厚生・労働2018年12月05日 社会福祉法人のガバナンスが機能不全している実態が社会問題に 発刊によせて執筆者より 執筆者:佐藤博
社会福祉法の改正が必要になった一つの要因は、次の新聞報道も一つであります。
「社会福祉法人(社福)の役員らが運営費を私的流用したり、理事会に諮らず高額報酬を受け取ったりしたなどとして、41自治体が2009~13年度、計65法人に社会福祉法に基づく改善指導を行っていたことが2014年8月14日、読売新聞の調査で分かった。
厚生労働省は、「理事会などが機能していない可能性がある」として監査体制の見直しを検討する。
読売新聞は都道府県と政令市、中核市109自治体(13年度末)を対象に、社福への監査実態を尋ねるアンケート調査を実施。各自治体への情報公開請求も行い、監査に関する内部資料を入手した。その結果、09~13年度に、役員が運営費を私的流用したり、理事会の承認を得ずに高額報酬を受け取ったりするなどの「公私混同」が65法人で確認された。うち13年度末までに、29法人は同法に基づく改善命令を受けた。寄付金約1億7000万円が使途不明になり、理事長が一部を私的に流用していた埼玉県内の社福は、改善命令に応じず、12年7月に解散命令を受けている。
65法人のうち約7割が、「理事長が年間2000万円の報酬を理事会の承認を得ずに受け取っていた」(浜松市)など、金銭に絡む不正だった。横浜市の社福の元理事長は06~08年頃、最大で月225万円を受け取り、勤務実態のない妻や長男にも月20万~100万円の給料が支払われていた。元理事長の流用総額は約2億2500万円。同市は社福への通知文書で、「理事会が機能しておらず、不適切な支出を抑止できなかった」と指摘した。」
この当時の社会福祉法人は、親族規制を法律で設けていましたが、評議員会を必須の設置にしていなかったなど、法人経営の牽制機能が十分ではありませんでした。したがって、法人設立時、理事長が土地を寄付し、法人の財産として登記しても、その土地は社会福祉事業以外の目的に処分したりすることができないとする社会福祉法及び定款上の財産処分を理解しないまま、「元々自分の土地だったのだから、処分するのに余計な口出しは不要だ。」と理事会の決議を得ないまま不正に処分し、他に流用したりしている案件などが現実にあり、高い公益性・非営利性を担保とする社会福祉法人が、自律的に適正な運営を確保するためのガバナンスの強化が求められたわけです。
この度の法改正は、評議員会の設置が義務づけられ、その評議員も外部委員が入る「評議員選任・解任委員会」によって選任されることにより、評議員会には、役員の選任・解任や定款変更等法人の基本的事項について決議する法人の議決機関としての独立性が担保され、理事等を牽制監督する位置づけとしました。
法律は、その理念を正しく理解されてこそ、生きたものになります。そのためには、少しでも法律の理解が図られる解説や手引きが必要となります。その意味では、この度執筆しました「わかりやすい 社会福祉法の手引」が、社会福祉法人及びその所轄庁などの関係機関の参考に資するものとなれば幸いです。
(2018年12月執筆)
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