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労働基準2025年12月16日 増大する未払い賃金のリスクと企業の具体的対応策(後編) 執筆者:小嶋裕司

 近年、企業にとって未払い賃金のリスクを高める法改正が続いています。想定していない未払い賃金の請求が発生すれば、企業経営に深刻な影響を及ぼしかねません。また、未払い賃金は法的責任に問われる場合もあります。本コラムでは、こうしたリスクを整理しつつ、未払い賃金の具体的な対応策について前編・後編に分けて解説します。

目 次

1 未払い賃金が企業経営に与えるリスクの拡大(前編)
2 未払い賃金発生時の法的責任と発生原因(前編)


3 未払い賃金の3つの対応策
4 未払い賃金のリスク及び対応策まとめ

3 未払い賃金の3つの対応策
 前編では、未払い賃金をめぐるリスクと、その発生原因をご説明しました。後編では、これらの問題に対する具体的な対応策について解説します。

➀ 法律を知り想定外の未払い賃金が生じないようにする
 まず、未払い賃金の問題が生じないようにするためには法律をしっかりと理解することがスタートになります。例えば、会社の制服への着替えについてですが、会社の更衣室での着替えが義務付けられている場合には労働時間になります。会社の朝礼への参加も強制であれば労働時間になります。労働時間とされれば、賃金の支払いが必要になります。どのようなケースが労働時間になるかを理解しておくことで、想定外の未払い賃金が発生することは防げます。

➁ 労働時間を減らす
 未払い賃金の問題に対する有効な対応策は労働時間を減らすことです。労働基準法には、労働時間に関して、原則に対する例外・特例が存在しています。これらを活用し、自社に合った制度設計を行うことで、労働時間そのものを減らすことが可能です。例えば、変形労働時間制などが挙げられます。変形労働時間制とは、業務の繁閑に応じて労働時間の配分等を行うことで労働時間の短縮をはかる制度です。

 また、法律上の特例・例外を使用しなくても、労働時間を短縮・削減できるのなら、それも有効な対応策です。残業の事前申請・許可制の徹底、業務効率化(DX・AI活用)などが挙げられます。

 なお、労働時間を減らすことで未払い残業代の問題が解決に向かうことは容易にご理解いただけると思いますが、最低賃金の上昇への対応も労働時間を減らすことが有効です。賃金を上げられないなら労働時間を減らすのが根本的な解決だからです。

➂ 人件費総額で考える
 会社の人件費には限りがあります。まずは、法令に基づき支給義務のある賃金を確実に支払いましょう。そのうえで、残りの枠内で、支給義務のないボーナス等の設計を検討しましょう。なお、賞与についてですが、例えば、雇用契約書などで、「年2回、各回、基本給の2か月分」などとされていた場合、支給義務がありますので注意が必要です。

4 未払い賃金のリスク及び対応策まとめ
 未払い賃金が発生した場合の負担は、消滅時効の延長、中小企業への月60時間超の割増賃金率の適用猶予の廃止、最低賃金の大幅な引上げ等の改正により増大しています。今後も、その傾向はますます高まっていくでしょう。もし、未払い賃金の請求が発生すれば想定以上の金額に膨らみ、企業経営に重大な影響を及ぼすだけでなく、刑事罰に発展する場合もあります。

 こうした問題を防ぐには、まず法律を正しく理解し、労働時間の管理・削減に取り組むこと、さらに人件費総額でバランスを取りながら賃金制度を運用することが重要です。未払い賃金を「経営課題」と捉え、早めに対応策を講じることが、安定した企業運営につながります。

【参考】
厚生労働省:賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_60431.html

厚生労働省:「未払賃金が請求できる期間などが延長されています(リーフレット)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdf

厚生労働省:「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます(リーフレット)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

厚生労働省:令和7年度地域別最低賃金の全国一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

厚生労働省三重労働局:変形労働時間制について
https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/henkeiroudou.html

<プロフィール>
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋 裕司

業務の99%超を就業規則関連で占める、就業規則特化の専門家。とりわけ人件費(賃金・残業代)の課題に強みがあり、就業規則業務の依頼時に人件費の相談を受けないことはほぼない。東証プライム上場企業、グローバル企業の100%子会社、上場を果たした企業等の制度設計の経験を有する一方、クライアントの多くは社員数10名前後、または組織が大きく変わる30~60名規模の企業である。特に、二代目社長の会社が過半を占め、先代や古参社員との合意形成のもと、スムーズな導入を得意とする。開業当初から中小企業経営者の信頼も厚く、東京中小企業家同友会が年1回開催する「東京経営研究集会」では副実行委員長を務め、526名参加の運営を統括した経験を持つ。

https://www.festinalentesroffice.com/

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