解説記事2003年03月24日 【商法解説】 平成13・14年商法改正のすべてを解説 今なら間に合う!改正商法早分かり講座「会社関係書類のIT化」(2003年3月24日号・№12)
テーマ 会社関係書類のIT化
成和共同法律事務所パートナー 弁護士 辺見紀男
平成13年11月の商法改正(平成14年4月1日施行)により、会社関係書類のIT化が図られました。
平成13年1月にIT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)が施行されるなど「IT国家」を目指す施策が講じられてきましたが、膨大な書類の保存コストを削減し、会社と株主とのコミュニケーションを図る手段の簡易化・低コスト化を図るといったニーズに応じて商法が改正されたものです。
1 会社関係書類のIT化
会社は、商法上作成しなければならない書類について、電磁的記録の作成をもって、その書面の作成に代えることが出来ることになりました。
電磁的記録とは、電子的方式、磁気的方式その他他人の知覚によっては認識することの出来ない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものとされています。
また、署名が必要な書類についても、省令で定められた署名に代わる措置を講ずれば足りることとなりました。
ただ、株主、債権者等の請求権を確保するため、従前から認められている書面の閲覧謄写、謄抄本の交付請求の他に、電磁的記録となった情報の内容を省令で定める方法により表示したものの閲覧またはその内容を記載した書面の交付請求を認めることとしました。
従って、会社はコンピューターの画面に情報を表示して株主等に閲覧させたり、情報をプリントアウトして交付する装置を備える必要があります。
2 会社・株主間の請求・通知等に関する書面のIT化
会社と株主や債権者との間で行う請求や通知に関する書面についても電磁的方法によって行うことが認められました。ここでいう電磁的方法とは、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものとされていますが、具体的には、電子メール、ホームページのウェブサイトの提供、CDーROMやフロッピーディスクの受渡し等が念頭に置かれています。
ただ、利用には、パソコン等の設備が必要であることから、会社や株主等はこれによる場合、互いに他方の承諾を要するものとされています。
なお、株主が会社から受ける株主総会の招集通知について電磁的方法によることを承諾した場合は、会社は、その承諾にかかる株主総会の会日の属する営業年度の決算期に関する株主総会の終結までは、議決権の行使や株主提案権の行使等の株主から受ける請求等について正当な理由がない限り、電磁的方法によることの承諾を拒むことは出来ません。
3 株主総会手続きのIT化
株主総会の招集通知や議決権行使についてもIT化が認められました。
これに伴い、全ての会社につき取締役会決議で書面投票制度を採用することができることとし、これを採用した会社の株主が招集通知を電磁的方法により受けることを承諾した場合は、会社は参考書類を電磁的方法で提供することが出来ます。但し、この場合でも、株主は参考書類を書面で交付するよう要求することが出来ます。
また、会社は取締役会決議で電磁的方法による議決権行使の制度を定めることが出来ますが、株主が招集通知を電磁的方法で受けることを承諾した場合は、会社は参考書類とともに議決権行使書面の内容たる事項を電磁的方法により提供することが必要です。但し、これを承諾しない株主も総会の1週間前までに議決権行使書面の提供を電磁的方法で受けたい旨の申し出があった場合は、会社は直ちにこれを提供しなければなりません。
4 公告に関するIT化
現在、会社に求められる公告のうち、決算公告については、自社のホームページに貸借対照表等を、総会の承認を得た日から5年間継続的に開示し、かつ当該ホームページのアドレスを登記することによって、従来のような官報や日刊紙による公告を省略することが出来ることとされました。
平成13年7月から平成14年6月までに定時株主総会を開催した上場会社1970社中、529社(26.9%)が、電磁的方法による決算公告を採用した(商事法務調べ)。
成和共同法律事務所パートナー 弁護士 辺見紀男
平成13年11月の商法改正(平成14年4月1日施行)により、会社関係書類のIT化が図られました。
平成13年1月にIT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)が施行されるなど「IT国家」を目指す施策が講じられてきましたが、膨大な書類の保存コストを削減し、会社と株主とのコミュニケーションを図る手段の簡易化・低コスト化を図るといったニーズに応じて商法が改正されたものです。
1 会社関係書類のIT化
会社は、商法上作成しなければならない書類について、電磁的記録の作成をもって、その書面の作成に代えることが出来ることになりました。
電磁的記録とは、電子的方式、磁気的方式その他他人の知覚によっては認識することの出来ない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものとされています。
また、署名が必要な書類についても、省令で定められた署名に代わる措置を講ずれば足りることとなりました。
ただ、株主、債権者等の請求権を確保するため、従前から認められている書面の閲覧謄写、謄抄本の交付請求の他に、電磁的記録となった情報の内容を省令で定める方法により表示したものの閲覧またはその内容を記載した書面の交付請求を認めることとしました。
従って、会社はコンピューターの画面に情報を表示して株主等に閲覧させたり、情報をプリントアウトして交付する装置を備える必要があります。
書面に代えて電磁的記録によって作成できる例 ①会計帳簿、貸借対照表、利益処分案・損失処理案、②定款、③株式申込証、④端株原簿、⑤株主名簿、⑥株主の代理権を証する書面、⑦株主総会議事録・謄本、⑧取締役会議事録、⑨株主名簿・新株予約権原簿・社債原簿の複本、⑩新株予約権申込証、新株予約権原簿、⑪損益計算書・営業報告書・附属明細書、⑫監査役の監査報告書・会計監査人の監査報告書、⑬社債申込証、社債原簿、⑭社債権者集会議事録、⑮株式交換契約書、⑯株式交換・株式移転事項記載書面、⑰分割計画書等、分割事項記載書面、⑱合併契約書等 |
2 会社・株主間の請求・通知等に関する書面のIT化
会社と株主や債権者との間で行う請求や通知に関する書面についても電磁的方法によって行うことが認められました。ここでいう電磁的方法とは、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものとされていますが、具体的には、電子メール、ホームページのウェブサイトの提供、CDーROMやフロッピーディスクの受渡し等が念頭に置かれています。
ただ、利用には、パソコン等の設備が必要であることから、会社や株主等はこれによる場合、互いに他方の承諾を要するものとされています。
なお、株主が会社から受ける株主総会の招集通知について電磁的方法によることを承諾した場合は、会社は、その承諾にかかる株主総会の会日の属する営業年度の決算期に関する株主総会の終結までは、議決権の行使や株主提案権の行使等の株主から受ける請求等について正当な理由がない限り、電磁的方法によることの承諾を拒むことは出来ません。
株主が電磁的方法により請求できる事項の例 ①株式申込人による申込、②株式譲渡承認請求、 ③譲渡制限株式取得者による譲渡承認・買受人指定請求、④自己株式取得の際の売渡し請求、⑤株式転換請求、⑥営業譲渡・譲受、賃貸等の際の株主の株式買取請求、⑦簡易な営業の全部の譲受の際の株主の株式買取請求、⑧取締役の責任追及訴訟の提起に関する請求、⑨新株予約券の申込・譲渡承認請求・行使請求、⑩帳簿閲覧請求、⑪社債権者集会招集請求・議決権行使、⑫その他 |
3 株主総会手続きのIT化
株主総会の招集通知や議決権行使についてもIT化が認められました。
これに伴い、全ての会社につき取締役会決議で書面投票制度を採用することができることとし、これを採用した会社の株主が招集通知を電磁的方法により受けることを承諾した場合は、会社は参考書類を電磁的方法で提供することが出来ます。但し、この場合でも、株主は参考書類を書面で交付するよう要求することが出来ます。
また、会社は取締役会決議で電磁的方法による議決権行使の制度を定めることが出来ますが、株主が招集通知を電磁的方法で受けることを承諾した場合は、会社は参考書類とともに議決権行使書面の内容たる事項を電磁的方法により提供することが必要です。但し、これを承諾しない株主も総会の1週間前までに議決権行使書面の提供を電磁的方法で受けたい旨の申し出があった場合は、会社は直ちにこれを提供しなければなりません。
株主総会手続きに関し電磁的方法が認められる例 ①株主総会招集通知、②株主提案請求、③総会招集請求、④総会における事前質問、⑤議決権の代理行使の委任状、⑥議決権の行使・同不統一行使、⑦累積投票請求、⑧取締役から監査役への計算書類・附属明細書の提出、⑨監査役(会)から取締役への監査報告書の提出、⑩会計監査人からの監査役会・取締役への監査報告書の提出 |
4 公告に関するIT化
現在、会社に求められる公告のうち、決算公告については、自社のホームページに貸借対照表等を、総会の承認を得た日から5年間継続的に開示し、かつ当該ホームページのアドレスを登記することによって、従来のような官報や日刊紙による公告を省略することが出来ることとされました。
平成13年7月から平成14年6月までに定時株主総会を開催した上場会社1970社中、529社(26.9%)が、電磁的方法による決算公告を採用した(商事法務調べ)。
辺見紀男(へんみのりお) 成和共同法律事務所パートナー 第一東京弁護会所属 同会総合法律研究所 会社法研究部会 部会長 (主な著書) 「Q&A平成14年改正商法」(共編著)、 「執行役員制度の運用と実務」(共著)(いずれも新日本法規出版)、その他多数 |
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