解説記事2007年08月27日 【ニュース特集】 東京合意、2011年までに会計基準の差異を解消へ(2007年8月27日号・№224)
持分プーリング法の廃止とのれんの非償却化が最大の論点
東京合意、2011年までに会計基準の差異を解消へ
企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)は8月8日、2011年6月30日までに会計基準のコンバージェンスを達成する旨の東京合意を公表した。東京合意では、2008年までに欧州証券規制当局委員会(CESR)の同等性評価で指摘されている持分プーリング法やSPEを含む連結の範囲などの項目について差異を解消する。また、その他の項目については、原則、2011年6月30日までにコンバージェンスを行うとしている。コンバージェンスの最大の障壁とされる持分プーリング法については、廃止する方向で検討を開始し、2007年末までに論点整理をまとめる方針だ。ただし、今回の東京合意は、IASBとの間でのコンバージェンスの完了時期を定めることを決めたものであり、最終的には企業会計基準委員会で検討したうえで決定される。項目によっては完全にコンバージェンスできない可能性も少なからず残されている。
1 ASBJはコンバージェンスに前向きであることを内外にアピール
今回、コンバージェンスの完了時期を示すことに至った背景には、企業会計基準委員会がコンバージェンスに前向きであることを国内外に示すこととEUの同等性評価にも好影響を与えることを考慮したことがある。
また、国際財務報告基準はすでに100か国以上で受け入れられている。中国ではすでに国際財務報告基準が導入され、カナダ、韓国でも2011年から国際財務報告基準を導入する旨を明らかにしている。また、IASBとFASB(米国財務会計基準審議会)の両者は、平成14年10月のノーウォーク合意および平成18年2月にコンバージェンスに向けた作業計画(MOU)を公表している。このような状況下において、期限を区切らずにコンバージェンスを進めることになった場合、日本だけが世界的に孤立してしまうとの懸念を払拭する狙いもあるようだ。
日本経団連もコンバージェンスに賛成 なお、今回の東京合意については、経済界の支持も取り付けている。日本経済団体連合会では、8月8日付で「国際会計基準、米国基準とのコンバージェンス作業を加速する必要がある」とする旨の提言を公表している。
2 持分プーリング法の廃止が最初の難関
今回の東京合意では、コンバージェンスにあたり、2008年中にCESRの同等性評価で指摘されている項目についてコンバージェンスを達成し、残りの日本基準と国際財務報告基準との差異については、2011年6月30日までにコンバージェンスを達成するとしている。
まず、CESRの同等性評価では、26項目が指摘されており、今号6頁の表のとおりとなっている。すでに差異が解消された項目もあるが、最大の論点は、持分プーリング法を廃止するかどうかだ。
企業結合会計基準では、パーチェス法と持分プーリング法の2つの会計処理があるが(図参照)、国際財務報告基準や米国会計基準では、パーチェス法に一本化されている。一方、わが国の場合には、一定の要件を満たすものであれば、持分プーリング法も認めている。このため、企業結合会計基準における持分プーリング法は、コンバージェンスを行ううえで最大の難関とされる項目である。
9月頃にも企業結合の実態調査を公表へ
企業結合会計基準については、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用されている。企業会計基準委員会では、実際に行われた企業結合の実態について調査を行っている。同委員会では、9月頃にも企業結合の実態を調査したリサーチペーパーを公表する予定。実態調査では、2、3件、持分プーリング法を適用した事例がある模様だ。そもそも企業結合自体が多くあるわけではないので、持分プーリング法の適用件数が少ないか多いかは一概にはいえないが、西川郁生企業会計基準委員会委員長によると、「対等合併が間違いなくあるとする企業会計審議会で議論していた時とは状況が変わっている」と指摘。「一般的にM&Aが行われるという考え方に経営者の考え方も変わってきている」と企業結合に対する現状の認識を示している。
なお、同委員会では、実態調査結果をもとに2007年末までに論点整理をまとめる予定だ。持分プーリング法を廃止する方向で議論を行うことになるが、個別企業からすると、持分プーリング法廃止に強く反対することも考えられ、最終的な結論までには紆余曲折がありそうだ。
合併対価の算定日が問題 また、企業結合会計基準に関しては、企業結合の対価の算定日(交換日)も問題となる。
日本の場合、合意公表日を採用しているが、国際財務報告基準では、企業結合日としている。企業結合日で測定することになると、合併等する企業同士の株価が影響し合った状態で測定することになるため、日本側としては違和感のある会計処理となる。実務上は、難しい問題となる。
SPEの連結は2008年初めに論点整理を公表 その他では、SPEも含めた連結の範囲が問題となる。この点については、特別目的会社専門委員会において検討し、平成20年初め頃に論点整理をまとめる方針を明らかにしている。
3 のれんを非償却資産にできるのか?
CESRの同等性評価で指摘されている項目以外で2011年6月30日までに会計基準の差異を解消する項目として問題となりそうなのがのれんを非償却資産とするかどうかだ。
現行の企業結合会計基準では、のれんは20年以内で規則的償却を行うこととされているが、国際財務報告基準では、のれんは非償却資産として計上することとし、減損処理だけを求めている。基本的には日本でものれんを非償却資産とする方向で検討することになるが、最終的に非償却資産とするには障害も多い。
企業会計原則では、合併等によって取得した営業権(のれん)は、貸借対照表に計上し、毎期均等額以上を償却するものとされている。このため、のれんを非償却とする場合には、必然的に企業会計原則に反することになる。
また、のれんを非償却資産とすることは理論上難しいと指摘する意見も多い。今後、持分プーリング法を廃止するよりも大きな議論を巻き起こしそうな状況である。
東京合意、2011年までに会計基準の差異を解消へ
企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)は8月8日、2011年6月30日までに会計基準のコンバージェンスを達成する旨の東京合意を公表した。東京合意では、2008年までに欧州証券規制当局委員会(CESR)の同等性評価で指摘されている持分プーリング法やSPEを含む連結の範囲などの項目について差異を解消する。また、その他の項目については、原則、2011年6月30日までにコンバージェンスを行うとしている。コンバージェンスの最大の障壁とされる持分プーリング法については、廃止する方向で検討を開始し、2007年末までに論点整理をまとめる方針だ。ただし、今回の東京合意は、IASBとの間でのコンバージェンスの完了時期を定めることを決めたものであり、最終的には企業会計基準委員会で検討したうえで決定される。項目によっては完全にコンバージェンスできない可能性も少なからず残されている。
1 ASBJはコンバージェンスに前向きであることを内外にアピール
今回、コンバージェンスの完了時期を示すことに至った背景には、企業会計基準委員会がコンバージェンスに前向きであることを国内外に示すこととEUの同等性評価にも好影響を与えることを考慮したことがある。
また、国際財務報告基準はすでに100か国以上で受け入れられている。中国ではすでに国際財務報告基準が導入され、カナダ、韓国でも2011年から国際財務報告基準を導入する旨を明らかにしている。また、IASBとFASB(米国財務会計基準審議会)の両者は、平成14年10月のノーウォーク合意および平成18年2月にコンバージェンスに向けた作業計画(MOU)を公表している。このような状況下において、期限を区切らずにコンバージェンスを進めることになった場合、日本だけが世界的に孤立してしまうとの懸念を払拭する狙いもあるようだ。
日本経団連もコンバージェンスに賛成 なお、今回の東京合意については、経済界の支持も取り付けている。日本経済団体連合会では、8月8日付で「国際会計基準、米国基準とのコンバージェンス作業を加速する必要がある」とする旨の提言を公表している。
2 持分プーリング法の廃止が最初の難関
今回の東京合意では、コンバージェンスにあたり、2008年中にCESRの同等性評価で指摘されている項目についてコンバージェンスを達成し、残りの日本基準と国際財務報告基準との差異については、2011年6月30日までにコンバージェンスを達成するとしている。
まず、CESRの同等性評価では、26項目が指摘されており、今号6頁の表のとおりとなっている。すでに差異が解消された項目もあるが、最大の論点は、持分プーリング法を廃止するかどうかだ。

日本で国際財務報告基準は適用できる? |
企業結合会計基準では、パーチェス法と持分プーリング法の2つの会計処理があるが(図参照)、国際財務報告基準や米国会計基準では、パーチェス法に一本化されている。一方、わが国の場合には、一定の要件を満たすものであれば、持分プーリング法も認めている。このため、企業結合会計基準における持分プーリング法は、コンバージェンスを行ううえで最大の難関とされる項目である。

なお、同委員会では、実態調査結果をもとに2007年末までに論点整理をまとめる予定だ。持分プーリング法を廃止する方向で議論を行うことになるが、個別企業からすると、持分プーリング法廃止に強く反対することも考えられ、最終的な結論までには紆余曲折がありそうだ。
合併対価の算定日が問題 また、企業結合会計基準に関しては、企業結合の対価の算定日(交換日)も問題となる。
日本の場合、合意公表日を採用しているが、国際財務報告基準では、企業結合日としている。企業結合日で測定することになると、合併等する企業同士の株価が影響し合った状態で測定することになるため、日本側としては違和感のある会計処理となる。実務上は、難しい問題となる。
SPEの連結は2008年初めに論点整理を公表 その他では、SPEも含めた連結の範囲が問題となる。この点については、特別目的会社専門委員会において検討し、平成20年初め頃に論点整理をまとめる方針を明らかにしている。
3 のれんを非償却資産にできるのか?
CESRの同等性評価で指摘されている項目以外で2011年6月30日までに会計基準の差異を解消する項目として問題となりそうなのがのれんを非償却資産とするかどうかだ。
現行の企業結合会計基準では、のれんは20年以内で規則的償却を行うこととされているが、国際財務報告基準では、のれんは非償却資産として計上することとし、減損処理だけを求めている。基本的には日本でものれんを非償却資産とする方向で検討することになるが、最終的に非償却資産とするには障害も多い。
企業会計原則では、合併等によって取得した営業権(のれん)は、貸借対照表に計上し、毎期均等額以上を償却するものとされている。このため、のれんを非償却とする場合には、必然的に企業会計原則に反することになる。
また、のれんを非償却資産とすることは理論上難しいと指摘する意見も多い。今後、持分プーリング法を廃止するよりも大きな議論を巻き起こしそうな状況である。
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