医療・薬事2025年05月07日 不眠に悩むも睡眠良好 3分の2が「誤認」 手軽な脳波測定で評価を 提供:共同通信社

日本人は睡眠時間が短いとされ、十分な睡眠の確保が課題となっている。しかし「眠れない」と悩んでいる人の3分の2は実は健やかに眠れているとの研究結果を、筑波大・国際統合睡眠医科学研究機構長の柳沢正史(やなぎさわ・まさし)教授らのチームが発表した。逆に「十分寝ている」と感じている人の半分近くが睡眠不足との結果も。柳沢さんは「自覚している睡眠時間や質は当てにならない」として、手軽な脳波測定など客観的な計測の重要性を訴えている。
脳波データ
「この晩も朝4時までずっと眠れなかった。2時、3時、4時に時計を見たから間違いない」と主張する40代女性。筑波大の調査に参加し、睡眠中の脳波を測定した翌朝にこう不眠を訴えた。
ところが、脳波データを見ると、確かに2時、3時、4時付近には一時的な覚醒状態が見られるが、それ以外は深い睡眠も取れていて、十分に眠れていると判定された。
チームによると、自宅で簡単に睡眠時の脳波を計測する機器を装着して睡眠時間や質を評価する調査に20~79歳の約420人が参加。本人が申告する睡眠状態と比較した。睡眠障害の治療を受けている人は除いた。
その結果、「寝付けない」「目が覚めてしまう」など不眠を訴える人の66%は客観的に不眠はなく、「十分に眠っている」と申告した人の45%が睡眠不足だった。
無呼吸
不眠を訴えるが実際には眠れている人は専門的には「睡眠誤認」と言われ、以前から知られていた。今回の研究はこうした睡眠誤認や、その逆の誤認がかなりの割合であることを示したものだ。
また、主観的な睡眠の質や日中の眠気の有無にかかわらず、参加者の16%で治療を考慮すべき中等症以上の睡眠時無呼吸が疑われた。「睡眠の質に満足している」と答えた人でも、軽症を入れると約40%で睡眠時無呼吸の可能性があった。
柳沢さんは「本人の自覚だけで睡眠の健康評価を行うことは難しい。睡眠障害の早期発見や適切な対応には客観測定が不可欠だ」と指摘する。「睡眠誤認」で不適切な治療を受けたり、深刻な睡眠時無呼吸の自覚がなかったりする恐れもある。
柳沢さんによると、睡眠の質は脳波で定義され、覚醒、レム睡眠、深さ別の3種類のノンレム睡眠に判定される。これらが安定してバランス良く出現していることが、良好な睡眠と評価される。また、呼吸が一時的に止まると、血中の酸素飽和度が下がり、睡眠時無呼吸を疑う材料となる。
こうした検査には本来、多数の電極やセンサーを頭や鼻、腹部につけ、専門の医療施設に一晩入院して脳波などを測定することが必要だ。
機器普及へ
柳沢さんは、睡眠と覚醒を制御する神経伝達物質「オレキシン」を発見し、世界的に著名な睡眠学者。良質で十分な睡眠を通じて健康増進に役立てようと、自宅で簡単に睡眠時脳波を測定できる機器「インソムノグラフ」を開発し、測定サービスを提供するスタートアップ企業「S’UIMIN(スイミン)」(東京都渋谷区)を2017年に立ち上げた。
機器は額と両耳の後ろの計3カ所に使い捨ての電極シールを貼り、数夜にわたって測定が可能。専門施設並みの精度で、30秒単位で脳波の種類を判定する。クリニックなどで申し込み、自宅で計測後、医師による睡眠評価報告書を受け取る仕組みだ。今回の研究はこのサービスを利用した顧客のデータを活用した。
柳沢さんは「睡眠健診など何らかの形で多くの人が手軽に睡眠脳波を計測できるようにしていきたい」と話している。(共同=戸部大)
(2025/05/07)
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