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企業法務2009年11月26日 適用初年度を終えた3月決算会社の内部統制報告書 執筆者:水野行雄

1.内部統制報告制度とは

 わが国においては、平成16年(2004年)10月に発覚した西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載事件を契機にして、翌平成17年(2005年)1月に企業会計審議会に内部統制部会が新設され、財務報告に係る内部統制の基準の審議が開始されました。
 その後同年9月にカネボウの粉飾決算事件が発覚したため、内部統制報告制度の導入を加速させる結果となり、平成19年(2007年)2月に内部統制部会が「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」を公表し、金融商品取引法に基づいて、平成20年(2008年)4月1日開始事業年度から、上場企業に対して内部統制報告制度が義務付けられることになりました。

2.適用初年度(3月決算会社)の報告結果

 平成21年(2009年)6月2日に3月決算会社の報告第1号としてムトウ(東証一部、現社名:スクロール)が内部統制報告書を提出し、提出期日の6月30日までに計2,670社が提出を終了しました。提出を遅延した会社は3社で、これらの会社も7月31日までに提出を終了しましたが、米国での適用初年度における提出遅延の状況に比べてきわめて少数となっています。
 評価結果の記載状況については、上記2,670社について7月7日に金融庁が公表しており、2,670社の内訳は、「内部統制は有効である」とした会社は2,605社、「重要な欠陥があり、内部統制は有効でない」とした会社は56社、「内部統制の評価結果を表明できない」とした会社は9社となり、「重要な欠陥」を公表した会社は2.1%で、これも米国での適用初年度の16.3%に比べてきわめて低い結果となっています(諸条件が異なりますので単純比較はできませんが)。その後、提出を遅延した会社のうち1社と訂正報告書を提出した会社1社が「重要な欠陥」を報告したため、3月決算会社については58社が「重要な欠陥」を公表したことになります。

3.今後の課題

 3月決算上場会社にとって、内部統制報告書の提出を終了し、適用初年度への対応が終了したところですが、この制度は「初年度を乗り越えられれば終わり」というものでなく、毎年継続的に内部統制の有効性を評価し、是正していくことになりますので、2年目以降の対応についても検討していく必要があります。変更点の見直し等を中心にして、「基本的計画と方針の決定」、「統制環境の整備」、「業務毎の文書化と整備・運用状況の分析等」、「有効性の評価」、「決算財務報告プロセスの整備」、「内部統制報告書の作成」といった観点から、検討していくことが必要と思われます。特に、「重要な欠陥」を報告した会社のうち6割については、決算財務報告プロセスに関するもので、その原因も人材不足によるとする会社がほとんどであることから、今後IFRS(国際会計基準)が適用されることを考慮すれば、決算財務報告プロセスの整備に重点をおく必要があり、人材の確保・教育等が重要な課題と思われます。

(2009年11月執筆)

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