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解説記事2006年05月01日 【会社法解説】 図解でわかる法務省令講座―電磁的記録・設立・清算・持分会社―(2006年5月1日号・№161)

図解でわかる法務省令講座
―電磁的記録・設立・清算・持分会社―
 前法務省民事局付 郡谷大輔


 前回までに、施行規則・計算規則の内容について、テーマごとに解説を行ってきた。連載最終回となる今回は、これまでの解説において触れなかった事項である電磁的記録・電磁的方法、設立、清算および持分会社に関する省令事項について確認することとする。

Ⅰ 電磁的記録・電磁的方法

 施行規則7編4章には、電磁的方法および電磁的記録に関する規定が設けられている(旧商法施行規則2章に規定されていたものに相当する)。
 会社法では、旧商法と同様、会社等が作成や提供を義務付けられているものについて、電磁的記録での作成、電磁的方法での提供が認められているほか、電磁的記録で作成されたものの閲覧等の方法についても、詳細な規定を設けている。
 そして、これらの規律に関する技術的な事項について、法務省令に委任されている点も旧商法と変わるところはない(旧商法施行規則と会社法施行規則との規定の対応関係は、図表1参照)。
 旧商法からの変更点の一つは、施行規則228条・229条に見られるように、財産価格調査等の検査役の調査結果等を提供する規定が設けられたことに伴い、規定が整備されていることである。
 もう一点は、施行規則227条であり、定款・株主総会の議事録・計算書類など、原則として、本店および支店に書面等を備え置かなければならないとされているものについて、電磁的記録で作成し、かつ、支店においてその情報がインターネットその他の方法で閲覧等できる場合には、支店における備置き義務を免除することとしていることである(会社法31条4項、442条2項等参照)。

Ⅱ 設  立

 施行規則2編1章では、株式会社の設立に関する省令委任事項が規定されている。

1 設立費用
 施行規則5条は、定款に定めがない場合であっても、設立費用として株式会社が負担することができるものとして、法律に規定のある定款の認証の手数料のほか、
 ① 定款に係る印紙税(1号)
 ② 銀行等への手数料等(2号)
 ③ 検査役の報酬(3号)
 ④ 設立の登記の登録免許税(4号)
を挙げている。
 なお、設立費用に関しては、計算規則74条1項2号に設立時の資本控除に関する規定があるが、現時点では会計基準がないため、そのような取扱いをすることはできず、従来どおり当期費用への計上等をすることとなる。

2 出資金の取扱いをする銀行等
 施行規則7条は、株式会社の出資金の取扱いをすることができる金融機関のうち、法律に規定のある銀行・信託会社以外の金融機関を掲げている。
 旧法下でも、各種の法律に規定が設けられていたものであり、会社法の施行によってその範囲が変更されるものではない。
 銀行等の範囲は、設立時のみならず、成立後の株式の募集、新株予約権の行使の場合にも適用される。

3 募集設立
 施行規則8条以下は、募集設立に関する省令委任事項である。
 施行規則8条は、株式の募集に係る施行規則41条と同趣旨の規定である。
 施行規則9条以下の創立総会に関する規定と株主総会に関する規定との差異は、図表2のとおりとなっている。


募集設立(ぼしゅうせつりつ)
 設立時に発行する株式のすべてを発起人が引き受ける「発起設立」に対し、設立時に発行する株式の一部について引受人を募集する会社設立方法。平成2年商法改正後は発起設立における一部の検査役調査が不要とされたことから、その利用は少なくなり、会社法制定時には制度自体の廃止も検討されていた。

Ⅲ 清  算

 施行規則2編8章は、清算に関する規定である。
 清算に関する省令委任事項は、解散前の株式会社に関する規律と同様のものが多く、その対応状況は、図表3のとおりである。
 清算固有の規定としては、次のものがある。


1 財産目録・清算開始時の貸借対照表
 清算をした場合には、各財産について原則として処分価格を付して、資産・負債・正味資産など適切な項目に分類した財産目録を作成しなければならず(施行規則144条)、財産目録に基づいて、清算開始時の貸借対照表を作成することとなる(施行規則145条)。

2 決算報告
 清算手続が終了した場合には、
① 債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
② 債務の弁済、清算に係る費用の支払いその他の行為による費用の額
③ 残余財産の額(支払税額がある場合には、その税額および当該税額を控除した後の財産の額)
④ 一株当たりの分配額(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式一株当たりの分配額)
を内容とする決算報告を作成しなければならない(施行規則150条1項)。

3 清算株式会社の自己株式の取得
 清算株式会社による株主への会社財産の払戻しは、原則として残余財産分配で行われることとなるので、剰余金の配当は禁止され(会社法509条1項2号)、自己株式の取得については、無償で取得する場合(同条2項)のほかには、
▲清算株式会社が有する他の有価証券について自己株式の割当てを受ける場合(施行規則151条1号~3号)
▲自己が消滅する合併に際しての株式買取請求に応じる場合(同条4号)
▲清算株式会社となる前に行われた株式買取請求・単元未満株式の買取請求に応じる場合(同条5号・6号)
にのみ許容されるだけである。

POINT~ここに注意~
備置書類の電磁的記録
~支店において情報が閲覧できる措置がとられている場合には、支店における備置き義務は免除される。
清算をした場合の財産目録等
~財産目録、清算貸借対照表、決算報告についての規定が整備されている。
清算株式会社の自己株式取得
~清算中の株式会社の自己株式の取得は、著しく制限されている。

4 特別清算
 施行規則2編8章2節では、特別清算に関する省令委任事項が規定されている。これらにも他に 同様の規定があり、その対応状況は、図表3のとおりである。
 特別清算については、法務省令への委任のほか、その手続中、非訟事件の手続に関する事項について、別途最高裁判所規則にも委任されている(会社法876条)。
 このような委任を受けて、特別清算に関するものを含め、会社に関する非訟事件の手続に関して制定されたのが、会社非訟事件手続規則である。同規則の概要については、今号26頁を参照されたい。

Ⅳ 持分会社

 持分会社に関する省令委任事項は、計算に関する事項と清算に関する事項のみである。
 このうち、清算に関する事項は、財産目録(施行規則160条)および清算開始時の貸借対照表(施行規則161条)に関する規定のみであり、内容は、株式会社と変わるところはない。
 他方、計算に関する規定は、資産・負債の評価(計算規則5条・6条)、計算関係書類(計算規則3編)については株式会社と共通する規定が多いが、持分会社に固有の規定も設けられている。

1 作成すべき計算書類の内容
(1)合名会社・合資会社の作成すべき計算書類

 合名会社・合資会社が作成すべき計算書類は、原則として貸借対照表だけであるが、損益計算書、社員資本等変動計算書または個別注記表の全部または一部を計算規則の規定に従って作成するものと定めた場合には、計算規則の規定に従って作成されたこれらのものも会社法上の計算書類として取り扱われる(計算規則103条1項1号)。
(2)合同会社の作成すべき計算書類
 合同会社が作成すべき計算書類は、株式会社と同様、貸借対照表、損益計算書、社員資本等変動計算書および個別注記表となる(計算規則103条1項2号)。

2 企業結合会計関係等
 会社法では、持分会社も、株式会社とほぼ同様の組織再編行為を行うことができるため、その場合における会計処理に関する規定も設けられている。
(1)組織変更の場合
 会社法では、持分会社から株式会社へ、または株式会社から持分会社への組織変更が認められる(会社法743条・2条26号)。
 会社法における組織変更は、機関設計と社員の責任の変更手続にすぎないものとして整理されているため、計算規則では、組織変更を理由に資産・負債の評価替えをすることができないこと(計算規則7条)、純資産に係る項目も原則として変動させないこと(計算規則56条・57条)が規定されている(ただし、計算規則9条1項参照)。
(2)合併、会社分割の場合
 持分会社が合併や会社分割をする場合にも、企業結合に係る会計基準で定められたところと同様の処理ができるよう規定が設けられている(合併・会社分割に関する会計処理に関する規定は、株式会社と持分会社との共通規定として設けられている)。
 もっとも、持分会社には、資本準備金・利益準備金の概念がなく、株式会社のその他資本剰余金・その他利益剰余金に相当するものも含めて資本剰余金・利益剰余金とされているため、資本準備金・利益準備金は零であるものとして適用することとしている(計算規則70条・84条)。

マミ:株式会社に対する総称として「持分会社」ができたのね。
カナ:合名・合資・合同とも会社法上は共通の規定振りとした上で、類型別の特則を置いているわ。

3 その他の社員資本の変動に関する規定
(1)計算規則の規定の状況
 
 持分会社は、出資が履行された場合、出資請求権を資産として計上し、または計上をやめた場合、出資の払戻し・持分の払戻しがされた場合、社員資本の科目を振り替えた場合(損失のてん補の場合を含む)などに社員資本が変動するが、これらについての計算規則の規定の対応状況は、図表4のとおりである。

(2)利益の配当等の取扱い 計算規則には、利益の配当時の社員資本の変動については、その他利益剰余金額を減少させることが適切な場合(計算規則55条2項4号)であるものとして対応している。
 なお、株式会社の場合と同様、積極的に、利益と資本を混同させないという趣旨から、出資の払戻しにより利益剰余金が減少しないこと(計算規則55条2項ただし書)、利益の配当により資本剰余金が減少しないこと(計算規則54条2項ただし書)が明記されている。

4 利益額・剰余金額
 合同会社は、社員が有限責任であるという株式会社との共通点に鑑みて、株式会社と同様に、会社財産の社員に対する払戻し規制が行われている。そして、その財源を規制するための計数として「利益額」(計算規則191条)と「剰余金額」(計算規則192条)という概念が用いられている。
 それぞれの概念の具体的な内容は、次のとおりである。
(1)利益額 
 利益の配当をする場合における利益額とは、次の①・②のいずれか小さい額となる。
 ① その時点における利益剰余金の額
 これは、会社債権者との関係で、配当をする時点において、配当可能な利益額を意味する(計算規則191条1号)。
② 当該配当を受ける社員に分配されている利益の額
 これは、社員間の関係で、配当をする時点において、当該社員に配当可能な利益額を意味する(計
算規則191条2号)。
 もっとも、「利益額」が債権者との関係でのみ問題となる場合(総社員の同意による免除限度額を定める場合)には、①のみが利益額とされている。
(2)剰余金額
 剰余金額についても、それぞれの規定の意義に応じて、それぞれ内容が異なっている。
① 会社法626条2項(出資の払戻しに伴う資本金の額の減少)
 剰余金額は当該社員の出資につき資本剰余金に計上されている額となる(計算規則192条3号イ)。
② 会社法632条2項(出資の払戻しの財源)・634条1項(求償)
 次のイ・ロがそれぞれ払戻し可能な額となるので、これらのいずれか小さい額(計算規則192条3号ロ)。
イ 出資の払戻しをする日における利益剰余金の額と資本剰余金の額の合計額(会社債権者との調整の観点によるもの)
ロ 当該社員の出資につき資本剰余金に計上された額(社員間の調整の観点によるもの)
③ 会社法633条2項ただし書(免除可能な額)
 会社債権者との関係だけが問題となる場面であるので、②イの額となる(計算規則192条3号ハ)。
④ 会社法635条1項、2項1号、636条2項ただし書(持分の払戻しにおける債権者異議および責任免除可能額)
 会社債権者との関係だけが問題となる場面であるので、やはり利益剰余金の額と資本剰余金の額の合計額となる(計算規則192条3号ニ)。

POINT~ここに注意~
持分会社の計算書類
~合名会社・合資会社も、会社法に基づく損益計算書等を作成することが可能である。
組織変更時の評価替え等
~持分会社に係る組織変更時には、資産・負債の評価替えや資本金等の変更はすることができない。
合同会社の払戻し規制
~利益額・剰余金額については、規定の趣旨に応じて、その額が規定されている。

今週のおさらい12
電磁的記録で作成されたものの閲覧等の方法について詳細に規定
備置きに関する特則、検査役による調査結果の提供に係る規定なども新設されている。
設立費用は当面、従来どおり当期費用等としての取扱い
印紙税、登録免許税等は定款の定めなくして会社に負担させることが可能である。
持分会社について組織再編行為時の会計処理に関する規定を手当て
資本準備金・利益準備金の概念はなく、それぞれ零として適用する。


執筆者に代わって
当初予定より1回多く、計12回にわたって掲載してきましたが、いかがでしたでしょうか。立法担当者の間では、この解説そのものを「マミカナ」と呼んでいたそうです。「○○さん、マミカナのあの図表、今週中に作ってね」といった具合にです。わたしたちがガイド役として、ときには変身しながらポイントを紹介するなど、これまでにない法令解説のスタイルに、編集部ではどうなることかと思ったようですが、豊富な図表とこれを用いた新旧規定の比較などがわかりやすいと好評だったとも聞いています。読者の皆さんのご理解に資するものであったなら幸いです。いよいよ今日から会社法も施行。本講座も今回が最終回となりましたが、いずれまたお目にかかれる日を楽しみにしています。

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