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税務ニュース2004年06月28日 平成15年度の敗訴割合は「4分の1」に(2004年6月28日号・№072) 東京国税局・平成15年度における訴訟の概要を公表

平成15年度の敗訴割合は「4分の1」に
東京国税局・平成15年度における訴訟の概要を公表


 東京国税局は6月15日、「平成15年度における訴訟の概要」を公表した。期首係属件数197件、発生件数171件、終結件数134件、期末係属件数234件という数字(下表参照)は、いずれも前年を大幅に上回る結果となった。当局担当者は「いよいよ大量発生・大量判決の時代に突入した」と話している。また、記者会見では、平成15年度における注目すべき判決例7例が紹介され、各事例について、簡単な説明がなされた。

発生・終結・係属件数の状況
平成14年度
平成15年度
対前年比
期首係属件数
161件
197件
122.4%
発生件数
104件
171件
164.4%
終結件数
68件
134件
197.1%
期末係属件数
197件
234件
118.8%


対前年比164.4%の171件が発生
 平成15年度の訴訟発生件数は171件。これは、対前年比164.4%の大幅増だ。審級別で見ると、第一審97件、控訴審55件、上告審19件となり、法人税の上告審以外はいずれも前年度以上の件数が発生している。
 税目別の発生件数は、所得税が対前年比146.8%の113件(このうち、ストック・オプションの権利行使益に係る所得区分を争う訴訟は約60件)、法人税が対前年比200%の24件、資産税が前年比171.4%の24件、消費税が前年比皆増の2件、その他(損害賠償請求事件等)が前年比800%の8件となり、いずれの税目も前年を大幅に上回る結果となった。

敗訴件数は対前年比243%、敗訴割合は25.3%
 税務訴訟といえば、行政裁量の壁が厚く、原告(納税者)の勝訴率が低いことが通説となっている。しかし、東京局の終結事由別件数の状況を見てみると、全体の判決数自体も前年度と比較して約2倍増えているが、敗訴(一部敗訴・全部敗訴)件数も前年より約2.5倍増え、全体の判決数自体の増加率を上回る結果となった。また、敗訴割合は25.3%(全体の約4分の1)となり、過去最高を記録した。
 このことについて当局担当者は、「敗訴割合が増えていることは事実だが、カウント方法にも多少問題(一審敗訴、控訴審勝訴の場合、1勝1敗でカウント)がある。終結した事件のうち、判決等が確定した事件を基礎とした場合の敗訴割合は、平成14年度15.4%(一部敗訴5.1%、全部敗訴10.3%)、平成15年度11.6%(一部敗訴2.3%、全部敗訴9.3%)である。」と説明している。
 東京地裁で次々と行政側敗訴を言い渡した藤山判決は、東京高裁で覆ることも多かった。このことが、東京局の敗訴割合(一審敗訴、控訴審勝訴という訴訟パターン)にも影響したものと考えられる。

注目すべき判決例とは…
 東京局が紹介した「平成15年度における注目すべき判決例」は全部で7事例。地裁判決3例、高裁判決4例。税目や勝敗も織り込み選定されている。
 地裁判決としては、1.重加算税の成立時期と賦課決定要件について(平成16年1月30日判決、原告の請求棄却・原告控訴)、2.国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」の存否(平成16年2月12日判決、原告の請求棄却・原告控訴)、3.和解により取得した土地を直ちに譲渡して得た金員の所得区分(平成15年12月12日判決、原告の請求一部容認・被告控訴)が挙げられた。
 高裁判決としては、4.弁護士業を営む妻に支払った弁護士報酬の必要経費算入の可否(平成15年10月15日判決、控訴人の請求棄却・控訴人上告)、5.ストック・オプションの権利行使益に係る所得区分(平成16年2月19日判決、控訴人税務署長の請求容認・被控訴人上告)、6.海外子会社の増資に係る株式を著しく有利な価額で関係会社が引き受けた場合の親会社に対する法人税課税の適否(平成16年1月28日判決、控訴人税務署長の請求容認・被控訴人上告)、7.交際費課税の適否(平成15年9月9日判決、控訴人会社の請求容認・確定)が挙げられた。

「萬有製薬事件」は“個別的”と強調
 この中で当局担当者は、上告せず、被告人税務署長敗訴が確定している7.交際費課税の適否(英文添削外注費と英文添削収入との差額負担が交際費等に該当するとして、これを損金に算入しなかった国側の更正処分に対し、萬有製薬株式会社が当該処分の取消を求めて争った事件)について、上告を断念した理由などについてコメントしている。
 当局のコメント内容とは、『「交際費等」に該当するための3要件(①「支出の相手方」が事業に関係ある者等である、②「支出の目的」が事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることである、③「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為である)のうち、②と③の要件を満たせなかったが、特に③の行為の形態が接待等に類する行為かという点で、「差額を負担している事実が、負担する相手側に伝わっていなかった」という事実認定に反論できなかったことが敗因。相手方も負担を認識しているケースであれば「交際費等」に該当していたかもしれない』というもの。
 当局は、今回の高裁判決は、製薬会社が取引先である医療機関の若手研究者らに対し、負担をもって英文添削サービスを含む便宜提供をしている場合の「一般」について判断したものでなく、極めて「個別的な事件」に対する判断であることを強調した。つまり、「接待、供応、慰安、贈答」は、いずれも相手方の個人的歓心を買うことによって相手方との親睦の度を密にしたり、取引関係の円滑な進行を図る行為の例示であり、学術奨励的要素が強いなど、その名目にかかわらず、「何らかの便宜が与えられた時点で交際費等に該当する」という当初の姿勢を保持した格好だ。
 納税者権利意識の向上により、当局と納税者の戦いは今後益々激化しそうだ。

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