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解説記事2007年09月17日 【制度解説】 金融商品取引法制の施行に向けた企業内容等の開示に係る政府令整備の要点(2007年9月17日号・№227)

実務解説
金融商品取引法制の施行に向けた企業内容等の開示に係る政府令整備の要点
 
 金融庁総務企画局企業開示課企業開示調整官 谷口義幸

Ⅰ はじめに

 金融商品取引法制における開示制度の整備として、「有価証券の『性質』に着目した開示制度の整備」および「有価証券の『流動性』に着目した開示制度の整備」(以上について、図1参照)、「開示規制の適用の明確化」「組織再編に係る開示制度の整備」等を行うこととし、これらを実施するため、平成19年8月3日に「証券取引法等の一部を改正する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」(平成19年政令第233号)が公布され、証券取引法施行令が改正された(改正後は「金融商品取引法施行令」(以下「金商法施行令」という)とされる)。

 また、開示制度関係の内閣府令では、8月7日に「証券取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(平成19年内閣府令第56号)、8月10日に「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第62号)、「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(平成19年内閣府令第63号)および「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(平成19年内閣府令第64号)の3本の新設府令、そして、8月15日に「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(平成19年内閣府令第65号)が公布された。
 新設・改正された開示制度関係の主な内閣府令は次のとおりである。
【新設された内閣府令】
① 財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令(以下「内部統制府令」という)
② 四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「四半期財務諸表等規則」という)
③ 四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「四半期連結財務諸表規則」という)
【改正された内閣府令】
① 金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(平成5年大蔵省令第14号)〔改正前は「証券取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」〕
② 企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)(以下「開示府令」という)
③ 外国債等の発行者の内容等の開示に関する内閣府令(昭和47年大蔵省令第26号)
④ 特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令(平成5年大蔵省令第22号)
⑤ 財務諸表等の監査証明に関する内閣府令(昭和32年大蔵省令第12号)(以下「監査証明府令」という)
⑥ 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号)
⑦ 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)
⑧ 中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和52年大蔵省令第38号)
⑨ 中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(平成11年大蔵省令第24号)
 このほか、金融商品取引法(以下「金商法」
という)、金商法施行令および関係内閣府令の施行に合わせ、開示制度関係のガイドラインについても新設および改正を行う予定である(現在、新設するガイドライン案およびガイドラインの改正案を公表し、9月20日まで意見募集中)。
 本稿では、金商法制における開示制度の施行に向けて行われたこれらの政令・内閣府令の新設・改正のポイントについて概説する。なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解であるのであらかじめお断りしておく。また、本稿中Ⅲ「内部統制報告制度および確認書制度」に係る部分の詳細については、別稿(今号20頁以下)を参照されたい。

Ⅱ 四半期報告制度
 四半期報告制度は、有価証券の「流動性」に着目した開示制度の整備の一環として、流動性の高い流通市場をもつ有価証券に関し、投資者に対し、より頻繁に、かつ、詳細で信頼性の高い投資情報を提供する観点から導入された(金商法24条の4の7第1項)。

1.概  要
(1)対象会社
 金商法24条の4の7第1項では、四半期報告書の提出義務者について、有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の政令で定めるものと規定されており、具体的には、株券、優先出資証券、有価証券信託受益証券(株券等を信託財産とするものに限る)等について上場または店頭登録している発行会社(以下「上場会社等」という)とされた(金商法施行令4条の2の10第1項)。
 なお、有価証券報告書(特定有価証券に係るものを除く)を提出しなければならない会社については、上場会社等以外の会社であっても、任意に四半期報告書を提出することができることとされている(金商法24条の4の7第2項)。
(2)提出義務  事業年度が3月を超える場合に、当該事業年度の期間を3月ごとに区分した各期間ごとに四半期報告書の提出が義務付けられるが(金商法24条の4の7第1項)、当該事業年度の最後の期間(事業年度が1年の場合は第4四半期)についてはその提出は不要とされた(金商法施行令4条の2の10第2項)。
(3)開示内容  四半期報告書の記載内容については、半期報告書の記載項目を基本とする一方で、四半期報告の迅速性・適時性の要請等を踏まえ、「経理の状況」を、原則、四半期連結財務諸表(四半期連結貸借対照表、四半期連結損益計算書および四半期連結キャッシュ・フロー計算書)のみとする、集約できる項目を集約する、重要な変更があった場合にのみ記載を求める等の工夫を行った。
 具体的な記載内容は、開示府令に新設した四半期報告書の様式(内国会社については第4号の3様式、外国会社については第9号の3様式)において規定している。
(4)特定事業会社  単体の半期ベースで自己資本比率に係る規制等を受ける銀行、銀行持株会社、保険会社、一定の要件を満たす保険持株会社等(以下「特定事業会社」という)(開示府令17条の6第2項)については、このような情報も投資者の投資情報として重要であると考えられることから、特定事業会社の第2四半期報告書については、基本的な四半期報告書の記載事項に加え、中間連結財務諸表および中間財務諸表の記載を求めることとした(金商法24条の4の7第1項、開示府令第4号の3様式・記載上の注意(32))。
(5)提出期限  四半期報告書は、各四半期終了後45日以内に提出しなければならない(金商法24条の4の7第1項、金商法施行令4条の2の10第3項)。
 また、特定事業会社に係る四半期報告書については、第1・第3四半期報告書については45日以内、第2四半期報告書については60日以内に提出しなければならない(金商法24条の4の7第1項、金商法施行令4条の2の10第4項)。

2.四半期財務諸表等の作成基準・監査基準の概要
(1)四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
 四半期財務諸表および四半期連結財務諸表の用語、様式や作成方法を定めた四半期財務諸表等規則および四半期連結財務諸表規則を新設した。
 四半期財務諸表等規則の構成は、おおむね中間財務諸表等規則と同様であるが、たとえば、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した「四半期財務諸表に関する会計基準」(平成19年3月)等では株主資本等変動計算書の開示は求められておらず、著しい変動があった場合の注記事項とされたことに伴う規定の整備等を行っている(四半期財務諸表等規則82条)。
 また、外国会社の四半期報告書に掲載される四半期財務書類の作成方法については、年度・中間と同様に、特に公益または投資者保護に欠けるところがないと認められる限り、原則としてその外国会社の本国基準によるとする考え方に基づいて必要な事項を定めている。
(2)四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則  四半期連結財務諸表の記載方法等については、基本的に四半期財務諸表等規則に定める個別の財務諸表の記載方法等を基礎としている。
(3)財務諸表の監査証明に関する内閣府令の改正  金商法上、四半期財務諸表および四半期連結財務諸表についても公認会計士または監査法人による監査証明が必要であるが(金商法193条の2第1項)、その手続として「四半期レビュー」が導入されることになり、これに伴う監査証明府令の所要の改正を行った。
 四半期財務諸表または四半期連結財務諸表の監査証明(四半期レビュー)は、実施した公認会計士または監査法人の四半期レビュー報告書により行うこととされ(監査証明府令3条)、当該四半期レビュー報告書には、四半期レビュー基準の報告基準に定められた「四半期レビューの対象」「実施した四半期レビューの概要」「結論」等を記載することとされた。
 また、「四半期レビュー概要書」(第4号様式)が新設され、その提出が求められる。

Ⅲ 内部統制報告制度および確認書制度

1.内部統制報告制度の概要
 金商法により導入される内部統制報告制度は、財務報告に係る内部統制の強化を図ること等を通じて適正な財務情報の開示を確保することを目的に導入された(金商法24条の4の4、193条の2)。
(1)対象会社  対象会社は、四半期報告制度の対象会社と同様である(金商法24条の4の4第1項、金商法施
行令4条の2の7第1項)。
 また、有価証券報告書(特定有価証券に係るものを除く)を提出しなければならない会社については、上場会社等以外の会社であっても、任意に内部統制報告書を提出することができる(金商法24条の4の4第2項)。
(2)財務報告に係る内部統制の評価  内部統制報告制度の対象会社は、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団および当該会社に係る財務報告が法令等に従って適正に作成されるための体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書(「内部統制報告書」)を有価証券報告書と併せて提出しなければならない(金商法24条の4の4第1項、内部統制府令3条)。
(3)内部統制報告書  内部統制報告書については、その用語、様式および作成方法は内部統制府令によることとし、この府令に規定のない事項については、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に従うことを明確にしている(内部統制府令1条1項)。なお、企業会計審議会が公表する財務報告に係る内部統制の評価に関する基準は「一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準」に該当することとされている(内部統制府令1条4項)。
 内部統制報告書の様式は、内部統制府令に規定された(内国会社については第1号様式、外国会社については第2号様式)。
 また、内部統制報告書は、内部統制報告書提出会社の事業年度の末日を基準日として作成する。
(4)財務報告に係る内部統制の監査   内部統制報告制度の対象会社が提出する内部統制報告書には、その者と特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査を受けなければならず(金商法193条の2第2項)、その監査証明は、公認会計士または監査法人が作成する内部統制監査報告書により行う(内部統制府令1条2項)。なお、内部統制監査報告書は、内部統制府令および一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査に関する基準および慣行に従って実施された監査の結果に基づいて作成されなければならないとされている(内部統制府令1条3項)。
 また、内部統制監査は、原則として、財務諸表監査と同一の監査人により、財務諸表監査と一体となって実施されるため、内部統制監査報告書は、やむを得ない理由がある場合を除き、当該会社に係る財務諸表監査の監査報告書と合わせて(統合して)作成することとされている。
(5)外国会社の財務報告に係る内部統制  外国会社に係る内部統制報告書については、当該外国会社の本国等において開示している財務計算に関する書類を財務書類として提出することを、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものと認める場合であって、当該外国会社がその本国等で開示している財務報告に係る内部統制を評価した報告書を内部統制報告書として提出することを金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものと認めるときは、当該外国会社の本国等における用語、様式および作成方法により作成することができるものとされた(内部統制府令11条1項)。
 また、当該内部統制報告書については、本国等において、公認会計士または監査法人に相当する者によって金商法に基づく内部統制監査の監査証明に相当すると認められる証明を受けた場合には、内部統制監査報告書の提出は求められない(金商法施行令36条、内部統制府令12条)。
(6)SEC登録本邦上場企業の財務報告に係る内部統制報告書  SEC(米国証券取引委員会)に登録している本邦の上場企業の財務報告に係る内部統制報告書の作成にあたっては、米国式連結財務諸表を提出することについて、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものと認めるときは、金融庁長官が必要と認めて指示する事項を除き、米国における用語、様式および作成方法によることができるものとされた(内部統制府令14条)。
 また、当該内部統制報告書に対して実施される監査証明は、金融庁長官が必要と認めて指示する事項を除き、米国における一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査に関する基準および慣行に従って実施することができる(内部統制府令17条1項)。

2.確認書制度の概要  確認書制度は、有効な内部統制の構築を前提として、有価証券報告書等に記載された内容の適正性について経営者が自ら確認し、その旨を記載した確認書を有価証券報告書等に添付することを義務付けることにより、有価証券報告書等の適正性をより高めることを目的としている。
(1)対象会社・対象書類  対象会社は、内部統制報告制度と同様である。
 また、確認書の提出が必要とされる開示書類は、有価証券報告書、四半期報告書および半期報告書とされている(金商法24条の4の2、24条の4の8、24条の5の2)。
(2)確認書の記載事項  確認書の記載事項については、開示府令に新設した様式(内国会社については第4号の2様式、外国会社については第9号の2様式)において規定している(開示府令17条の5)。
 具体的には、有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する事項として、代表者および最高財務責任者(最高財務責任者を定めている場合に限る)が、有価証券報告書等の記載内容が「金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した」旨を記載することになる。
(3)従来の任意の確認書に係る規定の削除  有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書について任意の添付書類となっている従来の確認書(改正前の開示府令10条1項1号ト、17条1項1号ヘ、18条2項・3項等)に関する規定を削除する。

Ⅳ 開示規制の適用の明確化
 開示規制の従来の取扱いを金商法において明確化する観点から、有価証券の募集または売出しのうち、有価証券の募集または売出しの相手方が当該有価証券に係る情報および当該有価証券の発行者に関する情報を既に取得し、または容易に取得することができる場合として政令で定める場合については、有価証券届出書の提出を不要とする旨が規定され(金商法4条1項1号)、金商法施行令において、新株予約権証券の発行会社が、その取締役・会計参与・監査役・執行役・使用人等を相手方として、当該新株予約権証券等の取得等の勧誘を行う場合を規定した(金商法施行令2条の12)。

Ⅴ 有価証券報告書提出免除要件の新設
 金商法において、株券等についての有価証券報告書提出義務の免除要件が新設された(金商法24条1項ただし書前段)。
 具体的には、株券その他の政令で定める有価証券(株券および優先出資証券(金商法施行令3条の5第1項、4条の10第1項))の募集または売出しに係る有価証券届出書を提出したことにより有価証券報告書を提出しなければならない会社(株券または優先出資証券の募集または売出しに係る直近の有価証券届出書の提出日の属する事業年度終了後5年を経過している会社に限る)であって、
① 当該事業年度を含む前5事業年度のすべての末日における当該株券または優先出資証券の所有者数が300名(金商法施行令3条の5第2項、4条の10第2項)未満であり、
② 有価証券報告書を提出しなくても公益または投資者保護の欠けることがないものとして内閣総理大臣の承認を受けたとき
には、当該事業年度に係る有価証券報告書の提出義務から免除するものである。
 この有価証券報告書の提出免除の承認を受けようとする場合には、承認申請書に、当該会社の定款および申請時における株主名簿または優先出資者名簿の写しを添えて、有価証券報告書を提出すべき財務局長等に提出することとされている(開示府令15条の3第1項)。

Ⅵ 組織再編成に係る開示制度

1.概  要
 次の①および②のいずれにも該当する組織再編成(合併、会社分割、株式交換および株式移転(金商法2条の2第1項、金商法施行令2条))に係る「特定組織再編成発行手続」および「特定組織再編成交付手続」について、発行開示そしてその後の継続開示を義務付けることとされた(金商法4条1項2号)(規制の概要について、図2参照)。

① 組織再編成対象会社(吸収合併消滅会社、株式交換完全子会社等)の株券等(株券、新株予約権証券等)に関して、開示が行われていた場合
② 組織再編成により発行され、または交付される有価証券に関して、開示が行われていない場合
 なお、「特定組織再編成発行手続」とは、「組織再編成発行手続」(組織再編成により、新たに有価証券が発行される場合における当該組織再編成に係る書面等の備置き(金商法2条の2第2項))のうち、当該組織再編成対象会社の株券等の所有者が50名以上である場合等をいい、「特定組織再編成交付手続」とは、「組織再編成交付手続」(既に発行された有価証券を交付される場合における当該組織再編成に係る書面等の備置き(金商法2条の2第3項))のうち、当該組織再編成対象会社の株券等の所有者が50名以上である場合等をいう。

2.有価証券届出書の記載内容  開示府令に組織再編成用の有価証券届出書の様式(内国会社については第2号の6様式・第2号の7様式(新規公開用)、外国会社については第7号の4様式)が新設され、従来の有価証券届出書(第2号様式)の記載項目に加え、組織再編成に関する情報(概要・目的等、当事会社(組織再編成対象会社以外の会社)の概要、手続、統合財務情報等)が記載項目とされている。
(たにぐち・よしゆき)

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