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解説記事2003年12月01日 【編集部解説】 連結納税の申告書を作成してみましょう!(第2回)(2003年12月 1日号・№045)

実務解説

連結納税の申告書を作成してみましょう!(第2回)

編集部

 前回(第1回)では、減価償却超過額の取扱いを例にして、連結納税の申告書の記載例を作成してみました。あまりに簡単でビックリされたのではないでしょうか。千里の道も一歩からです。難解な個所もある連結納税の仕組みですが、少しずつ理解を深めていただければ幸いです。今回は、退職給与(付)引当金の計上がある場合の連結納税制度での取扱いがテーマです。


調整項目
 第2回は、「連結納税で単体の所得計算の規定がそのまま使えるもの」の特殊な例として、退職給与(付)引当金の計上がある場合の申告書の記載方法です。退職給与引当金制度は、連結納税制度の創設を規定した法人税法の改正で廃止されており、単体所得の金額の計算上も、連結所得の金額の計算上も、同じ内容の取崩しが規定されています(平成14年改正法附則第8条)。
① 各連結法人の平成17年3月期の退職給付引当金の状況は、次のとおりです。

P(株)
A(株)
B(株)
期首B/S残高
292,000,000円
164,000,000円
145,000,000円
退職金支払による取崩し
8,000,000円
4,250,000円
6,300,000円
繰入れ
16,000,000円
10,250,000円
11,300,000円
期末B/S残高
300,000,000円
170,000,000円
150,000,000円
期首税務加算残高
265,200,000円
149,200,000円
118,600,000円

② 各連結法人の改正事業年度(平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度又は連結事業年度)開始の時(平成14年4月1日)の貸借対照表上の退職給付引当金残高と税務上の退職給与引当金残高は、次のとおりです。

P(株)
A(株)
B(株)
B/S残高
270,000,000円
150,000,000円
135,000,000円
税務上残高
67,000,000円
37,000,000円
33,000,000円
税務加算残額
203,000,000円
113,000,000円
102,000,000円

③ 各連結法人の改正事業年度(平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度又は連結事業年度)終了時における資本の金額は、次のとおりです。

P(株)
A(株)
B(株)
資本金額
10億円
1億5千万円
1億円


退職給与引当金と連結納税制度

(1) 退職給与引当金の益金算入に関する明細
 (税務上の)退職給与引当金制度は、平成14年8月に施行された法人税法等の改正で廃止されました。制度の廃止に伴い、法人の平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度又は連結事業年度(設例の3社では、いずれも、平成14年4月1日~平成15年3月31日の事業年度)開始の時において(税務上の)退職給与引当金勘定の金額を有する場合には、その退職給与引当金勘定の金額は、それぞれ次の区分に応じて取り崩され、その取り崩した日の属する事業年度の所得の金額又は連結事業年度の連結所得の金額の計算上、益金の額に算入されます(平成14年改正法附則8条②、④)。
法人の区分
事業年度
取崩金額
①資本の金額又は出資金額が1億円超の法人等当初2(連結)事業年度
改正時の退職給与引当金勘定の金額×3/10×12/12(分子の12は、その(連結)事業年度の月数、以下同じ)
その後の2(連結)事業年度改正時の退職給与引当金勘定の金額×2/10×12/12(4(連結)事業年度目は退職給与引当金勘定の残額)
②上記以外の法人及び協同組合等10(連結)事業年度改正時の退職給与引当金勘定の金額×12/120(10(連結)事業年度目は退職給与引当金勘定の残額)

 改正法人税法の附則に退職給与引当金の取崩しは規定されており、各連結法人は、連結法人ごとに、「別表十一(三)退職給与引当金の益金算入に関する明細書」を作成することになります(申告書様式も単体納税と兼用です。)。
 連結納税の場合でも、連結法人ごとの改正事業年度終了時における資本金額により上記の区分を判定します。
 設例では、S(株)及びA(株)は、①資本の金額が1億円超の法人として、4(連結)事業年度で退職給与引当金勘定の金額を取崩し、B(株)は、②上記以外の(中小)法人として、10(連結)事業年度で退職給与引当金勘定の金額を取崩します。記載例は、平成16年4月1日~平成17年3月31日までの連結事業年度となっていますので、いずれも、退職給与引当金制度廃止後の経過措置の3(連結)事業年度目の税務調整になります。
 当期の退職給付引当金に繰入れた金額は、損金算入制度が廃止されていますので、全額損金不算入になります。

(2) 連結別表付表の記入
 連結法人ごとに取崩不足額(申告加算)又は取崩超過額(申告減算)及び繰入額否認(申告加算)を計算し、調整金額(退職給与引当金取崩不足額・退職給与引当金取崩超過額及び退職給与引当金繰入額否認)を各連結法人の個別所得の金額の明細(別表四の二付表)及び、連結個別利益積立金額等の明細(別表五の二(一)付表)に記載します。連結親法人も含めた各連結法人の付表(別表四の二付表)に記載した金額の合計額を連結所得の金額の明細(別表四の二)に記載します。

(3) 連結別表記載の要領
 各連結法人の付表(別表四の二付表)から連結所得の金額の明細(別表四の二)への集計は、前回と同様の単純な足し算ですから何の問題もありません。各連結法人の「退職給与引当金の益金算入に関する明細書」さえ、正確に記載できれば問題がないと言ってもよいでしょう。
 組織再編成等に伴う調整及び(連結)事業年度の月数等に変更がない場合(設例の事例)では、P(株)及びA(株)については、「26」欄の「(税務上)退職給与引当金の金額」が、「3」欄の「改正事業年度のときに有する退職給与引当金勘定の金額」の2/10(1-3/10-3/10-2/10)になること、B(株)については、同じく7/10(1-12/120×3)になることで、検算をすることができます。
 前ページの法人の区分で①資本の金額が1億円超の法人に該当し、退職給与引当金取崩不足額(加算・留保)の調整を要することになる連結法人P(株)と、②上記以外の法人に該当し、退職給与引当金取崩超過額(減算・留保)の調整を要することになる連結法人B(株)の「別表十一(三)退職給与引当金の益金算入に関する明細書」の記載例を下記に作成してみます。紙面の都合上、もう一つの連結法人A(株)については、別表十一(三)の記載例は略しますが、連結法人A(株)の退職給与引当金に関する税務調整金額は、次のようになります。
 退職給与引当金取崩不足額(加算・留保) 3,150,000円
 退職給与引当金繰入額否認(加算・留保) 10,250,000円

(4) ポイント
 退職給与引当金と連結納税制度との関係のポイントは、連結法人ごとに法人の区分を行い、税務調整金額を算定することといえるでしょう。


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