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企業法務2026年02月24日 経営者が押さえておきたい 休職をめぐる紛争を防ぐ制度設計と実務運用(後編) 執筆者:佐藤正欣

 厚生労働省の統計によれば、精神疾患を有する外来患者数は2023年度で576万人とされる(「精神保健医療福祉の現状等について」令和7年1月15日付)。このうち、25歳~74歳に絞ると、約20年間で171万人(2002年度)から356万人(2023年度)へと2.08倍に増えている。ストレスフルな現代社会だと言われる所以だ。
 そこで本稿では、病気療養と密接な関係にある私傷病休職制度(以下、単に「休職制度」という。)の概要と、とりわけ、その手続面と運用面での留意点について考えてみたい。

目 次

1 休職制度について(前編)
2 就業規則への規定は大前提(前編)

3 休職発令の起算日によるトラブル
4 おわりに

3 休職発令の起算日によるトラブル
 このように、休職制度には様々な重要ポイントがある。一方で、詳細に規定化されていても、そのとおりに運用されていないケースも散見される。そこで次に、休職発令の起算日によるトラブルに触れたい。
 それは、就業規則に規定した休職発令時期(始期)と、実際の運用が相違しているケースである。過去の判例では、会社が休職発令の要件を満たさないままに休職発令をかけたことにより、休職発令自体が無効と判断された。
 具体例で考えてみたい。一般的な就業規則への規定例としては次のようなものがある

第●条(休職事由)

1 会社は、社員が次の各号のいずれかに該当するときは、休職を命じることがある。ただし、復職の見込みがない場合を除く。

(1) 業務外の傷病(以下「私傷病」という。)による欠勤が30日(暦日とし、休日も含む。以下、同じ。)を超え、その傷病が治癒しないとき。または、私傷病による労務不能状態が一定の期間続くと認められるとき。なお、治癒とは民法第493条に定める債務の本旨に従った弁済の提供ができる状態をいい、従来の職務につき健康時と同様に通常の労務提供ができる程度に回復することを意味する。

(2) ・・・・・

 この規定に即して考えてみると、休職発令要件を満たす時期は、私傷病による欠勤状態(=労働義務がある日において労働者の個人的事由で出勤できない日)に陥ってから31日目以降である。
 下図で考えてみよう(所定休日は土・日・祝祭日と仮定)。労働者が私傷病によって仮に休んでいたとしても、労働者の希望により年次有給休暇の消化期間中(=労働義務のある日において給与保障された上で休める権利)は、ここには含まれない。ところが、よく誤解されがちな運用として、すべての年次有給休暇を消化した後、欠勤に陥った段階で、即、休職発令してしまう場合である。あるいは、労働者本人が年次有給休暇の取得を希望しているにも関わらず、私傷病という特殊性を鑑みて、年次有給休暇の消化を経ずに休職発令をかけてしまっていたケース、はたまた私傷病が判明した日を起算日として休職発令をしていたケースもあった。
 下図の時系列をみても明らかであるように、休職発令要件を満たした適正な運用の場合と、そうでない場合とを比較すると、休職満了時期が異なることがわかる。先で示したとおり、休職は「私傷病が回復し将来的な復職可能性を残す」という点と、「解雇猶予措置」である点を考慮すれば、誤った運用では、より早く休職満了時期が到来してしまうことで労働者に不利益に働く。
 このように、休職可否の前提である欠勤期間を短縮するような誤った運用は、休職全体の無効に繋がる危険性がある。さすれば、労働者から地位確認を求められ紛争化することも考えられる。

4 おわりに
 今回は「休職制度」から、形式面と手続き的な運用面に焦点を絞り解説した。比較的長期にわたる病気欠勤は、労使双方にとって重大な事案である。ゆえに、就業規則に詳細を規定しているのか否か、あったとして、それと異なる運用となっていないか否か、無用なトラブルを避けるためにも、これを機にいま一度、確認されることをお勧めしたい。

<プロフィール>
佐藤 正欣
特定社会保険労務士
SRC・総合労務センター( https://www.e-src.com/

キラリと輝く未来のオンリーワン企業を支援するため、大企業のマネをしない中小企業独自の人事労務管理を理念に事業を展開。
社会保険・労働保険・給与計算等の事務手続き面におけるアウトソース業務と並行し、手続実務に精通する強みを生かした経営・労務相談、社員研修、人事制度策定等のコンサル業務を手掛ける。
また、建設会社の安全大会等での講演を軸に、創業間近の個人建設業者の経営支援を行い、自らが代表を務める一人親方労災団体(厚生労働省認可)の個人事業主会員数は300名を超える。専門分野は、人事・労務。

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