カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2008年06月09日 【ニュース特集】 持分プーリング法の廃止は平成22年4月1日から(2008年6月9日号・№261)

ASBJ、適用前の会計処理は遡及的な処理を行わず
持分プーリング法の廃止は平成22年4月1日から

 持分プーリング法が平成22年4月1日から廃止されることになりそうだ。企業会計基準委員会(ASBJ)は6月23日に予定されている同委員会において、企業結合会計基準等の公開草案を決定する方針だ。公開草案によると、持分プーリング法の廃止や株式を対価とする場合の測定日を企業結合日の時価とするなど、国際的な会計基準に合わせるものとなっている。新しい企業結合会計基準等は、平成22年4月1日以後実施される企業結合等から適用することとされている(早期適用も容認)。

1 共通支配企業の形成等以外はパーチェス法に1本化  企業会計基準委員会で検討している持分プーリング法を廃止する企業結合会計基準等の公開草案の策定がほぼ固まりつつある。
 公開草案としては、「企業結合に関する会計基準(案)」「事業分離等に関する会計基準(案)」「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(案)」「研究開発費等に係る会計基準の一部改正(案)」「連結財務諸表に関する会計基準(案)」「持分法に関する会計基準(案)」の6つを6月23日の同委員会で決定し、6月末までに公表する予定だ。意見募集を行った後、平成20年中には正式決定する方針である。以下、企業結合会計基準(案)を中心にその概要をみることにする。
論点整理では6つの論点  企業会計基準委員会が昨年12月27日に公表した「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」では、①持分プーリング法の取扱い、②株式を対価とする場合の測定日、③負ののれんの会計処理、④少数株主持分の測定、⑤段階取得における会計処理、⑥外貨建てのれんの換算方法の6つの論点が示されている(本誌236号、237号、239号参照)。
 ①に関して、わが国の企業結合会計基準は、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用されており、パーチェス法のほかに、一定の要件のもとで持分プーリング法を認めている(参照)。しかし、国際的な会計基準では、持分プーリング法を認めていないため、その差異の解消が急務となっていた。公開草案によれば、持分プーリング法を廃止することとし、共同支配企業の形成や共通支配下の取引以外の企業結合はパーチェス法を適用することとされている。

必ずどちらかの企業が取得企業に  また、現行の会計基準が定める持分の結合に該当するようなケースであっても、パーチェス法が適用されることになるため、必ずどちらかの結合当事企業を取得企業としなければならない。実務上、取得企業が明確でないこともあるため、取得企業の決定方法が規定されることになっている。
 具体的には、結合後企業に支配株主が存在しない場合において、主な対価の種類として、現金あるいは他の資産を引き渡すまたは負債を引き受けることになる企業結合の場合には、原則として、現金あるいは他の資産を引き渡すまたは負債を引き受ける企業が取得企業になる。
 また、主な対価の種類が株式である企業結合の場合には、原則として株式を発行する企業が取得企業となる。ただし、逆取得のように、必ずしも株式を発行した企業が取得企業にならない場合もあるため、①相対的な議決権比率の大きさ、②最も大きな議決権比率を有する株主の存在、③取締役等を選解任できる株主の存在、④取締役会等の構成、⑤株式の交換条件を総合的に勘案して決定することになるとしている。
 そのほか、結合当事企業のうち、いずれかの企業の相対的な規模(たとえば、総資産額、売上高、純利益)が著しく大きい場合には、通常、当該相対的規模の大きい結合当事企業が取得企業となる。
 また、結合当事企業が3社以上である場合の取得企業の決定については、企業の相対的な規模に加えて、いずれかの企業が最初にその企業結合を提案したかどうかについても考慮することとされている。

2 対価の測定日なども国際的な会計基準と同様の処理に  企業結合において、取得企業の株式を被取得企業に交付する場合、どの時点の株価で取得原価を算定すべきかという論点が②の株式を対価とする場合の測定日である。12月に公表された論点整理では、結論の方向性が示されていなかった項目だ。
 現行の会計基準では、企業結合の主要条件が合意されて公表された日前の合理的な期間における株価を算定することになっているが、公開草案では、国際的な会計基準に合わせ、企業結合日における時価を基礎として算定することとしている。
負ののれんは利益処理  ③の負ののれんの会計処理については、現行の会計基準によると、20年以内の取得の実態に基づいた適切な期間で規則的に償却するものとされている。しかし、公開草案によると、負ののれんが生じると見込まれる場合には、取得企業は、すべての識別可能資産および負債が識別されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直すこととし、見直しても取得原価が取得した資産および引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理することになるとしている。
部分時価評価法は認めず  ④の少数株主持分の測定については、部分時価評価法を認めるかどうかが論点となった。現行の会計基準では、連結財務諸表の作成にあたって、子会社の資産および負債を評価する方法として、親会社の持分に相当する部分については、株式の取得日ごとの時価により評価し、少数株主持分に相当する部分については、子会社の個別貸借対照表上の金額による方法(部分時価評価法)が認められている。
 しかし、公開草案では、子会社の資産および負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法(全面時価評価法)により評価しなければならないとしている。
段階取得、差額は損益処理に  ⑤の段階取得における会計処理については、公開草案によると、被取得企業の取得原価は、原則として取得時点における取得の対価(支払対価)となる財の時価で算定し、当該支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額との差額は、個別損益計算書および連結損益計算書のいずれにおいても損益として処理するとしている。
外貨建てのれんは決算日の為替相場で換算  ⑥の外貨建てのれん(在外子会社株式の取得により生じたのれんの会計処理)の会計処理については、発生時の為替相場で換算する方法から決算日の為替相場により換算する方法に変更している。


3 企業結合等で取得した仕掛研究開発費は資産計上  そのほかでは、企業結合により取得した研究開発の途中段階の成果について、識別可能な無形資産が含まれる場合には資産計上することなどが大きな改正のポイントとなっている(本誌259号参照)。
 この企業結合により取得した仕掛研究開発費に関しては、企業結合会計基準案について、①取得原価を研究開発費等に配分した際に費用処理を求める規定の削除、②取得原価を無形資産に配分することに関する任意規定の削除をしている。これにより、仕掛研究開発費として識別可能な限り、企業結合日における時価に基づいて資産として計上する。資産計上した仕掛研究開発費に関しては、製品が完成し、事業の用に供するまでは償却しないこととされている。
 また、研究開発費等会計基準の公開草案では、企業結合により取得した資産(受注制作、市場販売目的および自社利用のソフトウェアを除く)については、同会計基準を適用しない旨が定められる。

4 平成21年4月1日以後の企業結合等からの適用も可能  これらの会計基準の適用時期については、まず、企業結合会計基準(案)、事業分離等会計基準(案)および企業結合会計基準等適用指針(案)については、平成22年4月1日以後に実施される企業結合または事業分離等からとしている。ただし、平成21年4月1日以後実施される企業結合等からの早期適用も認めている。
 また、連結会計基準案、研究開発費会計基準案、持分法会計基準案についても、平成22年4月1日以後開始する連結会計年度(四半期連結会計期間も含む)から適用する(早期適用も可能)。ただし、平成22年3月31日以前の企業結合および事業分離に関する連結財務諸表作成にあたっての会計処理および注記事項については適用しないこととしている。
 なお、新会計基準の適用前に行われた企業結合および事業分離等の会計処理(持分プーリング法など)については、適用後も継続し、適用日における会計処理の見直しや遡及的な処理は行わない。

COLUMN
のれんの償却の是非は2011年6月までに結論
 のれんの償却の是非に関しては、今回の企業結合会計基準等の公開草案には盛り込まれていない。のれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却するとされているが、国際的な会計基準では非償却(減損の対象)とされている。このため、持分プーリング法の廃止と同様に、コンバージェンスにおける大きな論点の1つとされているが、EUの同等性評価の項目となっていないため、2011年6月までに検討することとされている。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索