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一般2021年03月18日 特別企画:2021年度の雇用動向に関する企業の意識調査 出典:帝国データバンク

正社員の採用予定、9年ぶりの低水準
~70歳までの高年齢者雇用、継続雇用制度の導入がトップ~

はじめに
 2020年は有効求人倍率が大幅に低下し、新規学卒者の就職内定率も大きく低下するなど、労働需給がひっ迫していたこれまでの雇用環境とは大きく動向が変化した。そうしたなか、政府は新型コロナウイルスによる影響を受けた企業を対象とした雇用調整助成金などの各種施策や、高年齢者の雇用機会拡大に向けた法整備を進めるなど、積極的に雇用の下支えを行っている。
 そこで、帝国データバンクは、2021年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2021年2月調査とともに行った。
※調査期間は2021年2月12日~28日、調査対象は全国2万3,702社で、有効回答企業数は1万1,073社(回答率46.7%)。なお、雇用動向に関する調査は2005年2月以降、毎年実施し、今回で17回目
※本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
調査結果(要旨)
1.2021年度に正社員の採用予定がある企業は55.3%となり、前回調査(2020年2月)から3.9ポイント減少した。3年連続の減少となり、2012年度(54.5%)以来の水準まで低下した。規模別では、「大企業」は79.5%(同3.4ポイント減)で8年ぶりに8割を下回り、「中小企業」は50.2%(同3.4ポイント減)となり、規模を問わず慎重な姿勢を示す結果となった
2.2021年度の正社員の採用見込みを新卒新入社員と中途社員でそれぞれ尋ねたところ、「新卒新入社員」は39.1%、「中途社員」は45.0%となった。大企業では新卒、中小企業では中途採用の割合が高くなっており、特に中小企業からは社員への教育にかける時間がないため即戦力を求めるという意見が多くみられた
3.非正社員では、採用予定がある企業は36.8%で前回調査から7.4ポイントの大幅減となり、9年ぶりの3割台まで減少した。業種別では、従来人手不足が深刻だった「飲食店」が73.1%でトップ。次いで、スーパーマーケットなどを含む「各種商品小売」が69.6%で続いた
4.2021年4月より新たに努力義務となる「70歳までの就業機会確保」への対応について尋ねたところ、「70歳までの継続雇用制度の導入」が25.4%で最も高くなった(複数回答、以下同)。加えて、「もともと70歳まで働ける制度がある」は16.4%、「(現時点で)対応は考えていない」は32.4%だった。「分からない」は14.9%となり、対応を決めかねている様子もうかがえた。企業からは前向きな意見も聞かれた一方で、業種によって体力面などさまざまな課題があげられた
1.2021年度正社員採用、「採用予定あり」は55.3%、2012年度以来の水準に低下
 2021年度(2021年4月~2022年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は前回調査(2020年2月実施)から3.9ポイント減の55.3%となり、3年連続で減少した。新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)によるさまざまな影響を受けた2020年度の企業活動などを踏まえた2021年度の正社員採用見込みは、2012年度(54.5%)以来の水準に低下する格好となった。
 正社員の「採用予定がある」と回答した企業を規模別にみると、「大企業」は79.5%(同3.4ポイント減)となり、高水準ながらも8年ぶりに8割を下回った。さらに、「中小企業」は50.2%で同3.4ポイント減となり、規模を問わず慎重な姿勢を示す結果となった。
 企業からは、「新型コロナの影響による業績見通しも不透明であることから、採用も様子を見ている」(金属加工機械卸売、宮城県)や「売り上げの伸びが見えているようであれば採用するが、横ばいから減少気味な現時点においては、採用することはできない」(一般機械器具卸売、東京都)、「本当は採用したいが、先行き見通しが不透明すぎるため採用できない」(プラスチック板・棒・管・フィルム・合成皮革卸売、大阪府)といった声が多く聞かれた。
 一方で、新型コロナ下でも前向きに採用を検討している企業もある。「技術系を採用したいが今までは応募がなかった。他企業が控えている現状が中小企業にとって人材を集めるチャンスと捉えている」(油圧・空圧機器製造、東京都)や「大手企業が採用を控え、中小企業・地方企業へ学生が流れた」(ソフト受託開発、新潟県)のような意見も多い。
 また、「中小企業自体が慢性的な人材不足に陥っているなかで、景気が悪化しているといえども、採用を控えることは中長期的にはマイナスの影響があると認識している」(金属工作機械製造、岡山県)、「先行き不透明だが、今後の自社の将来を考えると、人材を確保し教育訓練しておく必要がある」(製缶板金、福島県)のような、新型コロナなどによる景況感の悪化を踏まえつつも将来を見据えて採用を行うといった声もあげられた。
2.2021年度の正社員採用、新卒新入社員は39.1%、中途社員は45.0%で採用予定あり
 2021年度(2021年4月~2022年3月入社)の正社員の採用状況について新卒新入社員と中途社員をそれぞれ尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)割合は、「新卒新入社員」で39.1%、「中途社員」で45.0%となった。
 規模別では、「大企業」では新卒、「中小企業」では中途採用の割合が高くなっている。特に中小企業からは、「新卒を教育している時間がないので、どうしても即戦力である中途採用に偏る」(各種商品卸売、神奈川県)や「現場の稼働が間に合わない状況が続いており、新卒社員については社会人としての教育を行う体制が整わないため中途のみで採用予定」(有機化学工業製品製造、大阪府)といった声が多くあげられた。
3.非正社員の採用予定企業は36.8%、9年ぶりの3割台に減少
 2021年度の非正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は36.8%となった。前回調査から7.4ポイントの大幅減となり、9年ぶりの3割台まで減少した。また、「採用予定はない」とする割合は5割近い水準まで増加している。
 「採用予定がある」企業を業種別にみると、「飲食店」が73.1%でトップとなった。新型コロナの影響を大きく受けたことで人手不足割合も大幅に減少しているが1、非正社員の採用意欲は依然として高い。飲食店からは、「新型コロナの感染状況に左右されるので、予測が難しい」(日本料理店、静岡県)という声がありつつも、「結局のところ飲食業の人手不足は解消されていない」(中華料理店、栃木県)などの意見もみられた。
 次いで、スーパーマーケットなどを含む「各種商品小売」が69.6%で続いた。旺盛な内食需要により人手不足割合が高まっていることが一因と考えられる。また、「家具類小売」(66.7%)、「飲食料品小売」(64.6%)、「人材派遣・紹介」(63.3%)、「娯楽サービス」(61.7%)など、個人向けの業種が上位に並んでいる。

1帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2021年1月)」
4.70歳までの就業機会確保への対応は、継続雇用制度の導入が25.4%でトップに
 政府は、2021年4月に高年齢者雇用安定法を改正し高年齢者の就業機会増加を図るなど、シニア層の雇用拡大策を積極的に推し進めている。こうしたなか、新たに努力義務として定められる「70歳までの就業機会確保」に対して自社でどのような対応を予定しているか尋ねたところ、再雇用制度や勤務延長制度による「70歳までの継続雇用制度の導入」が25.4%で最も高くなった(複数回答、以下同)。他の項目は1割以下にとどまった。
 また、「もともと70歳まで働ける制度がある」は16.4%となり、「(現時点で)対応は考えていない」は32.4%にのぼった。さらに「分からない」とした企業は14.9%となり、対応を決めかねている様子もうかがえた。
 企業からは、「技術の伝承という観点から継続雇用をしている」(ニット・レース染色整理、福井県)や「働けるうちは何歳でも雇用していくというモットーにより70歳以上の社員も元気に働いている」(石油卸売、兵庫県)など、前向きに高年齢者を雇用しているという声があげられた。
 一方で、「マッチングが非常に難しく断念している」(ソフト受託開発、富山県)や「ドライバーという職種柄、高年齢者の雇用は安全の根幹である認知、判断、動作の基本操作への影響が表れる可能性があるのでどうしても年齢の引き上げには慎重にならざるを得ない」(一般貨物自動車運送、群馬県)、「高齢者にとって体力的に厳しい業種なので希望が少ない」(各種食料品小売、岐阜県)など、さまざまな課題を抱える企業も多い。加えて、「業種や業態にもよりさまざまであり、一括りに70歳までの就業機会を確保するのは厳しいのでは」(和洋紙卸売、茨城県)といった声も多数みられた。
まとめ
 2021年度の雇用動向について正社員の「採用予定がある」企業の割合は3年連続で減少し、2012年度以来の低水準まで落ち込んだ。大企業、中小企業ともに大きく減少している。ただし、中小企業からは「今まではなかなか採用ができなかったが、新型コロナの状況下で募集企業が減少しているうちに採用をしたい」(舗装工事、愛知県)といった意見も多くあげられた。新卒新入社員と中途採用それぞれをみると、大企業では新卒を、中小企業では即戦力を求めて中途を採用する傾向がみられた。
 非正社員の採用予定は9年ぶりに3割台となるなど大幅減となったものの、従来人手不足が深刻だった「飲食店」や、旺盛な内食需要によって人手不足割合が高まっているスーパーマーケットを含む「各種商品小売」では、7割近くの企業が非正社員を採用予定としている。
 また、新たに努力義務として定められる「70歳までの就業機会確保」に対しては、継続雇用制度の導入による対応が最も高かった。一方で、定年制の廃止や定年の引き上げなど他の項目は1割以下にとどまっている。既に70歳まで働ける制度がある企業は2割近くとなり、現時点では対応を考えていない企業は3割にのぼった。対応を決めかねている企業も一定数みられた。
 高年齢者の雇用に関しては、技術の継承や人手不足を補う存在として必要であるとする意見がある。しかし70歳までの就業機会確保に対して、就業者の働きたい年齢を問わず65歳から70歳へと一律に引き上げることや、業種別で分類せずに制度を設けることに疑問を呈する意見も多くみられた。今後は労使それぞれにメリットが行き届くように、働きたい人がもっと働けるように門戸を広げつつ、企業側とスムーズかつ的確にマッチングできるような仕組み作りなどを、官民ともに取り組んでいく必要があろう。
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