解説記事2006年03月06日 【ニュース特集】 新会社法の計算規定はいつから適用されるのか?(2006年3月6日号・№153)
5月決算法人から「株主資本等変動計算書」を作成することに
新会社法の計算規定はいつから適用されるのか?
会社法は、施行日を平成18年5月1日に予定している。整備法が、「現行の有限会社及び株式会社の施行日前に到来した最終の決算期に係る商法等に規定する計算書類の作成等については、なお従前の例による。」と規定している(整備法27条2項、99条)ことから、会社法施行日前に決算期を迎える平成18年3月期決算などでは、株主総会が会社法施行日以後に開催される場合においても、現行商法等に規定する従前の計算書類を作成することになる。一方、施行日(5月1日)以後に終了する事業年度からは、会社法に規定する計算書類(「株主資本等変動計算書」及び「個別注記表」など)を作成しなければならない。会社法の施行に伴い計算書類が変更されるだけでなく、多くの会計基準が、会社法施行日以後の取引・会社法施行日以後終了する中間会計期間及び事業年度から、新たな会計基準・既存の会計基準の見直しを適用するものとしている。本稿では、計算関係規定の適用を改めて整理してみた。
1 新会社法の適用では、「株主資本等変動計算書」を作成

現行商法・有限会社法と会社法に規定する計算書類は上記のとおりである。会社法では、利益処分案等がなくなり、「株主資本等変動計算書」・「個別注記表」を作成することを規定している。会社法施行日以後に終了する事業年度から、会社法に規定する計算書類(「株主資本等変動計算書」及び「個別注記表」など)を作成しなければならない。
会社計算規則は、「個別注記表」について、継続企業の前提に関する注記など12項目について表示することを規定しているが、会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く)の個別注記表では、①重要な会計方針に係る事項に関する注記、②株主資本等変動計算書に関する注記、③その他の注記、の3項目についてのみ区分表示すればよい。 現行法人税法施行規則では、「確定申告書の添付書類」として、以下の書類を規定している(法規35条)。会社法上、利益処分案(損失処理案)は存在しないことになるため、「株主資本等変動計算書」が確定申告書添付書類として規定されることが予想される。

2 5月1日施行なら、5月決算法人から会社法の計算規定を適用
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」)は、「現行の有限会社及び株式会社の施行日前に到来した最終の決算期に係る商法等に規定する計算書類の作成等については、なお従前の例による。」と規定している(整備法27条2項、99条)。
したがって、会社法施行日(5月1日予定)以後に終了する事業年度から、会社法に規定する計算書類(「株主資本等変動計算書」及び「個別注記表」など)を作成しなければならない。

3 株主資本等変動計算書はどうやって作成する?
株主資本等変動計算書は、会社計算規則に表示項目・区分などが規定されているほか、企業会計基準委員会が「株主資本等変動計算書に関する会計基準」を公表している。会社法施行日以後終了する事業年度・会社法施行日以後終了する中間会計期間から作成する(本誌No.150、16頁参照)。

4 会社法の施行に伴い、会計が大きく変わる
会社法の施行に伴い、会社が作成すべき計算書類が変更されるだけでなく、会計の内容についてもいくつかの変更を要することになる。
会社法では、剰余金分配手続・資本の部の計数の変動手続が緩和されることになり、利益処分案が廃止され、役員賞与は費用として処理される。
また、会社法における自己株式、種類株式、新株予約権制度の整備に伴い、自己株式、ストック・オプション、新株予約権などの会計処理について、会計基準等が公表されるとともに、貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準・1株当たり当期純利益に関する会計基準などが公表されるなど、会計処理が見直されることになった。

株主総会の規律
整備法90条では、施行日前に株主総会の招集の手続が開始された場合におけるその株主総会の権限及び手続については、従前の例によることが規定されている。逆に、3月決算会社の例で、総会招集の取締役会決議を会社法の施行日(平成18年5月1日)以後に行う会社では、新会社法が適用される。この場合でも、計算書類の作成等については、整備法99条によって、現行商法の例によることになる。
配当の決議
施行日前に到来した最終の決算期(以下「直前決算期」)に係る現行商法の計算書類の規定は、従前の例によることとされているため、平成18年3月期決算に係る定時株主総会では、利益処分案としての利益の配当を行うことが可能である。この場合には、現行商法により、配当可能額等が規定される。
一方、施行日以後に終了する事業年度においては、会社法上利益処分案は存在しないため、利益処分案ではなく、会社法454条の規定に基づいて剰余金の配当を行うことになる。
役員賞与
「役員賞与の会計処理に関する当面の取扱い」では、「役員賞与は、発生した会計期間の費用として会計処理することが適当である。」とされていたが、利益処分案の株主総会決議により支給する実務慣行も容認していた。会社法では、利益処分案は存在しないため、企業会計基準委員会では、役員賞与は発生した会計期間の費用として処理し、会社法施行日以後終了する事業年度の中間会計期間から適用することを明らかにしている(本誌No.142、34頁参照)。

貸借対照表の純資産の部の表示
企業会計基準委員会では、平成17年12月9日に、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」等を公表しており、会社法施行日以後終了する中間会計期間及び事業年度から適用することを明らかにしている(本誌No.150、22頁参照)。
自己株式、ストック・オプション、新株予約権などの会計処理
企業会計基準委員会は、会社法の公布に伴い、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」等を見直している。改正された基準等は、会社法の定めが適用される処理に関して適用される。なお、法人税法においても、自己株式の取得について、考え方の見直しが行われ、自己株式取得時の付随費用について、取得時に損金算入が可能となる。
企業会計基準委員会は、ストック・オプション、新株予約権及び新株予約権付社債などについて、会社法施行日以後に付与・発行決議のあったものにつき、会計処理上の取扱いを明らかにしている。
1株当たり当期純利益の見直し
企業会計基準委員会は、会社法の公布及び「役員賞与に関する会計基準」の公表により、「1株当たり当期純利益に関する会計基準」を見直している。
新会社法の計算規定はいつから適用されるのか?
会社法は、施行日を平成18年5月1日に予定している。整備法が、「現行の有限会社及び株式会社の施行日前に到来した最終の決算期に係る商法等に規定する計算書類の作成等については、なお従前の例による。」と規定している(整備法27条2項、99条)ことから、会社法施行日前に決算期を迎える平成18年3月期決算などでは、株主総会が会社法施行日以後に開催される場合においても、現行商法等に規定する従前の計算書類を作成することになる。一方、施行日(5月1日)以後に終了する事業年度からは、会社法に規定する計算書類(「株主資本等変動計算書」及び「個別注記表」など)を作成しなければならない。会社法の施行に伴い計算書類が変更されるだけでなく、多くの会計基準が、会社法施行日以後の取引・会社法施行日以後終了する中間会計期間及び事業年度から、新たな会計基準・既存の会計基準の見直しを適用するものとしている。本稿では、計算関係規定の適用を改めて整理してみた。
1 新会社法の適用では、「株主資本等変動計算書」を作成

現行商法・有限会社法と会社法に規定する計算書類は上記のとおりである。会社法では、利益処分案等がなくなり、「株主資本等変動計算書」・「個別注記表」を作成することを規定している。会社法施行日以後に終了する事業年度から、会社法に規定する計算書類(「株主資本等変動計算書」及び「個別注記表」など)を作成しなければならない。
会社計算規則は、「個別注記表」について、継続企業の前提に関する注記など12項目について表示することを規定しているが、会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く)の個別注記表では、①重要な会計方針に係る事項に関する注記、②株主資本等変動計算書に関する注記、③その他の注記、の3項目についてのみ区分表示すればよい。 現行法人税法施行規則では、「確定申告書の添付書類」として、以下の書類を規定している(法規35条)。会社法上、利益処分案(損失処理案)は存在しないことになるため、「株主資本等変動計算書」が確定申告書添付書類として規定されることが予想される。

2 5月1日施行なら、5月決算法人から会社法の計算規定を適用
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」)は、「現行の有限会社及び株式会社の施行日前に到来した最終の決算期に係る商法等に規定する計算書類の作成等については、なお従前の例による。」と規定している(整備法27条2項、99条)。
したがって、会社法施行日(5月1日予定)以後に終了する事業年度から、会社法に規定する計算書類(「株主資本等変動計算書」及び「個別注記表」など)を作成しなければならない。

3 株主資本等変動計算書はどうやって作成する?
株主資本等変動計算書は、会社計算規則に表示項目・区分などが規定されているほか、企業会計基準委員会が「株主資本等変動計算書に関する会計基準」を公表している。会社法施行日以後終了する事業年度・会社法施行日以後終了する中間会計期間から作成する(本誌No.150、16頁参照)。

4 会社法の施行に伴い、会計が大きく変わる
会社法の施行に伴い、会社が作成すべき計算書類が変更されるだけでなく、会計の内容についてもいくつかの変更を要することになる。
会社法では、剰余金分配手続・資本の部の計数の変動手続が緩和されることになり、利益処分案が廃止され、役員賞与は費用として処理される。
また、会社法における自己株式、種類株式、新株予約権制度の整備に伴い、自己株式、ストック・オプション、新株予約権などの会計処理について、会計基準等が公表されるとともに、貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準・1株当たり当期純利益に関する会計基準などが公表されるなど、会計処理が見直されることになった。

株主総会の規律
整備法90条では、施行日前に株主総会の招集の手続が開始された場合におけるその株主総会の権限及び手続については、従前の例によることが規定されている。逆に、3月決算会社の例で、総会招集の取締役会決議を会社法の施行日(平成18年5月1日)以後に行う会社では、新会社法が適用される。この場合でも、計算書類の作成等については、整備法99条によって、現行商法の例によることになる。
配当の決議
施行日前に到来した最終の決算期(以下「直前決算期」)に係る現行商法の計算書類の規定は、従前の例によることとされているため、平成18年3月期決算に係る定時株主総会では、利益処分案としての利益の配当を行うことが可能である。この場合には、現行商法により、配当可能額等が規定される。
一方、施行日以後に終了する事業年度においては、会社法上利益処分案は存在しないため、利益処分案ではなく、会社法454条の規定に基づいて剰余金の配当を行うことになる。
役員賞与
「役員賞与の会計処理に関する当面の取扱い」では、「役員賞与は、発生した会計期間の費用として会計処理することが適当である。」とされていたが、利益処分案の株主総会決議により支給する実務慣行も容認していた。会社法では、利益処分案は存在しないため、企業会計基準委員会では、役員賞与は発生した会計期間の費用として処理し、会社法施行日以後終了する事業年度の中間会計期間から適用することを明らかにしている(本誌No.142、34頁参照)。

貸借対照表の純資産の部の表示
企業会計基準委員会では、平成17年12月9日に、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」等を公表しており、会社法施行日以後終了する中間会計期間及び事業年度から適用することを明らかにしている(本誌No.150、22頁参照)。
自己株式、ストック・オプション、新株予約権などの会計処理
企業会計基準委員会は、会社法の公布に伴い、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」等を見直している。改正された基準等は、会社法の定めが適用される処理に関して適用される。なお、法人税法においても、自己株式の取得について、考え方の見直しが行われ、自己株式取得時の付随費用について、取得時に損金算入が可能となる。
企業会計基準委員会は、ストック・オプション、新株予約権及び新株予約権付社債などについて、会社法施行日以後に付与・発行決議のあったものにつき、会計処理上の取扱いを明らかにしている。
1株当たり当期純利益の見直し
企業会計基準委員会は、会社法の公布及び「役員賞与に関する会計基準」の公表により、「1株当たり当期純利益に関する会計基準」を見直している。
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