カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2005年05月16日 【ニュース特集】 詳解:ポイズン・ピルの税務上の取扱い(2005年5月16日号・№114)

ニュース特集

敵対的買収防衛策を導入する企業は要チェック!
詳解:ポイズン・ピルの税務上の取扱い

 今年6月の株主総会で敵対的買収防衛策の導入を検討している企業も多いようだが、企業が防衛策を導入するに際しての留意点の一つが税務上の問題だ。4月28日開催の自民党の企業統治に関する委員会では、国税庁が新株予約権を用いた防衛策の課税上の取扱いを明らかにしている。注目を集めていたSPCを利用した信託型ライツプラン(ポイズン・ピル)については、第三者に譲渡できない契約などの条件を満たせば、導入時には課税されないとしており、今後、信託型のポイズン・ピルの導入が進みそうな状況である。今回の特集では、新株予約権を用いて導入することが可能な3つのケースについて課税関係を解説する。

1 SPCを用いたポイズン・ピルの課税関係が注目を集める

 現在、国会に提出されている会社法案では、新株予約権を用いたポイズン・ピルや全部取得条項付種類株式を用いたポイズン・ピルなど、今まで以上に、容易に導入することが可能になる。ただし、仮に会社法案が今通常国会で成立しても、早くても施行は平成18年4月1日からと見込まれているため、実際の導入は来年の株主総会からということになる。
 ただ、企業側からすると、ライブドアによるニッポン放送株をめぐる争いなど、敵対的買収に対する危機感から、今年の株主総会で防衛策を導入したいと考える企業も多いようだ。また、信託銀行では、“ポイズン・ピル信託”と呼ばれるSPCを用いたスキームを顧客の企業に提案するなどの営業が行われており、注目を集めていた。ただ、敵対的買収者が現れる前の平時において、課税関係が生じるかどうか分からず、企業側としては、導入に踏み切れないといった状況が生じていた(本誌No.113参照)。
 このような状況を受け、4月28日に開催された自民党の企業統治に関する委員会では、国税庁が新株予約権を用いた敵対的買収防衛策に関する課税上の取扱いについて説明が行われている。今回、国税庁では、具体的に①事前警告型ライツプラン、②信託型ライツプラン(直接型)、③信託型ライツプラン(SPC型)の3類型に分けて説明した(右図参照)。①は松下電器産業が導入を明らかにしたもので(12頁参照)、③は、前述したポイズン・ピル信託と呼ばれるSPCを用いたスキームである。
 以下、順番は前後するが、まずは、いくつかの企業が導入を考えていた③のSPCを用いた信託型ライツプランの課税関係からみてみることにする。

MEMO
  ライツプラン
 新株予約権を利用した買収防衛策。例えば、2割の株式を買い占めた者だけが行使できないという差別的行使条件を付した新株予約権を全株主に無償で割り当て、買収者の持株割合を低下させるというもの。

日本版ライツプランの設計


2 SPC型は第三者への譲渡不可などの契約が必要

 SPCを利用した信託型のライツプランは、平時に新株予約権をSPCに発行して、SPCから信託銀行の信託勘定に預けておき、敵対的買収者が現れた時点で信託銀行から株主に対して新株予約権を交付する方法だ(下図参照)。
 この場合、SPCに新株予約権を発行した時点では、新株予約権の時価相当額(ブラックショールズモデル等により算定した金額)の受贈益が生じるが、契約条件により課税されない場合があるとしている。具体的には、発行会社とSPCとの契約において、SPCが新株予約権を他の第三者に譲渡することが実質できない契約であることなどを条件としている。この場合、時価が限りなくゼロに近くなり、課税されないことになる。
 敵対的買収者が現れた場合には、SPCが保有する新株予約権を譲渡することになるが、時価相当額とゼロに近い簿価との差額(譲渡益)が生じる。その一方、無償で付与するため、損失が生じる。SPCが独自の判断で無償譲渡するような場合であれば、寄附金として損金不算入となるが、SPCに処分の判断の余地がないといったことがあらかじめ契約上設定されていれば、合理的な必要経費として損金算入が認められる。したがって、譲渡益に見合う費用が発生し、課税関係が生じないことになる。
 また、新株予約権を譲渡された法人株主(個人株主)については、SPCから新株予約権が譲渡された時点の時価相当額の受贈益(経済的利益)が生じることになる。

信託型ライツプラン(SPC型)に係る税務上の取扱い(第三類型)

原則的な課税関係  ※国税庁作成

(注)1.新株予約権の時価算定に当たり、発行会社とSPCとの契約において、SPCが新株予約権を他の第三者に譲渡することが実質できない契約である等の価格マイナス要因等により、結果として、①の時点での時価が限りなくゼロに近くなる場合があり得る。
  2.新株予約権を所有している場合に、消却等があったときには、SPC又は譲渡を受けた法人において帳簿価額相当額の雑損が生ずる。その消却等が受贈益の生じた事業年度と同一事業年度である場合には、結果として、課税関係は生じない。
  3.⑤の時点の時価と①の時点の時価との差額が譲渡損益と認識されるとともに、⑤の時点の時価が費用・損失と認識されることから、結果として、①の時点の受贈益に見合う費用・損失が生ずる。


3 事前警告型では法人株主なら付与時に課税

 ①の事前警告型は、平時にはライツプラン導入の事前警告のみを行い、敵対的買収者が現れた時点で新株予約権をすべての株主に交付する方法(下図参照)。
 この場合の税務上の取扱いは、まず、導入時においては、何ら課税関係は生じないことになり、実際に新株予約権の付与又は行使時に課税関係が生じることになる。法人株主については、新株予約権の付与時に時価相当額の受贈益が生ずる(※消却等が受贈益の生じた事業年度と同一事業年度であれば結果として課税関係は生じない)。また、個人株主については、行使時に株式の時価と権利行使価額(新株予約権を行使した際の払込金額)との差額に課税が行われることになる。

事前警告型ライツプランに係る税務上の取扱い(第一類型)

原則的な課税関係  ※国税庁作成

(注)新株予約権を所有している場合に、消却等があったときには、付与を受けた法人において帳簿価額相当額の雑損が生ずる。その消却等が受贈益の生じた事業年度と同一事業年度である場合には、結果として、課税関係は生じない。

4 直接型は事前警告型と同じ

 ②の直接型の信託型ライツプランは、平時に新株予約権を信託銀行の信託勘定に預けておき、敵対的買収者が現れた時点で信託銀行から株主に対して新株予約権を交付する方法(下図参照)。簡単にいえば、SPCを利用せず、直接、信託銀行に新株予約権を発行するスキームである。
 この場合、信託銀行との信託契約の際には、受益者が確定しないため、委託者である信託銀行に権利は生じない。このため、この時点での課税関係は生じない。その後の課税関係については、①の類型と同様になる。したがって、法人株主については、新株予約権の付与時に時価相当額の受贈益が生ずる(※消却等が受贈益の生じた事業年度と同一事業年度であれば結果として課税関係は生じない)。また、個人株主については、行使時に株式の時価と権利行使価額との差額に課税されることになる。
直接型が認められれば今後の主流に
 ただ、この直接型の場合、法律上、信託銀行に直接、新株予約権を発行できるかどうかは不明確な点がある。このため、今後、金融庁が法的に認められるかどうかを自民党の企業統治委員会において、説明する予定となっている。
 仮に直接型が認められることになれば、③のSPCを利用するスキームをあえて採用する必要はなくなりそうだ。

信託型ライツプラン(直接型)に係る税務上の取扱い(第二類型)

原則的な課税関係  ※国税庁作成

(注)新株予約権を所有している場合に、消却等があったときには、付与を受けた法人において帳簿価額相当額の雑損が生ずる。その消却等が受贈益の生じた事業年度と同一事業年度である場合には、結果として、課税関係は生じない。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索