カートの中身空

税務ニュース2004年04月26日 東京地裁民事3部、アメリカ大使館事件にケースバイケースの判断(2004年4月26日号・№064) 慣例に従ったものは、「偽りなどの不正行為」とまではいえず

東京地裁民事3部、アメリカ大使館事件にケースバイケースの判断
慣例に従ったものは、「偽りなどの不正行為」とまではいえず


 東京地裁民事3部(藤山雅行裁判長)は、4月19日、在日アメリカ大使館の日本人職員に支給された給与について、その一部だけが申告されたことに対し、国税通則法第70条5項(偽りその他不正の行為)が適用され、7年分の追徴課税処分が行われたため、『偽りその他不正の行為』の適用を主な争点として争われていた事件で、5人の原告の内3人について追徴課税の取消請求を認め(一部認容を含む)、残る2人の請求を棄却した。

事件の概要・アメリカ大使館事件
 在日外国公館の日本人職員に支給される給与については、その外国公館には源泉徴収義務がない。そのため、日本人職員は当該給与について確定申告を行うが、米国大使館から支給される給与には、ベース部分とフリンジベネフィット部分があるとされていた。これについては、昭和30年頃に行われた米国大使館と国税当局の折衝で、米国大使館からの給与には、社会保険料等がないため、一般的には40%がフリンジベネフィットに対応する部分とする了解があったとされている。日本人職員の間では、当該フリンジベネフィット部分については、非課税であり、確定申告の対象とならないという内部的な言い伝えがあり、原告らは、給与の一部について、確定申告を行っていた。
 所得税法等の根拠を有しない「非課税給とする取扱い」が発覚した時点では、日刊紙等にも大きく報道されたが、米国大使からは、「日本人職員の過去の課税処理に当たっては、上記のような背景に配慮してほしい。」との要望が国税庁長官に寄せられた。これに対し、国税庁は、「特定の納税者に対し、特別な取扱いをすることはありえない。」ことを米国大使館側に回答した。
 本件では、課税当局は、重加算税の対象とはしなかったものの、国税通則法第70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」により、7年分の追徴課税を行った。
 原告らは、確定申告の計算自体については、当該非課税部分について誤りを認めているものの、「偽りその他不正の行為」が行われたとして、「過少申告の場合の3年分を超える7年分の追徴課税が行われたこと」の取消等を請求していた。

慣例の存在を認め、慣例を超えた過少申告については棄却
 藤山裁判長は、「国税当局とアメリカ大使館との合意に基づいて、給与全体の6割程度を申告する慣例があった」と認定し、「3人は、慣例に従っただけで偽りなどの不正行為があったとはいえない。」として、追徴課税処分を取消したが、2人については、「慣例を超えた過少申告があった。」として、請求を棄却した。昨年末には同種の事件で、大阪地裁は国側勝訴としていた。 
 

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