解説記事2007年01月15日 【最新判決研究】 ストックオプション権利行使益の一時所得申告における「正当な理由」(2007年1月15日号・№194)
最新判決研究
ストックオプション権利行使益の一時所得申告における「正当な理由」
最高裁第三小法廷平成16年(行ヒ)第317号 平成18年10月24日判決
東京高裁平成14年(行コ)第313号 平成16年8月4日判決
東京地裁平成13年(行ウ)第44号、212号 平成14年11月26日判決
品川芳宣
早稲田大学大学院客員教授(専任)
筑波大学名誉教授
一、事実
(1)X(原告、被控訴人、上告人)は、C会社の従業員として勤務していた者であるが、同社在職中に、同社の発行済み株式の全部を有している米国法人である親会社(以下「米国親会社」という。)からそのストックオプション制度に基づきストックオプション(以下「本件ストックオプション」という。)を付与された。Xは、これを行使して、平成8年に3,517万円余の、同9年に1,442万円余の、同10年に2億1,046万円余の、同11年に2,003万円余の各権利行使益(以下「本件権利行使益」という。)を得た。
Xは、平成9年3月5日に平成8年分所得税について、同10年3月9日に同9年分の所得税について、同11年3月8日に同10年分所得税について、同12年3月15日に同11年分所得税について、それぞれ一時所得に当たるとして確定申告をした。
(2)これに対し、Y(被告、控訴人、被上告人)税務署長は、平成12年3月9日、同8年分ないし同10年分所得税について各年分の本件権利行使益が給与所得に当たるとしてそれぞれ増額更正をした。次いで、Yは、同12年11月8日、同11年分所得税について同年分の本件権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正を行うとともに、過少申告加算税の賦課決定(以下「本件賦課決定」という。)をした。
Xは、前記各年分の増額更正と本件賦課決定を不服として、本訴を提起したのであるが、本件権利行使益に係る所得区分の争いが最高裁平成17年1月25日第三小法廷判決(民集59巻1号64頁)(以下「最高裁平成17年判決」という。)において解決されたため、本件上告審においては、専ら本件賦課決定の違法性を争うこととなった。
そこで、本稿においては、所得区分については下級審の結論部分を紹介するにとどめ、専ら本件賦課決定の適否に関して論じることとする。
二、争点と当事者の主張
1 争 点
(1)本件権利行使益に係る所得区分(給与所得に当たるか、一時所得に当たるか)
(2)本件賦課決定の適否(Xが本件権利行使益を一時所得として申告(過少申告)したことに国税通則法65条4項に定める「正当な理由」が存するか否か)
2 Xの主張
(1)海外親会社が日本子会社の役員や従業員に付与したストックオプションを権利行使することで得られる利益の所得区分について、これを明確に定めた法律・通達は一切存在しない。また、Xが平成11年分所得税の確定申告をしたのは平成12年3月15日であるが、この当時において、ストックオプションに権利行使益がいかなる所得区分に該当するかについて最高裁判所の判断はなされていなかった。
のみならず、課税庁は、昭和59年に外資系企業の照会に対して一時所得である旨回答して以降、内部において給与所得に見解を変更したとされる平成10年ころに至るまで、過去10年以上にわたって、一時所得という見解を採用しており、多くの税務署においても一時所得で申告・納税するよう指導がなされていた。
また、課税当局の担当者が執筆している所得税質疑応答集においても、平成10年版で突如給与所得であるという説明に変更するまで、一時所得であるという回答をした説明が維持されていた。この記載の変更が平成10年版で突如なされたことについて、その理由などの説明は一切なされていない。
(2)さらに、課税庁は、平成10年ころに給与所得という見解に変更したというが、突如の見解変更について、その法的根拠や理由等について課税の現場である税務署等においても、何ら説明はなされていない。「なぜ見解が変わったのですか」という納税者の問いに正面から答えた税務署職員など皆無だったのである。また、課税庁は、見解変更を周知徹底するといったアナウンスも公的には行っていなかった。具体的な通達改正は、平成14年6月になってからである。
こうした状況下でなされた平成12年3月当時においては、いったいどの所得区分で申告すればよいのか。納税者には判断ができないほど混乱が生じていた。こうした混乱状況をつくった責任は課税庁にある。
3 Yの主張
(1)申告納税方式の下においては、法により納付すべき税額を適正に申告し、これを納税した者と、適正な申告を怠り、税額の過少な申告をした者との経済的負担を同じにすると、結果的に適正な申告をした者の方が有利にはならず、かえって更正処分などが行われない限り過少な申告をした者の方が有利になるという不公平が生じる。そこで、国税通則法は、過少申告加算税制度を設け、過少な申告をした納税者については、一定の割合の経済的負担を課すことによって、不公平が発生しないようにしたものである。そして、これにより、申告納税制度に対する信用を保ち、適正な期限内申告の実現を図ることにしている。
(2)ところで、Xの主張するように、課税庁とは異なる解釈にも相当の根拠があることをもって、過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」に当たると解するのであれば、納税者が自己に有利な解釈を採用し、その解釈が客観的に誤っている場合であっても、これに基づいて過少な申告をしても何の不利益も課されないことになる。そうすると、このような納税者と、当初から適正な税額を申告して納税した納税者とを同列に取り扱うという不公平な結果を招くことになる。しかし、このような事態は、申告納税制度の信用を保ち、これによって、適正な期限内申告の実現を図ろうとする過少申告加算税の制度趣旨を根底から揺るがすものであり、容認できるものではない。
(3)本件において、Xは、所得税の納税申告において、本件のような権利行使利益を給与所得とする課税庁の申告時の取扱いを十分認識しながら、自らの法解釈に基づいて権利行使益を一時所得として過少な申告をしたものであり、客観的にも、Xの解釈が誤りで、課税庁の取扱いが法律に従ったものであった以上、Xに国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
三、一審判決要旨
請求認容。
(1)本件権利行使益は、Xの就労の対価ではなく、その投資判断に基づく偶然的、偶発的所得であって、勤労性所得ではなく、ストックオプションという期待権に基づく資産性所得であり、回帰的に発生するとは限らないものとみるべきものであって、給与所得や雑所得とは異なっており、一時所得であるというほかないものである。
(2)本件各年分所得税に係る各更正に本件権利行使益の所得区分を誤ったという違法な点がある以上、それを前提にしてされた本件賦課決定も違法ということになる。
四、控訴審判決要旨
原判決取消し(請求棄却)。
(1)被付与者である従業員が行使した本件ストックオプションは、当該従業員と付与会社である米国親会社との間において締結されたストックオプション付与契約に基づいて付与会社から当該従業員に対して与えられたものであるところ、米国親会社は、当該従業員が権利行使をすることによって、当該従業員に対して権利行使益に相当する含み益を取得させることになる場合があることを、付与契約の当然の内容として了解していたということができる。そうとすれば、ストックオプションを行使したことによる権利行使益は、ストックオプションが付与された従業員等が付与会社から受ける給付であるというべきであり、これを本件についていえば、本件権利行使益はXが米国親会社から受け取った給付であるというべきである。
(2)所得税法上の給与所得該当性については、あくまで、従業員等が雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮に服して提供した労務の対価として当該給付を受けたものかどうかによって給与所得該当性を判断すべきである。そうすると、本件においては、米国親会社は、その100パーセント子会社であるC会社との特殊な関係を前提として、三者間の明示、黙示の合意に基づいてC会社の従業員の就労、貢献が米国親会社の業績向上にもつながり得ることを期待する一方、同従業員に対する給与を補完するものとして本件ストックオプションを付与したものと認めることができるのであって、このような場合においては勤務先のC会社ではなく、米国親会社から本件ストックオプションの付与を受けた点が給与所得の要件充足性を否定する理由には到底ならない。
(3)本件権利行使益が給与所得に該当することは、前記のとおりであるところ、租税法規が納税者に平等、公平に適用されなければならないことをしんしゃくすれば、課税処分が信義則に違反して違法となるためには、このような租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、Xの信頼利益等を保護しなければ正義の要請に反す
るといえるような特段の事情が必要であると
いうべきである。
これを本件についてみるに、Xは、課税庁の見解を信頼し、公的見解に従って本件権利行使益を一時所得として申告し、後に課税庁から修正申告を迫られたことが納得できないとするのみであって、所得税におけるストックオプションについて過去の取扱いを知っていたが故に本件ストックオプション付与契約を締結したり、本件ストックオプションを行使するなどの行動に出て所得を得たというような、課税庁の公的見解に対する信頼に基づいて行動したが故に本件の事態に陥り、これにより積極的な経済的損失を被ったりしたわけではない。他方、Xの保護を優先して、本件権利行使益を一時所得として取り扱った場合には、法に従った場合に徴収されるべき多額の所得税を徴収しないことになる上、平成10年以降正当な取扱いへの統一がされた後に権利行使益を給与所得として申告し、納税した者との間に著しい不平等を生ずることになり、かえって正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない。
(4)そうすると、本件各更正は、いずれも適法であり、また、平成11年分に係る本件賦課決定も、適法である。
五、上告審判決要旨
請求一部認容(本件賦課決定のみ取消し)。
(1)我が国においては、平成7年法律第128号による特定新規事業実施円滑化臨時措置法の改正により特定の株式未公開会社においてストックオプション制度を導入することが可能となり、その後、平成9年法律第56号及び平成13年法律第128号による商法の改正によりすべての株式会社においてストックオプション制度を利用するための法整備が行われ、これらの法律の改正を受けて、ストックオプションに係る課税上の取扱いに関しても、租税特別措置法や所得税法施行令の改正が行われたが、外国法人から付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては、現在に至るまで法令上特別の定めは置かれていない。
(2)ストックオプションの権利行使益については、課税実務において、かつてはこれを一時所得として取り扱う例が多かったが、平成10年ころからは、租税特別措置法により課税の繰延べが認められる一部のものを除き、給与所得として課税することにその取扱いが統一された。しかし、そのころに至っても、外国法人である親会社から付与されたストックオプションの権利行使益の課税上の取扱いが所得税基本通達その他の通達において明記されることはなく、これが明記されたのは、平成14年6月24日付け課個2-5ほかによる所得税基本通達23~35共-6の改正によってであった。
(3)原審は、上記事実関係等の下において、本件賦課決定は適法であると判断し、その取消請求を棄却すべきものとした。しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則として、その違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば、過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通則法65条4項が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁、最高裁平成16年(行ヒ)第86号、第87号同18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁参照)。
(4)前記事実関係等によれば、外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては、現在に至るまで法令上特別の定めは置かれていないところ、課税庁においては、上記ストックオプションの権利行使益の所得税法上の所得区分に関して、かつてはこれを一時所得として取り扱う例が多かったが、平成10年ころから、その取扱いを変更し、給与所得として統一的に取り扱うようになったものである。この所得区分に関する所得税法の解釈問題については、一時所得とする見解にも相応の論拠があり、最高裁平成16年(行ヒ)第141号同17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁によってこれを給与所得とする当審の判断が示されるまでは、下級審の裁判例においてその判断が分かれていたのである。このような問題について、課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には、法令の改正によることが望ましく、仮に法令の改正によらないとしても、通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ、これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである。ところが、前記事実関係等によれば、課税庁は、上記のとおり課税上の取扱いを変更したにもかかわらず、その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく、平成14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したというのである。そうであるとすれば、少なくともそれまでの間は、納税者において、外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し、その見解に従って上記権利行使益を一時所得として申告したとしても、それには無理からぬ面があり、それをもって納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りにすぎないものということはできない。
(5)以上のような事情の下においては、Xが平成11年分の所得税の確定申告をする前に同8年分ないし同10年分の所得税についてストックオプションの権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正を受けていたことを考慮しても、上記確定申告において、Xが本件権利行使益を一時所得として申告し、本件権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎とされていなかったことについて、真にXの責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなおXに過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきである。そうすると、本件賦課決定は、違法であることになる。
六、解説
はじめに
本件は、最近の税務訴訟の中では、件数的にも最も多くの事件が争われ、かつ、多くの社会的話題を提供してきたストックオプション事件の最終章とも言える事案である。ストックオプションの権利行使益に係る所得区分については、本件の一審判決と控訴審判決の判示が分かれているように、下級審の段階では見解が別れることになったが、最高裁平成17年判決が給与所得に当たる旨判示したことにより、一応の解決を見ている。
かくして、残された問題としては、当該権利行使益を一時所得として申告(過少申告)したことにつき、国税通則法65条4項に定める「正当な理由」が認められるかが争われることになった(この場合、平成10年分までの過少申告加算税については、賦課決定されていないか又は賦課決定後職権で取り消されている。)。この「正当な理由」の存否についても、下級審において判断が分かれていた(注1)ので、最高裁判所がどのような判断を下すものか注目されていたところである。
いずれにしても、本件賦課決定が免ぜられることとなる「正当な理由」については、加算税制度における当該制度の趣旨(性格)とその例外として当該賦課が免除されることとなる「正当な理由」(注2)の意義についての従前の解釈論、本件と類似する事例における「正当な理由」の存否の判断等に照らして、その存否の判断を要することになる。
そこで、本稿においては、本件権利行使益の所得区分については、一審判決と控訴審判決のそれぞれの結論を対比させるにとどめ(注3)、専ら本件賦課決定の問題点について論じることとする。
1 加算税制度の趣旨(性質)
(1)租税とは、「国家が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付である」(注4)と解される。かくして、租税は、国民の富の一部を強制的に国家の手に移す手段であるから、国民の財産権の侵害という一方的・権力的課徴金の性質を有し、また、特別の給付に対する反対給付を伴わない非対価性という性質を有する。
そのため、租税の運用に当たっては、一方では、国民の権利保護と経済取引の予測可能性と法的安定性を与えるために、租税の賦課・徴収は必ず法律の根拠に基づいて行わなければならないという租税法律主義の要請があり、他方では、国の賦課・徴収を確実にするために、不誠実な納税者に対して何らかの制裁措置も必要とされる(注5)。
この制裁措置については、逋脱犯に代表される刑事制裁(刑事罰)と行政制裁(行政罰)に区分される。この行政制裁については、納税申告において不誠実な納税者を制裁するための加算税制度と租税の納付遅滞を正すための延滞税制度に大別される。その中でも、我が国の租税の確定手続が基本的に申告納税方式を採用していることもあって、加算税制度が一層重視されている。
(2)ところで、加算税制度については、重加算税のように、その負担が重く、かつ、その賦課要件と逋脱犯の構成要件が類似していることもあって、逋脱犯との関係(二重処罰性)が問題視される。この点、昭和36年の「国税通則法の制定に関する答申の説明」では、次のように述べている(注6)。
「重加算税の性質について、それが税として課されるところから形式的には申告秩序維持のためのいわゆる行政罰であるといえようが、その課税要件や負担の重さからみて、実質的に刑事罰的色彩が強く、罰則との関係上二重処罰の疑いがあるのではないかという意見がある。
前記一・1にみたように重加算税は、詐欺行為があった場合にその全部について刑事訴追をすることが実際問題として困難であり、また必ずしも適当でないところから課されるものであることは否定できない。
しかし、そのことから同一事件に対し懲役又は罰金のような刑事罰とを併科することを許さない趣旨であるということはできないであろう。
むしろ、重加算税は、このような場合において、納税義務の違反者に対してこれを課すことにより納税義務違反の発生を防止し、もって納税の実をあげようとする行政上の措置にとどまると考えるべきであろう。したがって、重加算税は、制裁的意義を有することは否定できないが、そもそも納税義務違反者の行為を犯罪とし、その不正行為の反社会性ないしは反道徳性に着目して、これに対する制裁として科される刑事罰とは、明白に区別すべきであると考えられる。
このように考えれば、重加算税を課すとともに刑事罰に処しても、二重処罰と観念すべきではないと考える。」
このように、重加算税制度が刑事罰(逋脱犯)と二重処罰に当たらないとする考え方は、最高裁判所において支持されており(注7)、かつ、申告秩序維持のための行政制裁であることについては、各種加算税に共通しているものと解されてきた(注8)。そのため、本件の最高裁判決も引用している最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(民集60巻4号1611頁)も、次のように判示している。
「過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であり、主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないものである。」
かくして、過少申告加算税の賦課とその賦課を免除することとなる「正当な理由」の存否については、このような加算税制度の趣旨(性質)に照らして、関係規定の解釈を要することになる。
2 「正当な理由」の意義
(1)国税通則法65条4項は、同条1項及び2項の規定によって過少申告加算税の賦課要件を充足する場合であっても、「納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合」には、その正当な理由が認められる事実に基づく税額相当額に対応する過少申告加算税を免除すると定めている。
この場合の「正当な理由」の意義については、多くの争訟事件において検討されてきたところであるが、その代表的な裁判例である東京高裁昭和51年5月24日判決(税務訴訟資料88号841頁)は、次のように判示している。
「右にいう「正当な理由がある場合」とは、例えば、税法の解釈に関して申告当時に公表されていた見解がその後改変されたことに伴い修正申告し、また更正を受けた場合あるいは災害または盗難等に関し申告当時損失とすることを相当としたものがその後予期しなかった保険金等の支払いを受けあるいは盗難品の返還を受けたため修正申告し、また更正を受けた場合等申告当時適法とみられた申告がその後の事情の変更により納税者の故意過失に基づかずして当該申告額が過少となった場合の如く、当該申告が真にやむをえない理由によるものであり、かかる納税者に過少申告加算税を賦課することが不当もしくは酷になる場合を指称するものであって、納税者の税法の不知もしくは誤解に基づく場合は、これに当たらないというべきである。」
(2)かくして、前掲東京高裁判決の考え方は、その後の裁判例(注9)にも引き継がれることとなった。また、国税庁は、長年、加算税の取扱い通達を公表してこなかったが、平成12年7月3日付で、各種加算税の取扱いを公表した。その通達の一つである「申告所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」(事務運営指針、課所4-16ほか、以下「過少申告加算税通達」という。)は、「正当な理由」の意義について、次のように定めている(注10)。
① 税法の解釈に関し、申告書提出後新たに法令解釈が明確化されたため、その法令解釈と納税者の解釈とが異なることとなった場合において、その納税者の解釈について相当の理由があると認められること。
(注)税法の不知若しくは誤解又は事実誤認に基づくものはこれに当たらない。
② 所得税の確定申告書に記載された税額につき、国税通則法24条の規定による減額更正(更正の請求に基づいてされたものを除く)があった場合において、その後修正申告又は国税通則法26条の規定による再更正による税額が申告税額に達しないこと。
(注)当該修正申告又は再更正による税額が申告税額を超えた場合であっても、当該修正申告又は再更正により納付することとなる税額のうち申告税額に達するまでの税額は、この②の事実に基づくものと同様に取り扱う。
③ 法定申告期限の経過の時以後に生じた事情により青色申告の承認が取り消されたことで、青色事業専従者給与、青色申告特別控除などが認められないこととなったこと。
④ 確定申告の納税相談等において、納税者から十分な資料等があったにもかかわらず、税務職員等が納税者に対して誤った指導を行い、納税者がその指導に従ったことにより過少申告となった場合で、かつ、納税者がその指導を信じたことについてやむを得ないと認められる事情があること。
3 税務官庁の対応と「正当な理由」
(1)前述のように、従前の裁判例や過少申告加算税通達の取扱いに照らすと、納税者の税法の不知若しくは誤解によって過少申告が生じたとしても、それが「正当な理由」に当たらないことが解釈上確立している。しかしながら、そのような「税法の不知若しくは誤解」が納税者側の過失ではなく、税官庁側の対応に起因していること、すなわち、税務官庁側の対応が納税者の「税法の誤解」に加担している場合には、種々の解釈問題が生じる。
すなわち、税法の解釈適用又は納税申告においては、税法それ自体が難解であることと税務官庁側の解釈に逆らった納税申告を行うと、行政制裁を伴う追徴課税を受けることになるので、納税者としては、税務官庁の見解を予め承知して置くことが極めて重要である。そのため、実務では、納税相談、意見照会、当局担当者の解説書等が、多く活用されることになる。そして、その過程において、税務官庁の対応いかんによって、納税者側に税法の解釈適用について誤解が生じ、過少申告という結果をもたらすこともあり得る。
このような過少申告加算税が生じてその是正が求められる場合には、まず、税務官庁側に対する信義則の適用問題が生じる(注11)。しかし、この信義則の適用は、租税法律主義(合法性の原則)が要請される租税法律関係において自ずから制限されることになるが、同様な税務官庁側の不適切な対応が過少申告等についての「正当な理由」として容認されることが考えられる。しかも、「正当な理由」についての解釈と事実認定は、国税通則法上の解釈適用に関わる事柄であるので、税法の明文規定を超えて適用される信義則よりも一層弾力的に扱われるべきこととなる(注12)。
(2)ところで、過少申告等において「正当な理由」が生じる事由としては、納税相談等における税務職員の誤指導、納税者の事前照会に対する税務官庁の不作為、税務官庁の税法解釈の変更、公刊物における担当職員の見解等が挙げられる(注13)。
これらの事由のうち、税務職員の誤指導については、前記の過少申告加算税通達においても、「正当な理由」の一つとして掲げられているので、当該誤指導の事実が認められれば、加算税の賦課決定が取り消されることになろう。もっとも、納税相談等においては、納税者と税務官庁担当者との間に意思疎通を欠く場合もあるので、「誤指導」の存否それ自体が当事者間で争われる場合が多い(注14)。
また、税務官庁の不作為に関しては、例えば、名古屋地裁昭和37年12月8日判決(行裁例集13巻12号2229頁)では、税務官庁が株主優待金の損金算入の可否を長らく確定させなかったことを「正当な理由」として認定する一つの根拠としており、昭和57年2月17日裁決(裁決事例集23号7頁)では、他の同様な事案において登録免許税の損金算入が黙認されていたので、その旨申告したことについて「正当な理由」があるとされている。そのほかの事案においては、納税者の「正当な理由」の主張が否定される場合が多い(注15)。
(3)次に、税法の解釈に関して申告当時に公表されていた税務官庁の見解がその後変更されたため、修正申告等を余儀無くされた場合が正当な理由に当たることは、前掲東京高裁昭和51年5月24日判決等多くの判決が容認するところである。本件においても、ストックオプションの権利行使益に係る所得区分の取扱いが、原則として、一時所得から給与所得へ変更されているので、平成10年分所得税までは過少申告加算税は賦課されていない。
したがって、実務上、このような課税問題が直接生じることは稀であろうが、それに類似する事例が生じることがある。例えば、名古屋地裁昭和37年12月8日判決(行裁例集13巻12号2229頁)では、株主優待金の損金性について国税庁の取扱いが不明確であったところ、昭和28年3月にその損金性を否定する取扱いが明らかにされたが、昭和28年5月期分法人税について株主優待金を損金算入して過少申告したことについて「正当な理由」を容認している。
なお、大阪地裁昭和45年5月12日判決(税務訴訟資料59号831頁)では、ゴルフボールの加工行為につき、それが「製造」に当たるとして通達の取扱いを改正し、改正された通達を遡及適用して物品税を課税したことが公平負担の原則に反するとして、本税の課税処分それ自体を取り消している。
いずれにしても、税務官庁における課税上の取扱いの変更はまま存することであるが、本件においてもそうであるように、その変更後の課税処理のあり方(納税者に対する周知等)が問題となる。
(4)また、納税者は、税法が極めて難解であるため、納税申告等において多くの解説書に依存することが多い。この場合、その解説書が国税庁(国税局)の担当者によって執筆されている場合(かっては、執筆者の上司等の監修等によることが多かった。)には、それらの担当者が直接取扱い通達の作成等に携わっていることもあって、納税者がその内容を一層信頼することになる。かくして、このような解説書を信頼して過少申告等をした場合、信義則の適用の有無と「正当な理由」の存否が問題となる。
例えば、東京地裁平成9年4月25日判決(税務訴訟資料223号500頁)(注16)では、会社経営者が自己の経営する同族会社に対して多額な無利息貸付をし、所得税法157条の適用により受取利息の認定課税を受けた場合に、当時の国税当局の担当者の解説書によると個人が法人に対して無利息貸付した場合には課税関係が生じない旨説明されていたため、信義則の適用の有無及び「正当な理由」の存否が争われた。上記判決は、かかる場合には公的見解の表示があったものと認められないから、信義則の適用も認められないし、かつ、「正当な理由」の存在は認められない旨判示した。
これに対し、控訴審の東京高裁平成11年5月31日判決(税務訴訟資料243号127頁)は、信義則の適用は認められないものの、次のとおり判示し、その解説書が税務当局の業務ないし編者等の職務関連性からみて、その内容を信頼することに無理からぬものが認められるから、「正当な理由」は認め得ると判示している。
「本件解説書は、正確にいえば私的な著作物であり、個人から法人に対する無利息貸付にについて本件規定の適用が一切ないことを保証する趣旨までは記載されていないが、各巻頭の「推薦のことば」、「監修のことば」等において、東京国税局税務相談室その他の税務当局に寄せられた相談事例及び職務の執行の際に生じた疑義について回答と解説を示す形式がとられていることが記載されており、税務当局の業務ないし編者等の税務当局勤務者の職務との密接な関連性を窺わせるものである。したがって、税務関係者がその編者等や発行者から判断して、その記載内容が税務当局の見解を反映したものと認識し、すなわち、税務当局が個人から法人に対する無利息貸付については課税しないとの見解であると解することは無理からぬところである。」
しかしながら、上告審の最高裁平成16年7月20日第三小法廷判決(平成11年(行ヒ)第169号)は、当該解説書は、当該事案のような不合理、不自然な経済活動(無利息融資)まで課税関係が生じないものと説明しているわけではないとして、「正当な理由」を否定している。
この事案は、「平和事件」と称せられるものであり、課税当局担当者の解説の法的性格が問題となったものであるが、本件においても、かって国税当局担当者による解説書がストックオプション権利行使益を一時所得に当たる旨説明していたこともあって、「正当な理由」の解釈について多くの示唆を与えるものである。
4 本件における「正当な理由」
(1)本件においては、ストックオプションの権利行使益は、平成8年前までは他の新株等を取得する権利を与えられた場合の所得と同様に、原則として、一時所得として取り扱われており、その後、ストックオプション制度の拡充とそれに係る法整備に対応して、給与所得として取り扱われるようになってきたのであるが、そこに、税務官庁としての対応のあり方と課税の当否が問題とされた。
(2)その中で、本件上告審判決が最も重視した取扱い通達等は、次のように改正されてきた。
① 平成8年改正前の所得税基本通達23~35共-6(以下「平成8年前通達」という。)は、次のように定めていた。
「新株等を取得する権利を与えられた場合の所得は、一時所得とする。ただし、当該発行法人の役員若しくは使用人又はこれらのものであった者に対し支給すべきであった給与又は退職手当等に代えて当該新株等を取得する権利を与えたと認められる場合には、給与所得又は退職所得とする。」
② 新規事業法が平成7年11月に改正されたことに対応し、ストックオプション制度導入の円滑化に資するため、平成8年度税制改正において、租税特別措置法29条の2において所定の要件を満たしたストックオプションについて次のような特例措置を設けた。
(イ)従業員等が新株を取得する権利を行使した場合には、その権利の行使時に生じた経済的利益には所得税を課さない。
(ロ)(イ)の特例の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合には、当該株式の譲渡による所得については、株式等の申告分離課税(税率26%)を適用する。
③ 平成8年に改正された所得税基本通達23~35共-6(以下「平成8年通達」という。)は前記①の取扱いを次のように改めた。
「新株等を取得する権利を与えられた場合の所得は、一時所得とする。ただし、当該発行法人の役員又は使用人に対してその地位又は職務等に関して当該新株等を取得する権利を与えたと認められる場合には給与所得とし、これらの者の退職に着目して当該新株等を取得する権利を与えたと認められる場合には退職所得とする。」
④ 平成9年の商法改正に対応し、租特法29条の2の規定が改正され、当該課税特例について所定の拡充措置(所得税法施行令84条等の改正を含む。)が設けられた。
⑤ 平成10年に改正された所得税基本通達23~35共-6(以下「平成10年通達」という。)は前記③の取扱いを次のように改めた。
「イ、令84条第1号又は第2号に掲げる権利を与えられた取締役又は使用人がこれを行使した場合 給与所得とする。ただし、……主として職務の遂行に関連を有しない利益が供与されていると認められるときは、雑所得とする。
ロ、令84条第3号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合 一時所得とする。ただし、当該発行法人の役員又は使用人に対しその地位又は職務等に関連して新株(これに準ずるものを含む。……)を取得する権利が与えられたと認められるときは給与所得とし……」
⑥ 平成13年の商法改正に対応し、所得税法施行令84条が改正(1~3号が1~4号ヘ)され、それに対応して、平成14年に所得税基本通達23~35共-6も改正された。改正内容は、⑤と本質的に異ならないが、商法上の新株引受権等に係る取扱い(同通達(1)及び(2))は、「発行法人が外国法人である場合においても同様であることに留意する。」(同通達注書)とされた。この注書は、発行法人が外国法人である場合には、当時の所得税法施行令84条4号が適用され、所得税基本通達23~35共-7等の取扱いが適用されるのではないかという疑義を解消しようとしたものと解される。すなわち、当時の所得税法施行令84条1号から3号までが当時の商法の規定を前提とし、同4号からその他の有利発行について定めていたところ、外国法人が付与したストックオプションについて同4号が適用されると、所得税基本通達23~35共-7が適用され、10%程度の株価上昇による権利行使益について課税できないことになるからである。
しかしながら、このような改正は、ストックオプションの付与会社が外国法人であるときにも給与所得に当たることを初めて明らかにしたものと誤解されることになり、かつ、外国法人に対し我が国の商法を適用できるのかという疑義も生じさせることになる。
(2)かくして、上告審判決は、前述のような取扱い通達の変遷等に着目し、平成14年の通達改正までの間は、「納税者において、外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し、その見解に従って上記権利行使益を一時所得として申告したとしても、それには無理からぬ面があり、それをもって納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りに過ぎないものということにはできない。」と判示し、本件の過少申告における「正当な理由」を認め、本件賦課決定を取り消した。
このような上告審の判決については、平成10年の所得税基本通達の改正後、税務署の窓口等において外国法人から付与された、ストックオプション権利行使益が給与所得に当たることが指導されてきたこと等に照らすと、「正当な理由」を拡大解釈したようにも考えられる。また、前述の平和事件に係る最高裁判決と対比しても、平和事件の方が厳しすぎる、本件の上告審判決が甘すぎるようにも考えられる。
もっとも、ストックオプションの権利行使益の所得区分については、多くの論争があり、裁判例においてもその判断が二分され、課税当局の取扱いの変更(関係通達等の改正等)における納税者に対する対応が必ずしも明確でなかったこと等を総合して考慮してみると、本件の上告審判決は、極めて現実的な判断を示したものとも評価できる。
(注1)本件の一審判決及び控訴審判決のように、本税に係る更正処分が違法であるか適法であるかに伴って過少申告加算税の賦課決定が運命を共にするほか、横浜地裁平成16年1月21日判決(品川芳宣『重要租税判決の実務研究 増補改訂版』(大蔵財務協会)106頁)のように、当該更正を適法と認めたものの、当該賦課決定については、ストックオプション権利行使益の所得区分の取扱いが不透明であったことに着目して、「正当な理由」を認めて取り消した裁判例も存する。
(注2)「正当な理由」によって加算税が賦課が免除される規定は、本件における過少申告加算税(通法65④)のほか、無申告加算税(通法66①)、不納付加算税(通法67①)及び重加算税の一部(通法68②、③)についても設けられている。
(注3)ストックオプション権利行使益の所得区分の詳細については、前出(注1)113頁等参照。
(注4)金子宏『租税法 第11版』(弘文堂)9頁参照。
(注5)品川芳宣「税法上の行政制裁の論点」税51巻12号18頁参照。
(注6)同「説明」第6章第2節二・三・三。
(注7)最高裁昭和33年4月30日大法廷判決(民集12巻6号938頁)、最高裁昭和45年9月11日第二小法廷判決(刑集24巻10号1333頁)等参照。
(注8)神戸地裁昭和58年8月29日判決(税務訴訟資料133号521頁)、神戸地裁平成5年3月29日判決(税資194号1112頁)等参照。
(注9)神戸地裁昭和58年8月29日判決(税務訴訟資料133号521頁)、浦和地裁昭和63年12月19日判決(同166号932頁)、東京高裁平成元年11月30日判決(同174号807頁)、大阪高裁平成2年2月28日判決(同175号976頁)、名古屋高裁平成4年4月30日判決(同189号428頁)、東京地裁平成6年1月28日判決(同200号430頁)、千葉地裁平成6年5月30日判決(同201号375頁)、東京地裁平成7年3月28日判決(同208号1015頁)、東京高裁平成7年11月27日判決(同214号504頁)、大阪高裁平成10年4月14日判決(同231号545頁)、大分地裁平成10年12月22日判決(同239号618頁)、東京地裁平成12年4月25日判決(同247号486頁)等参照。
(注10)品川芳宣『附帯税の事例研究 第三版』(財経詳報社)73頁等参照。
(注11)本件の控訴審でも信義則の適用問題が審理されているが、税法における信義則の適用は、租税法律主義(合法性の原則)の要請があるので極めて制限されることになる(最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(訴訟月報34巻4号853頁)、前出(注11)107頁、品川芳宣「税法における信義則の適用について」税務大学校論叢8号1頁等参照)。
(注12)前出(注10)書109頁参照。
(注13)詳細については、前出(注10)書110頁以下参照。
(注14)誤指導の存否が争われた事例としては、札幌地裁昭和50年6月24日判決(税務訴訟資料82号238頁)、札幌高裁昭和51年10月19日判決(同90号227頁)、東京地裁昭和54年12月12日判決(同109号689頁)、名古屋地裁昭和55年3月24日判決(同110号666頁)、岡山地裁平成8年9月17日判決(同220号761頁)等参照。
(注15)大阪地裁昭和63年11月29日判決(税務訴訟資料166号530頁)、東京地裁平成6年1月28日判決(同200号430頁)、京都地裁昭和39年4月21日判決(行裁例集15巻4号571頁)等参照。
(注16)前出(注1)書154頁参照。
品川芳宣(しながわよしのぶ)
国税庁審理課課長補佐、東京地裁調査官、税務大学校教育二部長、国税庁資産評価企画官、同徴収課長、同管理課長、高松国税局長などを経て、平成7年筑波大学教授。平成17年早稲田大学大学院客員教授(専任)、筑波大学名誉教授、税務大学校客員教授。弁護士
【主要著書】
『課税所得と企業利益』(税務研究会)、『役員給与税務事例集』(商事法務研究会)、『役員報酬の法律と実務』(同)、『附帯税の事例研究』(財経詳報社)、『法人税の判例』(ぎょうせい)、『相続税財産評価の論点』(同)、『重要租税判決の実務研究・増補改訂版』(大蔵財務協会)、『役員報酬の税務事例研究』(財経詳報社)、『租税法律主義と税務通達』(ぎょうせい)、『徹底解明相続税財産評価の理論と実践』(同)他多数。
ストックオプション権利行使益の一時所得申告における「正当な理由」
最高裁第三小法廷平成16年(行ヒ)第317号 平成18年10月24日判決
東京高裁平成14年(行コ)第313号 平成16年8月4日判決
東京地裁平成13年(行ウ)第44号、212号 平成14年11月26日判決
品川芳宣
早稲田大学大学院客員教授(専任)
筑波大学名誉教授
一、事実
(1)X(原告、被控訴人、上告人)は、C会社の従業員として勤務していた者であるが、同社在職中に、同社の発行済み株式の全部を有している米国法人である親会社(以下「米国親会社」という。)からそのストックオプション制度に基づきストックオプション(以下「本件ストックオプション」という。)を付与された。Xは、これを行使して、平成8年に3,517万円余の、同9年に1,442万円余の、同10年に2億1,046万円余の、同11年に2,003万円余の各権利行使益(以下「本件権利行使益」という。)を得た。
Xは、平成9年3月5日に平成8年分所得税について、同10年3月9日に同9年分の所得税について、同11年3月8日に同10年分所得税について、同12年3月15日に同11年分所得税について、それぞれ一時所得に当たるとして確定申告をした。
(2)これに対し、Y(被告、控訴人、被上告人)税務署長は、平成12年3月9日、同8年分ないし同10年分所得税について各年分の本件権利行使益が給与所得に当たるとしてそれぞれ増額更正をした。次いで、Yは、同12年11月8日、同11年分所得税について同年分の本件権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正を行うとともに、過少申告加算税の賦課決定(以下「本件賦課決定」という。)をした。
Xは、前記各年分の増額更正と本件賦課決定を不服として、本訴を提起したのであるが、本件権利行使益に係る所得区分の争いが最高裁平成17年1月25日第三小法廷判決(民集59巻1号64頁)(以下「最高裁平成17年判決」という。)において解決されたため、本件上告審においては、専ら本件賦課決定の違法性を争うこととなった。
そこで、本稿においては、所得区分については下級審の結論部分を紹介するにとどめ、専ら本件賦課決定の適否に関して論じることとする。
二、争点と当事者の主張
1 争 点
(1)本件権利行使益に係る所得区分(給与所得に当たるか、一時所得に当たるか)
(2)本件賦課決定の適否(Xが本件権利行使益を一時所得として申告(過少申告)したことに国税通則法65条4項に定める「正当な理由」が存するか否か)
2 Xの主張
(1)海外親会社が日本子会社の役員や従業員に付与したストックオプションを権利行使することで得られる利益の所得区分について、これを明確に定めた法律・通達は一切存在しない。また、Xが平成11年分所得税の確定申告をしたのは平成12年3月15日であるが、この当時において、ストックオプションに権利行使益がいかなる所得区分に該当するかについて最高裁判所の判断はなされていなかった。
のみならず、課税庁は、昭和59年に外資系企業の照会に対して一時所得である旨回答して以降、内部において給与所得に見解を変更したとされる平成10年ころに至るまで、過去10年以上にわたって、一時所得という見解を採用しており、多くの税務署においても一時所得で申告・納税するよう指導がなされていた。
また、課税当局の担当者が執筆している所得税質疑応答集においても、平成10年版で突如給与所得であるという説明に変更するまで、一時所得であるという回答をした説明が維持されていた。この記載の変更が平成10年版で突如なされたことについて、その理由などの説明は一切なされていない。
(2)さらに、課税庁は、平成10年ころに給与所得という見解に変更したというが、突如の見解変更について、その法的根拠や理由等について課税の現場である税務署等においても、何ら説明はなされていない。「なぜ見解が変わったのですか」という納税者の問いに正面から答えた税務署職員など皆無だったのである。また、課税庁は、見解変更を周知徹底するといったアナウンスも公的には行っていなかった。具体的な通達改正は、平成14年6月になってからである。
こうした状況下でなされた平成12年3月当時においては、いったいどの所得区分で申告すればよいのか。納税者には判断ができないほど混乱が生じていた。こうした混乱状況をつくった責任は課税庁にある。
3 Yの主張
(1)申告納税方式の下においては、法により納付すべき税額を適正に申告し、これを納税した者と、適正な申告を怠り、税額の過少な申告をした者との経済的負担を同じにすると、結果的に適正な申告をした者の方が有利にはならず、かえって更正処分などが行われない限り過少な申告をした者の方が有利になるという不公平が生じる。そこで、国税通則法は、過少申告加算税制度を設け、過少な申告をした納税者については、一定の割合の経済的負担を課すことによって、不公平が発生しないようにしたものである。そして、これにより、申告納税制度に対する信用を保ち、適正な期限内申告の実現を図ることにしている。
(2)ところで、Xの主張するように、課税庁とは異なる解釈にも相当の根拠があることをもって、過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」に当たると解するのであれば、納税者が自己に有利な解釈を採用し、その解釈が客観的に誤っている場合であっても、これに基づいて過少な申告をしても何の不利益も課されないことになる。そうすると、このような納税者と、当初から適正な税額を申告して納税した納税者とを同列に取り扱うという不公平な結果を招くことになる。しかし、このような事態は、申告納税制度の信用を保ち、これによって、適正な期限内申告の実現を図ろうとする過少申告加算税の制度趣旨を根底から揺るがすものであり、容認できるものではない。
(3)本件において、Xは、所得税の納税申告において、本件のような権利行使利益を給与所得とする課税庁の申告時の取扱いを十分認識しながら、自らの法解釈に基づいて権利行使益を一時所得として過少な申告をしたものであり、客観的にも、Xの解釈が誤りで、課税庁の取扱いが法律に従ったものであった以上、Xに国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
三、一審判決要旨
請求認容。
(1)本件権利行使益は、Xの就労の対価ではなく、その投資判断に基づく偶然的、偶発的所得であって、勤労性所得ではなく、ストックオプションという期待権に基づく資産性所得であり、回帰的に発生するとは限らないものとみるべきものであって、給与所得や雑所得とは異なっており、一時所得であるというほかないものである。
(2)本件各年分所得税に係る各更正に本件権利行使益の所得区分を誤ったという違法な点がある以上、それを前提にしてされた本件賦課決定も違法ということになる。
四、控訴審判決要旨
原判決取消し(請求棄却)。
(1)被付与者である従業員が行使した本件ストックオプションは、当該従業員と付与会社である米国親会社との間において締結されたストックオプション付与契約に基づいて付与会社から当該従業員に対して与えられたものであるところ、米国親会社は、当該従業員が権利行使をすることによって、当該従業員に対して権利行使益に相当する含み益を取得させることになる場合があることを、付与契約の当然の内容として了解していたということができる。そうとすれば、ストックオプションを行使したことによる権利行使益は、ストックオプションが付与された従業員等が付与会社から受ける給付であるというべきであり、これを本件についていえば、本件権利行使益はXが米国親会社から受け取った給付であるというべきである。
(2)所得税法上の給与所得該当性については、あくまで、従業員等が雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮に服して提供した労務の対価として当該給付を受けたものかどうかによって給与所得該当性を判断すべきである。そうすると、本件においては、米国親会社は、その100パーセント子会社であるC会社との特殊な関係を前提として、三者間の明示、黙示の合意に基づいてC会社の従業員の就労、貢献が米国親会社の業績向上にもつながり得ることを期待する一方、同従業員に対する給与を補完するものとして本件ストックオプションを付与したものと認めることができるのであって、このような場合においては勤務先のC会社ではなく、米国親会社から本件ストックオプションの付与を受けた点が給与所得の要件充足性を否定する理由には到底ならない。
(3)本件権利行使益が給与所得に該当することは、前記のとおりであるところ、租税法規が納税者に平等、公平に適用されなければならないことをしんしゃくすれば、課税処分が信義則に違反して違法となるためには、このような租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、Xの信頼利益等を保護しなければ正義の要請に反す
るといえるような特段の事情が必要であると
いうべきである。
これを本件についてみるに、Xは、課税庁の見解を信頼し、公的見解に従って本件権利行使益を一時所得として申告し、後に課税庁から修正申告を迫られたことが納得できないとするのみであって、所得税におけるストックオプションについて過去の取扱いを知っていたが故に本件ストックオプション付与契約を締結したり、本件ストックオプションを行使するなどの行動に出て所得を得たというような、課税庁の公的見解に対する信頼に基づいて行動したが故に本件の事態に陥り、これにより積極的な経済的損失を被ったりしたわけではない。他方、Xの保護を優先して、本件権利行使益を一時所得として取り扱った場合には、法に従った場合に徴収されるべき多額の所得税を徴収しないことになる上、平成10年以降正当な取扱いへの統一がされた後に権利行使益を給与所得として申告し、納税した者との間に著しい不平等を生ずることになり、かえって正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない。
(4)そうすると、本件各更正は、いずれも適法であり、また、平成11年分に係る本件賦課決定も、適法である。
五、上告審判決要旨
請求一部認容(本件賦課決定のみ取消し)。
(1)我が国においては、平成7年法律第128号による特定新規事業実施円滑化臨時措置法の改正により特定の株式未公開会社においてストックオプション制度を導入することが可能となり、その後、平成9年法律第56号及び平成13年法律第128号による商法の改正によりすべての株式会社においてストックオプション制度を利用するための法整備が行われ、これらの法律の改正を受けて、ストックオプションに係る課税上の取扱いに関しても、租税特別措置法や所得税法施行令の改正が行われたが、外国法人から付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては、現在に至るまで法令上特別の定めは置かれていない。
(2)ストックオプションの権利行使益については、課税実務において、かつてはこれを一時所得として取り扱う例が多かったが、平成10年ころからは、租税特別措置法により課税の繰延べが認められる一部のものを除き、給与所得として課税することにその取扱いが統一された。しかし、そのころに至っても、外国法人である親会社から付与されたストックオプションの権利行使益の課税上の取扱いが所得税基本通達その他の通達において明記されることはなく、これが明記されたのは、平成14年6月24日付け課個2-5ほかによる所得税基本通達23~35共-6の改正によってであった。
(3)原審は、上記事実関係等の下において、本件賦課決定は適法であると判断し、その取消請求を棄却すべきものとした。しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則として、その違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば、過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通則法65条4項が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁、最高裁平成16年(行ヒ)第86号、第87号同18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁参照)。
(4)前記事実関係等によれば、外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては、現在に至るまで法令上特別の定めは置かれていないところ、課税庁においては、上記ストックオプションの権利行使益の所得税法上の所得区分に関して、かつてはこれを一時所得として取り扱う例が多かったが、平成10年ころから、その取扱いを変更し、給与所得として統一的に取り扱うようになったものである。この所得区分に関する所得税法の解釈問題については、一時所得とする見解にも相応の論拠があり、最高裁平成16年(行ヒ)第141号同17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁によってこれを給与所得とする当審の判断が示されるまでは、下級審の裁判例においてその判断が分かれていたのである。このような問題について、課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には、法令の改正によることが望ましく、仮に法令の改正によらないとしても、通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ、これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである。ところが、前記事実関係等によれば、課税庁は、上記のとおり課税上の取扱いを変更したにもかかわらず、その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく、平成14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したというのである。そうであるとすれば、少なくともそれまでの間は、納税者において、外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し、その見解に従って上記権利行使益を一時所得として申告したとしても、それには無理からぬ面があり、それをもって納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りにすぎないものということはできない。
(5)以上のような事情の下においては、Xが平成11年分の所得税の確定申告をする前に同8年分ないし同10年分の所得税についてストックオプションの権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正を受けていたことを考慮しても、上記確定申告において、Xが本件権利行使益を一時所得として申告し、本件権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎とされていなかったことについて、真にXの責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなおXに過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきである。そうすると、本件賦課決定は、違法であることになる。
六、解説
はじめに
本件は、最近の税務訴訟の中では、件数的にも最も多くの事件が争われ、かつ、多くの社会的話題を提供してきたストックオプション事件の最終章とも言える事案である。ストックオプションの権利行使益に係る所得区分については、本件の一審判決と控訴審判決の判示が分かれているように、下級審の段階では見解が別れることになったが、最高裁平成17年判決が給与所得に当たる旨判示したことにより、一応の解決を見ている。
かくして、残された問題としては、当該権利行使益を一時所得として申告(過少申告)したことにつき、国税通則法65条4項に定める「正当な理由」が認められるかが争われることになった(この場合、平成10年分までの過少申告加算税については、賦課決定されていないか又は賦課決定後職権で取り消されている。)。この「正当な理由」の存否についても、下級審において判断が分かれていた(注1)ので、最高裁判所がどのような判断を下すものか注目されていたところである。
いずれにしても、本件賦課決定が免ぜられることとなる「正当な理由」については、加算税制度における当該制度の趣旨(性格)とその例外として当該賦課が免除されることとなる「正当な理由」(注2)の意義についての従前の解釈論、本件と類似する事例における「正当な理由」の存否の判断等に照らして、その存否の判断を要することになる。
そこで、本稿においては、本件権利行使益の所得区分については、一審判決と控訴審判決のそれぞれの結論を対比させるにとどめ(注3)、専ら本件賦課決定の問題点について論じることとする。
1 加算税制度の趣旨(性質)
(1)租税とは、「国家が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付である」(注4)と解される。かくして、租税は、国民の富の一部を強制的に国家の手に移す手段であるから、国民の財産権の侵害という一方的・権力的課徴金の性質を有し、また、特別の給付に対する反対給付を伴わない非対価性という性質を有する。
そのため、租税の運用に当たっては、一方では、国民の権利保護と経済取引の予測可能性と法的安定性を与えるために、租税の賦課・徴収は必ず法律の根拠に基づいて行わなければならないという租税法律主義の要請があり、他方では、国の賦課・徴収を確実にするために、不誠実な納税者に対して何らかの制裁措置も必要とされる(注5)。
この制裁措置については、逋脱犯に代表される刑事制裁(刑事罰)と行政制裁(行政罰)に区分される。この行政制裁については、納税申告において不誠実な納税者を制裁するための加算税制度と租税の納付遅滞を正すための延滞税制度に大別される。その中でも、我が国の租税の確定手続が基本的に申告納税方式を採用していることもあって、加算税制度が一層重視されている。
(2)ところで、加算税制度については、重加算税のように、その負担が重く、かつ、その賦課要件と逋脱犯の構成要件が類似していることもあって、逋脱犯との関係(二重処罰性)が問題視される。この点、昭和36年の「国税通則法の制定に関する答申の説明」では、次のように述べている(注6)。
「重加算税の性質について、それが税として課されるところから形式的には申告秩序維持のためのいわゆる行政罰であるといえようが、その課税要件や負担の重さからみて、実質的に刑事罰的色彩が強く、罰則との関係上二重処罰の疑いがあるのではないかという意見がある。
前記一・1にみたように重加算税は、詐欺行為があった場合にその全部について刑事訴追をすることが実際問題として困難であり、また必ずしも適当でないところから課されるものであることは否定できない。
しかし、そのことから同一事件に対し懲役又は罰金のような刑事罰とを併科することを許さない趣旨であるということはできないであろう。
むしろ、重加算税は、このような場合において、納税義務の違反者に対してこれを課すことにより納税義務違反の発生を防止し、もって納税の実をあげようとする行政上の措置にとどまると考えるべきであろう。したがって、重加算税は、制裁的意義を有することは否定できないが、そもそも納税義務違反者の行為を犯罪とし、その不正行為の反社会性ないしは反道徳性に着目して、これに対する制裁として科される刑事罰とは、明白に区別すべきであると考えられる。
このように考えれば、重加算税を課すとともに刑事罰に処しても、二重処罰と観念すべきではないと考える。」
このように、重加算税制度が刑事罰(逋脱犯)と二重処罰に当たらないとする考え方は、最高裁判所において支持されており(注7)、かつ、申告秩序維持のための行政制裁であることについては、各種加算税に共通しているものと解されてきた(注8)。そのため、本件の最高裁判決も引用している最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(民集60巻4号1611頁)も、次のように判示している。
「過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であり、主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないものである。」
かくして、過少申告加算税の賦課とその賦課を免除することとなる「正当な理由」の存否については、このような加算税制度の趣旨(性質)に照らして、関係規定の解釈を要することになる。
2 「正当な理由」の意義
(1)国税通則法65条4項は、同条1項及び2項の規定によって過少申告加算税の賦課要件を充足する場合であっても、「納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合」には、その正当な理由が認められる事実に基づく税額相当額に対応する過少申告加算税を免除すると定めている。
この場合の「正当な理由」の意義については、多くの争訟事件において検討されてきたところであるが、その代表的な裁判例である東京高裁昭和51年5月24日判決(税務訴訟資料88号841頁)は、次のように判示している。
「右にいう「正当な理由がある場合」とは、例えば、税法の解釈に関して申告当時に公表されていた見解がその後改変されたことに伴い修正申告し、また更正を受けた場合あるいは災害または盗難等に関し申告当時損失とすることを相当としたものがその後予期しなかった保険金等の支払いを受けあるいは盗難品の返還を受けたため修正申告し、また更正を受けた場合等申告当時適法とみられた申告がその後の事情の変更により納税者の故意過失に基づかずして当該申告額が過少となった場合の如く、当該申告が真にやむをえない理由によるものであり、かかる納税者に過少申告加算税を賦課することが不当もしくは酷になる場合を指称するものであって、納税者の税法の不知もしくは誤解に基づく場合は、これに当たらないというべきである。」
(2)かくして、前掲東京高裁判決の考え方は、その後の裁判例(注9)にも引き継がれることとなった。また、国税庁は、長年、加算税の取扱い通達を公表してこなかったが、平成12年7月3日付で、各種加算税の取扱いを公表した。その通達の一つである「申告所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」(事務運営指針、課所4-16ほか、以下「過少申告加算税通達」という。)は、「正当な理由」の意義について、次のように定めている(注10)。
① 税法の解釈に関し、申告書提出後新たに法令解釈が明確化されたため、その法令解釈と納税者の解釈とが異なることとなった場合において、その納税者の解釈について相当の理由があると認められること。
(注)税法の不知若しくは誤解又は事実誤認に基づくものはこれに当たらない。
② 所得税の確定申告書に記載された税額につき、国税通則法24条の規定による減額更正(更正の請求に基づいてされたものを除く)があった場合において、その後修正申告又は国税通則法26条の規定による再更正による税額が申告税額に達しないこと。
(注)当該修正申告又は再更正による税額が申告税額を超えた場合であっても、当該修正申告又は再更正により納付することとなる税額のうち申告税額に達するまでの税額は、この②の事実に基づくものと同様に取り扱う。
③ 法定申告期限の経過の時以後に生じた事情により青色申告の承認が取り消されたことで、青色事業専従者給与、青色申告特別控除などが認められないこととなったこと。
④ 確定申告の納税相談等において、納税者から十分な資料等があったにもかかわらず、税務職員等が納税者に対して誤った指導を行い、納税者がその指導に従ったことにより過少申告となった場合で、かつ、納税者がその指導を信じたことについてやむを得ないと認められる事情があること。
3 税務官庁の対応と「正当な理由」
(1)前述のように、従前の裁判例や過少申告加算税通達の取扱いに照らすと、納税者の税法の不知若しくは誤解によって過少申告が生じたとしても、それが「正当な理由」に当たらないことが解釈上確立している。しかしながら、そのような「税法の不知若しくは誤解」が納税者側の過失ではなく、税官庁側の対応に起因していること、すなわち、税務官庁側の対応が納税者の「税法の誤解」に加担している場合には、種々の解釈問題が生じる。
すなわち、税法の解釈適用又は納税申告においては、税法それ自体が難解であることと税務官庁側の解釈に逆らった納税申告を行うと、行政制裁を伴う追徴課税を受けることになるので、納税者としては、税務官庁の見解を予め承知して置くことが極めて重要である。そのため、実務では、納税相談、意見照会、当局担当者の解説書等が、多く活用されることになる。そして、その過程において、税務官庁の対応いかんによって、納税者側に税法の解釈適用について誤解が生じ、過少申告という結果をもたらすこともあり得る。
このような過少申告加算税が生じてその是正が求められる場合には、まず、税務官庁側に対する信義則の適用問題が生じる(注11)。しかし、この信義則の適用は、租税法律主義(合法性の原則)が要請される租税法律関係において自ずから制限されることになるが、同様な税務官庁側の不適切な対応が過少申告等についての「正当な理由」として容認されることが考えられる。しかも、「正当な理由」についての解釈と事実認定は、国税通則法上の解釈適用に関わる事柄であるので、税法の明文規定を超えて適用される信義則よりも一層弾力的に扱われるべきこととなる(注12)。
(2)ところで、過少申告等において「正当な理由」が生じる事由としては、納税相談等における税務職員の誤指導、納税者の事前照会に対する税務官庁の不作為、税務官庁の税法解釈の変更、公刊物における担当職員の見解等が挙げられる(注13)。
これらの事由のうち、税務職員の誤指導については、前記の過少申告加算税通達においても、「正当な理由」の一つとして掲げられているので、当該誤指導の事実が認められれば、加算税の賦課決定が取り消されることになろう。もっとも、納税相談等においては、納税者と税務官庁担当者との間に意思疎通を欠く場合もあるので、「誤指導」の存否それ自体が当事者間で争われる場合が多い(注14)。
また、税務官庁の不作為に関しては、例えば、名古屋地裁昭和37年12月8日判決(行裁例集13巻12号2229頁)では、税務官庁が株主優待金の損金算入の可否を長らく確定させなかったことを「正当な理由」として認定する一つの根拠としており、昭和57年2月17日裁決(裁決事例集23号7頁)では、他の同様な事案において登録免許税の損金算入が黙認されていたので、その旨申告したことについて「正当な理由」があるとされている。そのほかの事案においては、納税者の「正当な理由」の主張が否定される場合が多い(注15)。
(3)次に、税法の解釈に関して申告当時に公表されていた税務官庁の見解がその後変更されたため、修正申告等を余儀無くされた場合が正当な理由に当たることは、前掲東京高裁昭和51年5月24日判決等多くの判決が容認するところである。本件においても、ストックオプションの権利行使益に係る所得区分の取扱いが、原則として、一時所得から給与所得へ変更されているので、平成10年分所得税までは過少申告加算税は賦課されていない。
したがって、実務上、このような課税問題が直接生じることは稀であろうが、それに類似する事例が生じることがある。例えば、名古屋地裁昭和37年12月8日判決(行裁例集13巻12号2229頁)では、株主優待金の損金性について国税庁の取扱いが不明確であったところ、昭和28年3月にその損金性を否定する取扱いが明らかにされたが、昭和28年5月期分法人税について株主優待金を損金算入して過少申告したことについて「正当な理由」を容認している。
なお、大阪地裁昭和45年5月12日判決(税務訴訟資料59号831頁)では、ゴルフボールの加工行為につき、それが「製造」に当たるとして通達の取扱いを改正し、改正された通達を遡及適用して物品税を課税したことが公平負担の原則に反するとして、本税の課税処分それ自体を取り消している。
いずれにしても、税務官庁における課税上の取扱いの変更はまま存することであるが、本件においてもそうであるように、その変更後の課税処理のあり方(納税者に対する周知等)が問題となる。
(4)また、納税者は、税法が極めて難解であるため、納税申告等において多くの解説書に依存することが多い。この場合、その解説書が国税庁(国税局)の担当者によって執筆されている場合(かっては、執筆者の上司等の監修等によることが多かった。)には、それらの担当者が直接取扱い通達の作成等に携わっていることもあって、納税者がその内容を一層信頼することになる。かくして、このような解説書を信頼して過少申告等をした場合、信義則の適用の有無と「正当な理由」の存否が問題となる。
例えば、東京地裁平成9年4月25日判決(税務訴訟資料223号500頁)(注16)では、会社経営者が自己の経営する同族会社に対して多額な無利息貸付をし、所得税法157条の適用により受取利息の認定課税を受けた場合に、当時の国税当局の担当者の解説書によると個人が法人に対して無利息貸付した場合には課税関係が生じない旨説明されていたため、信義則の適用の有無及び「正当な理由」の存否が争われた。上記判決は、かかる場合には公的見解の表示があったものと認められないから、信義則の適用も認められないし、かつ、「正当な理由」の存在は認められない旨判示した。
これに対し、控訴審の東京高裁平成11年5月31日判決(税務訴訟資料243号127頁)は、信義則の適用は認められないものの、次のとおり判示し、その解説書が税務当局の業務ないし編者等の職務関連性からみて、その内容を信頼することに無理からぬものが認められるから、「正当な理由」は認め得ると判示している。
「本件解説書は、正確にいえば私的な著作物であり、個人から法人に対する無利息貸付にについて本件規定の適用が一切ないことを保証する趣旨までは記載されていないが、各巻頭の「推薦のことば」、「監修のことば」等において、東京国税局税務相談室その他の税務当局に寄せられた相談事例及び職務の執行の際に生じた疑義について回答と解説を示す形式がとられていることが記載されており、税務当局の業務ないし編者等の税務当局勤務者の職務との密接な関連性を窺わせるものである。したがって、税務関係者がその編者等や発行者から判断して、その記載内容が税務当局の見解を反映したものと認識し、すなわち、税務当局が個人から法人に対する無利息貸付については課税しないとの見解であると解することは無理からぬところである。」
しかしながら、上告審の最高裁平成16年7月20日第三小法廷判決(平成11年(行ヒ)第169号)は、当該解説書は、当該事案のような不合理、不自然な経済活動(無利息融資)まで課税関係が生じないものと説明しているわけではないとして、「正当な理由」を否定している。
この事案は、「平和事件」と称せられるものであり、課税当局担当者の解説の法的性格が問題となったものであるが、本件においても、かって国税当局担当者による解説書がストックオプション権利行使益を一時所得に当たる旨説明していたこともあって、「正当な理由」の解釈について多くの示唆を与えるものである。
4 本件における「正当な理由」
(1)本件においては、ストックオプションの権利行使益は、平成8年前までは他の新株等を取得する権利を与えられた場合の所得と同様に、原則として、一時所得として取り扱われており、その後、ストックオプション制度の拡充とそれに係る法整備に対応して、給与所得として取り扱われるようになってきたのであるが、そこに、税務官庁としての対応のあり方と課税の当否が問題とされた。
(2)その中で、本件上告審判決が最も重視した取扱い通達等は、次のように改正されてきた。
① 平成8年改正前の所得税基本通達23~35共-6(以下「平成8年前通達」という。)は、次のように定めていた。
「新株等を取得する権利を与えられた場合の所得は、一時所得とする。ただし、当該発行法人の役員若しくは使用人又はこれらのものであった者に対し支給すべきであった給与又は退職手当等に代えて当該新株等を取得する権利を与えたと認められる場合には、給与所得又は退職所得とする。」
② 新規事業法が平成7年11月に改正されたことに対応し、ストックオプション制度導入の円滑化に資するため、平成8年度税制改正において、租税特別措置法29条の2において所定の要件を満たしたストックオプションについて次のような特例措置を設けた。
(イ)従業員等が新株を取得する権利を行使した場合には、その権利の行使時に生じた経済的利益には所得税を課さない。
(ロ)(イ)の特例の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合には、当該株式の譲渡による所得については、株式等の申告分離課税(税率26%)を適用する。
③ 平成8年に改正された所得税基本通達23~35共-6(以下「平成8年通達」という。)は前記①の取扱いを次のように改めた。
「新株等を取得する権利を与えられた場合の所得は、一時所得とする。ただし、当該発行法人の役員又は使用人に対してその地位又は職務等に関して当該新株等を取得する権利を与えたと認められる場合には給与所得とし、これらの者の退職に着目して当該新株等を取得する権利を与えたと認められる場合には退職所得とする。」
④ 平成9年の商法改正に対応し、租特法29条の2の規定が改正され、当該課税特例について所定の拡充措置(所得税法施行令84条等の改正を含む。)が設けられた。
⑤ 平成10年に改正された所得税基本通達23~35共-6(以下「平成10年通達」という。)は前記③の取扱いを次のように改めた。
「イ、令84条第1号又は第2号に掲げる権利を与えられた取締役又は使用人がこれを行使した場合 給与所得とする。ただし、……主として職務の遂行に関連を有しない利益が供与されていると認められるときは、雑所得とする。
ロ、令84条第3号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合 一時所得とする。ただし、当該発行法人の役員又は使用人に対しその地位又は職務等に関連して新株(これに準ずるものを含む。……)を取得する権利が与えられたと認められるときは給与所得とし……」
⑥ 平成13年の商法改正に対応し、所得税法施行令84条が改正(1~3号が1~4号ヘ)され、それに対応して、平成14年に所得税基本通達23~35共-6も改正された。改正内容は、⑤と本質的に異ならないが、商法上の新株引受権等に係る取扱い(同通達(1)及び(2))は、「発行法人が外国法人である場合においても同様であることに留意する。」(同通達注書)とされた。この注書は、発行法人が外国法人である場合には、当時の所得税法施行令84条4号が適用され、所得税基本通達23~35共-7等の取扱いが適用されるのではないかという疑義を解消しようとしたものと解される。すなわち、当時の所得税法施行令84条1号から3号までが当時の商法の規定を前提とし、同4号からその他の有利発行について定めていたところ、外国法人が付与したストックオプションについて同4号が適用されると、所得税基本通達23~35共-7が適用され、10%程度の株価上昇による権利行使益について課税できないことになるからである。
しかしながら、このような改正は、ストックオプションの付与会社が外国法人であるときにも給与所得に当たることを初めて明らかにしたものと誤解されることになり、かつ、外国法人に対し我が国の商法を適用できるのかという疑義も生じさせることになる。
(2)かくして、上告審判決は、前述のような取扱い通達の変遷等に着目し、平成14年の通達改正までの間は、「納税者において、外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し、その見解に従って上記権利行使益を一時所得として申告したとしても、それには無理からぬ面があり、それをもって納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りに過ぎないものということにはできない。」と判示し、本件の過少申告における「正当な理由」を認め、本件賦課決定を取り消した。
このような上告審の判決については、平成10年の所得税基本通達の改正後、税務署の窓口等において外国法人から付与された、ストックオプション権利行使益が給与所得に当たることが指導されてきたこと等に照らすと、「正当な理由」を拡大解釈したようにも考えられる。また、前述の平和事件に係る最高裁判決と対比しても、平和事件の方が厳しすぎる、本件の上告審判決が甘すぎるようにも考えられる。
もっとも、ストックオプションの権利行使益の所得区分については、多くの論争があり、裁判例においてもその判断が二分され、課税当局の取扱いの変更(関係通達等の改正等)における納税者に対する対応が必ずしも明確でなかったこと等を総合して考慮してみると、本件の上告審判決は、極めて現実的な判断を示したものとも評価できる。
(注1)本件の一審判決及び控訴審判決のように、本税に係る更正処分が違法であるか適法であるかに伴って過少申告加算税の賦課決定が運命を共にするほか、横浜地裁平成16年1月21日判決(品川芳宣『重要租税判決の実務研究 増補改訂版』(大蔵財務協会)106頁)のように、当該更正を適法と認めたものの、当該賦課決定については、ストックオプション権利行使益の所得区分の取扱いが不透明であったことに着目して、「正当な理由」を認めて取り消した裁判例も存する。
(注2)「正当な理由」によって加算税が賦課が免除される規定は、本件における過少申告加算税(通法65④)のほか、無申告加算税(通法66①)、不納付加算税(通法67①)及び重加算税の一部(通法68②、③)についても設けられている。
(注3)ストックオプション権利行使益の所得区分の詳細については、前出(注1)113頁等参照。
(注4)金子宏『租税法 第11版』(弘文堂)9頁参照。
(注5)品川芳宣「税法上の行政制裁の論点」税51巻12号18頁参照。
(注6)同「説明」第6章第2節二・三・三。
(注7)最高裁昭和33年4月30日大法廷判決(民集12巻6号938頁)、最高裁昭和45年9月11日第二小法廷判決(刑集24巻10号1333頁)等参照。
(注8)神戸地裁昭和58年8月29日判決(税務訴訟資料133号521頁)、神戸地裁平成5年3月29日判決(税資194号1112頁)等参照。
(注9)神戸地裁昭和58年8月29日判決(税務訴訟資料133号521頁)、浦和地裁昭和63年12月19日判決(同166号932頁)、東京高裁平成元年11月30日判決(同174号807頁)、大阪高裁平成2年2月28日判決(同175号976頁)、名古屋高裁平成4年4月30日判決(同189号428頁)、東京地裁平成6年1月28日判決(同200号430頁)、千葉地裁平成6年5月30日判決(同201号375頁)、東京地裁平成7年3月28日判決(同208号1015頁)、東京高裁平成7年11月27日判決(同214号504頁)、大阪高裁平成10年4月14日判決(同231号545頁)、大分地裁平成10年12月22日判決(同239号618頁)、東京地裁平成12年4月25日判決(同247号486頁)等参照。
(注10)品川芳宣『附帯税の事例研究 第三版』(財経詳報社)73頁等参照。
(注11)本件の控訴審でも信義則の適用問題が審理されているが、税法における信義則の適用は、租税法律主義(合法性の原則)の要請があるので極めて制限されることになる(最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(訴訟月報34巻4号853頁)、前出(注11)107頁、品川芳宣「税法における信義則の適用について」税務大学校論叢8号1頁等参照)。
(注12)前出(注10)書109頁参照。
(注13)詳細については、前出(注10)書110頁以下参照。
(注14)誤指導の存否が争われた事例としては、札幌地裁昭和50年6月24日判決(税務訴訟資料82号238頁)、札幌高裁昭和51年10月19日判決(同90号227頁)、東京地裁昭和54年12月12日判決(同109号689頁)、名古屋地裁昭和55年3月24日判決(同110号666頁)、岡山地裁平成8年9月17日判決(同220号761頁)等参照。
(注15)大阪地裁昭和63年11月29日判決(税務訴訟資料166号530頁)、東京地裁平成6年1月28日判決(同200号430頁)、京都地裁昭和39年4月21日判決(行裁例集15巻4号571頁)等参照。
(注16)前出(注1)書154頁参照。
品川芳宣(しながわよしのぶ)
国税庁審理課課長補佐、東京地裁調査官、税務大学校教育二部長、国税庁資産評価企画官、同徴収課長、同管理課長、高松国税局長などを経て、平成7年筑波大学教授。平成17年早稲田大学大学院客員教授(専任)、筑波大学名誉教授、税務大学校客員教授。弁護士
【主要著書】
『課税所得と企業利益』(税務研究会)、『役員給与税務事例集』(商事法務研究会)、『役員報酬の法律と実務』(同)、『附帯税の事例研究』(財経詳報社)、『法人税の判例』(ぎょうせい)、『相続税財産評価の論点』(同)、『重要租税判決の実務研究・増補改訂版』(大蔵財務協会)、『役員報酬の税務事例研究』(財経詳報社)、『租税法律主義と税務通達』(ぎょうせい)、『徹底解明相続税財産評価の理論と実践』(同)他多数。
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