税務ニュース2002年12月21日 平成15年度「税制改正」の概要(一覧表で表示) 自由民主党は12月13日、平成15年度税制改正大綱を決定した。その主な内容は以下のとおり。
(1) 個人所得課税(国税:所得税、地方税:個人住民税)
改正項目 | 改正内容 |
配偶者特別控除 | 割増分(専業主婦向け)の配偶者特別控除(控除対象配偶者に係る配偶者特別控除)だけを廃止する。平成16年分以後の所得税及び平成17年度分以後の個人住民税について適用する。調整分の配偶者特別控除(控除対象配偶者以外の配偶者に係る配偶者特別控除)は据置く。 |
特定扶養控除 | 特定扶養控除制度(25万円の扶養控除の上乗せ)は存続する。 |
(2)法人課税(国税:法人税、地方税:法人住民税・法人事業税)
改正項目 | 改正内容 |
研究開発税制 | 現行の試験研究費税制を拡充し、試験研究費総額の一定割合を税額控除する仕組みを選択制で導入する。 ・ 全法人に8%の控除率が適用されるようにした上で、試験研究費の売上高に占める割合が高い法人ほど税額控除率も高くなるよう、これに0%~2%を上乗せする(8%から10%)。 ・ 上記に加えて3年間の時限措置として、一律2%を上乗せする(時限措置により10%から12%) ・ 中小企業については、一律で12%の税額控除率を設定し、これに加えて3年間の時限措置として、一律3%を上乗せする(時限措置により15%) ・ 産学官連携の共同・委託研究については、一律で12%の税額控除率を設定し、これに加えて3年間の時限措置として、一律3%を上乗せする(時限措置により15%) ・ 試験研究費等の対象範囲を一部見直し、控除限度額は、法人税額の20%とする。 ・ 一定要件(その事業年度の試験研究費の総額が、前事業年度の試験研究費の総額を超えるとき)の下で、1年間の繰越控除を認める。 |
設備投資税制 | 1. IT投資減税 3年間の時限措置として、税額控除(10%)と特別償却(50%)の選択制の制度を創設する。 ・ 対象は、ハ-ドウェアのほか、ソフトウェアも含む。 ・ 資本金3億円以下の法人について、一定の要件の下でリ-ス費用も対象とする。 ・ 控除限度額は、法人税額の20%とする。・ 1年間の繰越控除を認める。 2. 研究開発用設備の特別償却 試験研究費の総額の一定割合を税額控除する制度(前掲)に加え、研究開発を設備投資の面から更に支援するため、期限(3年)を区切り、研究開発用の機械、設備等の取得に対する支援措置を講ずる(特別償却50%)。 |
連結付加税 | 連結付加税(2%)は、平成15年度も存続する。 |
新規事業関連 | 特定中小会社の特定株式を払込により取得した場合に、一定の要件の下で、その取得をした年分の株式等に係る譲渡所得の金額からその特定株式の取得に要した費用の金を控除する特例を創設する。 |
中小企業税制 | 1. 同族会社の留保金課税 自己資本比率が50%以下の中小企業について、期限(3年)を区切り、留保金課税を停止する。 現行の課税留保金額に対する税額の5%軽減措置を廃止する。 2. 交際費 期末資本金1億円以下の法人に対象範囲を拡大した上で、年400万円に達する金額の90%の損金算入を認める。 3. 少額減価償却資産の全額損金算入 中小企業が30万円未満の減価償却資産の取得をした場合に全額損金算入(即時償却)を認める。 |
外形標準課税の導入 | 資本金1億円超の大企業に限って、外形基準の割合を4分の1とする外形標準課税制度を創設し、平成16年4月1日から導入する。付加価値割の税率は0.48%、資本割額の税率は0.2%と当初の総務省案から引き下げられている。 |
(3) 消費税
改正項目 | 改正内容 |
事業者免税点制度 | 事業者免税点を課税売上高1,000万円に引き下げ、平成16年度から実施する。 |
簡易課税制度 | 簡易課税制度を利用できる事業者の基準を課税売上高2億円以下から同5,000万円以下に引き下げ、平成16年度から実施する。 |
(4) 相続税・贈与税
改正項目 | 改正内容 |
相続税・贈与税の最高税率の引下げ | 相続税・贈与税の最高税率を70%から50%に引き下げる。併せて、相続税・贈与税税率表の税率区分の見直しを行う。 相続税の基礎控除額は、現行どおり据置く。 相続税額の2割加算制度について、養子となった孫(いわゆる孫養子)を追加する。 平成15年1月1日以後の相続等について適用する。 |
「相続時精算課税制度」(仮称)の創設 | 「相続時精算課税制度」(仮称)を創設する。 ・ 一定の要件を満たす生前贈与の受贈者は、選択により、贈与時に贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った贈与税を控除する。 ・ 原則65才以上の親が20才以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む。)に生前贈与を行う場合に適用される。 ・ 本制度の選択を行う受贈者は、税務署長に所定の届出を贈与税の申告書に添付して行う。この選択は、受贈者である兄弟姉妹が別々に、贈与者である父、母ごとに選択できる。 ・ 贈与財産の種類、金額、贈与回数には制限を設けない。 ・ 非課税枠2,500万円を設け、非課税枠を超える部分について20%の税率を乗じて贈与税額を算定する。 ・ 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例については、相続時精算課税制度に係る贈与財産を適用対象に加える。 「住宅取得資金に係る相続時精算課税制度」(仮称)の特例を創設する。 ・ 相続時精算課税制度について、住宅取得資金を贈与する場合に限り、一般の2,500万円の非課税枠に1,000万円を上乗せし、非課税枠を3,500万円とする。 ・ 住宅取得資金に係る相続時精算課税制度に限り、65歳要件を撤廃する。 ・ この特例の適用期限は、平成17年12月末までとする。 現行「住宅取得資金贈与の特例(5分5乗方式)」の適用期間を平成17年12月末まで延長する。 |
生命保険の権利評価の廃止 | 生命保険に関する権利の法定評価の規定について、所要の経過措置を講じたうえ廃止、原則として個々の契約に係る解約返戻金の額を用いて評価することとする。 |
(5) 土地・住宅税制
改正項目 | 改正内容 |
不動産流通・取得税 | 1. 登録免許税 不動産登記に係る不動産価額の特例(土地の課税標準の2/3減額)を適用期限の到来(平成15年3月31日まで)をもって廃止する。 上記に併せ、不動産登記に係る登録免許税の税率を抜本的に改正する(本法)。さらに、平成18年3月31日までの時限措置(措置法)として、登録免許税の軽減措置を設ける。 2. 特別土地保有税 平成15年度以降、当分の間、特別土地保有税の課税を停止する。 3. 不動産取得税 商業地等、事務所・店舗等の税率を3%に引き下げる(平成18年3月31日までの時限措置)。 土地についての課税標準の特例(1/2)を3年間延長する。 4. 事業所税 新増設に係る事業所税を、平成15年3月31日をもって廃止する。 |
不動産譲渡税 | 個人が長期保有する土地の譲渡益課税の税率が26%(国20%・地方6%)で据え置き。 |
(6) 金融・証券税制
改正項目 | 改正内容 |
特定口座制度の見直し | 特定口座制度の改善・簡素化により、実額源泉分離課税を実現する。 ・ 源泉徴収方式を年間分一括納付方式へ変更する。 ・ 地方税の「源泉徴収」制度を導入する。自己保管上場株式等(タンス株)を特定口座に受け入れる |
株式の配当課税の一律化 | 株式の配当課税等の税率を一律20%とし、申告不要の源泉徴収に統一する(平成15年4月1日から)。 上場株式等の配当、株式投資信託(公募型)の収益分配金に対する課税(原則20%)について、今後5年間は、10%(国税・地方税)の優遇税率を適用する。 上場株式等の譲渡益に対する課税について、現行の複雑な優遇措置に代えて、今後5年間は、10%(国税・地方税)の優遇税率を適用する(平成15年1月1日以後5年間に上場株式を譲渡した場合)。 現行の長期保有上場株式等に対する10%の暫定税率及び100万円の特別控除は廃止する。 株式譲渡損益の合算対象に、株式投資信託(公募型)を加え、株式投資信託(公募型)の償還(解約)損と株式譲渡益との損益通算を認める。 |
(7) その他
改正項目 | 改 正 内 容 |
酒税 | ビ-ル・発泡酒、清酒・果実酒、その他の間の税負担格差の1/4を縮小する。15年5月1日から実施する |
タバコ税 | 国と地方のタバコ税の税率を引き上げる。15年7月1日から実施する。 |