一般2025年10月02日 組織解体へ捜査力フル活用 「包囲網」で指示役迫る 匿流捜査 提供:共同通信社

交流サイト(SNS)で緩やかにつながる「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」は秘匿性の高い通信アプリで連絡を取るため、捜査で指示役にたどり着くのは困難だった。1日に新体制を発足させた警察庁と警視庁は、全国から集めた匿流関連のあらゆる情報と捜査員をフル活用して「包囲網」を築き、組織解体に追い込む考えだ。
▽正念場
「匿流対策の成否が治安に大きな影響を与える。今が正念場だ」。警察庁の楠芳伸(くすのき・よしのぶ)長官は同日、庁内で開かれた発足式でこう強調した。
匿流が関与しているとみられる被害は悪化の一途をたどる。特殊詐欺は今年1~7月で722億1千万円(暫定値)と、通年で過去最悪だった昨年の718億8千万円(確定値)を超えた。近年は拠点を東南アジアなどの海外に移し、犯罪の広域化も進む。
匿流関連事件で昨年摘発されたのは1万人超に上るが、大半は実行役。事件ごとにメンバーが入れ替わり、一定時間がたつとメッセージが消える通信アプリでやりとりするため、中核の特定は難しい。「末端の捜査に時間を取られ、中核の摘発は進まなかった」と警察庁幹部は唇をかむ。
▽管轄
警察当局は、最新技術を駆使し、国境も越えて犯罪を敢行する犯罪組織の出現に、組織改編を迫られた。警視庁幹部は「悪いやつらが姿を変えたなら、警察も変わる必要がある」と意義を語る。
事件の捜査は原則として、被害発生地などを管轄する都道府県警が担当するが、匿流捜査は人員を警視庁に集中させたことでこの枠組みに変化が生じそうだ。
海外の特殊詐欺拠点が現地当局に摘発され、日本での被害が想定される場合などは、警視庁の「匿流ターゲット取り締まりチーム」(T3)の捜査員らを派遣することを警察庁は視野に入れる。
その際に活用されるのが、1996年の警察法改正で加わった規定だ。広域組織犯罪の場合、警察庁長官は管轄権がない都道府県警に捜査を指示できる。
改正の背景には、オウム真理教の捜査の反省があった。警視庁は豊富な捜査力を有しながら、95年2月に東京都内で目黒公証役場事務長拉致事件が起きるまで捜査に乗り出せず、翌3月に地下鉄サリン事件が発生した。
規定はこれまで、サイバー犯罪や海外で日本人が被害に遭ったテロ事件に適用されてきた。匿流事件の捜査にも生かし、警察の総力を挙げてグループ解体を目指す。
捜査幹部は「警視庁に集めた捜査リソースと、全国の情報をフルに使い、組織の根幹に打撃を与える摘発を進める」と意気込んだ。
(2025/10/02)
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