解説記事2004年03月01日 【編集部解説】 会社法制の現代化に関する要綱試案へのパブコメ結果をまとめてみました(4)(2004年3月1日号・№056)
解説 会社法制の現代化要綱試案に賛成?反対?
会社法制の現代化に関する要綱試案へのパブコメ結果をまとめてみました(4)
要綱試案
第4部 株式会社・有限会社関係 第5 計算関係
2 資本・準備金 (6)自己株式の処分差益の計算上の取扱い
自己株式の処分差益について、これを直接配当することができるものとしている現在の制度を改めるかどうかについては、なお検討する。
(注1)例えば、自己株式の処分差益については、「資本準備金と同様の取扱い」とすることが考えられる。
① 「資本準備金と同様の取扱い」とは、いわゆる「資本の欠損」のてん補に充てる場合には使用することができ、原則として債権者保護手続を経た上でなければ配当財源とすることができないものとすることを指す。
② 自己株式の処分差益が計上されている会社において処分差損が生じた場合における当該処分差損の資本の部からの控除方法として、計上された処分差益について、準備金とは異なり、債権者保護手続を経ずに取り崩すことを認める。
(注2)自己株式の処分対価が金銭以外の財産の場合における当該財産の価格の適正さを確保する措置を講ずるかどうかについては、なお検討する。
賛成
日本公認会計士協会
企業会計基準第1号『自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準』では、自己株式を新株発行の手続を準用して処分する場合、自己株式の処分は株主との間の資本取引と考えられるとされ(第64項)、自己株式処分差益は株主からの払込資本と同様の経済的実態を有すると考えられるとされている(第65項)。したがって、それを資本剰余金として会計処理するとされながらも、商法上、資本準備金は積立要件が限定列挙であると解されるため、その他資本剰余金に計上することが適切であるとされたものである(第66項)。したがって、自己株式処分差益を、本来的な科目である資本準備金と同様の取扱いにすることは適切な変更である。
反対
日本経済団体連合会
自己株式の処分差益を資本準備金と同様の扱いとすることに反対である。自己株式の売却によっては、会社債権者が害されることはなく、剰余金の分配規制、債権者保護手続を課する必要はないからである。
また、自己株式の処分対価が金銭以外の財産の場合における当該財産の価格の適正さを確保する措置については、現行において特段の弊害が生じていないため、新たに措置を導入する必要はない。
日本弁護士会連合会
現行法制を変更する必要はない。
債権者の利害を考えると、処分差益を配当可能としても特に問題ないと考えられる。
要綱試案
第4部 株式会社・有限会社関係 第5 計算関係
5 開示・監査関係 (3)決算公告
a案 株式会社・有限会社のすべてについて、決算公告を義務付けるものとする。
b案 現行制度に準じ、一定の範囲の会社について、義務付けるものとする。
c案 会計監査人による会計監査を受ける会社について、義務付けるものとする。
d案 会計監査人の設置が義務付けられる大会社について、義務付けるものとする。
e案 義務付けを廃止する。
(注1)b案については、株式会社と有限会社との規律の一体化を図る場合における決算公告の義務付けの有無の区別の基準(例えば、商号、取締役会の有無、譲渡制限の有無等)について、なお検討する。
(注2)c案・d案を採る場合には、虚偽公告、計算書類の虚偽記載等についての罰則の強化も併せて検討することでどうか。
(注3)e案については、任意の決算公告の法的位置付けについて、なお検討する。
(注4)有価証券報告書提出会社であって、EDINET等において当該報告書が公開されている会社について、商法上の決算公告義務を課すかどうかについては、なお検討する。
a案
日大法学部商事法研究会
この点について、当研究会では、本試案に掲げるもののうち、a案に賛成する。加えてe案は不当であるという点で当研究会の意見は一致した。
c案
日本公認会計士協会
会計監査人の会計監査を受ける会社については会計監査人の不適法意見が述べられる可能性があり、述べられた場合には決算公告に明示するとの方向からすると、会計監査人の監査を受ける会社について決算公告を義務付けるものとすべきである。c案が相当と考える。
東京商工会議所
会計監査人による会計監査を受けるほどの会社は、その監査証明により広く信用を得、取引の発展もしくは資金調達の拡大を志向することが必要である。
一方、会計監査人により会計監査を受けることが不要な会社については、決算を広く一般社会に公告することの意義に乏しい。こうした視点から、会計監査を受けることを決断した会社のみに公告を義務付けることとし、その選択の可否は会社に委ね、自らの信用力の維持向上に努めるか否かを自己責任で判断すればよい。従って、c案に賛成する。
なお、決算公告をしない会社にあって、債権者保護手続を行う必要がある組織再編を行う場合、現行法制上義務付けられている、最終の貸借対照表を公告した官報の日付、頁数等の公告・通知に代わる手段をあわせて検討されたい。
d案
経済産業省
d案にすべきである。現行法では、全ての株式会社について決算公告義務が課されている。しかしながら、実態としては中小企業を中心に9割以上の会社が決算公告を実施していないといわれている。その理由は、中小企業の取引の実情においては、取引に際し個別に財務データを開示しており、決算公告の必要性に乏しく、費用と手間をかけるだけのメリットを感じていない点が挙げられる。このような状況に鑑みれば、会社の規模が大きく、利害関係人が多数にのぼる会社以外の会社については、決算公告義務を義務づける必要はないというべきである。具体的には、会計監査人の設置が義務づけられる大会社(みなし大会社を含む)についてのみ決算公告を義務づけるものとすべきである。
日本弁護士会連合会
d案に賛成し、虚偽公告、計算書類の虚偽記載等についての罰則を強化すべきものと考える。
また、会計監査人の監査を要しない会社が決算公告を行う場合には、何らかのメリットを与えることを検討してもよいのではないかと考えるが、これらの会社が虚偽公告を行った場合について、罰則の強化も検討されるべきである。
なお、有価証券報告書提出会社であって、一定の方法で情報を公開している会社については、決算公告で開示されるよりも詳細な情報が提供されていることから、商法上の決算公告義務を課す必要はないものと考える。
決算公告の義務付けは、当該会社の債権者や取引関係に入ろうとする者を保護することを目的とするものである。債権者等の保護という観点からは、小規模会社であって、かつ、業績が悪い会社についてこそ、正確な決算公告がなされる必要があるということができるが、そのような会社は、決算公告を義務付けられてもこれを遵守しないか、又は粉飾された決算を公告するおそれもある。後者の場合においては、決算公告を義務付けることが、かえって債権者等の利益を損なう結果になってしまいかねない。
他方、商法が一定規模の会社について会計監査人の監査を要求するのは、多数の債権者や利害関係者の保護の必要性が高いという観点に基づくものであるから、このような会計監査が義務付けられる会社についてのみ、決算公告を義務付けるものとすることには、一応の合理性が認められる。また、会計専門家たる会計監査人の監査を経た決算が公告されるのであるから、その内容は信頼に足りるものであると考えられるから、これを公告する意義も十分ある。
なお、会計監査人の監査を要しない会社についても、任意に会計監査人制度を採用できるとする要綱試案の立場からは、このような会計監査人による監査の有用性に鑑み、制度採用に向けたインセンティブを与える必要があるとも考えられる。このような観点からは、会計監査人の監査を要しない会社が任意に会計監査人制度を採用する場合には、必ずしも決算公告を義務付けなくてもよいと解される。
以上述べたところから、d案に賛成する。
なお、会計監査人の監査を要する会社については、上記のとおり債権者保護の必要性が高いということができるから、虚偽公告や計算書類の不実記載を行った場合における罰則を強化することは妥当であると考える(注2)。
また、会計監査人の監査を要する会社以外の会社であっても、決算公告を行うことそれ自体の有用性は認められるのであるから、決算公告を行った際には、何らかのメリットを認めることによって決算公告のインセンティブとすることも検討されてよいのではないかと考える。ただし、その場合でも、それらの会社において会計専門家たる会計監査人の監査が行われておらず、不実の決算公告がなされた場合には、虚偽公告について罰則が課されるべきであり、その強化も図られるべきである。
有価証券報告書提出会社であって、一定の方法で情報を公開している会社については、決算報告で開示されるよりも詳細な情報が提供されていることから、商法上の決算公告義務を重ねて課す必要はないものと考える(注4)。
日本商工会議所
決算公告については、中小企業については大半が非公開会社であり、株主や債権者が少数であるにもかかわらず、多数の株主や債権者が存在する大企業、もしくは公開企業と同一の規定で貸借対照表等の公開が義務付けられており、その必要性は乏しいので、会計監査人の設置が義務付けられる大会社についてのみ義務付けるものとすることに賛成である。
e案
日本経済団体連合会
e案に賛成である。実際の取引において、重要と位置付けられておらず、多くの会社で決算公告が行われていない。計算書類の閲覧請求権で十分である。
なお、e案以外を採る場合には、有価証券報告書提出会社であって、EDINET等において当該報告書が公開されている会社には、商法上の決算公告義務を課すべきではない。解説が指摘している通り決算公告よりも詳細な情報が提供されており、かつ、決算公告よりもアクセスがしやすいからである。
日本司法書士会連合会
e案に賛成する。
(注1)については、仮にb案を採る場合には、法定の機関たる「取締役会」の設置の有無を決算公告の義務付けの有無の区別の基準とすべきである。
(注2)については、仮にc案・d案を採る場合には、虚偽広告、計算書類の虚偽記載等についての罰則の強化をすべきである。
(注3)については、法務省が作成したホームページで公開できる旨定めるべきである。
(注4)については、仮に決算公告義務を維持する場合には、有価証券報告書提出会社であって、EDINET等において当該報告書が公開されている会社については、商法上の決算公告義務を課す必要はない。
計算書類公開の問題は、平成2年商法改正以降、積み残された重要課題の一つであり、今般の会社法制の現代化において、解決が図られるべき問題である。
現行の決算公告の制度は、検索システムが整備されていない媒体を選択することができ、この場合には、検索が困難であり、極めて不備な制度である。
登記所における公開のように、誰しもが簡単に当該会社の計算書類を低コストで入手できる制度が必要である。
平成13年11月商法改正において、決算公告に替えて、計算書類のインターネット公開をすることが認められ、これにより、従来の新聞・官報による公告と比較して実施コストが大幅に減少し、とくに中小会社にとって、計算書類の公開を行う環境が整備され、中小企業庁や全国中小企業団体中央会等において、中小会社の計算書類のインターネット公開の促進が図られている。
この制度を利用する中小企業は、法令遵守の観点というよりも信用形成等の自社のメリットを考慮して自主的に実施しており、計算書類のインターネット公開は、罰則を課し義務付けの制度としなくても中小企業に十分受け入れられる制度と考えられる。
このような中小企業行政や中小企業団体等の自主的な取り組みが尊重されることなく、試案a案のように譲渡制限株式会社や有限会社等の中小会社へ決算公告を義務付けるものとする提案は、中小会社関係者の強い反対が予想され、立法化は不可能と言わざるを得ない。平成2年商法改正時の登記所における計算書類公開の立法化の失敗が再び繰り返されることになるであろう。
上述したように中小会社関係者は、計算書類の公開を一切否定しているのではなく、自主的な取り組みがなされているのであるから、このような取り組みが活かされるように法整備することが現実的な解決策であろう。
b案・c案・d案は、いずれも一部の会社を対象とするものであり、強く反対する。
会社法制の現代化においては、新たな会社類型の創設も検討されているので、すべての会社類型の計算書類が公開されることが望ましい。
任意の計算書類公開とともに中小会社の計算書類の信頼性確保の措置が必要である。
現在、自社ホームページを持たない中小会社に対し、中小企業団体のホームページへの掲載等の支援がなされているのは高く評価できるところであるが、登記されている会社については、法務省が作成する専用ホームページに会社法人等番号を付して、商号・本店の変更登記がなされて、計算書類公開ホームページにそれらの変更が反映されていなくても検索できるシステムとすべきである。
当面、商号・本店の変更登記がなされた場合は、計算書類公開ホームページにその変更の届出を行う必要があるが、早急に商業登記のコンピュータ化を図り、商号・本店の変更登記がなされた場合に届出をすることなく自動的に計算書類ホームページの変更がなされるシステムとすべきである。
法務省が作成する専用ホームページへの計算書類掲載コストは、低廉な価格とすべきである。
経営法友会
e案に賛成する。なお、他の案を採用する場合であっても、(注4)の会社については決算公告義務を免除すべきである。現行の決算公告制度は形骸化している。自社ホームページ上の決算公告は現在も認められているところ、EDINET 等による公開情報はより詳細なものであり、さらに商法上の義務を課す必要性はない。
中小企業家同友会全国協議会
株式会社と有限会社で取扱いの違いがある決算公告に関してa案~e案の5案が提示されているが、決算公示は会社の自主的判断すべきであり、e案の「義務づけを廃止する」を支持する。また、公示する場合の計算書類の範囲は、貸借対照表もしくはその要旨のみでよい。
しかし、社員や株主との信頼関係はもちろんのこと、金融機関や主要取引先との信用を得るため、ディスクロージャーの重要性は高まっており、個々の企業が積極的に正確な情報を開示する経営の基本姿勢を確立すべきことは当然と考える。
<計算書類の公告における適正性担保について>
従前、税理士法案に税務監査と助言義務があったが、今回の改正で、書面添付制度が導入された。書面添付に係る税理士の行為は、申告書作成目的に基づく適正性であり、計算書類そのものの適正性を担保するものではない。したがって、公開される計算書類の適正担保制度は、公認会計士の監査対象となる会社に限定すべきである。
東京税理士会
現在、株式会社は決算公告が義務づけられているが、その実効性は乏しい。有限会社には決算公告が義務づけられていないので、譲渡制限株式会社と有限会社の一体化がはかられる以上義務付けは廃止されるべきである。「義務付けを廃止する。」(要綱試案P.37 e案)ことに賛成する。
しかし公告することを任意選択した場合、その信頼性を確保するために、機関設計として監査役制度を選択した場合には監査役による監査、あるいは専門家による関与証明報告制度を、会社法上規定することを提案する。
要綱試案では、小会社でいわゆるベンチャー企業等については、任意による会計監査人の設置を認めることが提案されている。しかし、近時の経済実態から見ればこれらの会社に限らず、いわゆる譲渡制限株式会社の中には、円滑な資金調達を図る目的で会計専門家による関与を受け、自社の計算書類の適正さを確保したいというニーズがある。それには会社法上に、限定された会計専門家を規定し、その会計専門家としての権限・責任によって裏打ちされた計算書類の適正さを示す制度を設けることが望ましいであろう。
この意見書において提案する我が国におけるコンピレーション報告制度(「関与証明報告制度」)は、市場経済の取引の中で企業の計算書類の信頼性を向上させることが経済取引を円滑かつ活発化するという効果が期待されるので、この際是非法定化したい。
商法上の適法性を示す制度として商法特例法上の会計監査人制度があるが、この関与証明報告制度は会計監査人制度とまったく趣旨の異なる制度である。
商法特例法上の会計監査人制度は、そもそも大企業の不祥事の結果、倒産という社会問題を引き起こしたため、監査を強化する目的で機関設計されたものである。一方、ここで提案する関与証明報告制度は、対象は一定の譲渡制限会社であり、あくまで任意の制度として、利用者の利便にかなう仕組みを想定しており、法による規制の強化ではない。また提案する制度の創設は要綱試案の「最近の社会経済情勢の変化に対応する」に沿うものである。
提案する関与証明報告制度は、譲渡制限株式会社・有限会社において設置が任意化される監査役制度に代わるべきもので、監査役制度のうち会計監査の部分を補完するという法的効果が見込まれる。この改正で譲渡制限株式会社について様々な規制の解除が行われることとなるが、会社の任意選択により内部統制機関として職業専門家による適正性を確保する制度を任意に規定することで、会社の会計情報の信頼性が高まることが期待される。
中小会社における計算書類の適正性確保は、その制度をどのように構築すべきかという点が問題である。すなわち、中小会社の計算書類の利用者(金融機関、債権者、取引先及び株主)が、その計算書類について一定の信頼を置くことができる質的水準をどの程度まで確保すべきかということであり、また、その制度が中小会社にとって現実に受け入れ可能なものでなければならないということである。
関与証明報告制度は、こうした要請にかない、また実現可能な制度である。
会社法制の現代化に関する要綱試案へのパブコメ結果をまとめてみました(4)
要綱試案
第4部 株式会社・有限会社関係 第5 計算関係
2 資本・準備金 (6)自己株式の処分差益の計算上の取扱い
自己株式の処分差益について、これを直接配当することができるものとしている現在の制度を改めるかどうかについては、なお検討する。
(注1)例えば、自己株式の処分差益については、「資本準備金と同様の取扱い」とすることが考えられる。
① 「資本準備金と同様の取扱い」とは、いわゆる「資本の欠損」のてん補に充てる場合には使用することができ、原則として債権者保護手続を経た上でなければ配当財源とすることができないものとすることを指す。
② 自己株式の処分差益が計上されている会社において処分差損が生じた場合における当該処分差損の資本の部からの控除方法として、計上された処分差益について、準備金とは異なり、債権者保護手続を経ずに取り崩すことを認める。
(注2)自己株式の処分対価が金銭以外の財産の場合における当該財産の価格の適正さを確保する措置を講ずるかどうかについては、なお検討する。
賛成
日本公認会計士協会
企業会計基準第1号『自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準』では、自己株式を新株発行の手続を準用して処分する場合、自己株式の処分は株主との間の資本取引と考えられるとされ(第64項)、自己株式処分差益は株主からの払込資本と同様の経済的実態を有すると考えられるとされている(第65項)。したがって、それを資本剰余金として会計処理するとされながらも、商法上、資本準備金は積立要件が限定列挙であると解されるため、その他資本剰余金に計上することが適切であるとされたものである(第66項)。したがって、自己株式処分差益を、本来的な科目である資本準備金と同様の取扱いにすることは適切な変更である。
反対
日本経済団体連合会
自己株式の処分差益を資本準備金と同様の扱いとすることに反対である。自己株式の売却によっては、会社債権者が害されることはなく、剰余金の分配規制、債権者保護手続を課する必要はないからである。
また、自己株式の処分対価が金銭以外の財産の場合における当該財産の価格の適正さを確保する措置については、現行において特段の弊害が生じていないため、新たに措置を導入する必要はない。
日本弁護士会連合会
現行法制を変更する必要はない。
債権者の利害を考えると、処分差益を配当可能としても特に問題ないと考えられる。
要綱試案
第4部 株式会社・有限会社関係 第5 計算関係
5 開示・監査関係 (3)決算公告
a案 株式会社・有限会社のすべてについて、決算公告を義務付けるものとする。
b案 現行制度に準じ、一定の範囲の会社について、義務付けるものとする。
c案 会計監査人による会計監査を受ける会社について、義務付けるものとする。
d案 会計監査人の設置が義務付けられる大会社について、義務付けるものとする。
e案 義務付けを廃止する。
(注1)b案については、株式会社と有限会社との規律の一体化を図る場合における決算公告の義務付けの有無の区別の基準(例えば、商号、取締役会の有無、譲渡制限の有無等)について、なお検討する。
(注2)c案・d案を採る場合には、虚偽公告、計算書類の虚偽記載等についての罰則の強化も併せて検討することでどうか。
(注3)e案については、任意の決算公告の法的位置付けについて、なお検討する。
(注4)有価証券報告書提出会社であって、EDINET等において当該報告書が公開されている会社について、商法上の決算公告義務を課すかどうかについては、なお検討する。
a案
日大法学部商事法研究会
この点について、当研究会では、本試案に掲げるもののうち、a案に賛成する。加えてe案は不当であるという点で当研究会の意見は一致した。
c案
日本公認会計士協会
会計監査人の会計監査を受ける会社については会計監査人の不適法意見が述べられる可能性があり、述べられた場合には決算公告に明示するとの方向からすると、会計監査人の監査を受ける会社について決算公告を義務付けるものとすべきである。c案が相当と考える。
東京商工会議所
会計監査人による会計監査を受けるほどの会社は、その監査証明により広く信用を得、取引の発展もしくは資金調達の拡大を志向することが必要である。
一方、会計監査人により会計監査を受けることが不要な会社については、決算を広く一般社会に公告することの意義に乏しい。こうした視点から、会計監査を受けることを決断した会社のみに公告を義務付けることとし、その選択の可否は会社に委ね、自らの信用力の維持向上に努めるか否かを自己責任で判断すればよい。従って、c案に賛成する。
なお、決算公告をしない会社にあって、債権者保護手続を行う必要がある組織再編を行う場合、現行法制上義務付けられている、最終の貸借対照表を公告した官報の日付、頁数等の公告・通知に代わる手段をあわせて検討されたい。
d案
経済産業省
d案にすべきである。現行法では、全ての株式会社について決算公告義務が課されている。しかしながら、実態としては中小企業を中心に9割以上の会社が決算公告を実施していないといわれている。その理由は、中小企業の取引の実情においては、取引に際し個別に財務データを開示しており、決算公告の必要性に乏しく、費用と手間をかけるだけのメリットを感じていない点が挙げられる。このような状況に鑑みれば、会社の規模が大きく、利害関係人が多数にのぼる会社以外の会社については、決算公告義務を義務づける必要はないというべきである。具体的には、会計監査人の設置が義務づけられる大会社(みなし大会社を含む)についてのみ決算公告を義務づけるものとすべきである。
日本弁護士会連合会
d案に賛成し、虚偽公告、計算書類の虚偽記載等についての罰則を強化すべきものと考える。
また、会計監査人の監査を要しない会社が決算公告を行う場合には、何らかのメリットを与えることを検討してもよいのではないかと考えるが、これらの会社が虚偽公告を行った場合について、罰則の強化も検討されるべきである。
なお、有価証券報告書提出会社であって、一定の方法で情報を公開している会社については、決算公告で開示されるよりも詳細な情報が提供されていることから、商法上の決算公告義務を課す必要はないものと考える。
決算公告の義務付けは、当該会社の債権者や取引関係に入ろうとする者を保護することを目的とするものである。債権者等の保護という観点からは、小規模会社であって、かつ、業績が悪い会社についてこそ、正確な決算公告がなされる必要があるということができるが、そのような会社は、決算公告を義務付けられてもこれを遵守しないか、又は粉飾された決算を公告するおそれもある。後者の場合においては、決算公告を義務付けることが、かえって債権者等の利益を損なう結果になってしまいかねない。
他方、商法が一定規模の会社について会計監査人の監査を要求するのは、多数の債権者や利害関係者の保護の必要性が高いという観点に基づくものであるから、このような会計監査が義務付けられる会社についてのみ、決算公告を義務付けるものとすることには、一応の合理性が認められる。また、会計専門家たる会計監査人の監査を経た決算が公告されるのであるから、その内容は信頼に足りるものであると考えられるから、これを公告する意義も十分ある。
なお、会計監査人の監査を要しない会社についても、任意に会計監査人制度を採用できるとする要綱試案の立場からは、このような会計監査人による監査の有用性に鑑み、制度採用に向けたインセンティブを与える必要があるとも考えられる。このような観点からは、会計監査人の監査を要しない会社が任意に会計監査人制度を採用する場合には、必ずしも決算公告を義務付けなくてもよいと解される。
以上述べたところから、d案に賛成する。
なお、会計監査人の監査を要する会社については、上記のとおり債権者保護の必要性が高いということができるから、虚偽公告や計算書類の不実記載を行った場合における罰則を強化することは妥当であると考える(注2)。
また、会計監査人の監査を要する会社以外の会社であっても、決算公告を行うことそれ自体の有用性は認められるのであるから、決算公告を行った際には、何らかのメリットを認めることによって決算公告のインセンティブとすることも検討されてよいのではないかと考える。ただし、その場合でも、それらの会社において会計専門家たる会計監査人の監査が行われておらず、不実の決算公告がなされた場合には、虚偽公告について罰則が課されるべきであり、その強化も図られるべきである。
有価証券報告書提出会社であって、一定の方法で情報を公開している会社については、決算報告で開示されるよりも詳細な情報が提供されていることから、商法上の決算公告義務を重ねて課す必要はないものと考える(注4)。
日本商工会議所
決算公告については、中小企業については大半が非公開会社であり、株主や債権者が少数であるにもかかわらず、多数の株主や債権者が存在する大企業、もしくは公開企業と同一の規定で貸借対照表等の公開が義務付けられており、その必要性は乏しいので、会計監査人の設置が義務付けられる大会社についてのみ義務付けるものとすることに賛成である。
e案
日本経済団体連合会
e案に賛成である。実際の取引において、重要と位置付けられておらず、多くの会社で決算公告が行われていない。計算書類の閲覧請求権で十分である。
なお、e案以外を採る場合には、有価証券報告書提出会社であって、EDINET等において当該報告書が公開されている会社には、商法上の決算公告義務を課すべきではない。解説が指摘している通り決算公告よりも詳細な情報が提供されており、かつ、決算公告よりもアクセスがしやすいからである。
日本司法書士会連合会
e案に賛成する。
(注1)については、仮にb案を採る場合には、法定の機関たる「取締役会」の設置の有無を決算公告の義務付けの有無の区別の基準とすべきである。
(注2)については、仮にc案・d案を採る場合には、虚偽広告、計算書類の虚偽記載等についての罰則の強化をすべきである。
(注3)については、法務省が作成したホームページで公開できる旨定めるべきである。
(注4)については、仮に決算公告義務を維持する場合には、有価証券報告書提出会社であって、EDINET等において当該報告書が公開されている会社については、商法上の決算公告義務を課す必要はない。
計算書類公開の問題は、平成2年商法改正以降、積み残された重要課題の一つであり、今般の会社法制の現代化において、解決が図られるべき問題である。
現行の決算公告の制度は、検索システムが整備されていない媒体を選択することができ、この場合には、検索が困難であり、極めて不備な制度である。
登記所における公開のように、誰しもが簡単に当該会社の計算書類を低コストで入手できる制度が必要である。
平成13年11月商法改正において、決算公告に替えて、計算書類のインターネット公開をすることが認められ、これにより、従来の新聞・官報による公告と比較して実施コストが大幅に減少し、とくに中小会社にとって、計算書類の公開を行う環境が整備され、中小企業庁や全国中小企業団体中央会等において、中小会社の計算書類のインターネット公開の促進が図られている。
この制度を利用する中小企業は、法令遵守の観点というよりも信用形成等の自社のメリットを考慮して自主的に実施しており、計算書類のインターネット公開は、罰則を課し義務付けの制度としなくても中小企業に十分受け入れられる制度と考えられる。
このような中小企業行政や中小企業団体等の自主的な取り組みが尊重されることなく、試案a案のように譲渡制限株式会社や有限会社等の中小会社へ決算公告を義務付けるものとする提案は、中小会社関係者の強い反対が予想され、立法化は不可能と言わざるを得ない。平成2年商法改正時の登記所における計算書類公開の立法化の失敗が再び繰り返されることになるであろう。
上述したように中小会社関係者は、計算書類の公開を一切否定しているのではなく、自主的な取り組みがなされているのであるから、このような取り組みが活かされるように法整備することが現実的な解決策であろう。
b案・c案・d案は、いずれも一部の会社を対象とするものであり、強く反対する。
会社法制の現代化においては、新たな会社類型の創設も検討されているので、すべての会社類型の計算書類が公開されることが望ましい。
任意の計算書類公開とともに中小会社の計算書類の信頼性確保の措置が必要である。
現在、自社ホームページを持たない中小会社に対し、中小企業団体のホームページへの掲載等の支援がなされているのは高く評価できるところであるが、登記されている会社については、法務省が作成する専用ホームページに会社法人等番号を付して、商号・本店の変更登記がなされて、計算書類公開ホームページにそれらの変更が反映されていなくても検索できるシステムとすべきである。
当面、商号・本店の変更登記がなされた場合は、計算書類公開ホームページにその変更の届出を行う必要があるが、早急に商業登記のコンピュータ化を図り、商号・本店の変更登記がなされた場合に届出をすることなく自動的に計算書類ホームページの変更がなされるシステムとすべきである。
法務省が作成する専用ホームページへの計算書類掲載コストは、低廉な価格とすべきである。
経営法友会
e案に賛成する。なお、他の案を採用する場合であっても、(注4)の会社については決算公告義務を免除すべきである。現行の決算公告制度は形骸化している。自社ホームページ上の決算公告は現在も認められているところ、EDINET 等による公開情報はより詳細なものであり、さらに商法上の義務を課す必要性はない。
中小企業家同友会全国協議会
株式会社と有限会社で取扱いの違いがある決算公告に関してa案~e案の5案が提示されているが、決算公示は会社の自主的判断すべきであり、e案の「義務づけを廃止する」を支持する。また、公示する場合の計算書類の範囲は、貸借対照表もしくはその要旨のみでよい。
しかし、社員や株主との信頼関係はもちろんのこと、金融機関や主要取引先との信用を得るため、ディスクロージャーの重要性は高まっており、個々の企業が積極的に正確な情報を開示する経営の基本姿勢を確立すべきことは当然と考える。
<計算書類の公告における適正性担保について>
従前、税理士法案に税務監査と助言義務があったが、今回の改正で、書面添付制度が導入された。書面添付に係る税理士の行為は、申告書作成目的に基づく適正性であり、計算書類そのものの適正性を担保するものではない。したがって、公開される計算書類の適正担保制度は、公認会計士の監査対象となる会社に限定すべきである。
東京税理士会
現在、株式会社は決算公告が義務づけられているが、その実効性は乏しい。有限会社には決算公告が義務づけられていないので、譲渡制限株式会社と有限会社の一体化がはかられる以上義務付けは廃止されるべきである。「義務付けを廃止する。」(要綱試案P.37 e案)ことに賛成する。
しかし公告することを任意選択した場合、その信頼性を確保するために、機関設計として監査役制度を選択した場合には監査役による監査、あるいは専門家による関与証明報告制度を、会社法上規定することを提案する。
要綱試案では、小会社でいわゆるベンチャー企業等については、任意による会計監査人の設置を認めることが提案されている。しかし、近時の経済実態から見ればこれらの会社に限らず、いわゆる譲渡制限株式会社の中には、円滑な資金調達を図る目的で会計専門家による関与を受け、自社の計算書類の適正さを確保したいというニーズがある。それには会社法上に、限定された会計専門家を規定し、その会計専門家としての権限・責任によって裏打ちされた計算書類の適正さを示す制度を設けることが望ましいであろう。
この意見書において提案する我が国におけるコンピレーション報告制度(「関与証明報告制度」)は、市場経済の取引の中で企業の計算書類の信頼性を向上させることが経済取引を円滑かつ活発化するという効果が期待されるので、この際是非法定化したい。
商法上の適法性を示す制度として商法特例法上の会計監査人制度があるが、この関与証明報告制度は会計監査人制度とまったく趣旨の異なる制度である。
商法特例法上の会計監査人制度は、そもそも大企業の不祥事の結果、倒産という社会問題を引き起こしたため、監査を強化する目的で機関設計されたものである。一方、ここで提案する関与証明報告制度は、対象は一定の譲渡制限会社であり、あくまで任意の制度として、利用者の利便にかなう仕組みを想定しており、法による規制の強化ではない。また提案する制度の創設は要綱試案の「最近の社会経済情勢の変化に対応する」に沿うものである。
提案する関与証明報告制度は、譲渡制限株式会社・有限会社において設置が任意化される監査役制度に代わるべきもので、監査役制度のうち会計監査の部分を補完するという法的効果が見込まれる。この改正で譲渡制限株式会社について様々な規制の解除が行われることとなるが、会社の任意選択により内部統制機関として職業専門家による適正性を確保する制度を任意に規定することで、会社の会計情報の信頼性が高まることが期待される。
中小会社における計算書類の適正性確保は、その制度をどのように構築すべきかという点が問題である。すなわち、中小会社の計算書類の利用者(金融機関、債権者、取引先及び株主)が、その計算書類について一定の信頼を置くことができる質的水準をどの程度まで確保すべきかということであり、また、その制度が中小会社にとって現実に受け入れ可能なものでなければならないということである。
関与証明報告制度は、こうした要請にかない、また実現可能な制度である。
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