解説記事2006年06月26日 【ニュース特集】 投資事業組合に対する支配力基準を読み解く(2006年6月26日号・№168)
ニュース特集
金融庁では投資事業組合の実態を調査
投資事業組合に対する支配力基準を読み解く
企業会計基準委員会は6月6日、実務対応報告公開草案第24号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い(案)」を公表した。自民党の金融調査会と金融調査会企業会計に関する小委員会が2月17日にまとめた「公正で透明な市場の構築に向けて」と題する提言において、投資事業組合等に係る連結会計基準の明確化について企業会計基準委員会などに対し早急な検討が求められていたことに対応するもの(本誌152号4頁参照)。6月30日まで意見募集した後、正式決定する。
1 業務執行権により判断
現行の会計基準においても、会社と同じく投資事業組合等には支配力基準及び影響力基準が適用され、連結や持分法の対象になるかどうかが判断されるが、今回のライブドアの証券取引法違反事件を受け、取扱いを明確化するものだ。

「連結財務諸表原則」および「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」によると、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配していることとは、①他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有している場合、②他の会社等の議決権の100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において所有している会社であって、かつ、当該他の会社等の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合、③自己の計算において所有している議決権と、緊密な者(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者)及び同意している者(自己の意思と同一の内容の議決権を行使していることに同意している者)が所有している議決権とを合わせて、他の会社等の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合とされている。
今回の実務対応報告では、現行の基準を投資事業組合のケースに置き換え、具体的な適用を明確化している。投資事業組合の場合は、業務執行権により判断することになる。具体的には、投資事業組合の資金調達額の総額の概ね過半について融資及び出資を行っていることなどの要件に該当すれば、子会社として連結の範囲に含められることになる(前頁下欄参照)。
投資事業組合が子会社に該当する要件
(1)業務執行権(財務及び営業又は事業の方針を決定する権利)全体のうち、その過半の割合を自己(自己の子会社等を含む)の計算において有している場合
(2)業務執行権全体のうち、100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において有している場合で、次のいずれかの要件に該当する場合
① 自己の計算において有している業務執行権と緊密な者及び同意している者が有している業務執行権とを合わせて、過半の割合を占めていること
② 投資事業組合の重要な財産及び営業又は事業の方針決定を支配する契約があること
③ 投資事業組合の資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているもの)の総額の概ね過半について融資を行っていること
④ 投資事業組合の資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているものに限らず)の総額の概ね過半について融資及び出資を行っていること
⑤ 投資事業から生ずる利益又は損失の概ね過半について享受又は負担することになっていること
⑥ 投資事業組合の業務執行(財務及び営業又は事業の方針)の決定を左右すると推測される事実があること
(3)自己の計算において有している投資事業組合の業務執行権と緊密な者及び同意している者が有している業務執行権とを合わせて、当該投資事業組合の業務執行権の過半の割合を占め、上記(2)の②から⑥までのいずれかの要件に該当する場合
2 金融庁は上場企業などに対して保有状況や開示状況を審査
会計基準の明確化以外にも、投資事業組合に対しては、風当たりが強いものとなっている。6月14日に公布された証券取引法等の一部を改正する法律では、投資ファンド等に対して登録制とすることや開示の規制強化などが盛り込まれている。
平成18年3月期決算においては、日本公認会計士協会が投資事業組合に対して、監査上、取引の形式にとらわれず、連結の範囲に含めるかどうか、実質判断を行う必要がある旨を会員である公認会計士に対して通知している。また、金融庁では、上場企業など、有価証券報告書提出企業に対して、投資事業組合等に係る連結の状況を重点審査する方針を明らかにしている。企業から調査票を集め、投資事業組合等の保有状況や開示状況などをチェックする。
その他、国税庁でも5月に開催された全国国税局調査査察部長会議において、投資事業組合等に対する情報管理を強化する旨が確認されている。
COLUMN ASB、今後はSPEの開示を検討
企業会計基準委員会では、今後、特別目的会社(SPE)に関する開示について検討していく方針だ。特別目的会社などを利用した取引が急拡大するとともに、複雑化、多様化しており、当該取引に係る会計処理に関する企業及び監査人の判断が難しくなっていることが背景にある。
投資事業組合と同じく特別目的会社についても、子会社に該当するかどうかは、支配力基準が採用されている。しかし、①事業内容の変更が制限されていること、②適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されていること、③特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されていることの事業内容の変更が制限されているという3つの要件を満たせば、子会社に該当しない取扱いが認められている(「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」三)。このため、投資事業組合よりも特別目的会社の方に問題があるとの認識がある。
企業会計基準委員会では、特別目的会社について、短期的な対応と中長期間の対応の二段構えで検討する方針を確認しており、当面は開示を中心とした検討を行っていく。
6月5日に開催された特別目的会社専門委員会では、例えば、①SPEの概要(名称、所在地、設立時期、目的及び活動内容、規模(資産総額や負債総額、当期純利益)など)、②SPEとの関係(議決権等の所有割合、役員の兼任など)、③SPEとの取引の内容(資産の譲渡取引、回収業務、資金取引、債務保証、担保取引など)、④SPEとの取引の種類別の取引金額、⑤SPEとの取引条件及び取引条件の決定方針、⑥SPEとの取引により発生した取引に係る主な科目別の期末残高、⑦取引条件の変更があった場合は、その旨、変更内容、当該変更が財務諸表に与えている影響内容などを開示する項目として挙げている。
金融庁では投資事業組合の実態を調査
投資事業組合に対する支配力基準を読み解く
企業会計基準委員会は6月6日、実務対応報告公開草案第24号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い(案)」を公表した。自民党の金融調査会と金融調査会企業会計に関する小委員会が2月17日にまとめた「公正で透明な市場の構築に向けて」と題する提言において、投資事業組合等に係る連結会計基準の明確化について企業会計基準委員会などに対し早急な検討が求められていたことに対応するもの(本誌152号4頁参照)。6月30日まで意見募集した後、正式決定する。
1 業務執行権により判断
現行の会計基準においても、会社と同じく投資事業組合等には支配力基準及び影響力基準が適用され、連結や持分法の対象になるかどうかが判断されるが、今回のライブドアの証券取引法違反事件を受け、取扱いを明確化するものだ。

「連結財務諸表原則」および「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」によると、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配していることとは、①他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有している場合、②他の会社等の議決権の100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において所有している会社であって、かつ、当該他の会社等の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合、③自己の計算において所有している議決権と、緊密な者(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者)及び同意している者(自己の意思と同一の内容の議決権を行使していることに同意している者)が所有している議決権とを合わせて、他の会社等の意思決定機関を支配している一定の事実が認められる場合とされている。
今回の実務対応報告では、現行の基準を投資事業組合のケースに置き換え、具体的な適用を明確化している。投資事業組合の場合は、業務執行権により判断することになる。具体的には、投資事業組合の資金調達額の総額の概ね過半について融資及び出資を行っていることなどの要件に該当すれば、子会社として連結の範囲に含められることになる(前頁下欄参照)。
投資事業組合が子会社に該当する要件
(1)業務執行権(財務及び営業又は事業の方針を決定する権利)全体のうち、その過半の割合を自己(自己の子会社等を含む)の計算において有している場合
(2)業務執行権全体のうち、100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において有している場合で、次のいずれかの要件に該当する場合
① 自己の計算において有している業務執行権と緊密な者及び同意している者が有している業務執行権とを合わせて、過半の割合を占めていること
② 投資事業組合の重要な財産及び営業又は事業の方針決定を支配する契約があること
③ 投資事業組合の資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているもの)の総額の概ね過半について融資を行っていること
④ 投資事業組合の資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているものに限らず)の総額の概ね過半について融資及び出資を行っていること
⑤ 投資事業から生ずる利益又は損失の概ね過半について享受又は負担することになっていること
⑥ 投資事業組合の業務執行(財務及び営業又は事業の方針)の決定を左右すると推測される事実があること
(3)自己の計算において有している投資事業組合の業務執行権と緊密な者及び同意している者が有している業務執行権とを合わせて、当該投資事業組合の業務執行権の過半の割合を占め、上記(2)の②から⑥までのいずれかの要件に該当する場合
2 金融庁は上場企業などに対して保有状況や開示状況を審査
会計基準の明確化以外にも、投資事業組合に対しては、風当たりが強いものとなっている。6月14日に公布された証券取引法等の一部を改正する法律では、投資ファンド等に対して登録制とすることや開示の規制強化などが盛り込まれている。
平成18年3月期決算においては、日本公認会計士協会が投資事業組合に対して、監査上、取引の形式にとらわれず、連結の範囲に含めるかどうか、実質判断を行う必要がある旨を会員である公認会計士に対して通知している。また、金融庁では、上場企業など、有価証券報告書提出企業に対して、投資事業組合等に係る連結の状況を重点審査する方針を明らかにしている。企業から調査票を集め、投資事業組合等の保有状況や開示状況などをチェックする。
その他、国税庁でも5月に開催された全国国税局調査査察部長会議において、投資事業組合等に対する情報管理を強化する旨が確認されている。
COLUMN ASB、今後はSPEの開示を検討
企業会計基準委員会では、今後、特別目的会社(SPE)に関する開示について検討していく方針だ。特別目的会社などを利用した取引が急拡大するとともに、複雑化、多様化しており、当該取引に係る会計処理に関する企業及び監査人の判断が難しくなっていることが背景にある。
投資事業組合と同じく特別目的会社についても、子会社に該当するかどうかは、支配力基準が採用されている。しかし、①事業内容の変更が制限されていること、②適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されていること、③特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されていることの事業内容の変更が制限されているという3つの要件を満たせば、子会社に該当しない取扱いが認められている(「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」三)。このため、投資事業組合よりも特別目的会社の方に問題があるとの認識がある。
企業会計基準委員会では、特別目的会社について、短期的な対応と中長期間の対応の二段構えで検討する方針を確認しており、当面は開示を中心とした検討を行っていく。
6月5日に開催された特別目的会社専門委員会では、例えば、①SPEの概要(名称、所在地、設立時期、目的及び活動内容、規模(資産総額や負債総額、当期純利益)など)、②SPEとの関係(議決権等の所有割合、役員の兼任など)、③SPEとの取引の内容(資産の譲渡取引、回収業務、資金取引、債務保証、担保取引など)、④SPEとの取引の種類別の取引金額、⑤SPEとの取引条件及び取引条件の決定方針、⑥SPEとの取引により発生した取引に係る主な科目別の期末残高、⑦取引条件の変更があった場合は、その旨、変更内容、当該変更が財務諸表に与えている影響内容などを開示する項目として挙げている。
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