コラム2008年12月15日 【SCOPE】 法令違反等を発見した監査人により取締役の違法行為が差止め(2008年12月15日号・№287)
監査人が金商法193条の3を適用して監査役に通知
法令違反等を発見した監査人により取締役の違法行為が差止め
平成19年の公認会計士法等の一部を改正する法律による金融商品取引法の一部改正で設けられた法令違反等事実発見時における監査人の当局への申出制度だが、監査人が監査役に違法行為の存在を通知したことから、監査役による取締役の違法行為差止めが行われた事例が発生した。春日電機の監査人であるビーエー東京監査法人(東京都港区)が金融商品取引法193条の3に基づき、法令違反等事実がある旨を同社の監査役に通知したものである。
監査人は法令違反等事実があれば監査役等に通知 金融商品取引法の一部改正により、平成20年4月1日から公認会計士または監査法人が法令違反等の事実を発見した場合については、内閣総理大臣(当局)へ報告する前に、法令違反の事実の内容および事実に係る法令違反の是正措置等をとるべき旨を記載した書面を特定発行者(被監査会社)の監査役等に通知することとされている。
また、監査役等に通知してから一定期間が経過した日後、是正が図られない場合には、内閣総理大臣への報告を義務付けられることになる。この一定の期間については、通知日後最初に到来する①有価証券報告書の提出期限の6週間前の日または通知日から起算して2週間を経過した日のいずれか遅い日(当該日が当該提出期限以後の日である場合は提出期限の前日)までの間、②四半期報告書または半期報告書の提出期限の前日までの間のいずれかの日までの間としている。
架空取引の疑いで通知 この法令違反等事実を発見した場合の監査人の対応だが、実際に東証2部の春日電機の監査人(ビーエー東京監査法人)が監査役に違法行為の存在を通知したことがわかった。
春日電機は12月3日、同社の監査役を債権者とし、同社の代表取締役社長を債務者とする「取締役の違法行為差止仮処分命令の決定」(東京地方裁判所民事第8部、11月26日付)、「株主総会開催禁止の仮処分命令の決定」(東京地方裁判所民事第8部、12月3日付)が行われた旨を公表している。この決定書のなかで、監査人は取引の実在性について確認できないばかりか、売り先からは現実の入金が一切ない状況にあることについて、春日電機の監査役に「金融商品取引法193条の3に基づき、特定発行者における法令に違反する事実その他の財務計算に関する書類の適正性の確保に及ぼすおそれがある事実を発見及び確認いたしましたので、当該事実の内容及び当該事実に係る法令違反の是正その他の適切な措置をとるべき旨を通知いたします。」との通知をしたことが明らかにされている。
臨時株主総会の開催を禁止 今回の東京地方裁判所民事第8部による「株主総会開催禁止の仮処分命令の決定」を紹介すると、春日電機の監査役が代表取締役社長を相手に株主総会開催禁止の仮処分命令を求めたものである。東京地裁は、12月5日開催予定であった臨時株主総会の開催を禁止する決定を下している。
具体的には、春日電機は、平成20年12月5日に臨時株主総会を開催する旨を10月29日の取締役会で決議したが、その後、大株主のアインテスラ社の持株が「0」になったことが判明した。春日電機の監査役によると、アインテスラ社の取締役会長の地位にもある春日電機の代表取締役社長は、単に開催日時点の株主の意思が正確に反映されない状況下で臨時株主総会を開催しようとしているだけでなく、自らが大株主となっているアインテスラ社が春日電機の株式を失っているにもかかわらず、基準日制度を濫用するものであると指摘している。
MEMO
会計士協会と監査役協会が監査役と監査人との連携に関する共同研究報告案を公表 日本公認会計士協会と日本監査役協会は12月12日、「監査役若しくは監査役会又は監査委員会と監査人との連携に関する共同研究報告」の一部改正案を公表した。金融商品取引法の改正や公認会計士法等の一部改正などを踏まえた見直しである。
特に金融商品取引法193条の3に規定する法令違反等事実発見への対応が図られている。
法令違反等を発見した監査人により取締役の違法行為が差止め
平成19年の公認会計士法等の一部を改正する法律による金融商品取引法の一部改正で設けられた法令違反等事実発見時における監査人の当局への申出制度だが、監査人が監査役に違法行為の存在を通知したことから、監査役による取締役の違法行為差止めが行われた事例が発生した。春日電機の監査人であるビーエー東京監査法人(東京都港区)が金融商品取引法193条の3に基づき、法令違反等事実がある旨を同社の監査役に通知したものである。
監査人は法令違反等事実があれば監査役等に通知 金融商品取引法の一部改正により、平成20年4月1日から公認会計士または監査法人が法令違反等の事実を発見した場合については、内閣総理大臣(当局)へ報告する前に、法令違反の事実の内容および事実に係る法令違反の是正措置等をとるべき旨を記載した書面を特定発行者(被監査会社)の監査役等に通知することとされている。
また、監査役等に通知してから一定期間が経過した日後、是正が図られない場合には、内閣総理大臣への報告を義務付けられることになる。この一定の期間については、通知日後最初に到来する①有価証券報告書の提出期限の6週間前の日または通知日から起算して2週間を経過した日のいずれか遅い日(当該日が当該提出期限以後の日である場合は提出期限の前日)までの間、②四半期報告書または半期報告書の提出期限の前日までの間のいずれかの日までの間としている。
(法令違反等事実発見への対応) 第百九十三条の三 公認会計士又は監査法人が、前条第一項の監査証明を行うに当たつて、特定発行者における法令に違反する事実その他の財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実(次項第一号において「法令違反等事実」という。)を発見したときは、当該事実の内容及び当該事実に係る法令違反の是正その他の適切な措置をとるべき旨を、遅滞なく、内閣府令で定めるところにより、当該特定発行者に書面で通知しなければならない。 2 前項の規定による通知を行つた公認会計士又は監査法人は、当該通知を行つた日から政令で定める期間が経過した日後なお次に掲げる事項のすべてがあると認める場合において、第一号に規定する重大な影響を防止するために必要があると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、当該事項に関する意見を内閣総理大臣に申し出なければならない。この場合において、当該公認会計士又は監査法人は、あらかじめ、内閣総理大臣に申出をする旨を当該特定発行者に書面で通知しなければならない。 一 法令違反等事実が、特定発行者の財務計算に関する書類の適正性の確保に重大な影響を及ぼすおそれがあること。 二 前項の規定による通知を受けた特定発行者が、同項に規定する適切な措置をとらないこと。 3 前項の規定による申出を行つた公認会計士又は監査法人は、当該特定発行者に対して当該申出行つた旨及びその内容を書面で通知しなければならない。 |
架空取引の疑いで通知 この法令違反等事実を発見した場合の監査人の対応だが、実際に東証2部の春日電機の監査人(ビーエー東京監査法人)が監査役に違法行為の存在を通知したことがわかった。
春日電機は12月3日、同社の監査役を債権者とし、同社の代表取締役社長を債務者とする「取締役の違法行為差止仮処分命令の決定」(東京地方裁判所民事第8部、11月26日付)、「株主総会開催禁止の仮処分命令の決定」(東京地方裁判所民事第8部、12月3日付)が行われた旨を公表している。この決定書のなかで、監査人は取引の実在性について確認できないばかりか、売り先からは現実の入金が一切ない状況にあることについて、春日電機の監査役に「金融商品取引法193条の3に基づき、特定発行者における法令に違反する事実その他の財務計算に関する書類の適正性の確保に及ぼすおそれがある事実を発見及び確認いたしましたので、当該事実の内容及び当該事実に係る法令違反の是正その他の適切な措置をとるべき旨を通知いたします。」との通知をしたことが明らかにされている。

臨時株主総会の開催を禁止 今回の東京地方裁判所民事第8部による「株主総会開催禁止の仮処分命令の決定」を紹介すると、春日電機の監査役が代表取締役社長を相手に株主総会開催禁止の仮処分命令を求めたものである。東京地裁は、12月5日開催予定であった臨時株主総会の開催を禁止する決定を下している。
具体的には、春日電機は、平成20年12月5日に臨時株主総会を開催する旨を10月29日の取締役会で決議したが、その後、大株主のアインテスラ社の持株が「0」になったことが判明した。春日電機の監査役によると、アインテスラ社の取締役会長の地位にもある春日電機の代表取締役社長は、単に開催日時点の株主の意思が正確に反映されない状況下で臨時株主総会を開催しようとしているだけでなく、自らが大株主となっているアインテスラ社が春日電機の株式を失っているにもかかわらず、基準日制度を濫用するものであると指摘している。
MEMO
会計士協会と監査役協会が監査役と監査人との連携に関する共同研究報告案を公表 日本公認会計士協会と日本監査役協会は12月12日、「監査役若しくは監査役会又は監査委員会と監査人との連携に関する共同研究報告」の一部改正案を公表した。金融商品取引法の改正や公認会計士法等の一部改正などを踏まえた見直しである。
特に金融商品取引法193条の3に規定する法令違反等事実発見への対応が図られている。
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