解説記事2006年05月15日 【会計解説】 企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」について(2006年5月15日号・№162)
実 務 解 説
企業会計基準適用指針第12号
「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」について
企業会計基準委員会 専門研究員 江藤栄作
Ⅰ. はじめに
企業会計基準委員会(ASBJ)では、平成18年3月30日に企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」(以下「本適用指針」という。)を公表した。本適用指針については、平成18年1月27日に公開草案を公表し、広くコメントの募集を行った後、ASBJにおいて寄せられたコメントを検討し、公開草案の修正を行った上で公表するに至ったものである。本稿では、本適用指針の概要について紹介するが、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添える。
Ⅱ. 本適用指針検討の背景と経緯
「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)及び「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)では、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性のあるその他の複合金融商品について、区分処理又は一体として時価評価することが要求されている。しかしながら、このような取扱いには、物価連動国債など、公表時には想定されていなかったその他の複合金融商品に対しては、必ずしも適切な会計処理とはいえないのではないかという意見も多かった。このため、ASBJでは、金融商品専門委員会における討議を含め、その他の複合金融商品の会計処理に関する審議を行い、今般、当該会計処理に関する本適用指針をとりまとめた。本適用指針は、現行の「金融商品に係る会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)の下で、その他の複合金融商品を適用する際の指針について一部見直しを行ったものである。
Ⅲ. 適用の範囲
本適用指針は、金融商品会計基準が適用される場合において、その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)(金融商品会計基準第六 二)の会計処理に適用する。その他の複合金融商品には、金利オプション付借入金のように現物の資産及び負債とデリバティブ取引が組み合わされたもの及びゼロ・コストオプションのように複数のデリバティブ取引が組み合わされたものがある。
Ⅳ. 「組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと」について
本適用指針では、金融商品会計実務指針は、これまでも一定の役割を果たしてきたことを踏まえ、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある場合とは、これまでと同様に、組込デリバティブのリスクが、契約上、当初元本にリスクが及ぶかどうかをもって判断するという考え方を引き継いでいる。ただし、組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にある場合には、前述したような指摘を踏まえ、一部見直しを行った。
Ⅴ. 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例
その他の複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とは区分せず一体として処理することとされている(金融商品会計基準第六 二)。一方で、金融商品会計意見書では、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要であるとしている。これは、相場変動等による組込デリバティブの損失の可能性を当期の損益に適切に反映するためと考えられる。
これを踏まえ、本適用指針では、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるかどうかについて、次のように取り扱うこととした。
(1)組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にない場合には、これまでと同様に、組込デリバティブのリスクが、契約上、当初元本にリスクが及ぶかどうかをもって判断し、可能性の程度を評価するものとはしていない。
(2)組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある場合には、契約上、当初元本にリスクが及ぶ可能性があっても、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性はないものとして取り扱う。
このように、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるかどうかの判断について、まず、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にあるかどうかで区分している。
これまでの金融商品会計実務指針では、金利に係るデリバティブが組み込まれた場合、組込デリバティブの経済的性格及びリスクは、それが組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるため、通常そのリスクは現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないとしていたが、当該リスクが現物の金融資産又は金融負債の元本に及ぶ可能性がある場合は区分処理することとしていた。金利に係るデリバティブ以外のデリバティブが組み込まれた場合、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとは緊密な関係にないため、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるが、元本が確保されるような性格のデリバティブ取引を組み込む場合には、リスクが及ぶ可能性はないとしていた。したがって、これまでの金融商品会計実務指針では、組込デリバティブと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクの緊密な関係の有無をもって組込デリバティブの区分処理を行う判断基準とはせず、複合金融商品の契約内容が契約上の元本回収又は返済に影響を与えるか否かをもって区分処理の判断基準としていた(金融商品会計実務指針第191項、355項)。
本適用指針では、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債と緊密な関係にない場合には、これまでと同様に、組込デリバティブのリスクが、契約上、当初元本にリスクが及ぶかどうかをもって判断し、可能性の程度を評価するものとはしていない。一方、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるものについては、契約上、当初元本にリスクが及ぶ可能性がある場合であっても、そのリスクが現物の金融資産又は金融負債のリスクに及ぶ可能性の程度をもって判断することとした。すなわち、緊密な関係にあるものについては、当初元本にリスクが及ぶかどうかを契約上の可能性の有無のみで判断するのではなく、当初元本に及ぶ可能性が低いといえる場合には、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないものとして取り扱うこととした。
Ⅵ. 緊密な関係にある組込デリバティブについて
本適用指針では、その他の複合金融商品において、金利に係るデリバティブの他、その経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある組込デリバティブについて検討し、その結果、以下の理由により、緊密な関係にある組込デリバティブは金利に係るものだけではなく、物価指数や一定の信用リスクに係るデリバティブも含まれるとした。
(1)物価指数に係るデリバティブについて
区分処理を必要としない変動利付金融資産又は金融負債においては、一般に、変動金利部分に物価水準の変動も含まれていることから、これらの経済的性格及びリスクとは緊密な関係にあると考えられる。国際的な会計基準においても同様に、物価指数に係るデリバティブについては金利と緊密な関係にあるものとしている。
(2)一定の信用リスクに係るデリバティブについて
利付金融資産又は金融負債には、債務者の信用リスクが含まれているため、当該債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあると考えられる。国際的な会計基準においても同様に、債務者自身の信用リスクに係るデリバティブについては、緊密な関係にあるものとしている。
また、第三者の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にないが、特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込んだ複合金融商品を発行している場合のように、当該複合金融商品が実質的に当該参照先の信用リスクを反映した利付金融資産と考えることができる場合には、債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合に準じて取り扱うこととした。
このような組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある場合には、これまでの金融商品会計実務指針のように、契約に照らして当初元本にリスクが及ぶかどうかではなく、当初元本に及ぶ可能性の程度を評価して、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるかどうかを判断するものとした。
Ⅶ. 緊密な関係にある組込デリバティブを含む具体的商品について
ここで、緊密な関係にある組込デリバティブ商品として、本適用指針において示されている以下の2つの具体的な金融商品の会計処理について述べる。
1 物価連動国債について
物価連動国債とは、通常の固定利付の国債とは異なり、想定元金額及び受取利息額が、消費者物価指数(CPI)に連動する国債であり、CPIが増減することにより、想定元金額及び受取利息額も増減する。CPIが減少する場合には、元本割れするリスクを伴う複合金融商品であり、元本保証がついていない。したがって、これまでの金融商品会計実務指針によると、物価連動国債は、元本が減少する可能性のある物価指数に係るデリバティブを組み込んだ複合金融商品と考えられ、当該組込デリバティブ部分について区分処理又は当該複合金融商品全体を時価評価する必要がある。
しかしながら、物価連動国債は、これまでのCPIの動向等を踏まえ、一般に、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられる。このため、区分処理する必要はないが、その他有価証券とした場合には、他の債券と同様に、まず償却原価法を適用し、その上で償却原価と時価との差額を評価差額として処理する(金融商品会計実務指針第74項)こととなる。
償却原価法の適用は、物価連動国債が、物価指数に係る組込デリバティブの経済的性格及びリスクが利付国債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるということを前提としていることから、物価連動国債における取得差額は、一般的に金利の調整差額によると考えられたことによる。
ここで、償却原価法を適用する場合、物価連動国債は想定元金額及び受取利息額が変動するため取得時点では確定していないので、想定元金額及び受取利息額を合理的に予測することが必要となる。この合理的に予測する方法として、本適用指針では、例えば、期末時点における残存期間が同程度の通常の国債の利回りと物価連動国債の予想利回りとの差額に基づいて見積られた想定元金額及び償還金額を用いて償却原価法(利息法又は定額法)を行い、同じ手法によって想定元金額及び償還金額を毎期見直す方法(見積りの変更であるため、当該年度以降の再計算に含める。)の他、期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法なども含まれるとしている。
なお、物価連動国債は、償還金額及び総受取利息金額のいずれも確定していないため、満期保有目的の債券として計上することはできないことに留意する必要がある。
2 シンセティック債務担保証券(CDO)等について
シンセティックCDOやクレジット・リンク債は、特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込むことによって組成された複合金融商品であり、当該複合金融商品全体の信用リスクが高くない場合には、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられるため、当該複合金融商品については区分処理しないものとした。本適用指針では、当該複合金融商品全体の信用リスクが高くない場合について、格付機関による格付けに基づいて満期保有目的の債券として設定した適格要件を満たしている場合や、これと同等程度の客観的な信頼性を確保し得る方法により判断されている場合を例示している。
なお、公開草案の段階では、複数の格付機関よりダブルA格相当以上を得ているような場合には、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低いものとして取り扱うことができるとしていたが、寄せられたコメントの意見を踏まえ、専門委員会での議論を経て修正したものである。
Ⅷ. その他
1 損益を調整する複合金融商品の処理について
これまでの金融商品会計実務指針では、損益を調整する複合金融商品については、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がない場合であっても区分処理することとされており、本適用指針では、これまでの金融商品会計実務指針の考え方を引き継ぐものとした。
この際、利付金融資産又は金融負債の中に金利、物価指数又は一定の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合には、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあるため、通常、償却原価法などを通じて毎期の損益は適切に計上されることとなる。このため、本適用指針では、組込デリバティブ(現物の利付金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるものを含む。)にレバレッジがかかっていることなどにより、損益を調整する複合金融商品が、区分処理するものに該当することを明確にすることとした。
2 区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額の表示
区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額は、これまでの金融商品会計実務指針と同様に、組み込まれた金融資産又は金融負債から生じた損益とは区分して表示する。
3 組込デリバティブを区分して測定することができない場合の会計処理
区分処理を行うべき複合金融商品について、組込デリバティブを合理的に区分して測定することができない場合には、これまでの金融商品会計実務指針と同様に、当該複合金融商品全体を一括して時価評価し、評価差額を当期の損益に計上する。
Ⅸ. 適用時期等
本適用指針は、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用する。ただし、平成18年3月31日以後終了する事業年度から適用することができる。この場合でも、正当な理由による会計方針の変更に該当するため、所定の注記が必要となることに留意する。
このため、例えば、本適用指針を平成18年4月1日に開始する事業年度から適用し、これまでの会計処理が変更される場合には、直近の事業年度末における貸借対照表日である平成18年3月31日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる。
また、本適用指針は、平成18年3月31日以後終了する事業年度から適用することができる。この早期適用により、例えば、本適用指針を平成18年3月31日に終了する事業年度から適用し、これまでの会計処理が変更される場合には、直近の貸借対照表日である平成17年3月31日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる。
本適用指針を適用することにより、これまでの会計処理を変更することとなる場合には、次のように取り扱うものとする。
(1)組込デリバティブを、組込対象である金融資産又は金融負債とは区分して時価評価し、評価差額を当期の損益とする処理を行っていたが、本適用指針を適用することにより、区分せず一体として処理することとなる場合、直近の事業年度末におけるそれぞれの貸借対照表価額の合計額を当該複合金融商品の取得原価として、金融商品会計基準及び金融商品会計実務指針により処理する。
(2)複合金融商品全体を時価評価し、評価差額を当期の損益とする処理を行っていたが、本適用指針を適用することにより、区分せず一体として処理することとなる場合、直近の事業年度末における貸借対照表価額を当該複合金融商品の取得原価として、金融商品会計基準及び金融商品会計実務指針により処理する。なお、この場合には、本適用指針が適用される時点において、売買目的有価証券に変更することにより、従前同様、評価差額を当期の損益に計上することができる。

企業会計基準適用指針第12号
「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」について
企業会計基準委員会 専門研究員 江藤栄作
Ⅰ. はじめに
企業会計基準委員会(ASBJ)では、平成18年3月30日に企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」(以下「本適用指針」という。)を公表した。本適用指針については、平成18年1月27日に公開草案を公表し、広くコメントの募集を行った後、ASBJにおいて寄せられたコメントを検討し、公開草案の修正を行った上で公表するに至ったものである。本稿では、本適用指針の概要について紹介するが、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添える。
Ⅱ. 本適用指針検討の背景と経緯
「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)及び「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)では、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性のあるその他の複合金融商品について、区分処理又は一体として時価評価することが要求されている。しかしながら、このような取扱いには、物価連動国債など、公表時には想定されていなかったその他の複合金融商品に対しては、必ずしも適切な会計処理とはいえないのではないかという意見も多かった。このため、ASBJでは、金融商品専門委員会における討議を含め、その他の複合金融商品の会計処理に関する審議を行い、今般、当該会計処理に関する本適用指針をとりまとめた。本適用指針は、現行の「金融商品に係る会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)の下で、その他の複合金融商品を適用する際の指針について一部見直しを行ったものである。
Ⅲ. 適用の範囲
本適用指針は、金融商品会計基準が適用される場合において、その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)(金融商品会計基準第六 二)の会計処理に適用する。その他の複合金融商品には、金利オプション付借入金のように現物の資産及び負債とデリバティブ取引が組み合わされたもの及びゼロ・コストオプションのように複数のデリバティブ取引が組み合わされたものがある。
Ⅳ. 「組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと」について
本適用指針では、金融商品会計実務指針は、これまでも一定の役割を果たしてきたことを踏まえ、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある場合とは、これまでと同様に、組込デリバティブのリスクが、契約上、当初元本にリスクが及ぶかどうかをもって判断するという考え方を引き継いでいる。ただし、組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にある場合には、前述したような指摘を踏まえ、一部見直しを行った。
Ⅴ. 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例
その他の複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とは区分せず一体として処理することとされている(金融商品会計基準第六 二)。一方で、金融商品会計意見書では、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある場合に、当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには、当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要であるとしている。これは、相場変動等による組込デリバティブの損失の可能性を当期の損益に適切に反映するためと考えられる。
これを踏まえ、本適用指針では、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるかどうかについて、次のように取り扱うこととした。
(1)組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にない場合には、これまでと同様に、組込デリバティブのリスクが、契約上、当初元本にリスクが及ぶかどうかをもって判断し、可能性の程度を評価するものとはしていない。
(2)組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある場合には、契約上、当初元本にリスクが及ぶ可能性があっても、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性はないものとして取り扱う。
このように、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるかどうかの判断について、まず、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にあるかどうかで区分している。
これまでの金融商品会計実務指針では、金利に係るデリバティブが組み込まれた場合、組込デリバティブの経済的性格及びリスクは、それが組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるため、通常そのリスクは現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないとしていたが、当該リスクが現物の金融資産又は金融負債の元本に及ぶ可能性がある場合は区分処理することとしていた。金利に係るデリバティブ以外のデリバティブが組み込まれた場合、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとは緊密な関係にないため、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるが、元本が確保されるような性格のデリバティブ取引を組み込む場合には、リスクが及ぶ可能性はないとしていた。したがって、これまでの金融商品会計実務指針では、組込デリバティブと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクの緊密な関係の有無をもって組込デリバティブの区分処理を行う判断基準とはせず、複合金融商品の契約内容が契約上の元本回収又は返済に影響を与えるか否かをもって区分処理の判断基準としていた(金融商品会計実務指針第191項、355項)。
本適用指針では、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債と緊密な関係にない場合には、これまでと同様に、組込デリバティブのリスクが、契約上、当初元本にリスクが及ぶかどうかをもって判断し、可能性の程度を評価するものとはしていない。一方、組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるものについては、契約上、当初元本にリスクが及ぶ可能性がある場合であっても、そのリスクが現物の金融資産又は金融負債のリスクに及ぶ可能性の程度をもって判断することとした。すなわち、緊密な関係にあるものについては、当初元本にリスクが及ぶかどうかを契約上の可能性の有無のみで判断するのではなく、当初元本に及ぶ可能性が低いといえる場合には、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないものとして取り扱うこととした。
Ⅵ. 緊密な関係にある組込デリバティブについて
本適用指針では、その他の複合金融商品において、金利に係るデリバティブの他、その経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある組込デリバティブについて検討し、その結果、以下の理由により、緊密な関係にある組込デリバティブは金利に係るものだけではなく、物価指数や一定の信用リスクに係るデリバティブも含まれるとした。
(1)物価指数に係るデリバティブについて
区分処理を必要としない変動利付金融資産又は金融負債においては、一般に、変動金利部分に物価水準の変動も含まれていることから、これらの経済的性格及びリスクとは緊密な関係にあると考えられる。国際的な会計基準においても同様に、物価指数に係るデリバティブについては金利と緊密な関係にあるものとしている。
(2)一定の信用リスクに係るデリバティブについて
利付金融資産又は金融負債には、債務者の信用リスクが含まれているため、当該債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあると考えられる。国際的な会計基準においても同様に、債務者自身の信用リスクに係るデリバティブについては、緊密な関係にあるものとしている。
また、第三者の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にないが、特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込んだ複合金融商品を発行している場合のように、当該複合金融商品が実質的に当該参照先の信用リスクを反映した利付金融資産と考えることができる場合には、債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合に準じて取り扱うこととした。
このような組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある場合には、これまでの金融商品会計実務指針のように、契約に照らして当初元本にリスクが及ぶかどうかではなく、当初元本に及ぶ可能性の程度を評価して、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があるかどうかを判断するものとした。
Ⅶ. 緊密な関係にある組込デリバティブを含む具体的商品について
ここで、緊密な関係にある組込デリバティブ商品として、本適用指針において示されている以下の2つの具体的な金融商品の会計処理について述べる。
1 物価連動国債について
物価連動国債とは、通常の固定利付の国債とは異なり、想定元金額及び受取利息額が、消費者物価指数(CPI)に連動する国債であり、CPIが増減することにより、想定元金額及び受取利息額も増減する。CPIが減少する場合には、元本割れするリスクを伴う複合金融商品であり、元本保証がついていない。したがって、これまでの金融商品会計実務指針によると、物価連動国債は、元本が減少する可能性のある物価指数に係るデリバティブを組み込んだ複合金融商品と考えられ、当該組込デリバティブ部分について区分処理又は当該複合金融商品全体を時価評価する必要がある。
しかしながら、物価連動国債は、これまでのCPIの動向等を踏まえ、一般に、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられる。このため、区分処理する必要はないが、その他有価証券とした場合には、他の債券と同様に、まず償却原価法を適用し、その上で償却原価と時価との差額を評価差額として処理する(金融商品会計実務指針第74項)こととなる。
償却原価法の適用は、物価連動国債が、物価指数に係る組込デリバティブの経済的性格及びリスクが利付国債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるということを前提としていることから、物価連動国債における取得差額は、一般的に金利の調整差額によると考えられたことによる。
ここで、償却原価法を適用する場合、物価連動国債は想定元金額及び受取利息額が変動するため取得時点では確定していないので、想定元金額及び受取利息額を合理的に予測することが必要となる。この合理的に予測する方法として、本適用指針では、例えば、期末時点における残存期間が同程度の通常の国債の利回りと物価連動国債の予想利回りとの差額に基づいて見積られた想定元金額及び償還金額を用いて償却原価法(利息法又は定額法)を行い、同じ手法によって想定元金額及び償還金額を毎期見直す方法(見積りの変更であるため、当該年度以降の再計算に含める。)の他、期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法なども含まれるとしている。
なお、物価連動国債は、償還金額及び総受取利息金額のいずれも確定していないため、満期保有目的の債券として計上することはできないことに留意する必要がある。
2 シンセティック債務担保証券(CDO)等について
シンセティックCDOやクレジット・リンク債は、特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込むことによって組成された複合金融商品であり、当該複合金融商品全体の信用リスクが高くない場合には、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられるため、当該複合金融商品については区分処理しないものとした。本適用指針では、当該複合金融商品全体の信用リスクが高くない場合について、格付機関による格付けに基づいて満期保有目的の債券として設定した適格要件を満たしている場合や、これと同等程度の客観的な信頼性を確保し得る方法により判断されている場合を例示している。
なお、公開草案の段階では、複数の格付機関よりダブルA格相当以上を得ているような場合には、組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低いものとして取り扱うことができるとしていたが、寄せられたコメントの意見を踏まえ、専門委員会での議論を経て修正したものである。
Ⅷ. その他
1 損益を調整する複合金融商品の処理について
これまでの金融商品会計実務指針では、損益を調整する複合金融商品については、組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がない場合であっても区分処理することとされており、本適用指針では、これまでの金融商品会計実務指針の考え方を引き継ぐものとした。
この際、利付金融資産又は金融負債の中に金利、物価指数又は一定の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合には、これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあるため、通常、償却原価法などを通じて毎期の損益は適切に計上されることとなる。このため、本適用指針では、組込デリバティブ(現物の利付金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるものを含む。)にレバレッジがかかっていることなどにより、損益を調整する複合金融商品が、区分処理するものに該当することを明確にすることとした。
2 区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額の表示
区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額は、これまでの金融商品会計実務指針と同様に、組み込まれた金融資産又は金融負債から生じた損益とは区分して表示する。
3 組込デリバティブを区分して測定することができない場合の会計処理
区分処理を行うべき複合金融商品について、組込デリバティブを合理的に区分して測定することができない場合には、これまでの金融商品会計実務指針と同様に、当該複合金融商品全体を一括して時価評価し、評価差額を当期の損益に計上する。
Ⅸ. 適用時期等
本適用指針は、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用する。ただし、平成18年3月31日以後終了する事業年度から適用することができる。この場合でも、正当な理由による会計方針の変更に該当するため、所定の注記が必要となることに留意する。
このため、例えば、本適用指針を平成18年4月1日に開始する事業年度から適用し、これまでの会計処理が変更される場合には、直近の事業年度末における貸借対照表日である平成18年3月31日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる。
また、本適用指針は、平成18年3月31日以後終了する事業年度から適用することができる。この早期適用により、例えば、本適用指針を平成18年3月31日に終了する事業年度から適用し、これまでの会計処理が変更される場合には、直近の貸借対照表日である平成17年3月31日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる。
本適用指針を適用することにより、これまでの会計処理を変更することとなる場合には、次のように取り扱うものとする。
(1)組込デリバティブを、組込対象である金融資産又は金融負債とは区分して時価評価し、評価差額を当期の損益とする処理を行っていたが、本適用指針を適用することにより、区分せず一体として処理することとなる場合、直近の事業年度末におけるそれぞれの貸借対照表価額の合計額を当該複合金融商品の取得原価として、金融商品会計基準及び金融商品会計実務指針により処理する。
(2)複合金融商品全体を時価評価し、評価差額を当期の損益とする処理を行っていたが、本適用指針を適用することにより、区分せず一体として処理することとなる場合、直近の事業年度末における貸借対照表価額を当該複合金融商品の取得原価として、金融商品会計基準及び金融商品会計実務指針により処理する。なお、この場合には、本適用指針が適用される時点において、売買目的有価証券に変更することにより、従前同様、評価差額を当期の損益に計上することができる。

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