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コラム2003年02月03日 【ML耳より情報】 小が大を飲む。三井住友の合併を題材に(2003年2月3日号・№005)

ML耳より情報
距離や時間に関係なく、メンバーが情報を共有できるインターネットツール、それがML(メーリングリスト)です。税理士、公認会計士、弁護士、学者などが参加するMLより今週の話題をご紹介いたします。

件名:
小が大を飲む。三井住友の合併を題材に

  三井住友銀行が消滅会社?
 三井住友銀行は「わかしお銀行」と合併すると発表しました。奇妙なことに、合併による存続会社は、三井住友銀行ではなく、純資産において同行の100分の1足らずの「わかしお銀行」です。その目的は、有価証券と不動産について発生している含み損の処理だと解説されています。では、どのような方法で含み損を処理するのか、これを検討してみようと思います。

  合併差益と評価損の相殺
 合併によって増加する資本の額は、消滅会社の純資産額を限度として自由に定めることができます(商法413条ノ2(1))。したがって、仮に、純資産100億円の会社が消滅し、合併によって増加する存続会社の資本金が60億円なら、差額の40億円は合併差益として計上されることになります。
 新聞報道によれば、三井住友銀行は純資産3兆円のうち、資本金1兆円を存続会社に引き継ぎ、2兆円の合併差益を計上する予定だとのことです。資本金の増加額は、消滅会社の純資産の額を限度として任意に定めることが出来ますので、極端な処理では、1000億円だけを存続会社の資本金として引き継げば、残りの2兆9000億円は合併差益として計上することが出来るのです。
 そして、合併差益については、有価証券や不動産を時価で受け入れることによって生じる評価損との相殺処理が認められます。この相殺処理によって、有価証券などの含み損は、損益計算書に計上されることなく、合併差益と相殺され、闇から闇へと葬り去られてしまうことになります。これが三井住友銀行の場合は1兆円と予定されているようです。
 逆に、消滅会社を「わかしお銀行」としたのでは、同行には多額の合併差益を計上するだけの純資産がなく、処理すべき有価証券や不動産の含み損はないので、上記のような相殺処理を行うことは不可能です。合併による会計操作で合法的に処理できるのは、消滅会社の合併差益を財源として、消滅会社の含み損を相殺処理することだけだからです。

  損益計算書を通さない資本の部の増減
 今回の奇妙な合併劇は合併差益を利用した期間損益対策であると評価できます。結果的に消滅会社の抱える多額の含み損を、損益計算書に計上せずに、貸借対照表上から消してしまうことができるからです。
 従前の会計理論では、資本の部は、(1)出資や減資などの資本取引の結果と、(2)損益計算書を通じて計算される蓄積利益の金額が表示される部分でした。ところが、税効果会計に始まり、土地再評価法、あるいは金庫株の取得と転売などの処理について、損益計算書を通さず、直接に資本の部の金額を増減する会計処理が導入されることになりました。
 そして、今回は合併手続を利用しての資本の部と資産の評価損の相殺です。これからの財務諸表の理解においては、資本の部について、その内容に踏み込んでの分析が必要になります。
taxMLグループ(平野敦士)

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