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解説記事2007年12月24日 【ニュース特集】 平成20年度税制改正大綱を徹底分析(2007年12月24日号・№240)

税体系の抜本的改革の実現に向けて
平成20年度税制改正大綱を徹底分析

 T&Amaster編集部 佐治俊夫

 与党(自由民主党・公明党)は12月13日、平成20年度税制改正大綱(以下「与党大綱」という)を取りまとめ、公表しました。昨年までとは異なり、与党大綱で取りまとめた内容が必ずしもそのまま法律として成立するかどうかは予断を許しません。与党大綱においても、「国民生活の安心の確保という共通の利益の実現のためには、与野党が胸襟を開いて取り組むことが求められており、われわれは野党に対して国民的な議論への参加を今後とも引き続き積極的に呼びかけていかねばならない。」と野党に協議を呼びかける異例の記述をしています。衆参のねじれ現象においては、与党大綱に記載された内容についても、その結末を見届ける必要があります。
 しかしながら、法案作成前の与野党の事前協議が見込めない現状においては、与党大綱の内容が政府の提出する税制改正法案に反映されることが確実です。とりあえず、平成20年度税制改正の本筋として、その内容をおさえておくべきものといえるでしょう。
 与党大綱では、「税体系の抜本的改革に向けた橋渡しとして、これまでの構造改革の過程で生じた諸問題への対応に重点を置いた。」としており、格差の是正に配慮する視点を重視しています。
 平成20年度税制改正の内容は次のように整理されます。
▲地域間の財政力格差の縮小蜷経済活性化・競争力の強化蜷民間が担う公益活動の推進、「ふるさと納税」
▲環境問題、安心・安全への配慮蜷金融・証券税制蜷道路特定財源蜷円滑・適正な納税のための環境整備
 それでは、与党大綱の具体的内容を明らかにしていきたいと思います。

Ⅰ 地域間の財政力格差の縮小
 平成19年度税制改正大綱において、「法人二税を中心に税源が偏在するなど地方団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方の自立を促しその安定した財政基盤を構築する観点から、地方の税財源を一体的に検討していく必要がある。」と指摘されていました。平成19年中には、経済財政諮問会議などにおいて、「地域間の財政力差の縮小について」が検討され、11月には、増田総務相から偏在度の小さい地方消費税と偏在度の大きい地方法人二税(図表1)を交換する方法などが提案されました。地方消費税を含めた消費税のあり方については、抜本的な税制改革のなかで総合的に検討すべきであり、抜本的改革が行われるまでの間の暫定措置として、概ね2.6兆円の法人事業税を分離し、地方法人特別税を創設するとともに、その収入額を人口および従業者数を基準として都道府県に譲与する地方法人特別譲与税を創設することになります(図表2)。
 地方法人特別税(国税)が創設されるといっても、申告納付・賦課徴収は都道府県が法人事業税と併せて行うものとしているため、申告等の実務については、これまでの法人事業税での申告実務に大きな変更は生じません。


1 法人事業税の税率改正  法人事業税の標準税率が次のように見直され、平成20年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
2 地方法人特別税の創設  地方法人特別税が、法人事業税(所得割または収入割)の納税義務者に対して課する国税として創設されます。法人事業税額を課税標準として、税率は次のようになります。
 地方法人特別税の申告納付・賦課徴収は、都道府県に対して、法人事業税と併せて行うものとされ、都道府県が、地方法人特別税として納付される額を国に払い込むものとします。

3 地方法人特別譲与税の創設 
 国に払い込まれた地方法人特別税は、使途を限定しない一般財源として都道府県へ譲与されます。地方法人特別譲与税は、一定の調整後の金額について、2分の1を人口で、他の2分の1を従業者数であん分して各都道府県に譲与されます。

Ⅱ 経済活性化・競争力の強化

1 研究開発税制の拡充
(1)税額控除の上限は最大で法人税額の30%まで拡充
 研究開発税制については、試験研究費の総額に係る税額控除制度(以下「総額型」という)と増加試験研究費に係る税額控除制度(以下「増加型」という)を合算した制度となっていました。総額型が恒久措置となっていましたが、増加型は平成20年3月末までの措置でした。与党大綱では、増加型を改組するとともに、控除限度額について、増加型の別枠(法人税額の10%相当額)を設けることにしています。総額型と合計すると、税額控除の上限は、最大で法人税額の30%になります(図表3)。

(2)増加型は、高水準型との選択適用に改組  増加型は、増加試験研究費(支出試験研究費-比較試験研究費)の5%相当額を税額控除する仕組みとなっていましたが、従来の増加型に代えて、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合にその超える部分に税額控除率(※)を乗じた金額を税額控除できる仕組み(以下「高水準型」という)を創設し、従来の増加型と高水準型を選択適用することができる仕組みに改組されます。別枠の税額控除限度額(法人税額の10%)は、増加型と高水準型で選択適用したものについて適用されます。


2 情報基盤強化税制の見直し  情報基盤強化税制については、①対象設備等に部門間・企業間で分断されている情報システムを連携するソフトウェアとして一定の要件を満たすものを追加、②資本金の額等が1億円以下の法人等について、取得価額の合計額の最低限度を300万円から70万円に引下げ、③資本金の額等が10億円超の法人の取得する対象設備等の取得価額の合計額のうち本税制の対象は200億円を限度とする見直しを行ったうえ、2年間延長します(下掲参照)。

 中小企業は、取得価額の最低限度が70万円に引下げられることで、使いやすい税制になっています。

3 エンジェル税制の見直し  エンジェル税制では、投資時点での優遇措置が拡充されます。現行は投資額をその年の他の株式譲渡益から控除(繰延)する仕組みになっています。与党大綱は、現行の仕組みと、出資額について、1,000万円を限度として、寄附金控除(支出寄附金(総所得金額の40%を限度)-5,000円の所得控除)を適用する仕組みの選択が可能な制度に拡充します(図表4)。この見直しにより、他の株式投資をしていない投資家や他の株式で譲渡益が生じていない投資家も寄附金控除額について、優遇措置(所得控除)が受けられることになります。所得控除した金額は取得した特定中小株式の取得価額から控除する仕組みとしており、投資時点で損を先取りしたものについて、譲渡時点では精算される仕組みになります。
 譲渡益を1/2に圧縮して課税する特例については、経過措置を講じたうえ、廃止されます。


4 人材投資促進税制の中小企業等基盤強化税制への改組  教育訓練費の増加額に係る税額控除制度は、その対象を中小法人に限定したうえ、労働費用に占める教育訓練費の割合が0.15%以上の場合に、教育訓練費の総額に、労働費用に占める教育訓練費の割合に応じた税額控除率(8%~12%)(※)を乗じた金額を税額控除できる制度に改組します(図表5)。


5 農林水産業と商工業との連携等促進税制措置  農林水産業と商工業の連携等を促進するために次の税制措置を講じます。
① 中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律(仮称)の制定に伴い、同法の認定農商工連携事業活動計画(仮称)に従って農商工連携事業活動(仮称)を行う中小企業者が取得する同計画に定める機械装置(取得価額280万円以上)の特別償却(取得価額の30%)または税額控除(取得価額の7%)ができるようにします。
② 企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部改正に伴い、集積区域における集積産業用資産の特別償却制度の対象に、農林水産業の活性化に資する業種(農林水産業を川上・川下から支える農林水産関連産業)を追加し(図表6)、同業種における投資規模要件を機械装置については、1基当たり500万円以上(現行1,000万円以上)、かつ、投資総額を4,000万円以上(現行3億円以上)とし、建物等については、5,000万円以上(現行5億円以上)に引き下げます。


6 中小企業優遇税制の延長  ①中小企業投資促進税制(7%の税額控除または30%の特別償却)、②交際費等の損金不算入制度について、中小企業者に係る400万円の定額控除、③欠損金の繰戻し還付の不適用制度について、中小企業者の設立後5年間に生じた欠損金額に係る適用除外措置、④中小企業者等の少額減価償却資産(取得価額30万円未満)の取得価額の損金算入の特例の適用期限を2年延長します。

7 事業承継税制の抜本拡充
(1)自社株納税猶予制度の創設(図表7)

 事業承継税制の抜本見直しについては、中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律(仮称)の制定を踏まえ、平成21年度税制改正において、事業の後継者を対象とした「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」(以下「自社株納税猶予制度」という)が創設されます。自社株納税猶予制度は、中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律(仮称)施行日(平成20年10月を予定)以後の相続に遡って適用します。
 なお、自社株納税猶予制度の創設に合わせて、相続税の課税方式をいわゆる遺産取得課税方式に改めることを検討するとしています。事実上、事業継続円滑化法案の成立と相続税法の改正(遺産取得課税方式への移行)が自社株納税猶予制度創設の前提条件となっているような状況です。
 遺産取得課税方式の移行にあたっては、相続税の総合的な見直しが行われることになります。自社株納税猶予制度の骨子は以下とおりです。
① 事業承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得しその会社を経営していく場合には、その事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等(相続等の結果、その会社の発行済議決権株式の総数等の3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予する。
② 納税猶予の対象となる株式等のみを相続するとした場合の相続税額から、その株式等の金額の20%に相当する金額の株式等を相続するとした場合の相続税額を控除した額を猶予税額とする。
③ その事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡の時まで保有し続けた場合など一定の場合には、猶予税額を免除する。
④ その事業承継相続人が、相続税の法定申告期限から5年の間に、代表者でなくなる等、事業を継続していないと認められる場合には、その時点で、猶予税額の全額を納付する。
⑤ 上記④の期間経過後において、納税猶予の対象となった株式等を譲渡した場合には、その時点で、納税猶予の対象となった株式等に対する譲渡株式の総数等の割合に応じた猶予税額を納付する。
⑥ 猶予税額の全額または一部を納付する場合には、その納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税も併せて納付する。
 自社株納税猶予制度については、現行の自社株に係る10%減額特例制度における発行済み株式総額20億円未満の会社を対象とする対象会社要件や、軽減対象を10億円までの部分に限定する規定は設けないものとされており、利用(制度の使いやすさ)については一定の配慮が設けられています。
(2)営業権評価の見直し(図表8)
 事業承継税制の抜本拡充に関連して、非上場株式における営業権の評価が見直されます。具体的には、企業者報酬の額および基準年利率の見直しを行います。
 企業者報酬額については、現行の水準が大きく引き上げられ、現行の基準年利率は国債利回りを基にしたものから企業の収益率を基にしたものに見直されます。経済産業省の資料では、利益金額が5,000万円の場合には、標準企業者報酬額が2,500万円となっています。営業権評価の算式上、利益金額5,000万円までは、営業権の評価額は計算されないことになります。

8 トン数標準税制の創設  わが国の外航海運事業者と外国の外航海運事業者との間の国際的な競争条件の均衡化を図ることに加え、日本籍船・日本人船員の計画的増加を図るため、外航海運市場において世界標準ともいうべきトン数標準税制が導入されます。
 日本の外航海運事業者が、海上運送法の一部改正に伴い、日本籍船・日本人船員の増加等に係る「安定海上運送確保計画(仮称)」を作成し、国土交通大臣の認定を受けた場合には、日本籍船に係る利益について、通常の法人税に代えて、みなし利益課税を選択できる制度が設けられます(図表9)。
 船舶の運航トン数に単位当たりみなし利益を乗じ、運航日数を乗じて法人税の課税標準とし、法人税率を乗じて、法人税額を算定します。
 本制度により計算した法人税額が法人住民税の課税標準となり、法人事業税所得割の課税標準である所得は、本制度により計算された所得金額とされます。

9 減価償却制度の見直し
(1)法定耐用年数区分の大括り化(図表10)

  法定耐用年数について、機械装置を中心に実態に即した使用年数を基に資産区分の大括り化が行われ、機械装置については現行の390区分が55区分になります(60頁参照)。この改正は、既存の減価償却資産を含め、平成20年4月1日以後開始する事業年度について適用されます。
(2)耐用年数の短縮特例制度の見直し  耐用年数の短縮特例の承認を受けた減価償却資産に軽微な変更があった場合、同種の減価償却資産を取得した場合等には、変更点等の届出により短縮特例の適用を受けることができる等の簡素化が行われます。

Ⅲ 民間が担う公益活動の推進、「ふるさと納税」

1 新しい公益法人関係税制の整備
 公益法人制度改革による新たな法人制度の創設に伴い公益法人関係税制の整備が行われます(図表11)。

(1)公益社団法人および公益財団法人  収益事業から生じた所得について法人税が課税され(税率30%、年800万円以下の部分については22%)、収益事業の範囲から公益目的事業に該当するものは除かれます。収益事業に属する資産から公益目的事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなします。寄附金の額の損金算入限度額は、(イ)所得の金額の50%、(ロ)公益目的事業に使用し、または使用することが確実であると認められるものに相当する金額のいずれか多い金額とします。
(2)一般社団法人および一般財団法人  非営利性が徹底された法人(剰余金の分配を行わない旨が定款において定められていること等の要件に該当する法人)、共益的活動を目的とする法人(会員に共通する利益を図る活動を行うことを主たる目的としていること等の要件に該当する法人)については、収益事業から生じた所得について法人税が課税され、その他の法人については普通法人と同様の課税が行われます。
(3)特例民法法人  特例民法法人については、特例期間(5年間)中、現行と同様の課税(収益事業課税)が維持されます。

2 寄附金税制の見直し ① 寄附金優遇の対象となる特定公益増進法人および相続財産を贈与した場合に相続税が非課税とされる法人の範囲に、公益社団法人および公益財団法人を追加するほか、特例民法法人について経過措置を講じます(従来と同様に、特定公益増進法人の取扱いを受けられるものとします)。
② 特定公益増進法人等に係る寄附金の損金算入限度額について、所得基準を所得金額の5%(現行2.5%)相当額に見直します。
③ 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例について、非課税特例の対象となる法人に、(イ)公益社団法人および公益財団法人、(ロ)非営利性が徹底された法人としての要件に該当する一般社団法人および一般財団法人を追加します。

3 認定NPO法人制度の見直し  認定NPO法人制度の認定要件等について次のとおり見直しが行われます。
① いわゆるパブリック・サポート・テストについて、5分の1以上とする特例の適用期限を3年延長します。認定の有効期間の延長(2年⇒5年)にあわせて、実績判定期間を原則5年に延長するとともに、各事業年度の基準(10分の1以上)を廃止します。小規模法人の特例について、割合を5分の1(現行3分の1)に引き下げたうえ、適用期限を3年延長します。受入寄附金総額から控除する一者当たり基準限度超過額について、受入寄附金総額の10%(現行5%)に引き上げ、社員の親族等を同一の者からの寄附金とみなす規定は適用しないことにします。
② 認定の有効期間を2年から5年に延長します。

4 「ふるさと納税」制度の創設  いわゆる「ふるさと納税制度」の創設をするため、個人住民税における寄附金税制を抜本的に見直します(図表12)。

(1)控除対象寄付金の拡大  控除対象寄附金に、都道府県または市町村が地域における住民の福祉の増進に寄与するものとして条例により指定した寄附金を追加します。
(2)控除方式  現行の所得控除方式を税額控除方式に改め、適用対象寄附金に係る控除率は、都道府県民税4%・市町村民税6%とします。
(3)控除対象限度額  寄附金の控除対象限度額を総所得金額等の30%(現行25%)に引き上げます。
(4)適用下限額  寄附金控除の適用下限額を5千円(現行10万円)に引き下げます。
(5)ふるさと納税制度の創設  都道府県または市町村に対する寄附金については、上記(2)の税額控除の適用に加え、当該寄附金が5千円を超える場合、その超える金額に、90%から寄附を行った者に適用される所得税の限界税率を控除した率を乗じて得た金額(法人住民税所得割の額の10%を限度とします)の5分の2を道府県民税から、5分の3を市町村民税からそれぞれ税額控除します。すなわち、地方公共団体に対する寄附金のうち適用下減額を超える部分について、一定の限度まで所得税と合わせて全額控除できる仕組みが創設されます。
 上記(1)~(5)の改正は、平成21年度分以後の個人住民税について適用します。

Ⅳ 環境問題、安心・安全への配慮

1 住宅の省エネ改修促進税制の創設
 地球温暖化防止に向けて家庭部門のCO2排出量の削減を図るため、既存住宅において省エネ改修工事(次頁参照)を行った者を対象に、以下の減税措置が設けられます。

(1)住宅の省エネ改修工事等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税の税額控除  居住者が「一定の省エネ改修工事等」を行った場合において、その家屋を平成20年4月1日から平成20年12月31日までの間にその者の居住の用に供したときは、その省エネ改修改修工事等に充てるために借り入れた住宅借入金等の年末残高の一定割合を5年間所得税額から税額控除する制度を創設します。
 住宅借入金等の年末残高は、1,000万円を限度とし、「特定の省エネ改修工事」に係る工事費用相当部分(200万円を限度)についての控除率は2%、「特定の省エネ改修工事」以外の工事費用相当部分についての控除率は1%になります。
(2)固定資産税の減額  平成20年1月1日に存していた住宅で、平成20年4月1日から平成22年3月31日までの間に一定の省エネ改修工事が行われたものについては、省エネ改修工事が完了した翌年度分の当該住宅に係る固定資産税の税額(120m2相当分までを限度)の1/3を減額します。

2 長期耐用住宅等(200年住宅)整備促進税制の創設  持続可能な社会の実現を目指し、良質な住宅を大切に長く使うことによる地球環境への負荷の低減を図るとともに、建替えコストの削減による国民の住宅負担の軽減を図るため、一定の基準に適合する認定を受けた長期耐用住宅(仮称)について、①登録免許税(税率の軽減)、②不動産取得税(課税標準からの控除額の拡大)、③固定資産税(新築住宅に係る減額特例の適用期間の延長)、の特例措置が講じられます。

3 バイオ由来燃料促進税制の創設等  バイオ由来燃料を混合したガソリンの普及促進を図るため、バイオ由来燃料を混合してガソリンを製造した場合に、当該混合分に係る揮発油税・地方道路税を免税する制度を創設します。大気汚染問題や地球温暖化問題に対応し、自動車の排出ガスのクリーン化および燃費の改善を図るため、対象要件を見直したうえで、2年延長し、最新排出ガス規制をクリアした、燃費性能に優れたクリーンディーゼル乗用車に対する自動車取得税の軽減措置を創設します。

Ⅴ 金融・証券税制

1 上場株式等の譲渡所得等に対する課税の見直し
 上場株式等に係る譲渡所得等の10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)は、平成20年12月31日をもって廃止され、平成21年1月1日以後は20%(所得税15%、住民税5%)となりますが、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの2年間、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額のうち500万円以下の部分については、10%の軽減税率となります。
 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの2年間については、源泉徴収口座において、10%の軽減税率で源泉徴収され、当該譲渡所得等の金額の合計額が500万円を超える者については、源泉徴収口座の申告不要の特例を適用しません。

2 上場株式等の配当所得に対する課税の見直し  上場株式等の配当等に係る10%軽減税率は、平成20年12月31日をもって廃止され、平成21年1月1日以後は20%となりますが、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの2年間、上場株式等の配当等(大口株主が支払いを受けるものを除く)に対する源泉徴収税率(特別徴収税率)は、10%の軽減税率となります。
 この場合、その年中の7%源泉徴収(3%特別徴収)の対象となった上場株式等の配当等(年間支払額が1万円以下の銘柄に係るものを除く)の金額の合計額が100万円を超える者については、申告不要の特例を適用しないものとします。
 平成21年1月1日以後の上場株式等の配当所得については、20%の税率による申告分離課税を選択できる制度が創設されます。総合課税と申告分離課税のいずれかを選択適用することになり、総合課税による場合には、配当控除の適用を受けることができます。
 申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の金額のうち100万円以下の部分については10%の軽減税率を適用します。

3 上場株式等の譲渡損失と配当所得との損益通算特例の創設  その年分の上場株式等の譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときまたはその年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式等の譲渡損失の金額があるときは、これらの損失の金額を上場株式等の配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限る)から控除します。損益通算の特例は、平成21年分以後の所得税および平成22年度分以後の住民税から適用します。
 また、源泉徴収口座内における上記損益通算を行うことが可能とする措置を講じ、証券会社等における特定口座のシステム開発等の準備が整った段階(平成22年1月を目途)から適用します。

4 特定上場株式等に係る譲渡所得非課税制度の廃止  特定上場株式等に係る譲渡所得非課税制度(元本1,000万円までの譲渡益非課税)は、特定上場株式等を平成19年12月31日までの間に売却した場合に適用されるものとなっていますが、適用期限の到来をもって廃止します。

Ⅵ 円滑・適正な納税のための環境整備

1 事前照会に対する文書回答手続の改善
 事前照会に対する文書回答手続について、「将来行う予定の取引で個別具体的な資料の提示が可能なもの」を対象に追加するなどの改善措置が講じられます。

2 税務手続きの電子化促進措置
(1)電子納税の新たな納付手段の創設
 国税の納付手続について、あらかじめ税務署長に一定の事項を届け出た場合には、インターネットバンキングを経由しない電子納税を行うことができるようにします。
(2)電子申告における第三者作成書類の添付省略の対象書類の追加  所得税の確定申告書の提出を電子申告で行う場合において、一定の要件のもと、税務署への提出または提示を省略することができる第三者作成書類の範囲に一定の書類を追加します。
(3)納税証明書の電子申請による書面交付  国税の納税証明書の書面による交付について、電子申請で交付を請求した場合には、一定の方法により送付に要する費用を納付して、当該証明書の送付を求めることができるようにします。平成20年1月4日以後に行う請求について適用します。

3 国税不服申立て手続の整備  国税に関する不服申立て手続について、行政不服審査法の見直しに伴い、①「異議申立て」を「再調査請求(仮称)」に名称変更する、②不服申立期間を処分があったことを知った日から3月以内(現行2月以内)に延長するなどの所要の規定の整備を行います。

4 公的年金からの個人住民税の特別徴収制度の導入  個人住民税に公的年金からの特別徴収制度を導入します。

Ⅶ 土地・住宅税制
 ①土地の売買による所有権の移転登記、②土地の所有権の信託の登記に対する登録免許税の軽減措置について、平成21年4月1日以後に受ける所有権の移転登記等に係る軽減税率を次のとおり引き上げたうえ、その適用期限を平成23年3月31日まで3年延長します。


Ⅷ 道路特定財源その他

1 道路特定財源の暫定税率の延長
 揮発油税・地方道路税・自動車重量税・自動車取得税・軽油引取税の税率の特例措置(暫定税率)の適用期限が10年延長されます。

2 組織再編税制に係る取扱いの明確化  いわゆる三角合併等において、親会社株式の端数に相当する金銭交付をもって、非適格組織再編として取扱わないことを明確にします。また、全部取得条項付種類株式において、価格決定申立てに基づく金銭交付がある場合について株式を取得した株主に課税繰延が認められることなどが明確化されます。

3 工事収益の計上方法等の見直し  工事契約に関する会計基準の変更に伴い、工事収益の計上方法等について、①工事進行基準によるべき長期大規模工事の範囲を工事期間1年以上(現行2年以上)、請負金額10億円以上(現行50億円以上)に見直すこと、②長期大規模工事以外の工事の範囲に、損失が生ずると見込まれる工事を追加するなどの見直しを行います。

4 社会医療法人についての課税の明確化  社会医療法人について、以下の措置が講じられます。
① 社会医療法人の医療保健業(附帯業務を除く)に係る法人税を非課税とし、その他の業務について軽減税率(22%)を適用します。
② 収益業務の収益の医業への繰入れを寄付金とみなし、損金算入できるようにします(50%上限)。(さじ・としお)

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