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解説記事2005年11月21日 【会計解説】 「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」等について(2005年11月21日号・№139)

実 務 解 説
「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」等について

 企業会計基準委員会 研究員   石川和正


Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)では、平成17年10月19日に以下の公開草案を公表し、平成17年11月21日までコメントを募集している(脚注1)。
・実務対応報告公開草案第16号「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」(以下「公開草案第16号」とする)
・実務対応報告公開草案第17号(実務対応報告第1号の改正案)「商法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」(以下「公開草案第17号」とする)

 ここでは、これらの概要を紹介するが、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。また、公開草案第16号及び公開草案第17号は最終的なものではなく、今後、変更される可能性があるが、本稿では、最終的なものと同様の表現をしている場合があることに留意する必要がある。

Ⅱ 公表の経緯

 ASBJでは、新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理について、実務対応報告第1号「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第1号」とする)(平成14年3月29日公表)及び実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第11号」とする)(平成15年9月22日公表)を公表しているが、会社法(平成17年法律第86号)が平成17年7月26日に公布され、新株予約権及び新株予約権付社債に関する手続の整備がなされたこと等に伴い、同法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱いを明らかにするための審議を行っている。また、同時に、他の会計基準等の公表に伴い、実務対応報告第1号について所要の改正を行うための審議を行っており、今般、公開草案第16号及び公開草案第17号を公表し、広く各界からの意見を求めることとしたものである。

Ⅲ 公開草案第16号「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」

 公開草案第16号では、会社法施行日後に発行の決議のあった新株予約権(ただし、企業会計基準公開草案第11号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」(平成17年10月19日公表)(以下「企業会計基準公開草案第11号」とする)の範囲に含まれているものを除く。)及び新株予約権付社債の会計処理並びに外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する会計処理を定めている。また、会社法において新たに明示された自己新株予約権に関する会計処理についても定めている。
 以下では、公開草案第16号において、実務対応報告第1号及び実務対応報告第11号と異なる定めをした主な項目について説明する。

1 自己新株予約権に関する会計処理
(1)取得時の会計処理
  自己新株予約権の取得は、株主との資本取引ではなく、新株予約権者との損益取引である(脚注2)ことから、その取得価額はその後の損益に影響を与えることとなる。したがって、取得の対価の種類に関わらず、自己新株予約権を取得したときの取得価額は、取得した自己新株予約権の時価(取得した自己新株予約権の時価よりも支払対価の時価の方が、より高い信頼性をもって測定可能な場合には、支払対価の時価)に取得時における付随費用を加算して算定することとしている。
  なお、自己新株予約権の取得時には、その後、当該自己新株予約権を消却するか、処分するかが必ずしも明らかではないため、取得時には損益を計上しないこととしている。
(2)保有時の会計処理
  自己新株予約権は資産性を有するが、自らが発行した新株予約権を取得し、当該自己新株予約権を資産の部に計上した場合、自己新株予約権とこれに対応する新株予約権の金額が資産の部と純資産の部に両建てされることとなる。しかしながら、当該取引は自らが発行した新株予約権の買戻しであり、資産の部と純資産の部の両建て表示ではなく、相殺表示する方が実態に即していると考えられる(脚注3)ことから、自己新株予約権は、その帳簿価額を、純資産の部の「新株予約権」から控除し、自己新株予約権の種類、数及び金額について注記を行うこととしている。
  なお、自己新株予約権を対応する新株予約権の帳簿価額を超える価額で取得し、その後、当該自己新株予約権の時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価により帳簿価額を付け替え、当該差額を当期の損失として処理することが適当としている。これは剰余金の配当規制との関係にも配慮したものである。
  また、自己新株予約権の帳簿価額が、対応する新株予約権の帳簿価額を超える場合において、当該自己新株予約権が処分されないものと認められるときは、当該超過額を当期の損失として処理することが適当としている。
(3)消却・処分時の会計処理(脚注4)
  自己新株予約権を消却した場合には、消却した自己新株予約権の帳簿価額とこれに対応する新株予約権の帳簿価額との差額を当期の損益として処理することとしている。また、自己新株予約権を処分した場合には、受取対価と処分した自己新株予約権の帳簿価額との差額を当期の損益として処理することとしている。

2 会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債に関する会計処理
(1)会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債
  公開草案第16号では、会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債は、募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権行使時における出資の目的とすること(会社法第236条第1項第2号及び第3号)を、あらかじめ明確にしている新株予約権付社債としている。なお、実務上は、実務対応報告第1号における、代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債について社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことが社債要項等で明確にされている新株予約権付社債がこれに該当すると思われる。
(2)転換社債型新株予約権付社債に関わる新株予約権が行使されたときの発行者側の会計処理(一括法)
  新株予約権が行使され、新株を発行する場合において、発行時に一括法を採用しているときは、当該転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替えることとしている。この結果、新株予約権が行使されたときに、損益は生じないこととなる(脚注5)。(〔設例1〕参照)
  商法では、従前の転換社債型新株予約権付社債について、社債の発行価額(商法第341条ノ3第1項第1号)と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額(商法第341条ノ13第1項)が同額でなければならず(商法第341条ノ3第2項)、また、通常の新株予約権の行使と同様に、新株予約権の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の合計が新株の発行価額とみなされる(商法第341条ノ15第5項、商法第280条ノ20第4項)とされているため、実務対応報告第1号では、転換社債型新株予約権付社債に関わる新株予約権が行使されたときに資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える額は、転換社債型新株予約権付社債の発行価額としていた。会社法ではこれらに対応する定めがなくなったため、公開草案第16号では、前述の取扱いとしている。

〔設例1〕転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件

(1)転換社債型新株予約権付社債の発行
  額面総額:500,000千円
  払込金額:450,000千円(割引発行)
  期間:X1年4月1日からX11年3月31日(10年間)
(2)社債発行差金は償還期間で定額法により償却する。
(3)決算日は3月31日である。
(4)X3年4月1日に、上記転換社債型新株予約権付社債のすべてについて新株予約権の行使の請求があり、新株を発行した。
(5)新株予約権の行使に際して出資をなすべき1株当たりの金額(転換価格)は50千円とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(6)社債利息については考慮しないものとする。

2. 会計処理
 (単位:千円)

(注1)権利行使により資本金に振り替える額は、新株予約権が行使された転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)
(注2)50,000千円×8年/10年=40,000千円

3 会社法に基づき発行された外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
・発行時の会計処理
  発行時の円貨への換算は、発行時の為替相場による。
・決算時の会計処理
  決算時の円貨への換算は、決算時の為替相場による。また、決算時の換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。
・新株予約権行使時の会計処理
  新株予約権行使時に資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える額の円貨への換算は、当該権利行使時の為替相場による。また、権利行使時の換算によって生じた換算差額は、当該権利行使時の属する会計期間の為替差損益として処理する。
 実務対応報告第11号では、以前の外貨建転換社債の発行及び換算について、以下の2つの考え方が示されている。
(1)転換社債の発行を潜在的株式の発行と解する考え方
  この考え方による場合、新株の発行価額を発行時の為替相場により円換算することになる。
(2)転換社債の転換による新株の発行を現物出資や相殺と解する考え方
  この考え方による場合、転換社債の発行と転換による新株の発行をいったん切断して考え、新株の発行価額を転換時の為替相場により円換算することになる。
 従前の転換社債型新株予約権付社債は、以前の転換社債と経済的実質が同一と考えられるため、従前の外貨建転換社債型新株予約権付社債の決算時の円換算の処理については、以前の外貨建転換社債と同様、上記(1)の考え方に基づき、発行時の為替相場により行うこととされていた。
 しかしながら、会社法においては、上記(2)の現物出資の考え方によることが明らかにされた(会社法第284条第1項)ため、会社法による外貨建転換社債型新株予約権付社債の決算時の円貨への換算は決算時の為替相場によることとし、新株予約権行使時の円貨への換算はその権利行使時の為替相場によることとしている。(〔設例2〕参照)

〔設例2〕外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件

(1)新株予約権付社債の発行に伴い払い込まれた金銭の総額は1,000千ドル(平価発行、期間10年)とする。
(2)新株予約権の行使に際して出資をなすべき1株当たりの金額(転換価格)は500円とする。なお、新株予約権の行使により交付される株式数は、社債の額面金額を換算(固定)レート110円/ドルで円に換算した金額を、転換価格で除した数とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(3)為替相場
   発行日        112円/ドル
   最初の決算日     120円/ドル
   新株予約権行使時   115円/ドル
(4)社債利息については考慮しないものとする。

2.会計処理
  (単位:千円)


(注2)権利行使に係る社債の帳簿価額
    120,000千円×100千ドル/1,000千ドル=12,000千円
(注3)権利行使により資本金に振り替える額
    100千ドル×115円/ドル(権利行使時の為替相場)=11,500千円

4 適用対象
 公開草案第16号は、会社法施行日後に発行の決議のあった会社法による新株予約権及び新株予約権付社債について適用することとしている。また、自己新株予約権については、会社法施行日前に発行の決議があった商法による新株予約権を取得した場合についても適用することとしている。

Ⅳ 公開草案第17号(実務対応報告第1号の改正案)「商法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」

 以下では、公開草案第17号において、実務対応報告第1号を改正した主な項目について説明する。
 新株予約権の発行者側の会計処理について、実務対応報告第1号では「新株予約権の発行価額は負債の部に計上し、権利が行使されたときは資本金又は資本金及び資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは利益として処理する。」と定められていたが、企業会計基準公開草案第6号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」(平成17年8月10日公表)(以下「企業会計基準公開草案第6号」という。)において、新株予約権は純資産の部に表示することとされたため、公開草案第17号では「ただし、企業会計基準公開草案第6号の適用後は、新株予約権の発行価額は純資産の部に計上することになるので、負債の部に計上している新株予約権の帳簿価額は純資産の部に振り替える。」という文言が追加されている。
 また、企業会計基準公開草案第11号「ストック・オプション等に関する会計基準(案)」では、従業員等に対するインセンティブとして新株予約権を付与した場合の当該新株予約権の会計処理が定められているため、公開草案第17号では実務対応報告第1号で定められている当該事項に関わるQとAが削除されている。
 なお、公開草案第17号では、会社法施行日前に発行の決議があった、商法による新株予約権及び新株予約権付社債を適用対象としている。
 
脚注
1 公開草案第16号及び公開草案第17号については、ASBJのホームページ(http://www.asb.or.jp/j_ed/cb/cb.html)を参照のこと。
2 自己新株予約権の取得は潜在株主との取引であり、株主との間の資本取引とみる自己株式の会計処理とは異なる(企業会計基準公開草案第7号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準(案)」参照)。
3 ASBJでの審議においては、自己社債取得時の一般的な会計処理に準じ、資産の部への表示を推す意見もあった。
4 会社法第280条第6項において、自己新株予約権は行使することができないとされている。
5 なお、発行時に区分法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債における社債の対価部分(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)と新株予約権の対価部分の合計額を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替えることとなり、一括法を採用している場合と同様に、新株予約権が行使されたときに損益は生じない。






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