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解説記事2007年03月05日 【ニュース特集】 移転価格税制と他の国際課税、寄附金との関係を探る(2007年3月5日号・№201)

移転価格税制における執行当局の思惑の所在
移転価格税制と他の国際課税、寄附金との関係を探る


 移転価格税制を巡っては、近年、企業に対する更正処分が多発しており、運用基準の明確化など制度の改善を求める動きがある(本誌187号4頁、195号40頁参照)。一方、国際課税に係る規定には、移転価格税制のほか、外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)、過少資本税制があり、その執行(適用)関係が注目されるところだ。また、移転価格税制と寄附金の関係についても疑問が生じる部分がある。
 今回の特集では、本誌取材で確認された課税当局の考え方に基づき、国際課税の執行面における移転価格税制とその他の税制、寄附金との関係を検証していく。

移転価格税制とタックス・ヘイブン対策税制の関係
 外国子会社合算税制(以下、タックス・ヘイブン対策税制)は、租税特別措置法(以下、措置法)66条の6に規定されている(図1参照)。

特定外国子会社と国外関連者の判定基準
 タックス・ヘイブン対策税制の対象となるのは、発行済株式または出資の50%超が居住者および内国法人によって直接・間接に保有されている外国法人(外国関係会社)で、その国、地域の所得に課せられる税負担が25%以下のもの(特定外国子会社等)。
 一方、移転価格税制が対象とするのは、内国・外国法人が国外関連者と行う取引だ。この国外関連者とは、①親子等の関係(一方の法人が、他方の法人の株式等の50%以上を直接・間接に保有)、②兄弟(姉妹)関係、③実質支配(被支配)関係にある外国に所在する法人となる。
当局、間接保有割合の計算方法の違いを重視
 タックス・ヘイブン対策税制と移転価格税制との関係で留意が必要なのは、対象となる子会社等に対する間接保有割合の計算方法の違いだ。両制度ともに株式等の直接・間接保有割合で対象となる子会社等を規定しているが、タックス・ヘイブン対策税制に比べて、移転価格税制の方が対象となる子会社等の範囲が広くなっている。
 具体的には、タックス・ヘイブン対策税制の場合、日本の法人(A社)が米国法人(B社)の株式の50%を保有し、当該米国法人が英国法人(C社)の株式の60%を保有していた場合、日本法人と英国法人との間接保有割合は、掛算方式により30%(50%×60%)となり、外国関係会社には該当しない。
 一方、移転価格税制では、50%以上の出資関係にある法人(上記例では米国法人)の英国法人株式の保有割合である60%がそのまま間接保有割合となり、日本法人と英国法人は国外関連者となる。
 課税当局も、この間接保有割合の計算方法の違いを重視している(図2参照)。

外国税額控除の有無も判断材料に
 また、課税当局では、タックス・ヘイブン対策税制で対応できないケースについて、移転価格税制の適用が必要になると考えている。
 たとえば、タックス・ヘイブンに設立した子会社に実体があり、合理的な理由のもとに事業を営んでいるケースや日本側に出資のない兄弟関係等におけるタックス・ヘイブン取引については、タックス・ヘイブン対策税制では対応できない。そこで、移転価格税制の適用が必要とされる。
 さらに、タックス・ヘイブン対策税制では、合算課税される外国子会社の留保所得が日本の親会社の外国税額控除の計算上、国外源泉所得となり、外国税額控除が可能となること(図3参照)、外国子会社の留保金所得のうち持分割合に応じた部分のみが合算対象となり、移転所得の全部を取り戻すことができないことがある。こうしたケースについても、課税当局では移転価格税制の適用が必要と判断している。
 なお、特定外国子会社等に対してタックス・ヘイブン対策税制と移転価格税制の双方が適用される場合には、移転した所得の全額を特定外国子会社の未処分利益から減算(または欠損の金額に加算)するかたちで、二重課税の排除が行われることになる。
移転価格税制の適用が必要とされるケース
・外国子会社が実体を有し、合理的な理由のもとに事業を営んでいる場合
・日本側の出資のない兄弟間等による取引がある場合
・内国親会社の外国税額控除計算上、外国子会社の留保所得に係る外税控除が可能な場合
・外国子会社の留保所得のうち持分割合に応じた部分のみが合算対象となる場合
・外国子会社の事業年度終了の日以後2月を経過した日を含むその内国親会社の事業年度所得とされるので、合算課税までに時間的なズレがある場合



移転価格税制と過少資本税制のダブル課税も
 過少資本税制は、措置法66条の5に規定されている。海外の関連企業との間で、出資に代えて貸付けを多くした場合、貸付けに対する支払利子は損金となる。この税負担の軽減を防止するため、一定割合を超える支払利子の損金算入を認めない制度だ(図4参照)。

市場利率か独立企業間利率かを問題に
 過少資本税制と移転価格税制との執行関係では、国外関連者間における過大な借入れについて、その利子の支払いが市場利率に基づいて行われている場合には、移転価格税制が適用されることはないとされる。しかし、外国支配株主等が国外関連者に該当する場合で、その借入れに関して独立企業間利率による利子の支払いが行われており、その独立企業間利率と市場利率の間に格差があれば、移転価格税制が適用されることになる。
 この場合、当局により独立企業間利率を超える部分に対して移転価格課税が行われ、独立企業間利率に相当する負債利子に対しては過少資本税制が適用される。

低廉譲渡の場合、寄附金での対処が主流に
 移転価格税制における寄附金の規定は、措置法66条の4第3項に規定されている。

国外関連者への寄附金かをチェック
 措置法66条の4第3項においては、法人税法37条7項に規定する寄附金の額のうち当該法人に係る国外関連者に対するものは、損金の額に算入しないとされている。
 したがって、法人税法37条7項に規定される寄附金のうち国外関連者に対するものは、寄附金の損金算入限度額の計算から除外され、全額損金不算入となる。資本金の額、所得の額の大きな企業にとっては影響が大きい。

法法37条7項で贈与認定し、寄附金で処理
 移転価格税制における寄附金の規定は、前述のとおり、法人税法37条7項を対象としている。そこで問題となるのは法人税法37条8項の取扱いだ。同項では、低廉譲渡等の場合を規定しており、それが国外関連者に対して行われた場合、移転価格税制を適用するのか、寄附金として取り扱うのかについて疑問が生じる。
 条文上、措置法66条の4第3項の規定に当該低廉譲渡は含まれていないので、寄附金とするには無理があり、原則的には、措置法66条の4第1項、4項により移転価格税制を適用して否認され、国外移転所得として取り扱われることになる。
 しかし、移転価格課税の現場では、法人税法37条7項に規定される贈与と認定できるケースについては、移転価格課税ではなく、措置法66条の4第3項による寄附金として対処することが多くなっているようだ。
移転価格税制の更正期間制限は6年
 なお、寄附金と移転価格税制では、金額の算定方法(時価と独立企業間価格)が異なるほか、更正の期間制限についても、寄附金の場合3年(平成16年4月1日以降に法定申告期限等が到来する法人税については5年)、移転価格税制の場合6年という違いがある。


移転価格課税における実態調査
 移転価格税制の対象企業のうち、特に継続的な取引実態の解明および情報収集が必要とされる場合、「継続管理法人」として移転価格実態調査の対象となる。
 国税局等における実態調査には、通常の法人税調査のなかで行われる調査と国際情報課等が行う調査の2種類がある。前者の場合、法人税調査の事前に調査依頼事項が記入された「移転価格実態調査表」が交付され、その結果に基づき、再度、実地調査の対象となるかを見極める深度ある実態調査が行われる。なお、実地調査とされた事案は国税庁で一元管理され、調査・処理方針は国税庁により決定される。

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