
2024年5月に改正育児・介護休業法が成立し、2025年4月から段階的に施行されることとなりました。同法は、2021年にも出生時育児休業の新設を含む大きな改正があり、2022年4月からの各対応を記憶している方も多くいることと思います。数年ごとの改正は、育児・介護と仕事の両立支援の重要性を表しているとも言えます。
そこで本コラムでは、今回の改正の概要と背景、そして企業がどのような意識で対応すべきかを解説します。
育児・介護休業法の改正によって2025年4月から何が変わるのか
まず、今回の法改正の概要は次のとおりです。
【2025年4月1日施行】
◆育児
・所定外労働の制限(残業免除)の対象労働者の範囲拡大
・子の看護休暇の見直し(取得事由拡大、対象労働者の範囲拡大、労使協定による除外労働者の見直し)
・育児のためのテレワーク導入が努力義務化
・育児休業取得状況の公表義務が300人超の企業に拡大
◆介護
・介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の義務化
・介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供の義務化
・仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備の義務化
・介護のためのテレワーク導入が努力義務化
・介護休暇について、引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止
【2025年10月1日施行(予定)】
◆育児
・柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化
・仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化
また、雇用保険法の改正により2025年4月から育児関連の給付金も変わります。
・時短勤務の場合に支給する給付金の新設
・両親ともに育児休業取得時に育児休業給付の給付率引上げ
法改正対応に企業はどのような意識で取り組むべきか
今回の法改正の目的は、育児・介護と仕事の両立支援策を手厚くすることです。厚生労働省の資料では、「柔軟な働き方」という言葉が多用されており、特定の制度に当てはめるのではなく、「各家庭の事情に応じた働き方の選択」がポイントであると読み取れます。介護については、「介護離職」(家族の介護を理由に離職すること)が問題視されています。介護離職は40~50代の働き盛り世代に多く、企業として看過できない問題になりつつあります。離職理由として、「介護と仕事の両立支援制度を知らなかった」との声もあり、これが今回の介護部分の改正に影響しています。
さて、法改正により制度が充実しても、使われないのでは意味がありません。まずは育児・介護と仕事の両立を企業が応援する旨のメッセージを出す等、企業の方針を周知することを推奨します。
柔軟な働き方は、育児・介護をする方だけでなく、他の従業員にも魅力的な働き方であり、採用時のPRや従業員の定着にも繋がる可能性が高いです。この法改正を、企業全体の働き方を考えるきっかけにするのも良いでしょう。企業全体の働きやすさの検討は、社内の不公平感の払拭にもなり得ます。
一方で、柔軟な働き方は、労働時間管理の複雑化にも繋がります。勤怠管理システムの導入等、労働時間管理が手間にならないような仕組みも検討したいところです。
<プロフィール>
内川 真彩美
いろどり社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 / 両立支援コーディネーター
成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。
大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「生き生きと働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。
前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。
https://www.irodori-sr.com/

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