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解説記事2006年07月03日 【ニュース特集】 低価法に一本化する棚卸資産の評価の会計基準(2006年7月3日号・№169)

ニュース特集
平成20年4月1日以後開始事業年度から適用へ
低価法に一本化する棚卸資産の評価の会計基準



 低価法に一本化する企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(名称が「棚卸資産の評価原則に関する会計基準」から変更された)の概要が6月22日、明らかになった(本誌163号26頁参照)。6月30日の企業会計基準委員会(ASB)で決定され、7月5日に公表される予定だ。4月14日に公表された公開草案からの内容面での大きな変更点はないが、適用時期が平成20年4月1日以後開始事業年度からと1年先送りされている(早期適用は可能)。なお、適用指針については、現時点では策定しない方向となっている。今回の特集では、棚卸資産の評価に関する会計基準の概要についてお伝えする。

1 すべての会社における棚卸資産の評価基準および開示に適用

 棚卸資産については、原価法と低価法との選択適用となっている。しかし、米国会計基準や国際会計基準については、低価法が強制適用されており、国際会計基準審議会(IASB)と検討している国際会計基準とのコンバージェンス(会計基準の統合)でも検討項目の一つになっている。このため、企業会計基準委員会では、低価法に一本化する方向で検討を行っていたものだ(図1参照)。
 今回の会計基準はすべての企業における棚卸資産の評価基準および開示について適用される。
 通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準では、取得原価をもって貸借対照表価額とする。期末の正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、収益性が低下していると判断し、正味売却価額を貸借対照表価額とする。この場合の正味売却価額とは、売価(売却市場における時価)から見積追加製造原価および見積販売直接経費を控除したものをいう。
継続適用で洗替え法と切放し法の選択可能
 なお、継続適用を原則として、棚卸資産の種類ごと、簿価切下げの要因ごと(物理的な劣化、経済的な劣化、市場の需給変化に起因する売価の低下)に前期の簿価切下額の戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)を選択できる。
臨時的な簿価切下額は特別損失に計上
 損益計算書における表示については、従来の会計基準等に基づく品質低下損、陳腐化評価損と低価法評価損を会計処理上は区分せずに取り扱うこととしている。
 このため、収益性の低下による簿価切下額は売上原価とし、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生するものである場合は、製造原価として処理する。ただし、収益性の低下に基づく簿価切下額が①重要な事業部門の閉鎖、②災害損失の発生といった臨時の事象に起因し、かつ、多額である場合は、特別損失に計上する。なお、この場合には、洗替え法を適用しても簿価切下げの戻入れを行うことはできない。
 収益性の低下に基づく簿価切下額(洗替え法による戻入額を含む)については、金額に重要性がない場合以外であれば、注記または売上原価等の内訳科目として独立掲記する方法で示すことになる。
トレーディング目的の棚卸資産は時価
 トレーディング目的で保有する棚卸資産については、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は、当期の損益としている。また、この損益については、純額で売上高に表示することになる。


2 早期適用の取扱いを明確化

 適用時期については、平成20年4月1日以後開始事業年度からとされている(早期適用可能)。当初は、平成19年4月1日以後開始事業年度から(早期適用可能)とされていたが、公開草案に寄せられたコメントを踏まえ、変更している。システム開発や子会社・関連会社への指導など、企業における実務上の負担を考慮したものである。
 しかし、問題は早期適用についての取扱いだ。企業の中には、平成19年4月1日以後開始事業年度からの適用を見据えて、すでに対応を行っているところもあるからだ。このため、企業会計基準委員会では、早期適用における取扱いの明確化を図る必要があると判断。今回の会計基準に早期適用の取扱いの規定を設ける方向だ。
 具体的には、①棚卸資産会計基準の一部適用の可否、②親子会社の一括適用の要否、③早期適用の時期についての3点である。
 ①については、通常の販売目的の棚卸資産の会計処理とトレーディング目的の棚卸資産の会計処理に関し、いずれか一方に限っての早期適用は認めない方向だ。
 また、②については、個別財務諸表と連結財務諸表の両者について同時に適用する方針。このため、早期適用する場合には、子会社の棚卸資産も低価法に一本化する必要が生じることになる。
本決算からの早期適用も可能だが注記が必要
 ③の早期適用の時期については、たとえば、3月期決算会社の場合であれば、①平成18年9月中間期、②平成19年3月期、③平成19年9月中間期、④平成20年3月期からの早期適用が考えられる(図2参照)。
 このうち、②および④の場合、中間決算では、棚卸資産の評価に関する会計基準を適用せずに、本決算から適用することになるが、このケースでも早期適用を認める方向。ただし、中間決算の際に適用しなかった理由や当中間決算で棚卸資産の評価に関する会計基準を採用した場合の中間財務諸表に与える影響額を注記することが求められている。なお、この場合であっても、簿価切下額が多額に発生し、それが期首の棚卸資産に係るものである場合には、特別損失に計上することができるが、仮に洗替え法を適用していても簿価切下額の戻入れはできないことになっている。


column 低価法一本化で税務上の取扱いにも影響
 日本の場合、棚卸資産については、原価法と低価法との選択適用となっているものの、企業会計基準委員会によると、東証1部上場企業の約8割が原価法を採用している。このため、低価法に一本化するという今回の会計基準は企業側にとっては影響の大きいものとなる。さらに、これ以上に影響が大きいと思われるのが税務上の取扱いだ。
 会計上の原価法が廃止されたことに伴い、税務上の原価法も廃止されるのかという根本的な問題のほか、低価法を適用した場合における収益性の低下の判断や簿価切下げのための評価額については、会計上、原則として、正味売却価額が採用されているが、税務上における評価額との乖離も見受けられるなどの問題点が指摘されている。今後、税務上の取扱いがどうなるのか、注目される点といえる。

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