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解説記事2007年09月17日 【制度解説】 「内部統制報告制度」および「確認書制度」に係る内閣府令の要点(2007年9月17日号・№227)

実務解説
「内部統制報告制度」および「確認書制度」に係る内閣府令の要点

 金融庁総務企画局企業開示課企業会計調整官 野村昭文

Ⅰ はじめに

 平成18年6月14日に公布された金融商品取引法により導入される内部統制報告制度について、同法24条の4の4および193条の2の規定の委任を受けて所要の事項を定めるための「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第62号。以下「内部統制府令」という)が新設され、平成19年8月10日に公布された。
 本稿では、今般新設された内部統制府令および有効な内部統制が整備されていることが重要な要素となっている確認書制度に係る内閣府令について、その概要を説明する(規制および政令における主要点について、図1参照)。文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であるのであらかじめお断りしておく。
 なお、現在、当該府令に関する留意事項を定める事務ガイドライン案を公表し、9月20日まで意見を募集しているところであるので留意されたい。


Ⅱ 内部統制府令の概要
 内部統制府令は、内部統制報告制度における財務報告に係る内部統制の評価および監査について、その適用にあたっての一般原則、内部統制報告書・内部統制監査報告書の記載事項や様式、外国会社等の取扱いなど所要の規定の整備を行ったもので、内部統制報告制度に関する内閣府令は本府令のみとなっている(図2参照)。
 本府令は、①総則、②財務報告に係る内部統制の評価、③財務報告に係る内部統制の監査、④外国会社の財務報告に係る内部統制、⑤米国証券取引委員会(SEC)に登録している本邦上場企業の財務報告に係る内部統制を規定した雑則の5つの章で構成されている。


1.総則(1条~3条)
(1)適用の一般原則(1条)
 適用にあたっての一般原則は次のとおりである。
①会社が当該会社の財務報告に係る内部統制について評価して作成する内部統制報告書については、その用語、様式、作成方法は本府令によることとし、本府令に規定のない事項については、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に従うこととしている。
②内部統制報告書についての監査証明は、公認会計士または監査法人が作成する内部統制監査報告書により行うこととしている。
③内部統制監査報告書は、本府令および一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査に関する基準および慣行に従って実施された監査の結果に基づいて作成されなければならないとしている。
 ここにおいて、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査の「慣行」は、今後、基準に従って内部統制監査の実務が行われていくなかで形成されていくことになるものと考えられる。
④企業会計審議会が公表する財務報告に係る内部統制の評価および監査に関する基準は、本府令にいう「一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準」および「一般に公正妥当と認められる内部統制の監査に関する基準」に該当することを明確にしている(注1)。
(注1)企業会計審議会は、本年2月15日、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」を公表している。
(2)定義(2条)  定義については次のとおりとしている。
① 財務報告  財務報告は、財務諸表のみでなく、加えて財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示に関する事項に係る外部報告であると規定した。
② 重要な欠陥  重要な欠陥は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い財務報告に係る内部統制の不備をいうと規定した。
(3)適正性を確保するために必要な体制(3条)  財務計算に関する書類その他の適正性を確保するために必要な体制とは、当該会社における財務報告が法令等に従って適正に作成されるための体制をいうものとしている。
 この体制は、各会社の状況(置かれた環境や事業の特性、規模等)により異なることから、一律に示すことは困難であり、各会社において適切に判断されることになるものと考えられる。

2.財務報告に係る内部統制の評価(4条・5条)
(1)内部統制報告書の記載事項(4条)
 内国会社については第1号様式、外国会社については第2号様式により内部統制報告書を作成し、有価証券報告書と併せて財務局長等に提出する。なお、内部統制報告書についても、原則として、電子開示手続(EDINET)により提出することとなっている。
 第1号様式の主な記載事項は次のとおりである。
① 代表者の役職氏名  会社の代表者(代表取締役、代表執行役)がその役職・氏名を記載する。
② 最高財務責任者の役職氏名  会社が財務報告に関し、代表者に準じる責任を有する者として最高財務責任者を定めている場合には、その役職・氏名を記載する。この場合において、会社が最高財務責任者を定めていない場合には、記載を要しない。
③ 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項 ・代表者および最高財務責任者が財務報告に係る内部統制の整備・運用に責任を有している旨
・財務報告に係る内部統制を整備・運用する際に準拠した基準の具体的名称(例:「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準及び同実施基準」等)
・財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止または発見することができない可能性がある旨
④ 評価の範囲、基準日および評価手続に関する事項 ・評価が行われた基準日(本府令5条にいう基準日を具体的に記載。基準日を変更した場合には、その旨およびその理由も記載)
・評価は、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した旨
・評価手続の概要(評価結果に重要な影響を及ぼす手続の概要に限って簡潔に記載)
・評価の範囲(評価範囲および当該評価範囲の決定手順、方法等を簡潔に記載するとともに、やむを得ない事情により、一部の範囲について十分な評価手続が実施できなかった場合には、その範囲およびその理由を記載)
⑤ 評価結果に関する事項  次に掲げる区分に応じて記載する。
・財務報告に係る内部統制は有効である旨
・評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である旨ならびに実施できなかった評価手続およびその理由
・重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨ならびにその重要な欠陥の内容および期末日までに重要な欠陥が是正されなかった理由
・重要な評価手続が実施できなかったため、評価結果を表明できない旨ならびに実施できなかった重要な評価手続およびその理由
⑥ 付記事項 ・財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象
・事業年度の末日後に重要な欠陥を是正するために実施された措置がある場合にはその内容
・米国証券取引委員会に登録している本邦上場企業が本府令14条の適用を受ける場合における、同条の規定の適用を受けないで内部統制報告書を作成する場合との主要な相違点
⑦ 特記事項  財務報告に係る内部統制の評価について、特に記載すべき事項がある場合には、その旨およびその内容を記載する。なお、記載された特記事項は、内部統制監査の対象となることに留意が必要である。
(2)基準日(5条)  内部統制報告書は、内部統制報告書提出会社の事業年度の末日を基準日として作成する。
 この際、連結子会社の決算日が内部統制報告書提出会社の連結決算日と異なる場合は、当該連結子会社の決算日をもって作成された財務諸表が連結されており、かつ、連結子会社の決算日から連結決算日までの間に、当該連結子会社の財務報告に係る内部統制に重要な変更がない場合には、連結子会社の決算日の評価を基礎として行うことができる。

3.財務報告に係る内部統制の監査(6条~10条)
(1)内部統制監査報告書の記載事項(6条)
 内部統制監査報告書には、公認会計士または監査法人の代表者が作成の年月日を付して自署し、かつ、自己の印を押印する。
 内部統制監査報告書には次の事項を記載する。
① 内部統制監査の対象 ・対象となった内部統制報告書の範囲
・財務報告に係る内部統制の整備および運用ならびに内部統制報告書の作成責任は経営者にあること
・公認会計士または監査法人の責任は独立の立場から内部統制報告書に意見を表明することにあること
・財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止または発見することができない可能性があること
② 実施した内部統制監査の概要 ・内部統制監査が一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査の基準に準拠して行われた旨
・財務報告に係る内部統制の監査の基準は、内部統制報告書に重要な虚偽の表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めていること
・実施した監査手続の概要
・内部統制監査の結果として意見表明のための合理的な基礎を得たこと(ただし、重要な監査手続が実施できなかった場合には、当該実施できなかった監査手続を記載)
③ 内部統制監査の結果  内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の評価結果について、すべての重要な点において適正に表示しているかについての意見等を次に掲げる区分に応じて記載する。
・無限定適正意見(4項1号)
・除外事項を付した限定付適正意見(4項2号)
 除外事項を除き適正である旨ならびに除外事項および除外事項が財務諸表監査に及ぼす影響を記載する。
・不適正意見(4項3号)
 不適正である旨およびその理由ならびに財務諸表監査に及ぼす影響を記載する。
・意見不表明(6項)
 意見の表明をしない旨およびその理由を記載する。
④ 追記情報  監査人が説明または強調することが適当であると判断した事項であり、本府令では次の事項を挙げている(5項)。
・内部統制報告書に重要な欠陥がある旨およびそれが是正されない理由を記載している場合で、無限定適正意見を表明するときは、重要な欠陥が財務諸表監査に及ぼす影響(1号)
・期末日後に実施された是正措置がある場合にはその内容(2号)
・財務報告に係る内部統制の有効性に重要な影響を及ぼす後発事象(3号)
・経営者が評価手続の一部を実施できなかったことについて、やむを得ない事情によると認められるとして無限定適正意見を表明する場合において十分な評価手続を実施できなかった範囲およびその理由(4号)
(2)内部統制監査報告書の様式(7条)  内部統制監査は、原則として、同一の監査人により、財務諸表監査と一体となって実施される。
 監査人が内部統制監査の意見を表明するために作成する内部統制監査報告書は、監査報告書作成の負担を軽減する観点や監査報告書利用者の利便性の観点から、やむを得ない理由がある場合を除き、当該会社に係る財務諸表監査の監査報告書と合わせて(統合して)作成することとされている。
 本府令においては、内部統制監査報告書の様式は示されていないが、具体的な記載例については、日本公認会計士協会の監査上の取扱い(実務指針)で示されるものと考えられる。
 なお、上記のやむを得ない理由としては、やむを得ない事情等により、財務諸表監査の監査報告書または内部統制監査報告書の一方が提出期限までに提出できないような場合が考えられる。
(3)内部統制監査の概要(8条)  監査人は、財務諸表等の監査に係る従事者、監査日数その他監査に関する事項の概要を記載した概要書を財務局長等に提出することになっている。
 内部統制監査の従事者、監査日数その他内部統制監査に関する事項の概要については、概要書作成の負担を軽減する観点から、この財務諸表監査に関する概要書に合わせて記載するものとされている。

4.外国会社の財務報告に係る内部統制(11条~13条)
(1)外国会社の内部統制報告書
 外国会社に係る内部統制報告書の作成にあたって、当該外国会社の本国等において開示している財務計算に関する書類を財務書類として提出することを、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものと認める場合であって、当該外国会社がその本国等で開示している財務報告に係る内部統制を評価した報告書を内部統制報告書として提出することを金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものと認めるときは、当該外国会社の作成する内部統制報告書の用語、様式および作成方法については、金融庁長官が必要と認めて指示する事項を除き、当該外国会社の本国等における用語、様式および作成方法によることができるものとする。
 なお、様式は第2号様式により日本語で作成することに留意が必要である(4条)。
(2)外国会社の内部統制監査の特例  外国会社は、その内部統制報告書が11条の規定の適用を受ける場合において、当該内部統制報告書を作成した本国等において公認会計士または監査法人に相当する者によって金融商品取引法に基づく内部統制監査の監査証明に相当すると認められる証明を受けた場合には、内部統制監査報告書の提出を求められない。

5.SECに登録している本邦上場会社の財務報告に係る内部統制(14条~17条)
(1)SEC登録の本邦上場会社の内部統制報告書
 SEC(米国証券取引委員会)に登録している本邦上場会社の財務報告に係る内部統制報告書の作成にあたっては、米国式連結財務諸表を提出することについて、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものと認めるときは、金融庁長官が必要と認めて指示する事項を除き、米国における用語、様式および作成方法によることができるものとされた。
 その際、この規定を適用しないで作成する場合との主要な相違点等を内部統制報告書に記載することが必要である(16条)。
 なお、様式は第1号様式により日本語で作成することに留意が必要である(4条、15条)。
(2)SEC登録の本邦上場会社の内部統制監査  SEC登録している本邦上場会社が、その内部統制報告書について14条の規定の適用を受ける場合において、当該内部統制報告書に対して実施される監査証明は、金融庁長官が必要と認めて指示する事項を除き、米国における一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査に関する基準および慣行に従って実施することができる。
 この場合には、この規定を適用しないで内部統制監査報告書を作成する場合との主要な相違点等を内部統制監査報告書に記載する必要がある(17条2項)。

Ⅲ 確認書制度に係る内閣府令の概要

1.確認書の記載事項等の概要
 確認書の記載事項等については、内閣府令で定めることとされており、その一部が改正され、平成19年8月15日に公布された企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号。以下「開示府令」という)に規定されている。
 改正開示府令においては、確認書の記載事項等について、内国会社の場合には第4号の2様式、外国会社の場合には第9号の2様式に従って作成するものとされている(17条の5)。
 記載事項に係る留意事項としては、次の点が挙げられる。
・会社の代表者(代表取締役、代表執行役)がその役職氏名を記載して提出するが、会社が財務報告に関し、代表者に準じる責任を有する者として最高財務責任者を定めている場合には、その役職・氏名を記載すること(注2)
(注2)内部統制報告書における場合と同様である(Ⅱ2(1)②参照)。
・有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する事項には、代表者および最高財務責任者(定めている場合に限る)が有価証券報告書等の記載内容が「金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した」旨を記載する。なお、有価証券報告書等の記載内容について、確認を行った記載内容の範囲が限定されている場合には、その旨およびその理由を記載することとし、「適正であることを確認できなかった」という記載にはならないこと
・会社の代表者等が確認について特に記載すべき事項がある場合には、その旨およびその内容を特記事項に記載すること
・確認書の提出が必要とされる書類が四半期報告書等である場合には、有価証券報告書に係る記載事項等を準用して記載すること

2.従来の任意の確認書に係る規定の削除(改正後の10条、17条、18条)  有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書について任意の添付書類となっている従来の確認書に関する規定を削除している。

Ⅳ 適用時期
 証券取引法の一部を改正する法律(平成18年法律第65号)の施行の日(平成19年9月30日)から施行されるが、適用時期については、同法附則15条の規定により、平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用するものとされている。
 なお、従来の任意の確認書(改正前の開示府令17条1項1号へ等)については、平成20年3月31日までに提出される有価証券報告書等に添付する場合について、なお従前の例によることとされている。(のむら・あきふみ)

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