一般2025年04月10日 自治体職員、カスハラ直面 暴言、SNSで中傷 「公僕」意識、高圧的に 提供:共同通信社

 カスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化する中、自治体でも多くの職員が暴言や交流サイト(SNS)での中傷に悩まされている。「公僕」を強く意識する住民が高圧的な態度を取るケースが多いとみられ、専門家は「主張が明らかにおかしい場合、対応を打ち切ることも手段の一つだ」と指摘する。
 「君と子どもをつくりたい」。青森県のある女性職員は、匿名の男性からの電話でこう繰り返された。同県では他にも、「日本語分かるか?」などと机をたたきながら約1時間詰問されたり、「今すぐ包丁を持って来ておまえを殺してやる」と言われたりしたケースがあったという。
 共同通信は今年2~3月、都道府県を対象にカスハラに関するアンケートを実施。回答には自治体職員の被害例として、「『役立たず。税金で食っているくせに』などの暴言」(宮城県)、「一日数十~数百回の無言電話」(福井県)、「SNS上で特定職員の名前や写真をアップし誹謗(ひぼう)中傷」(滋賀県)などの記載があった。
 自治体職員は、地方公務員法で全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すると定められている。税金からの給料支払いなどを背景に過度なクレームにさらされやすい立場にあるとされ、首都圏の自治体に勤務する男性は「抗議のために汚物を持ち込むなど、信じられないような行為もあった」と明かす。
 深刻化する被害に対応するため、国はカスハラ対策を企業に義務づける労働施策総合推進法などの改正案を国会に提出。地方自治体では北海道、群馬、東京の3都道県が4月にカスハラの防止条例を施行した。愛知県や三重県も制定を予定する。
 東京都での勤務経験がある、「職場のハラスメント研究所」の金子雅臣(かねこ・まさおみ)代表理事は「職員が疲弊し離職の一因となっている」とみる。その上で「カスハラに発展させないため、職員の対応力向上も求められる。上司が解決に向けて多くの選択肢を持ち、うまく介入していく必要がある」と話した。

名札変更、電話は録音 離職防止に対策さまざま

 名札は名字だけを記載、録音機能付き電話機の導入、クレーム対応のQ&A―。職場のカスタマーハラスメント(カスハラ)被害の防止に地方自治体が力を入れている。公務員の人手不足は大きな課題で、離職を防ごうと急ピッチで取り組みが進む。
 カスハラ防止条例を4月に施行した群馬県は、名札の表記を名字のみとしている。三重県、大分県なども名札の表記を見直し、秋田県は職員録の発行を終了した。
 京都府は、カスハラが起きる可能性がある部署に通話内容の録音ができる電話機を設置。香川県、長崎県なども同様の対策を取っている。
 栃木県ではクレームに対応する際の具体的な方法を記したQ&Aを作成して職員に周知、山口県は職員の対応力向上に向けた研修を行っている。

カスタマーハラスメント

 カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語で、略して「カスハラ」と呼ばれる。顧客や取引先が立場を利用して店員や公務員に暴力を振るったり、理不尽な要求をしたりする迷惑行為を指す。交流サイト(SNS)での個人情報拡散などインターネット上の被害もある。被害を受けた人が心身の不調によって退職に追い込まれるなど社会問題化している。地方自治体では防止条例制定などの対策が進む。

(2025/04/10)

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