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解説記事2003年01月27日 【税務・会計解説】 自己株式の会計と税務の基本をマスターしよう 第3回(2003年1月27日号・№4)

第3回
自己株式の会計と税務の基本をマスターしよう


 前々回では自己株式(非公開株)を取得した場合・前回では取得した自己株式を消却した場合について、会計上・税務上の取扱いを解説しました。今回は、取得した自己株式を譲渡した場合について会計上・税務上の取扱いを解説します。

III 自己株式を譲渡した場合
 自己株式の処分には、新株発行に関する規定が準用されます。商法に別段の定めがあるとき、定款で株式総会が決議する旨を定めているときを除いて、<1>処分する株式の種類及び数<2>処分する株式の価額及び払込期日等を、取締役会が決定します(商法211条1項)。
 会計上、自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上され、自己株式処分差損はその他資本剰余金から減額し、減額しきれない場合は、利益剰余金のうち当期未処分利益から減額することになっています。
 一方、法人税法上は、平成14年度税制改正において、自己株式の譲渡対価の額をその自己株式のその譲渡直前の帳簿価額に相当する金額とする措置(法人税法61条の2<5>)が講じられ、譲渡損益が発生しないことになりました。また、自己株式を譲渡した場合における譲渡対価の額からその自己株式のその譲渡直前の帳簿価額を減算した金額は資本積立金額となります(法人税法2条17号ロ)。
 会社が当期未処分利益などの利益剰余金を自己株式処分差損として減額した場合にも、法人税法では資本積立金額の減額項目と規定されていることから、法人税法上の資本積立金額・利益積立金額を明らかにするため、法人税申告書の別表五(一)において、適切な申告調整が求められます(保有自己株式の譲渡について、別表四上の申告調整はありません。)。
 自己株式処分差損益は、その他資本剰余金での会計処理と、利益剰余金である当期未処分利益からの減額処理があることから、【1】自己株式処分差益をその他資本剰余金に計上した場合と【2】自己株式処分差損を当期未処分利益から減額した場合の2つの事例について解説します。事例での譲渡対価はいずれも適正なものと仮定します。なお、保有自己株式の取得の状況については、前々回で解説した事例を基にしていますので、本誌1月13日号24~25ペ-ジをご参照下さい。
【1】自己株式処分差益をその他資本剰余金に計上した場合
(1)設例
 前期以前に170,000円で取得した自己株式を200,000円で譲渡した場合(処分差益が生じる場合)を設例とします。
(2) 会計上の取扱い
 会計上、自己株式の取得は、次のようになっていました。



 会計上の譲渡の仕訳は、次のようになります。


 会計上、自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上します(自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準21項)。また、財務諸表における資本の部の表示は、次のようになります(自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準の適用指針4項)。



(3)税務上の取扱い
 法人税法上の取扱いでは、自己株式の譲渡対価の額を実際の譲渡対価の額(200,000円)ではなく、その自己株式のその譲渡直前の帳簿価額に相当する金額(自己株式の取得時の取扱いから120,000円)とする措置(法人税法61条の2<5>)が講じられています。この結果、譲渡損益(120,000円-120,000円=0円)が発生しないことになります。
 また、自己株式を譲渡した場合における譲渡対価の額(200,000円)から当該自己株式の譲渡直前の帳簿価額(税務上の帳簿価額は、当初の設例から120,000円)を減算した金額(200,000円-120,000円=80,000円)が資本積立金額の増加額となります(法人税法2条17号ロ)。
 設例では、税務上次の仕訳をきることになります。



(4)申告調整及び法人税別表の記載例
 会計上の取扱いと税務上の取扱いの差異は、法人税の別表上で申告調整されます。貸借対照表に表示される自己株式処分差益は、その他資本剰余金の一項目ですから、税務上の資本積立金額に計上されていることになります(資本積立金額の区分に自己株式処分差益の項目を設けて計上します。)。
 自己株式の取得時に利益積立金額の控除項目となった金額(50,000円)を利益積立金額に戻すと同時に資本積立金額に振替を行うことになります。
 申告調整の税務上の仕訳は次のようになります。



 この結果、前期以前に自己株式を取得し、その自己株式の譲渡により自己株式処分差益をその他資本剰余金に計上したA株式会社の法人税別表の記載は、次のようになります(当期利益を200,000円としました。)。



【2】自己株式処分差損を当期未処分利益から減額した場合
(1)設例
 前期以前に170,000円で取得した自己株式を150,000円で譲渡した場合(処分差損が生じる場合)を設例とします(当期利益を200,000円とします。)。
(2)会計上の取扱い
 会計上の譲渡の仕訳は次のようになります。



 設例ではその他資本剰余金が計上されていないため、自己株式処分差損は、その他資本剰余金から減額することができず、当期未処分利益から減額することになります(会計基準22項)。第22項により当期未処分利益を減額する場合は、損益計算書において当期純利益等の次に自己株式処分差損等の科目をもって表示します(会計基準23項)。
 したがって、財務諸表上は、次のように表示します。



(3)税務上の取扱い
 税務上、自己株式を譲渡した場合における譲渡対価の額(150,000円)から当該自己株式の譲渡直前の帳簿価額(税務上の帳簿価額は、当初の設例から120,000円)を減算した金額(150,000円-120,000円=30,000円)が資本積立金額となります(法人税法2条17号ロ)。
 税務上、この設例では、次の仕訳をきることになります。



(4)申告調整及び法人税別表の記載例
 損益計算書に表示される自己株式処分差損は、当期未処分利益の減額項目ですから、税務上の利益積立金額が減額されています(利益積立金額に関する明細書の繰越損益金の翌期首現在には、自己株式処分差損を控除した後の当期未処分利益の残高1,880,000円が記載されています。)。したがって、申告調整では、自己株式処分差損相当額(20,000円)の資本積立金額を減額し、利益積立金額を戻すことになります。また、自己株式の取得時に利益積立金額の控除項目となった金額(50,000円)を利益積立金額に戻すと同時に資本積立金額に振替を行うことになります。



 この結果、自己株式の譲渡により自己株式処分差損を計上したA株式会社の法人税別表五(一)の記載は、次のようになります。

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