大きな要因になっています。同条約については平成26年1月にわが国も批准し、2月から同条約が国内法としての効力を持つようになっています。

◆保護者制度の廃止というインパクト

 今回の精神保健福祉法の改正では、なんと言っても保護者制度の廃止が歴史的な改正になりました。精神医療に関する法律は明治33年(1900年)の精神病者監護法がわが国最初の近代的法律としてスタートしましたが、同法に監護義務者制度が定められ、これが今回廃止になった保護者の原型になりました。ですから、保護者制度の廃止は114年にわたる制度に終止符を打ったという意味で大きな改正であったと言えるでしょう。精神保健福祉法は精神医療福祉に関する基本法といってよい法律です。ほかの法律で見たときに基本法の柱の一つになっているような制度を改変ではなく廃止してしまうというのは日本の法律の中では数少ないことで大きな決断であったと言えます。
 もっとも保護者制度に対しては、高齢化、少子化、単身世帯の増加という高度経済成長以降の急速な社会構造の変化の中で旧来の家族に依存した医療福祉のあり方では制度が成り立たないという指摘が過去20年以上にわたって行われていました。とりわけ思春期以降に発症する精神障害を前提にすると、親が中心になる保護者は高齢の年金生活者で自らも介護が必要なような人であることが多く、そうした人たちを親だから家族だからということで保護者に選任して精神障害のある人に治療を受けさせる義務や財産上の利益を守る義務を課しても、本当にその役割が必要な深刻な場面ではほとんどその責務を果たすことが期待できず、かえって親子共倒れに至るということが容易に想定され、実際に悲惨な事例も現れていました。100年以上前の明治のモデルを基本においた制度はさすがに21世紀の社会では適応性を失ったということでしょう。

◆医療保護入院と保護者同意要件

 一方で、保護者制度の問題の一つとして医療保護入院を行う際に保護者の同意を要件としていた問題がありましたが、この点の法改正は中途半端なものになってしまいました。医療保護入院については一般の医療と同じように医師の医学的な判断を要件として入院の要否を決定すべきだという意見が法改正の議論の中で主流となっていましたが、改正法は家族など(保護者の被選出母体と同じ、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人、保佐人)の同意を医療保護入院の要件の一つとしました。改正法は施行3年後(平成28年)に必要な見直しを行うという附則を定めていますので、この点は今後、活発な議論になるところだと思います。

◆障害者の雇用はなるか

 改正障害者雇用促進法は障害者雇用について障害者権利条約の要請を受けて、募集・採用場面と就業中の場面を分けて差別の禁止と企業の合理的配慮義務を定めており、障害者差別解消法も事業者に対して障害者差別の禁止義務と合理的配慮の努力義務を定めています。これらの法律も平成28年施行予定ですので、平成28年には障害医療保健福祉分野に大きな変化が訪れることになるでしょう。精神保健福祉の問題に関与する弁護士として、注目したいと考えているところです。

(2014年9月執筆)

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