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解説記事2007年10月08日 【編集部解説】 自己株式に係る商法(会社法)・企業会計・税法上の取扱いの変遷について(下)(2007年10月8日号・№230)

解説
自己株式に係る商法(会社法)・企業会計・税法上の取扱いの変遷について(下)

 text T&Amaster編集部 佐治俊夫

Ⅳ 平成15年商法改正での取扱い(取締役会決議に基づく買受け)

1.商法上の取扱い
 平成15年7月の商法改正では、定款授権に基づく取締役会決議による自己株式の取得が認められることになった。定款授権に基づく取締役会決議による自己株式の取得は、平成9年の「株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律」(以下「株式消却特例法」)によって、消却目的の自己株式の取得について認められていたが、平成13年の金庫株の解禁では株式消却特例法が廃止され、自己株式を取得するためには、法律に別段の定めがある場合を除き、定時総会の決議において、次の定時総会の終結の時までに取得することができる株式の種類および数ならびに取得価額の総額を決議しなければならないものと規定されていた(旧商法210条2項)。
POINT 定款授権による取締役会決議に基づく自己株式の取得を再容認

Ⅴ 会社法の施行(平成18年5月)における取扱い

1.会社法上の取扱い
 平成18年5月に施行された会社法では、商法における自己株式に係るこれまでの改正を踏まえ、全体として規制を整理し直した。
 自己株式の取得手続では、株主総会における授権決議について、定時株主総会に限らず、臨時株主総会の決議によってもよいこととされた(会社法156条1項)。また、株主総会決議により自己株式の取得をできる期間(授権期間)を1年以内の範囲で自由に定めることができるように見直された(会社法156条1項3号)。
 会社法においては、市場取引または公開買付けによる取得以外の自己株式の取得の手続(株主全員から譲渡の申込みを受ける手続(会社法158条)・特定の株主からの取得手続(会社法160条))を整備している。合併および事業全部の譲受けの場合ならびに会社分割の場合については、自己株式を取得することができることが明確化された。一方、いわゆる「抱合株式」に対する合併新株等(自己株式)の割当てはできないこととされている(会社法749条1項3号等)。
 さらに、会社法では、株式の「消却」の概念を見直し、保有する自己株式の消却だけを「消却」とし、自己株式の消却について規定を整備した(会社法178条)。
POINT 会社法の施行で自己株式規定を整備

2.会計上の取扱い
 会社法の施行に即して、会計(「自己株式及び準備金の額の取崩等に関する会計基準」)は、2段階での見直しを行った。
 第1段階では、自己株式の取得及び処分に関する手続の整備を含む会社法が平成17年7月26日に公布されたことに伴い、改正前会計基準の全般的な見直しを行い、平成17年12月27日に、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」およびその適用指針を公表した。
 この見直しについては、自己株式の会計上の取扱いを実質的に変更したものではなく、会社法の施行に即して、株主資本等変動計算書を作成することになったこと、あるいは、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」などの他の会計基準等が整備され、当該他の会計基準に自己株式の取扱いについて示されていることから、該当する定めの見直しを行っている。
 従来用いられてきた「資本」をその用途に応じて「純資産」あるいは「株主資本」に改め、「未処分利益」を「その他利益剰余金(繰越利益剰余金)」に改めるなどしている。
 第2段階では、平成18年5月1日に会社計算規則が施行されたことなどに伴い、自己株式を消却したときの消却原資に係る会計基準などについての見直しを行い、平成18年8月11日に、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」およびその適用指針の改正を公表した。
 改正前会計基準では、自己株式を消却した場合には、自己株式の帳簿価額を、資本剰余金から減額するか、利益剰余金から減額するかは、会社の意思決定(取締役会等での決定)に委ねることとしていたが、会社計算規則47条3項において優先的にその他資本剰余金から減額することが規定されたため、改正後会計基準においては「その他資本剰余金からの減額」に改正された(11項)。
POINT 自己株式の消却はその他資本剰余金から減額

3.税制上の取扱い
 法人税法では、法人が自己株式の取得等をした場合には、取得等をした時に取得等をした株式に対応する資本金等の額(以下「取得資本金額」)を減算し、対価の額から取得資本金額を控除した金額が減少する利益積立金額と規定された。自己株式の取得時におけるこのような取扱いは平成13年の商法改正(金庫株の解禁)における法人税法上の取扱いと実質的には変わらず、上場株式の市場における取得など、特定の場合の自己株式の取得についてはみなし配当の額が生じないとされていることも変わらない。
 しかしながら、金庫株の解禁では,税制上は自己株式の保有について、金庫株を資産(有価証券)として取り扱っており、具体的には自己株式の取得に要した付随費用が当該自己株式の取得価額とされていた。会社法の制定に伴う法人税法の見直しでは、取得した自己株式を資産として取り扱われないことになった。法人税法における有価証券の定義において自己株式を除くことが規定され、平成18年4月1日以後の自己株式の取得に要した付随費用(手数料)は損金算入されることになった。
 法人税法上自己株式が資産として計上されない(取得時に資本金等の額および利益積立金額を減少させる)こととしているため、自己株式を消却した場合には、資本金等の額および利益積立金額は増減しない。一方で、会社法および会計は、自己株式を消却した場合には原則として、その他資本剰余金から減額するとしており、会社法・会計上の取扱いと税制上の取扱いに差異が生じることになり、申告調整を要することになる。
POINT 税制上も自己株式を資産(有価証券)から除外することに

Ⅵ 平成19年度税制改正における取扱い(計算要素にマイナスがある場合)

1.税制上の取扱い
 自己株式の取得等の場合には、資本金等の額および利益積立金額を減算することとされている。みなし配当額(減少する利益積立金額)および減少する資本金等の額の区分は下記の算式により計算される。自己株式の取得等に伴う交付金銭等の額について、取得時直前の資本金等の額・利益積立金額で配分(プロラタ)計算を行うことになる。
 しかしながら、資本金等の額がマイナスとなっている場合(なる場合)については、このようなプロラタ計算は合理的ではないと考えられることから、平成19年度税制改正では、直前の資本金等の額がゼロ以下である場合には、所有株式に対応する資本金等の額および減少資本金等の額は、「ゼロ」として、下記の計算を行うことにした。
 企業会計においても、自己株式の処分・消却によりその他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額するものとしているが、資本項目がマイナスとなる場合の取扱いについては,会計も税制もその意義付け(取扱い)に苦慮していることが窺える。
POINT 直前資本金等の額がマイナスの場合はゼロで計算 (さじ・としお)

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