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コラム2008年08月25日 【Sammys Cafe】 反社会的勢力の見分け方と企業の対応(2008年8月25日号・№271)

コンプライアンスの秘訣を指南するみんなの会社法
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反社会的勢力の見分け方と企業の対応

by TMI総合法律事務所 弁護士 葉玉匡美
港区の一角に、ちっぽけなカフェがある。そこは、なぜか会社法に詳しいマスターが、悩み多き法務担当者に心休まるコーヒーを差し出す大人の隠れ家。
Welcome to SAMMYS Cafe

パンチの組員 コーヒーとチョコケーキをくれ。
Sammy すいません。うちは反社会的な人はお断りしています。
パンチの組員 なんだぁ、その「反省会」ってのはぁ?

1 反社勢力との関係断絶の動き

 反社会的勢力(以下「反社勢力」といいます)とは、一般に、①暴力団、②暴力団員、③暴力団準構成員(暴力団員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの、または暴力団等に対し資金・武器等の供給を行うなど暴力団の維持・運営に協力し、関与するもの)、④暴力団関係企業(暴力団員が実質的にその経営に関与している企業、準構成員もしくは元暴力団員が経営する企業で暴力団に資金提供を行うなど暴力団の維持・運営に積極的に協力し、関与する企業、または業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し、暴力団の維持・運営に協力している企業)、⑤総会屋等、⑥社会運動等標榜ゴロ(社会運動・政治活動を仮装し、または標榜して、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者)、⑦特殊知能暴力集団等(①から⑥までに掲げる者以外の、暴力団との関係を背景に、その威力を用い、または暴力団と資金的なつながりを有し、構造的な不正の中核となっている集団または個人)のことをいいます(「組織犯罪対策要綱」参照)。
 昔から、会社が反社勢力とお付合いすることはよくないことだとはいわれてきましたが、平成19年6月に犯罪対策閣僚会議が「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を策定したのを機に、全国銀行協会・日本証券業協会・証券取引所等が一斉に反社勢力との関係断絶の動きを活発化させています。
 その結果、現在では、反社勢力や反社勢力と関係を持つ企業は、銀行から融資を止められ、証券会社の口座を閉じられ、上場したり、上場を維持したりすることもできないという厳しい措置が執られることになっています。

2 反社勢力の見分け方

 皆さんは「うちの会社は反社勢力じゃないよ」と信じているでしょう。しかし、大勢いる社員の一部が反社勢力と取引しているような場合でも、世間から暴力団関係企業と認定され、全銀行が取引をストップする可能性があるのです。
 今や反社勢力と取引することは、手形の不渡りを出すのと同じことであり、上場会社か否かにかかわらず、すべての会社が反社勢力との関係を完全に断絶しなければならないという重い課題を背負っています。
 もちろん、お客さんのひとりとして反社勢力が紛れ込んでくることを防止するのはほぼ不可能に近いでしょう。しかし、少なくとも業務委託先や仕入先など継続的な取引を行っている取引先については、至急、反社勢力かどうかのチェックを行う必要があります。
 その際、反社勢力が「反社」という名札を付けているわけではないので、取引先が反社勢力か否かを判断する基準を考える必要があります。
 各会社に反社勢力のデータベースがあればよいのですが、通常は、そこまで準備されていないので、とりあえず、取引先や取引先の役員が、
① 銀行から融資を受けているか
② 証券会社に口座を開設しているか
の2点を確認しましょう。
 銀行や証券会社は、警察と連携しつつ、充実した反社勢力データベースを構築しつつあり、顧客が反社勢力と判明すれば、すぐに新規融資を打ち切り、証券口座を解約するので、逆にいえば、銀行・証券会社と取引があること自体が反社勢力ではないという証明になりえます。
 このほかにも様々な判断方法はありますが、とりあえず簡便な方法で取引先をフィルターにかけ、疑わしい取引先が出てきたときは弁護士等と相談するのがベストでしょう。

3 反社勢力への対応

 会社が反社勢力との関係を継続すれば、会社の倒産に直結します。したがって、取引先が反社勢力であることを知りながら、その取引先を利用し続けるという選択肢はありません。
 蛇の目ミシン工業事件最高裁判決(平成18年4月10日本誌160号14頁参照。差戻し控訴審として、東京高判平成20年4月23日257号14頁参照)でも示されたように、取締役が反社勢力から威迫を受けた被害者であったとしても、反社勢力に対して利益を供与してしまえば、多額の損害賠償義務を負わされることにもなりかねません。
 反社勢力は、会社の不祥事等をネタにして関係の継続を迫ってくることが多々あります。しかし、そこで関係継続を選択すれば、会社が倒産するかもしれないのですから、どんなに苦しくても、経営者は担当者に対して反社勢力と即時に決別するよう指示し、弁護士や警察など外部専門家による協力を得て、担当者を全面的にバックアップしなければなりません。
 反社勢力による被害を防止するためには、普段から反社勢力のチェックと取引謝絶を内部統制システムの一環として組み入れるとともに、反社勢力であることが判明した瞬間から、会社が一体となって対応し、反社勢力の行動を逐一証拠化し、外部専門家と共同して、正々堂々と関係断絶を申し入れるのが最善の手段です。
 また、会社が既に反社勢力と契約を締結している場合には、通常、相手方が反社勢力であるというだけでは契約を解除することができないので、
① 契約自体に公序良俗違反や違法性がないか
② 契約後に不当な要求など信頼関係を破壊するに足りる行為が行われていないか
③ 継続的契約についての解約権を行使することができないか
などを検討する必要があります。
 それでも、契約の効力を否定することができない場合もありうるので、このような事態に備えて、取引先と契約を締結するときは反社勢力でないことを表明させ、表明違反があった場合には解除権が生ずる旨の規定を置くのが望ましいと思います。

パンチの組員 俺がパンチだからって、反社会的と決めつけるなよ。
Sammy だって、おでこに「極道」って入れ墨してますよ……。
パンチの組員 おっと、みえねぇから忘れてた。ごめんよ。

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