コラム2006年12月04日 【ML耳より情報】 指定管理者制度の税務について(2006年12月4日号・№189)

ML耳より情報
指定管理者制度の税務について

管理委託制度から指定管理制度へ
 公益法人等に税務調査が入り、税務処理のミスを指摘される事例が増えています。地方自治体が設置する老人デイサービスセンターや病院などの「公の施設」の管理が、今までの管理委託制度から指定管理者制度に移行したこととあわせて、課税に対する関心が高まっています。

指定管理者の税務ポイント
 公益法人等では、収益事業課税が採用されています。管理委託制度のもとでは、受託する施設の管理について必要な経費の支弁を受けるだけでした。剰余金が生じた場合でも地方自治体に返還する義務があり、収益事業課税が問題になるケースはほとんどありませんでした。指定管理制度では、株式会社やNPO法人なども指定管理者になれることから、剰余金の返還義務がない協定関係もあります。指定管理事業が、収益事業に該当するかの判定が重要です。
 指定管理は基本的に、法人税法上の「請負」と解されて収益事業になります。「請負」では、国または地方公共団体の事務処理を委託された法人が自ら行い、委託の対価が事務処理のために必要な費用を超えないことが法令の規定により明らかな場合は、収益事業ではないものとされます。予め所轄税務署長の確認を受ける必要があり、確認を受けることで法人税の申告義務が一定期間免除されます。従来の管理委託制度は法律で実費弁償方式であることが明らかでしたので、税務署長への確認の必要性は曖昧でした。しかし、指定管理制度では、実費弁償の確認を受けなければ、これまでと同様には申告が免除されません。指定管理では実費弁償方式であるかどうかについて、必要な費用を超えないかを判断する資料は地方自治体と締結する協定書です。協定書のなかで、指定管理で生じた剰余金を地方自治体に返還する内容の剰余金返還特約などを定めているかがポイントとなります。
 なお、指定を受ける事業の性格により、法令5条に掲げる他の特掲事業によって収益事業か否かを判定すべき場合は、請負業ではなく、該当する特掲事業の収益事業になるか否かを判定します。一例を挙げれば、介護保険法に基づく人的な介護サービス事業は請負業ではなく医療保健業に該当しますが、医療保健業では指定管理を受ける法人の種類により収益事業とされるかどうかが異なります。NPO法人が医療保健業に該当する介護施設の指定管理を受けると収益事業になりますが、社会福祉法人が同じ指定管理を受けても収益事業とはなりません。

実費弁償方式の確認手続をする
 受託する指定管理が収益事業に該当するか否かにつき指定管理の事業内容、自治体と交わした協定書の中身についても吟味すべきです。たとえ実費弁償であっても税務署長の確認手続を失念すると、法人税の申告義務はありますので注意が必要です。これまでの管理委託制度の延長で納税義務がないだろうと高を括っていては、税務調査の時になってとんでもない税負担を強いられる危険性すらあります。

  taxMLグループ 税理士 佐藤増彦

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