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コラム2005年09月05日 【SCOPE】 棚卸資産の評価基準に関する論点整理を読み解く(2005年9月5日号・№129)

平成19年4月から低価法に一本化
棚卸資産の評価基準に関する論点整理を読み解く


 企業会計基準委員会(ASB)は現在、棚卸資産専門委員会を設置し、棚卸資産の会計処理の見直しに着手している。棚卸資産については、原価法と低価法との選択適用が認められているが、低価法に一本化したい考えだ。ただ、低価法に一本化する際には、税務上の問題など、課題が山積みとなっている。
 同委員会では、10月にも「棚卸資産の評価基準に関する論点の整理」を公表。平成18年前半に企業会計基準案及び適用指針案を公表、平成18年中頃までに決定する。平成19年4月以後開始する事業年度から適用(早期適用あり)する方針だ。今回は、このほど明らかになった論点整理の概要についてお伝えする。

低価法適用は約2割にとどまる
 日本の場合、棚卸資産については、原価法と低価法との選択適用となっているが、企業会計基準委員会によると、東証1部上場会社のうち、低価法を適用している企業は2割から3割程度にとどまっている。
 しかし、米国会計基準や国際会計基準については、低価法が強制適用されている。また、国際会計基準審議会(IASB)と検討している国際会計基準とのコンバージェンスでも棚卸資産の評価方法については、検討項目の一つになっている。このため、低価法への一本化が課題となっているわけだ。加えて、固定資産の減損会計が導入されている現在、棚卸資産についても、資産の収益性の低下により、投資額の回収が見込めなくなった場合には、簿価を切り下げる考え方を導入することが妥当との判断もあるからだ。

正味実現価額又は再調達原価?
 論点整理では、いくつかの論点が示されているが、まずは、低価法を適用する際の時価をどうするかという問題がある。具体的には、正味実現可能価額と再調達原価がある。
 正味実現可能価額とは、購買市場と売却市場とが区別される場合において、売却市場(当該資産を売却処分する場合に参加する市場)で成立している価格から見積販売経費(アフター・コストを含む)を控除したもの。一方、再調達原価とは、購買市場と売却市場とが区別される場合において、購買市場(当該資産を購入し直す場合に参加する市場)で成立している価格。論点整理では、「将来の損失は、取得原価から将来の予想される販売金額を控除した差額であることから、正味実現可能価額が適用すべき最も適当な時価と考えられる。」としている。
 ただ、低価法を適用し、正味実現可能価額を適用した場合でも、①製造業における原材料等における購入品の時価としては、再調達原価の方が把握しやすいこと(連続意見書第四、IAS第2号)、②再調達原価を低価法適用時の時価とする法人税法の取扱いを考慮することなど、実務上の配慮から、再調達原価が採用される場合があるとしている。

切放し法又は洗替え法?
 低価法を適用した場合、前期末において計上した低価法評価損を戻し入れるかどうかについては、切放し法と洗替え法がある。切放し法は、前期末に低価法を適用し評価損を計上した場合、当該棚卸資産の期首棚卸高について、前期末における簿価切下げ後の帳簿価額を採る方法。
 一方、洗替え法は、当該棚卸資産の期首棚卸高について簿価切下げ前の原初取得価額を採る方法。現行の会計基準では、両方認められているが、どちらの評価方法を採用するかという論点がある。
 論点整理では、一度、簿価を切り下げ、評価損を計上した分が再び資産性を持つのは不合理であるなどの理由から、時価が回復してもそれを考慮しない方法(切放し法)が妥当としているものの、①切放し法は個々の棚卸資産の単価を修正する必要があるため手続が煩雑である、②取得原価ベースの計算を基本とする法人税法でも洗替え法が原則であり、一定の要件を満たしたときにおいてのみ切放し法が認められているといった点から一筋縄では決めることが難しそうだ。

税務上の問題がネック
 特に問題は後入先出法を採用している場合である。後入先出法に基づく低価法の場合には、洗替え法は認められるものの、切放し法は認められていない(法令28②)。法人税法が切放し法を認めていない理由は、①低価法実施による未実現損失がいつまでも実現損失にならない可能性がある、②価格上昇期に棚卸資産による益金が発生せず、価格下落期には損金の計上を認めることとなり、他の評価方法を採用する納税者に比べ有利になるからである。
 したがって、低価法を適用した場合の評価損の戻入れ処理において、仮に切放し法だけを認めた場合には、評価方法の見直しや申告調整への対応を迫られる企業が出てくることになり、企業側からの反発も予想される。なお、後入先出法に基づく低価法を採用している企業は、東証1部上場企業のうち、約40社程度である。

申告調整などが必要に

損益計算書における表示方法は?
 その他、損益計算書における低価法の評価損の計上区分についても論点とされている。企業会計原則注解(注10)では、①低価法評価損については、売上原価の内訳科目又は営業費用、②強制評価減については、営業費用又は特別損失、③品質低下、陳腐化等による評価損については、原価性を有する場合であれば、製造原価、売上原価の内訳科目又は販売費、原価性を有しない場合であれば、営業外費用又は特別損失に計上することとされている。このため、低価法のみを評価基準とした場合には、これらの表示方法を見直すことになる。
 また、低価法の適用単位について、グルーピングが可能かどうかも論点となる。具体的には、地域別セグメント、事業の種類別セグメント、材料・仕掛品・製品という棚卸資産の種類ごとに低価法を適用することは可能かなどが挙げられる。

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