コラム2006年11月13日 【ML耳より情報】 自己株式の無償取得と受贈益課税(2006年11月13日号・№186)
自己株式の無償取得と受贈益課税
自己株式の取得についての取扱いの改正経緯
平成13年の商法改正により、自己株式の取得と保有が原則として自由化されたことに伴い、自己株式の取得は資産の取得ではなく、払込資本の払戻しとされました。そのため、自己株式を無償で取得した場合、商法改正前は時価で受贈益を計上し、資産としての自己株式を計上する必要がありましたが、改正後は払込資本の払戻しであるため、受贈益の計上はされなくなりました。
これに対し税務上は、自己株式取得の対価の内、資本等の金額に対応する額は自己株式の税務上の取得価額とされ、それを超える額はみなし配当とされました(改正前法法24条1項5号)。つまり、商法改正にもかかわらず、税務上は自己株式の取得を資産の取得とする取扱いが継続されたのです。そのため、自己株式を無償で取得した場合、税務上は無償による資産の取得として、受贈益を計上し、時価で自己株式を資産計上する必要があるというのが通説でした。
平成18年度税制改正による取扱いの変更
平成18年度税制改正で、資本金等の額の払戻し部分は、自己株式の取得時に資本金等の額を直接減額することとされました(法令8条1項20号)。それを超える額がみなし配当とされるのは同じです。自己株式の取得時に資本金等の額と利益積立金の両方を同時に減額するということですから、税務上も会計上と同じく、自己株式の取得を払込資本の払戻しとすることに変更したということです。
会社法の施行に伴う法人税法の改正時に、自己株式の取得を払込資本の払戻しとする会計と、資産の取得とする税務の乖離を一致させることとしたと考えられます。
自己株式の無償取得と受贈益課税の有無
自己株式の取得が税務上も資産の取得でなくなったため、平成18年度税制改正前の自己株式の無償取得時に受贈益が計上される根拠であった、益金の額に算入すべき無償による資産の譲受け(法法22条2項)の規定は適用されなくなったと考えられ、その結果、少なくとも現在の条文上からは、自己株式の無償取得には、受贈益課税はされないと考えられます。
しかし、平成18年度税制改正後も、発行会社にとっての自己株式は有価証券でなくなったものの(法法2条21号)、株式として資産であることに変わりはなく、自己株式の無償取得には受贈益課税がされるとする見解も公表されています。
この場合にポイントとなるのが、発行会社にとっての自己株式が資産なのかどうかということです。株主にとっての株式が資産であることは明らかですが、発行会社にとっての自己株式の取得は、平成18年度税制改正により、資産の取得から払込資本の払戻しへと変更されたはずです。改正後も自己株式の無償取得に受贈益課税がされるとすれば、自己株式取得時に資本金等の額および利益積立金を減少させるという改正は、どのような意味を持つのでしょうか。
taxMLグループ 公認会計士・税理士 荻野芳夫
自己株式の取得についての取扱いの改正経緯
平成13年の商法改正により、自己株式の取得と保有が原則として自由化されたことに伴い、自己株式の取得は資産の取得ではなく、払込資本の払戻しとされました。そのため、自己株式を無償で取得した場合、商法改正前は時価で受贈益を計上し、資産としての自己株式を計上する必要がありましたが、改正後は払込資本の払戻しであるため、受贈益の計上はされなくなりました。
これに対し税務上は、自己株式取得の対価の内、資本等の金額に対応する額は自己株式の税務上の取得価額とされ、それを超える額はみなし配当とされました(改正前法法24条1項5号)。つまり、商法改正にもかかわらず、税務上は自己株式の取得を資産の取得とする取扱いが継続されたのです。そのため、自己株式を無償で取得した場合、税務上は無償による資産の取得として、受贈益を計上し、時価で自己株式を資産計上する必要があるというのが通説でした。
平成18年度税制改正による取扱いの変更
平成18年度税制改正で、資本金等の額の払戻し部分は、自己株式の取得時に資本金等の額を直接減額することとされました(法令8条1項20号)。それを超える額がみなし配当とされるのは同じです。自己株式の取得時に資本金等の額と利益積立金の両方を同時に減額するということですから、税務上も会計上と同じく、自己株式の取得を払込資本の払戻しとすることに変更したということです。
会社法の施行に伴う法人税法の改正時に、自己株式の取得を払込資本の払戻しとする会計と、資産の取得とする税務の乖離を一致させることとしたと考えられます。
自己株式の無償取得と受贈益課税の有無
自己株式の取得が税務上も資産の取得でなくなったため、平成18年度税制改正前の自己株式の無償取得時に受贈益が計上される根拠であった、益金の額に算入すべき無償による資産の譲受け(法法22条2項)の規定は適用されなくなったと考えられ、その結果、少なくとも現在の条文上からは、自己株式の無償取得には、受贈益課税はされないと考えられます。
しかし、平成18年度税制改正後も、発行会社にとっての自己株式は有価証券でなくなったものの(法法2条21号)、株式として資産であることに変わりはなく、自己株式の無償取得には受贈益課税がされるとする見解も公表されています。
この場合にポイントとなるのが、発行会社にとっての自己株式が資産なのかどうかということです。株主にとっての株式が資産であることは明らかですが、発行会社にとっての自己株式の取得は、平成18年度税制改正により、資産の取得から払込資本の払戻しへと変更されたはずです。改正後も自己株式の無償取得に受贈益課税がされるとすれば、自己株式取得時に資本金等の額および利益積立金を減少させるという改正は、どのような意味を持つのでしょうか。
taxMLグループ 公認会計士・税理士 荻野芳夫
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