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解説記事2007年05月21日 【会計基準等解説】 企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」等の解説(2007年5月21日号・№211)

実務解説
企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」等の解説
 
 企業会計基準委員会 研究員 玄蕃進吾

Ⅰ.はじめに

 企業会計基準委員会は、平成19年3月30日に、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)を公表している。
 この会計基準は平成5年6月に旧大蔵省(現在の金融庁)企業会計審議会第一部会から公表された「リース取引に係る会計基準」(以下「改正前会計基準」という。)を改正するものであり、また、この適用指針は平成6年1月に日本公認会計士協会から公表された「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」(以下「改正前指針」という。)を改正するものである。
 この会計基準を適用することにより、従来、所有権移転外ファイナンス・リース取引に認められていた通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理は廃止され、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に一本化されることとなる。
 本稿では、会計基準及び適用指針の解説を行うが、改正の経緯については、試案公表時の解説記事(本誌174号12頁)を参照されたい。また、字数の関係上、所有権移転ファイナンス・リース取引及びオペレーティング・リース取引の会計処理の解説は省略する。
 なお、本稿のうち意見にわたる部分については私見であることをあらかじめお断りする。

Ⅱ.適用範囲

1 適用される会社の範囲
 会計基準及び適用指針は、他の会計基準と同様に、すべての会社に適用されると考えられる。ただし、会計基準を中小企業に適用する際の取扱いに関しては、会計基準の内容を踏まえて、「中小企業の会計に関する指針」(日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4団体により公表)により定められる予定である。

2 適用される取引の範囲 (1)会計基準と適用指針の関係  会計基準では、「本会計基準は、リース取引に係る会計処理に適用する。」(基準3)とされ、適用指針でその詳細な会計処理を定めている。適用指針では、会計基準でファイナンス・リース取引とされるもののうち主たるものについて詳細な会計処理が示されており、図表1のような関係となっている(適用指針3、89)。

(2)通常の保守等以外の役務提供が組み込まれていないリース取引  「通常の保守等以外の役務提供が組み込まれていないリース取引」は、典型的なリース取引を意図したものである(適用指針89)。典型的なリース取引としては、リース期間中のリース料の支払いが均等であり、リース期間がリース物件の経済的耐用年数より長くないことが想定されており、また、「通常の保守等」は、自動車やコピー機などのリース取引におけるメンテナンスなどを想定している。

Ⅲ.不動産に係るリース取引の取扱い

1 ファイナンス・リース取引の判定
 土地、建物等の不動産のリース取引についても、動産のリース取引と同様に、ファイナンス・リース取引に該当するか、オペレーティング・リース取引に該当するかを判定する。
 ただし、土地については、所有権移転条項があるか割安購入選択権条項がある場合はファイナンス・リース取引になるが、それ以外の場合には、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定するとされている(適用指針19)。これは、土地の経済的耐用年数は無限であるため、通常、フルペイアウトのリース取引に該当しないと考えられることによる(適用指針98)。

2 土地と建物等の分割
(1)分割の要否
 適用指針では、土地と建物等を一括したリース取引は、原則として、リース料総額を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割した上で、現在価値基準の判定を行うとされている(適用指針20)。ただし、適切な土地の賃料が契約書で明示されているなどの場合を除いては、借手においては、リース料に含まれている土地の賃料相当の金額の算出は容易ではないことが想定されるため、実務的な配慮から、借手においては、セール・アンド・リースバック取引を除き、土地の賃料が容易に判別可能でない場合は、両者を区分せずに現在価値基準の判定を行うことができるものとされている(適用指針100)。
 ここで、セール・アンド・リースバックの場合に両者の分割を強制しているのは、リースバックがファイナンス・リース取引に該当するか否かによって、売却損益の計算が変わるためである。
(2)土地部分と建物等部分の分割の方法  現在価値基準の判定を行う上で、リース料総額を土地に係る部分と建物等に係る部分に合理的に分割する方法としては以下が考えられ、このうち最も実態に合った方法を採用する(適用指針99)。


Ⅳ.ファイナンス・リース取引の判定基準

1 リース取引の分類
(1)概 要
 
 会計基準では、「解約不能のリース取引」、「フルペイアウトのリース取引」のいずれをも満たすリース取引をファイナンス・リース取引とし、それ以外のリース取引をオペレーティング・リース取引としている(基準5)。これらの定義は、改正前基準を踏襲したものである。
 また、会計基準では、ファイナンス・リース取引を、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの(以下「所有権移転ファイナンス・リース取引」という。)と、それ以外の取引(以下「所有権移転外ファイナンス・リース取引」という。)に分類するとされている(基準8)。

2 ファイナンス・リース取引の具体的な判定基準
(1)ファイナンス・リース取引の判定
 適用指針では、リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについて、「その経済的実質に基づいて判断すべきもの」とした上で、①現在価値基準(90%以上)又は②経済的耐用年数基準(75%以上)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定される(適用指針9)。①②の基準の内容は、改正前指針の内容が基本的に踏襲されている。
(2)所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引の分類  適用指針では、(1)の①又は②を充たしたもののうち、以下の③所有権移転条項付リース、④割安購入選択権条項付リース、⑤特別仕様のリース物件のいずれかに該当する場合に所有権移転ファイナンス・リース取引とし、それ以外を所有権移転外ファイナンス・リースとしている(適用指針10)。

Ⅴ.所有権移転外ファイナンス・リース取引の借手の会計処理

1 概 要
 今回の改正で例外処理(通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理)が廃止されたことに伴い、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に一本化された(基準9)。

2 リース取引開始日の会計処理
(1)基本となる会計処理
 
 借手は、リース取引開始日に、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により、リース物件とこれに係る債務をリース資産及びリース債務として計上する(基準10)。
(2)リース資産及び債務の計上額  会計基準では、リース資産及びリース債務の計上額は、原則として、リース契約締結時に合意されたリース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によるとされている(基準11)。
 利息相当額の合理的な見積額を控除する場合、リース取引開始後の各期で支払利息が認識されることとなる。利息相当額の合理的な見積額を控除する場合のリース資産とリース債務の計上額は、適用指針では以下のように示されている(適用指針22)。

 貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率とし、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を用いる。
(3)維持管理費用相当額の処理  現在価値基準の判定上、維持管理費用相当額をリース料総額から控除する場合は、リース料総額から維持管理費用相当額の合理的見積額を差し引いた額により、リース資産及びリース債務の計上額を計算する(適用指針25)。
(4)表 示  リース資産については、原則として、有形固定資産、無形固定資産の別に、一括してリース資産として表示する。ただし、有形固定資産又は無形固定資産に属する各科目に含めることもできる(基準16)。
 リース債務については、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものは流動負債に属するものとし、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものは固定負債に属するものとする(基準17)。

3 リース取引開始後の各期における処理
(1)リース資産の減価償却
① 減価償却の方法
 所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産では、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却を行うが、所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合には、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却費を算定する必要はない。定額法、級数法、生産高比例法等の中から企業の実態に応じたものを選択適用する(基準12、適用指針28)。
 なお、残存価額を10パーセントとして計算した定率法による減価償却費相当額に簡便的に9分の10を乗じた額を各期の減価償却費相当額とするいわゆる9分の10定率法も認められる(適用指針112)。
② 償却年数  リース資産の償却年数については、原則として、リース期間を耐用年数とするが、リース期間終了後の再リース期間をファイナンス・リース取引の判定においてリース期間に含めている場合は、再リース期間を当該耐用年数に含める(基準12、適用指針27)。
③ 残存価額  残存価額についてはゼロとするが、リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、原則として、当該残価保証額を残存価額とする(基準12、適用指針27)。
(2)利息相当額の処理
 リース料総額は、リース債務の元本返済と支払利息とに区分計算する。利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息法による(基準11、適用指針22、23)。

4 借手の簡便的な取扱い
(1)リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い
① 会計処理
 
 リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次のいずれかの方法を適用することができる(適用指針31)。
a)リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができる。この場合、リース資産及びリース債務は、リース料総額で計上され、支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上される。
b)利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法として、定額法を採用することができる。
② 判断基準  リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、上記算式の割合が10パーセント未満である場合とされる(適用指針32)。
 ここで、未経過リース料の期末残高を算定する上で、以下は除外される。
●「少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い」により通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うもの
●利息相当額を利息法により会計処理しているもの
 なお、適用指針には明示されていないが、分子の「有形固定資産及び無形固定資産の期末残高」は、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の期末残高は除くことが適当であると考えられる(未経過リース料の期末残高と二重になるため)。
(2)少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い ① 会計処理  個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合は、オペレーティング・リース取引の会計処理に準じて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる(適用指針34)。
② 判断基準  個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合とは、次のa)からc)のいずれかを満たす場合とする。
a)重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引
b)リース期間が1年以内のリース取引
c)企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引

Ⅵ.所有権移転外ファイナンス・リース取引の貸手の会計処理

1 概 要
 今回の改正で、貸手についても通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に一本化された(基準9)。

2 リース取引開始日の会計処理
(1)基本となる会計処理
 
 貸手は、リース取引開始日に、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により、所有権移転ファイナンス・リース取引についてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リース取引についてはリース投資資産として計上する(基準13)。
(2)表 示  所有権移転ファイナンス・リース取引におけるリース債権及び所有権移転外ファイナンス・リース取引におけるリース投資資産については、図表2のとおり表示する(基準18)。

3 リース取引開始後の各期における処理
(1)基本となる会計処理
 適用指針では、貸手の基本となる会計処理として、以下の3つの方法を定めている(適用指針51)。
第一法 リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法
第二法 リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法
第三法 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法
 上記の3つの方法については、各企業が取引実態に応じ、いずれかの方法を選択し、継続的に適用する。
(2)受取利息相当額の処理  貸手における利息相当額の総額は、リース料総額及び見積残存価額の合計額から、これに対応するリース資産の取得価額を控除することによって算定される。当該利息相当額については、原則として、リース期間にわたり利息法により配分する(基準14)。
(3)維持管理費用相当額の処理  現在価値基準の判定上、維持管理費用相当額をリース料総額から控除する場合は、回収額に含まれる維持管理費用相当額は、収益に計上するか、又は、貸手の固定資産税、保険料等の実際支払額の控除額として処理する(適用指針54)。

4 貸手の簡便的な取扱い
(1)貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い
① 会計処理
 
 貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合は、利息相当額の総額を、利息法によらず、リース期間中の各期に定額で配分することができる(適用指針59)。
② 判断基準  貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合とは、下記算式の割合が10パーセント未満である場合とされる(適用指針60)。
 ここで、未経過リース料の期末残高を算定する上で利息相当額を利息法により処理しているものは除外される。
 なお、適用指針には明示されていないが、分子の「営業債権の期末残高」は、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース投資資産の期末残高は除くことが適当であると考えられる(未経過リース料の期末残高と二重になるため)。


Ⅶ.開示(注記)

1 年度の財務諸表にファイナンス・リース取引の注記
(1)借手側の注記
 リース資産について、その内容(主な資産の種類等)及び減価償却の方法を注記する(基準19)。
 なお、上記の注記については、重要性が乏しい場合には要しないものとされる(基準19)。
(2)貸手側の注記 ① リース投資資産について、以下を注記する(基準20)。
a)将来のリース料を収受する権利部分(利息相当額控除前)
b)見積残存価額(リース期間終了時に見積られる残存価額で借手による保証のない額)部分(利息相当額控除前)
c)受取利息相当額
 なお、上記の注記については、重要性が乏しい場合には要しないものとされる(基準20)。
② リース債権及びリース投資資産に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額を注記する(基準21)。なお、重要性が乏しい場合には、当該注記を要しないこととされる(適用指針71)。
③ ファイナンス・リース取引の基本的な会計処理(適用指針51)について、いずれを採用しているかを重要な会計方針に記載する(適用指針72)。

2 オペレーティング・リース取引の注記(借手側及び貸手側)  オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料を注記する(基準22)。
 当該注記は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと1年超のリース期間に係るものに区分して注記することとされ、また、リース期間の一部分の期間について契約解除をできない場合は、当該リース期間の一部分に係る未経過リース料を注記することとされている(適用指針74)。
 ただし、以下のいずれかに該当して重要性が乏しいと考えられる場合には、当該注記は要しないこととされている(基準22、適用指針74)。
a)個々のリース物件のリース料総額に重要性がない場合(第35項(1)に該当するリース取引)
b)リース期間が1年以内のリース取引
c)契約上数か月程度の事前予告をもって解約できるものと定められているリース契約で、その予告した解約日以降のリース料の支払を要しない事前解約予告期間に係る部分のリース料
d)企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引

3 転リース取引に係る注記  転リース実施時に、リース債権又はリース投資資産とリース債務を利息相当額控除前の金額で計上する場合(適用指針47なお書)、貸借対照表に含まれる当該リース債権又はリース投資資産とリース債務の金額を注記する(適用指針73)。

Ⅷ.適用時期

1 年度の財務諸表への適用
(1)原則的な適用時期
 リース会計基準は、平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用するとされている(基準23)。3月期決算会社のケースでは、2009年3月期から適用となる(図表3参照)。
 なお、この年度の財務諸表の原則的な適用時期に係る四半期財務諸表の適用関係は、「2.四半期財務諸表への適用」を参照のこと。

(2)早期適用  年度の財務諸表について、平成19年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から、早期適用することができるとされている(基準23)。したがって、3月期決算会社のケースでは、2008年3月期から適用が可能となる。
 また、年度の連結財務諸表及び財務諸表に関して早期適用を行う場合、原則的にはその中間期からの適用が必要となるが、会計基準では中間期には適用しないことができるとされている(基準25)。中間期に適用しない場合の取扱いは、以下のとおりとなる。
年度財務諸表に係る早期適用年度の中間財務諸表(会計基準を適用しない場合) ●旧基準で必要とされていたリース取引に係る注記を継続する。なお、ファイナンス・リース取引の判定及び会計処理は、旧基準に従うことに留意が必要である。
年度財務諸表に係る早期適用年度の年度財務諸表(中間期で会計基準を適用していない場合) ●年度の期首からリース会計基準を適用する必要があることに留意する(下期からの適用ではない。)。
●中間・年度の会計処理の首尾一貫性の注記は要しない。
●中間連結財務諸表及び中間財務諸表に、リース会計基準が適用されておらず、改正前会計基準で必要とされていた注記がなされている旨を記載する。

2 四半期財務諸表への適用
(1)原則的な適用時期
 四半期財務諸表に関しては、システム対応など実務面での円滑な適用を図るため、年度の財務諸表より一期遅れて、平成21年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る四半期財務諸表から適用することとされている(基準24)。したがって、3月期決算会社のケースでは、2010年3月期の第1四半期(2009年6月第1四半期)から適用となる。
(2)早期適用  四半期財務諸表について、平成20年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る四半期財務諸表から早期適用することができるとされている(基準25)。したがって、3月期決算会社のケースでは、年度財務諸表の原則適用年度である2009年3月期の第1四半期(2008年6月第1四半期)から適用することが可能となる。この四半期財務諸表に係る早期適用年度(=年度財務諸表の原則適用年度)の取扱いは以下のとおりとなる。
四半期財務諸表に係る早期適用年度の四半期財務諸表(会計基準を適用しない場合) ●所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る残高(通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理による場合)が前年度末と比較して著しく変動しているときのみ、旧基準で必要とされていた注記(オペレーティング・リース取引に係る注記を除く。)を記載する。なお、ファイナンス・リース取引の判定等は、旧基準に従うことに留意が必要である。
●「証券取引法等の一部を改正する法律」第3条により施行が予定される金融商品取引法第24条の4の7の規定の適用を受ける上場会社等のうち、内閣府令で定める事業を行う会社の第2四半期の四半期財務諸表については、別途の対応が図られることとなる。
四半期財務諸表に係る早期適用年度の年度財務諸表(四半期財務諸表で適用していない場合) ●年度の期首からリース会計基準を適用する必要があることに留意する(第4四半期からの適用ではない。)。

Ⅸ.適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い

1 原則的な取扱い
(借手、貸手共通)
 所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、賃貸借取引に準ずる処理から、売買取引に準ずる処理に変更する場合、既存分のリース取引についても、リース会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理する(適用指針77、80)。
●既存分のリース取引については定額的な費用計上、収益計上が行われてきたため、売買取引に準ずる処理を適用し利息法による費用配分、収益配分に切り替えた場合、期首で変更による影響額が生じることとなるが、この変更による影響額(適用初年度の期首までの税引前当期純損益に係る累積的影響額)は特別損益として処理する。

2 簡便的な取扱い(変更時の期首で影響額が生じない方法)
(借手)
 借手については、簡便的に既存分のリース取引について、会計基準適用初年度の前年度末における未経過リース料残高(利息相当額控除前)又は未経過リース料期末残高相当額(利息相当額控除後)を取得価額とし、期首に取得したものとしてリース資産に計上することができる(適用指針78)。
●この簡便法を利用する場合であっても、既存分のファイナンス・リース取引の判定及び会計処理は、リース会計基準及び適用指針に従うことが必要であることに留意する必要がある。
●未経過リース料期末残高相当額(利息相当額控除後)を取得価額とした場合、会計基準適用後の残存期間における利息相当額については、定額法で配分することができる。
●リース取引開始日が会計基準適用初年度開始前のセール・アンド・リースバック取引について計上されている長期前払費用又は長期前受収益については、別途、会計基準適用初年度開始前に実施されていた会計処理を継続する。
(貸手)  貸手については、簡便的に既存分のリース取引について、会計基準適用初年度の前年度末における固定資産の適正な帳簿価額(減価償却累計額控除後)をリース投資資産の期首の価額として計上することができる(適用指針81)。
●借手と同様に、この簡便法を利用する場合であっても、既存分のファイナンス・リース取引の判定及び会計処理は、リース会計基準及び適用指針に従うことが必要であることに留意する必要がある。
●固定資産から振り替えたリース投資資産については、会計基準適用後の残存期間においては、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができる。
●リース取引を主たる事業としている企業においては、この簡便法を適用した場合、重要性が乏しいときを除き、会計基準適用初年度の会計基準適用後の残存期間の各期において、原則的な取扱いをした場合と、この簡便法を適用した場合の税引前当期純損益の差額を注記しなければならない(適用指針83)。

3 簡便的な取扱い(既存分のリース取引について注記を継続する方法)
(借手、貸手共通)
 既存分のリース取引については、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用することができる(適用指針79、82)。
●既存分のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨及び「リース取引に係る会計基準」で必要とされていた事項を注記しなければならない。
●この注記処理による場合であっても、ファイナンス・リース取引の判定及び注記すべき金額の算定は、リース会計基準及び適用指針に従う必要がある。したがって、従来と注記の対象となるリース取引が異動することもあることに留意が必要である。
●この簡便法は、リース取引を主たる事業としている企業は適用できない(適用指針83)。これは、会計基準改正前の処理(固定資産に計上)と会計基準改正後の処理(リース投資資産に計上)が大きく異なり、これらが混在することを避けることを意図したものである。ただし、特別目的会社等を利用して資産を保有しファイナンス・リース取引の貸手となる事業体などのように、資産の取得を繰り返さないような場合には混在する弊害がないため、この簡便法による注記処理を行うことは妨げられない(適用指針131)。

Ⅹ.四半期財務諸表における取扱い
 会計基準適用後の四半期財務諸表は、会計処理に関しては、基本的に年度の財務諸表と同様の(ないし準じた)処理を行うのみである。
 ただし、既存分のリース取引について注記方式を採用した場合(適用指針79、82)、適用指針では、以下のとおり一定のケースにおいて四半期財務諸表に注記が必要となることを定めている(適用指針84、85)。
●年度の財務諸表では、改正前会計基準で必要とされていた事項を財務諸表に注記する必要があるが、四半期財務諸表では当該注記は要しない。
●賃貸借取引に準じて会計処理したリース取引の金額が、企業再編等により前年度末と比較して著しく増減しているときは、当該著しく増減した期における四半期財務諸表において、図表4のとおり注記する。
(げんば・しんご)

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