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訴訟・登記2007年04月03日 改正貸金業規制法下の債務整理 執筆者:茨木茂

 2006年12月に成立した改正貸金業規制法は、利息制限法の徹底(みなし弁済廃止)と過剰貸付抑制を目玉とするものであるが、これによって200万人以上と言われる、現に存在する多重債務者の問題が自然に解決されるわけではない。むしろ過剰貸付の抑制が本格的に実施されるにつれ、今迄の自転車操業ができなくなり、破綻が多発するのではないかとも言われている。いずれ破綻が必至であれば、先延ばしをして傷を深くするのではなく、早い段階で債務整理を行い、経済的再生を図るべきことは言うまでもない。改正貸金業規制法下において、債務整理の必要性と重要性は益々高まったと言える。
 個人の債務整理の主な方法としては、自己破産、個人再生、特定調停及び任意整理がある。最後の任意整理は、分割弁済が代表的なものだが、減額一括弁済(ある程度まとまった自己資金或いは親族等からの借入資金を原資として、債権を一部カットしてもらった上で残債を一括で支払う)もあり、強制執行される資産・収入もない場合には消滅時効待ちもあるという、大変柔軟なものである。そこで一口に債務整理と言っても、どのような方法をとるかという、「方法の選択」が非常に重要である。ガンになったからといって、何でもかんでも手術して切除すればいいというものではないのと同様である。何でも自己破産というのはまずいし、何でも任意整理というのもまずい。
 例えば、多額の負債を抱えた年金生活者がいたとする。借家暮らしで特に資産もなければ、年金は差押禁止だから、直接取立を防ぐために法律専門家が代理人として受任する必要はあるが、それ以上敢えて自己破産を申し立てる必要はないだろう。消滅時効待ちの方法で足りるはずである。勿論、本人の精神的心理的状況なり希望によって、早急且つ確実な法的決着が必要という場合には、自己破産という方法となるだろう。仮に自己破産を選択するとしても、債務増大化の過程で詐術を用いたと疑われる借入をしていた場合には、免責不許可の危険を避けるため、申し立ての時期を考慮する(破産法252条1項5号参照)必要もあるだろう。
 負債合計1000万円、資産が生命保険解約返戻金見込額200万円の有職の債務者の場合、自己破産する位なら個人再生(弁済率20%の再生計画)を試みた方が、普通は良いだろう。また負債合計が200万円程度の債務者(資産は100万円以下とする)が、自己破産は嫌だと言っている場合、払えるからといって毎月5万円を40回払いの任意整理とするのか、3年間100万円程度(毎月約27,777円)の個人再生とするのか、普通は後者の方が債務者にとって経済的に有利なので、本人と良く相談し、利害得失を熟考すべきであろう。
 更に、長年に亘って貸金業者と取引をしてきた多重債務者の場合、過払金の取戻作業は今や債務整理において必須の事柄であるが、ある債務者について利息制限法引直計算をした結果、過払金のある業者もあるが残債務のある業者があり、過払金額より残債務額の方が相当多くて、結局自己破産せざるを得ないという場合、過払金取戻作業をやらずに自己破産申立をすべきなのか或いは取戻した後に自己破産申立をすべきなのか、という「タイミングの選択」も仲々難しいところがある。
 「法律専門家」を名乗る以上、「方法の選択」や「タイミングの選択」で誤りを犯すことは許されない。誤りなきを期するには、「常に、・・法令及び法律事務に精通しなければならない」(弁護士法2条)し、そのための「研鑽に努める」(弁護士職務基本規程7条)ことが不可欠である。

(2007年4月執筆)

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