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解説記事2006年04月03日 【会社法解説】 図解でわかる法務省令講座―平成18年5月期決算以降の計算書類―(2006年4月3日号・№157)

図解でわかる法務省令講座
―平成18年5月期決算以降の計算書類―

 前法務省民事局付 郡谷大輔


 今回は、会社計算規則における計算書類に関する規律について解説する。平成18年5月期以降の決算期については、計算規則に基づく作成が義務付けられるため、会社法施行後に取扱いが変更される純資産の部、新設される株主資本等変動計算書・注記表の内容について確認しておきたい。

人物紹介
マミ
:霞が関の監査法人に勤める公認会計士。経済産業省・法務省において政策立案・立法作業に携わる。変わらず会社法施行対応に追われる中で、出会いと別れの季節に一抹の寂しさをおぼえる日々をすごしている。
カナ:赤坂の法律事務所に勤める弁護士。法務省において立法作業に携わる。会社法関係省令の公布後、他省令の改正案作りも無事まっとうし、3年10か月ぶりにおそるおそる赤坂に出勤する日々を迎えている。

Ⅰ 計算書類の作成方法

 計算規則において、計算書類の作成方法等に関して改正された事項は、図表1のとおりである。


1 外国語による表示
 計算書類に使用すべき言語は、原則として日本語とし、場合によって外国語での表示も妨げない旨を明らかにしている(計算規則89条2項)。
 外国会社の完全子会社など株主のほとんどが外国人である場合や取引のほとんどが外国との間で行われている場合など、外国語で計算書類を表示した方が便宜な場合には、外国語による表示も認められることとなる。

2 計算書類の構成
 各事業年度に係る計算書類と連結計算書類は、(連結)貸借対照表、(連結)損益計算書、(連結)株主資本等変動計算書、個別・連結注記表という4種類のものから構成されている(計算規則91条1項・93条)。
 もっとも、これらの計算書類を構成するものは、必ずしもそれぞれを一つの書面として作成する必要はなく、計算書類または連結計算書類という一つの計算関係書類を作成するに当たり、適切に表示すれば足りる(計算規則89条3項)。
 なお、現行商法施行規則46条1項では、原則として、注記を貸借対照表等の末尾に記載すべき旨が規定されているが、計算規則では、注記の表示場所については特に規定が置かれておらず、一つの注記表としてまとめることも、貸借対照表等の末尾に表示することも可能となる。

3 事業年度の長さに関する規制
 計算規則では、事業年度の長さについて、原則として1年以下とし、事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、1年6か月を超えてはならない旨を明らかにしている(計算規則91条2項)。
 現行法においては、定時株主総会について、「年一回一定の時期に」という規制(現行商法234条)を課していたものであるが、会社法では、定時株主総会の開催時期について明文の規定がないことから、計算規則において新たに設けられたものである。

4 連結貸借対照表・連結損益計算書の項目替え
 計算規則97条後段・98条後段は、単体の貸借対照表・損益計算書において表示した項目を、連結貸借対照表・連結損益計算書で表示する際に、他の項目に表示することが適当な場合に関する規定であり、計算規則において新たに設けられたものである。
 具体的には、単体ベースであれば流動資産であるが、譲渡先は連結グループ内の他の会社であるような場合である。

5 その他
 以上のほか、計算規則では、現行法においても取り組まれてきた、計算書類における表示に関する事項についての財務諸表等規則とのすり合わせが進められている。
 使用する用語、資産・負債の分類、注記の内容等について、財務諸表等規則との規律の平仄を意識しつつ規律を設けることとしたため、現行規則と比較すると、規定の順序、文言、形式などが大きく変更されている。

POINT
~ここに注意~
計算書類上の表示
~財務諸表等規則における用語、資産・負債の分類、注記の内容等に合わせて規律を設けている。

Ⅱ 貸借対照表

1 単体・連結の共通規定

 貸借対照表については、計算規則104条以下の規定が単体の貸借対照表と連結貸借対照表の共通規定として規定されている。
 なお、現行規則と計算規則との間における、主な貸借対照表に関する規律の変更点は、図表2のとおりである。

2 各項目の名称
 計算規則は、資産・負債等の各項目の名称については、適当な名称を付すべき旨のみ規定しており、現行規則52条・162条等にあるような名称の例示を掲げていない(計算規則105条2項)。
 このため、計算書類の項目の区分やこれに付ける名称は適当に決定すれば足り、有価証券報告書を提出している会社であれば、当然、財務諸表等規則に準じた名称等を付すことも可能である。
 したがって、現行規則200条に相当するような規定は設けられていない。

3 資産・負債の分類
 計算規則106条3項・107条2項においては、財務諸表等規則15条、22条、28条、31条、47条、51条等にならって、各資産・負債が、流動資産・有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産・流動負債・固定負債のどの項目に分類されるかという規定を設けている。
 また、現行法ではその取扱いが明らかでなかった減損会計に関する表示についても、その取扱いが明確化されている(計算規則111条・134条4号)。

4 純資産の部
 現行商法における貸借対照表の資本の部は、各種の評価・換算差額等や新株予約権を取り込む形で、純資産の部という表示に変更されている(計算規則108条)。
 また、その他資本剰余金の内訳は、現行規則と異なり、減資差益や自己株式処分差損益等の内訳を必ずしも分ける必要はないこととされている。
 なお、具体的な表記の方法は、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」が制定されているので、これによることとなる。
 記載例については、図表3を参照されたい。


5 関係会社株式等の取扱い
 会社法では、子会社につき実質子会社概念を採用したことに加え、あえて財務諸表等規則と区分表示のあり方を変える必要もないことから、すべて関係会社単位での区分表示という方向で規律を整理している(計算規則113条・134条6号・135条)。
 また、親会社株式は、必ずしも流動資産に属するものとして開示する必要はないものとされている(計算規則134条9号)。

Ⅲ 損益計算書

1 単体・連結の共通規定

 損益計算書については、計算規則118条以下の規定が単体の損益計算書と連結損益計算書の共通規定として規定されている。
 なお、現行規則と計算規則との間における、主な損益計算書に関する規律の変更点は、図表4のとおりである。


2 損益計算書の部の廃止
 現行法では、損益計算書についても、経常損益の部、特別損益の部といった部が設けられている(現行規則94条)。
 会社法では、財務諸表等規則にならい、こうした部を廃止している(計算規則119条)。

3 売上総利益・売上総損失
 現行規則では、営業損益、経常損益、特別損益、当期純損益を記載することとしている(現行規則94条等)。
 計算規則では、これに加え、売上総利益・売上総損失をも表示しなければならないものとしている(計算規則120条)。

4 法人税等の更正・決定
 計算規則124条2項、125条1項3号・5号は、現行法では明文の規定が設けられていなかった、法人税等の更正などがあった場合における表示方法について明確化を図ったものであり、財務諸表等規則に合わせるものである。

POINT
~ここに注意~
貸借対照表
~「資本の部」は「純資産の部」と変更され、その他資本剰余金の内訳を必ずしも分ける必要はなくなった。
~関係会社株式、親会社株式の取扱いが変更されている。
損益計算書
~現行規則の記載事項に加え、売上総利益・売上総損失をも表示する。
株主資本等変動計算書
~利益処分案・損失処理案は廃止され、株主資本等の変動状況を開示するこの書類の作成が義務付けられている。

Ⅳ 株主資本等変動計算書

1 株主資本等変動計算書

 株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の純資産の部の各項目に係る前事業年度末から当事業年度末までの間の変動を、その変動事由とともに明らかにするものである(計算規則127条)。
 これにより、現行商法では、損益計算書の末尾に記載されていた当期未処分利益等の計算に係る部分(現行規則101条)と、附属明細書に記載されていた資本金等の増減(現行規則107条1項1号)は、株主資本等変動計算書にまとめられることになる。

2 作成方法
 株主資本等変動計算書の作成については、原則として、「株主資本等変動計算書に関する会計基準」に従って作成することとなる。
 具体的には、株主資本の各項目については、前記末残高、当期変動額および当期末残高に区分し、当期変動額は変動事由ごとにその金額を表示することになる(計算規則127条7項)。
 なお、株主資本等変動計算書には、新株予約権等の株主資本以外の各項目に関する事項も含まれることとなる。

3 注記事項
 株主資本等変動計算書については、会計基準においても、計算規則上も、一定の事項に関する注記が求められている。
 計算規則上の注記事項は、単体の株主資本等変動計算書については、
発行済株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの発行済株式の数)
自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの自己株式の数)
剰余金の配当に関する事項
新株予約権の目的となる株式の数
である(計算規則136条)。
 この株主資本等変動計算書に関する注記は、すべての株式会社に義務づけられる注記事項である。
 なお、連結計算書類を作成している株式会社は、自己株式の数に関する事項以外は、連結株主資本等変動計算書の注記をもって代えることができる(会計基準とは取扱いが異なる部分があることに留意する必要がある)。

マミ:相当数の事項を新設したり、変更したりしたのよ。
カナ:財務諸表等規則との調整を進めたり、規定の明確化を図った結果ね。
マミ:実務への配慮もかなり行ったし、株主・債権者に対しても分かりやすいものになっているわ。


Ⅴ 注 記 表

1 注 記 表

 現行商法では、各種の注記事項は、貸借対照表または損益計算書の注記として、規律が設けられていた(現行規則56条2項等)。
 しかし、会社法では、財務諸表等規則にならい、継続企業の前提に関する注記(計算規則131条)、重要な会計方針に関する注記(計算規則132条)、関連当事者との取引に関する注記(計算規則140条)などを、新たに注記事項として明記したことに伴い、すべて「注記表」を構成するものとして整理をすることとしたものである(計算規則128条)。

2 注記の省略
 計算規則129条1項各号は、計算書類における注記事項の一覧として計12項目を掲げている。
 もっとも、これらの注記事項の全部を注記する必要があるのは、会計監査人設置会社であって、公開会社である株式会社に限られる。
 会計監査人を設置していない株式会社については、継続企業の前提に関する注記(同項1号)・連結配当規制適用会社に関する注記(同項11号)は不要である。
 また、会計監査人を設置していない株式会社であって、公開会社でないものは、上記2事項に加えて、多数の注記事項の省略が可能であり、このような株式会社における必要的な注記事項は、重要な会計方針に係る事項に関する注記(同項2号)、株主資本等変動計算書に関する注記(同項5号)およびその他の注記(同項12号)のみとなる。

3 新規の注記
(1)財務諸表等規則との調整
 財務諸表等規則が要求している注記事項のうち、会社法上も要求することが適当であると考えられるものは、注記事項として新たに追加されている。
 具体的には、図表5のとおりである。

(2)親会社株式の表示区分
 新たな注記事項として、親会社株式の表示区分(計算規則134条9号)という事項が加わっている。
 これは、連結配当規制適用会社という制度を新たに採用して、子会社が保有する親会社株式の帳簿価額も親会社における分配可能額に反映させることが可能となる場合があり、このような場合には、子会社が1年を超えて親会社株式を保有することがありうるからである。
(3)連結配当規制適用会社に関する注
 計算規則143条は、連結配当規制適用会社に関する注記を新たに加えている。
 連結配当規制適用会社とは、ある事業年度の計算書類の確定後から、次の事業年度の計算書類が確定するまでの間、計算規則186条4号の適用を受ける、すなわち、連結ベースでの分配可能額相当額が単体ベースでの分配可能額相当額よりも小さい場合には、その差額を分配可能額から減額するものとすることを決定した会社である。
 連結配当規制は、連結計算書類を作成している株式会社であれば、その採用を決定することができるものであるが、その採用に至るまでの手続は、図表6のようになる。
 そして、連結配当規制適用会社に関する注記は、内部的にも、外部的にも、連結配当規制の適用を受けることを明らかにするための注記である。

4 廃止された注記
 時価が著しく低い場合(現行規則61条)、所有権が留保された固定資産(現行規則67条)、引当金の部に計上しない引当金(現行規則86条3項)といった財務諸表等規則で要求されていない注記事項については、計算規則においても必要的な注記事項ではなくなっている。
 資本の欠損の注記(現行規則92条)、繰延資産等に関する注記(現行規則93条)といった分配可能額に関連する注記事項は、これらの事項だけを特に注記する理由が乏しいので、必要的な注記事項とはしていない(図表7参照)。


5 変更された注記
 これまでに述べたほか、現行規則から注記の内容が変更されたものもある。最も大きな変更は、後発事象に関するものである。
 現行規則129条では、会計監査人は、営業報告書に記載がない後発事象について取締役から報告があったときは、その事実を記載することとされている。
 他方、会社法では、重要な後発事象は事業報告ではなく計算書類の注記表に注記することとしている(計算規則129条1項10号、142条)。そして、重要な後発事象があるにもかかわらず注記がない場合には、これを監査報告で明らかにするのではなく、除外事項として明らかにすべきこととなる(「後発事象に関する監査上の取扱い」参照))。

Ⅵ 附属明細書

 計算規則に基づく附属明細書における開示事項については、現行規則と比較すると、相当項目が絞り込まれている(現行規則との比較については、図表8参照)。
 ただし、計算規則では、現行規則の一部の事項については、株主資本等変動計算書の内容(資本等の変動)としたり、注記(担保に供されている財産等)を充実することによって対応しようとしたりしている。
 なお、関連当事者との取引に関する注記の一部を省略した場合には、省略した事項も附属明細書の開示事項となる(計算規則145条4号)。

今週のおさらい 8
◎ 計算書類は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表の4種類
  それぞれを一つの書面として作成する必要はなく、(連結)計算書類という一つの計算関係書類を作成するに当たり、適切に表示すれば足りる。
◎ 純資産の部、株主資本等変動計算書など新たな概念に留意
  具体的な作成は、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」「株主資本等変動計算書に関する会計基準」による。
◎ 貸借対照表・損益計算書で注記されていた事項を「注記表」として整理
  注記事項の新設・変更・廃止が相当程度ある。機関設計により省略可能な事項もある。
  ただし、貸借対照表・損益計算書の末尾に従来どおり表示することも可能である。

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