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コラム2004年07月26日 【内田久美子弁護士の税賠護身術】 粉飾決算と顧問先の債権者に対する賠償責任(2004年7月26日号・№076)

内田久美子弁護士の税賠護身術

内田久美子 鳥飼総合法律事務所。専門:税理士損害賠償請求事件、税務訴訟

税理士の責任は、対依頼者にとどまるものではありません。今回は、倒産した顧問先の債権者から、税理士が損害賠償を請求されたケースをご紹介します。

最終回のテーマ
粉飾決算と顧問先の債権者に対する賠償責任


事案の概要
 Xは、Y税理士が顧問税理士を務めているA社の金融機関に対する債務の連帯保証人です。A社は、昭和55年に設立された株式会社であり、Y税理士は設立以来、同社の顧問税理士を務めていました。ところが、A社は、2億円超の債務超過により、平成14年に事実上倒産してしまいました。このため、Xは金融機関に対し、約1億7000万円の保証債務の履行をしなければならなくなりました。
 その後Xは、Y税理士に対し、「Y税理士により作成された決算報告書は粉飾されたものであり、保証人になったのは決算報告書の記載を真実と信じたからである」と主張してきました。そして、履行を余儀なくされた保証債務の全額につき、Y税理士に損害賠償請求をしてきたという事案です。

X氏・・・A社の決算報告書には粉飾が存在していました。Y税理士も認識していたはずです。
Y税理士・・・粉飾など認識していませんでした。具体的にどの点に粉飾があったというのか指摘してください。

さらに…
X氏・・・決算報告書が粉飾だとわかっていれば、保証人になることはありませんでした。
Y税理士・・・それは言いがかりです。XはA社の社長との人間関係が理由で保証人になったはずです。

その後、XはY税理士に対し、約1億7千万円の賠償を求める訴訟を提起

争点
① 粉飾の事実とこれに対するY税理士の認識の有無
② Xが債務保証したことの因果関係



結論
 本件は、交渉の段階でXが請求を断念したことにより、事実上終了しました。しかし、倒産した顧問先の債権者から、税理士が訴えられ、敗訴判決を受けた事案も存在します(仙台高裁昭和63年2月26日判決)。
 裁判所は、判決理由の中で「税理士は、顧問先の社長がこれを利用して融資先を欺いて顧問会社の金融を得ることを知りながら、顧問会社の実情を粉飾し、このような虚偽の内容を記載した書類を作成したものであること、すなわち、税理士はこれにより顧問会社に対して融資をする者が損害を受けるかもしれないことを予見しながらあえてこのような虚偽の内容を記載した書類を作成したものであることが認められる。」と認定し、「税理士は、その作成した書類の記載を信用して融資をし(保証をし、担保を提供した場合を含む。)、損害を受けた者に対しては、その損害を賠償する義務がある。」と判断しています。

回避のポイント
 粉飾を依頼されても、中長期的にみれば決して会社のためにならないことを粘り強く説明し、理解を得ましょう。粉飾か否か疑わしい事項が存在する場合には、社長等に疑問点を問いただし、その結果、一応合理的な説明を受けた旨、およびその内容について書面化しておくと、リスク回避につながります。

 当然のことですが、脱税への加担も、絶対にしてはなりません。民事上の損害賠償責任のほか、刑事責任(懲役や罰金)、税理士法上の責任(税理士資格の剥奪等)も生じ得ますので、断固として断りましょう。
ワンポイントアドバイス
監査役には、勿論、監査役の責任が生じます。また、来年の商法改正により創設される見込みとなった会計参与制度においては、会計参与は、社外取締役と同様の責任を負うとされています。

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