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解説記事2009年01月05日 【制度解説】 大量保有報告制度およびEDINETの運用改善に係る政府令改正の要点(2009年1月5日号・№289)

解説
大量保有報告制度およびEDINETの運用改善に係る政府令改正の要点

 金融庁総務企画局企業開示課企業開示調整官 谷口義幸

Ⅰ はじめに

 金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成20年法律第65号)による金融商品取引法等の一部改正に関し、去る平成20年12月5日に、
○ 金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成20年政令第368号)
○ 金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成20年政令369号。以下「改正政令」という)
○ 金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う金融庁関係内閣府令の整備に関する内閣府令(平成20年内閣府令第79号。以下「改正府令」という)
が公布され、12月12日に施行された。
 これらの改正には、大量保有報告制度およびEDINET(Electronic Disclosure for Investors' NETwork:金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)の運用改善に係る改正が含まれている。
 本稿では、これらの改正の概要について解説することとする。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることをお断りしておく。

Ⅱ 改正の経緯

1.検討チームの設置、取りまとめ
 平成20年1月、重要な事項について虚偽記載のある大量保有報告書がEDINETに掲載されたことを受け、大量保有報告制度およびEDINETの運用に関する再発防止策および危機管理策を検討するための「EDINET運用改善検討チーム」が金融庁に設置された。
 この「EDINET運用改善検討チーム」では、大量保有報告制度およびEDINETの運用に関し実務的見地から検討が行われ、その検討結果は「EDINET運用改善に関する論点整理」(平成20年2月)として取りまとめられた。
 「EDINET運用改善に関する論点整理」では、次の2および3のように指摘がなされている。

2.調査対象報告書の迅速な検出  大量保有報告書等に対する財務局等での審査を迅速・効率的に行うためには、「調査対象報告書」(財務局等の確認により、虚偽記載のおそれがあり、調査を有すると判断された大量保有報告書をいう。以下同じ)を迅速に検出する必要がある。
 このため、システムによるチェック機能を強化し、ログイン情報(提出者がEDINETを使用する際に取得する情報(ID・パスワード))に関して次のような方策を講ずることにより、提出者情報の一層の把握に努める。
① 電子開示システム届出書の添付書類として、法人の場合は定款に加え、登記事項証明書などの実在性の確認を確実に行うための書類を加える。
② 電子開示システム届出書の記載事項として、実質的な情報を追加する。
③ ログイン情報を一定期間(たとえば3年)ごとに再確認する仕組みを導入する。

3.調査対象報告書検出後の対応  「調査対象報告書」について、その事実関係を迅速に確認するためには、当該「調査対象報告書」の提出者の株券等保有状況を取扱金融商品取引業者・信託銀行等に照会することが初期段階で最も有効な手段の1つである。
 この方策として、大量保有報告書等の記載事項または添付書類とし、取扱金融商品取引業者・信託銀行等の名称等の記載を求める方向で検討を行う。

4.改正された政令・内閣府令  これらの指摘を受け、EDINETに係る登録届出手続の見直しを行うとともに、大量保有報告書等の添付書類の追加等を行うため、
○ 金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号。以下「政令」という)
○ 株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令(平成2年大蔵省令第36号。以下「大量保有開示府令」という)
○ 開示用電子情報処理組織による手続の特例等に関する内閣府令(平成14年内閣府令第45号。以下「電子開示府令」という)
の改正を行った。

Ⅲ 電子開示手続等に係る届出の見直し

1.新規届出
 従来から、EDINETを利用して電子開示手続(有価証券報告書・大量保有報告書等の提出)または任意電子開示手続(有価証券通知書等の提出)を行う者は、あらかじめ、電子開示システム届出書とともに、定款(提出者が法人の場合)、住民票の抄本(提出者が個人の場合)等を添付して提出することとされていたが、前述Ⅱ2の①の指摘を踏まえ、定款に加え、新たに登記事項証明書の提出を求めることとした。
 具体的には、電子開示システム届出書の提出者の区分に応じ、それぞれに定める書類を電子開示システム届出書に添付して提出しなければならない(改正政令による改正後の政令14条の10第2項本文、改正府令による改正後の電子開示府令2条4項・8項)。
① 内国会社
 a 定款またはこれに準ずるもの
 b 登記事項証明書またはこれに準ずるもの(提出しようとする日前3月以内に交付を受けたものに限る)
② 外国法人(提出者が外国債等の発行者である場合はaを除く)
 a ①のaおよびb
 b 電子開示システム届出書の提出について権限を付与したことを称する書面(委任状)
 c これらの書類が日本語でなければ、その訳文
③ 個人
 a 住民票の抄本またはこれに準ずるもの
 b 委任状(届出者が非居住者の場合に限る)
 c これらの書類が日本語でなければ、その訳文
 なお、外国では、登記事項証明書に係る制度またはこれに類似する制度がないことも考えられる。この場合には、当該外国法人の実在性の確認を確実に行うことができる書類を添付することが考えられる。

2.届出の更新  従来は、初めてEDINETを利用して電子開示手続または任意電子開示手続を行う際に電子開示システム届出書を提出しておけば、その後に電子開示手続または任意電子開示手続を行う場合でも、電子開示システム届出書の提出を不要としていた。
 しかしながら、前述Ⅱ2の③の指摘を踏まえ、既に電子開示システム届出書を提出した場合であっても、その後、定期的に定款等の書類を提出しなければ、電子開示手続または任意電子開示手続を行う都度、電子開示システム届出書を提出しなければならないこととした(政令14条の10第2項ただし書)。
 具体的には、既に電子開示システム届出書を提出した者(以下「提出者」という)は、その区分に応じてそれぞれに定める書類を、当該電子開示システム届出書を財務局長等が受理した日(以下「受理日」という(脚注1))から起算して3年を経過するごとに、その3年を経過した日(以下「基準日」という(脚注2))から1月以内に当該財務局長等に提出しなければならない(電子開示府令2条7項・8項)。
① 内国会社
 a 定款またはこれに準ずるもの
 b 登記事項証明書またはこれに準ずるもの(提出しようとする日前3月以内に交付を受けたものに限る)
② 外国法人(提出者が外国債等の発行者である場合は提出不要)
 a ①のaおよびb
 b これらの書類が日本語でなければ、その訳文
③ 個人
 a 住民票の抄本またはこれに準ずるもの
 b これらの書類が日本語でなければ、その訳文
 なお、基準日において「有価証券報告書の提出義務者」または「大量保有報告制度における特例報告対象者」に該当する者は、頻繁にEDINETを利用して開示書類を提出しており、これらの者に係る情報は常に把握することができるため、電子開示手続または任意電子開示手続を行う度ごとの電子開示システム届出書および①~③に定める書類の提出を不要とした(電子開示府令2条7項2号・3号)。
 また、受理日から最初の基準日の前日までの間に電子開示手続または任意電子開示手続を行う場合についても、電子開示システム届出書の提出を不要としている(電子開示府令2条7項1号)。

3.電子開示システム届出書の様式の改正  前述Ⅱ2の①の指摘を踏まえ、電子開示システム届出書に、当該届出者の「資本金又は出資の額」の記載を求めるとともに、記載すべき電話番号が当該届出者の窓口となる電話番号である旨を明確にしている(電子開示府令第1号様式)。

4.経過措置  改正前の電子開示府令の規定による電子開示システム届出書を提出した者(次の①~④の者を除く)は、施行日(平成20年12月12日)から3か月を経過する日(平成21年3月11日)までの間に、前述2の①~③の書類(以下「定款等」という)を、当該電子開示システム届出書を提出した財務局長等に提出した場合には、当該提出日に改正後の電子開示府令の規定による電子開示システム届出書および定款等を提出したものとみなすこととした(改正府令附則11条1項)。
 ただし、施行日において、
① 有価証券報告書の提出義務者(有価証券報告書の提出免除の承認を受けている者を含むが、当該承認を受けていないにもかかわらず、施行日前1年以内に有価証券報告書を提出していない者を除く)
② 大量保有報告書の特例対象者(脚注4)
③ 施行日前1年以内に改正前の規定による電子開示システム届出書を提出した者(個人に限る)
に該当する届出者については、定款等の提出は不要であり、施行日に改正後の電子開示府令の規定による電子開示システム届出書および定款等の書類を提出したものとみなすこととしている(改正府令附則11条2項)。また、
④ 施行日前1年以内に改正前の規定による電子開示システム届出書を提出した者(個人以外の者に限る)
に該当する届出者については、施行日から3か月を経過する日までの間に、登記事項証明書(2の①bの書類)を当該電子開示システム届出書の提出先である財務局長等に提出した場合には、施行日に改正後の電子開示府令の規定による電子開示システム届出書および定款等を提出したものとみなすこととしている(改正府令附則11条3項)。
 なお、定款等(④の者については、登記事項証明書)を受理した財務局長等は、これらの書類を受理した日を、これらの書類の提出者に通知することとなる(改正府令附則11条4項)。
 一方、3における改正後の電子開示システム届出書は、平成21年4月1日以後に提出するものから適用される(改正府令附則12条)。

Ⅳ 大量保有報告書等の添付書類
 「EDINET運用改善に関する論点整理」では、調査対象報告書についてその事実関係を迅速に確認するため、大量保有報告書等の添付書類として、取扱金融商品取引業者・信託銀行等の名称等の記載を求めるとの指摘がなされたところである(前述Ⅱ3参照)。
 このような指摘等を踏まえ、大量保有報告書および変更報告書の添付書類として、提出者のために取引の媒介、取次ぎまたは代理を行う者の名称等を記載した書面の提出を義務付けることとしたものである。

1.大量保有報告書の添付書類  大量保有報告書には、当該大量保有報告書を提出すべき者のために行う当該大量保有報告書を提出することとなった売買その他の取引の媒介、取次ぎまたは代理を行う者の名称、所在地および連絡先を記載した書面を添付しなければならない(改正府令による改正後の大量保有開示府令2条2項)。
 この書面には、当該大量保有報告書を提出することとなった最終的な売買その他の取引の媒介等を行った者の名称、所在地および連絡先(具体的には、実際に売買の発注をした証券会社の本・支店、営業所等の名称、所在地および連絡先)を記載することとなる。
 ただし、大量保有報告書を提出すべき者が金融商品取引業者等である場合、当該金融商品取引業者等は、日常的に多くの取引を行っており、個別銘柄ごとに取引の媒介等を行った者を把握することは困難であること、また、提出義務者である金融商品取引業者等は金融庁の監督対象であり、事実関係の確認に直ちに対応できる体制が整備されていること等を考慮し、提出義務者が金融商品取引業者等である場合は、書面の添付は要しないこととした。
 なお、この書面は、大量保有報告書に添付して財務局長等のみに提出するものであり、当該書面の写しを大量保有報告書の写しに添付して当該株券等の発行者および金融商品取引所に提出する必要はない。また、この書面は公衆縦覧の対象ではない。

2.変更報告書の添付書類  変更報告書を提出する場合についても、当該変更報告書を提出することとなった売買その他の取引の媒介、取次ぎまたは代理を行う者の名称、所在地および連絡先を記載した書面を添付しなければならない(大量保有開示府令8条2項(2条2項を準用))。
 ただし、この書面に記載すべき事項が、
① 当該変更報告書に係る大量保有報告書に添付された書面
② 当該変更報告書の直前に提出された変更報告書で当該大量保有報告書に係るものに添付された書面
に記載された事項と同一の内容である場合には、この書面の添付は不要である(大量保有開示府令8条2項ただし書)。

3.経過措置  前述1の書面については、施行日以後に提出する改正後の金融商品取引法27条の23第1項の規定による大量保有報告書に添付することとなる(改正府令附則10条1項)。
 また、2の書面については、施行日以後に提出する改正後の金融商品取引法27条の25第1項の規定による変更報告書に添付することとなる(改正府令附則10条2項)。
(たにぐち・よしゆき)

脚注
1 「受理日」は、届出者を特定するための番号(EDINETコード)、電子開示手続等を行うために必要な識別番号および暗証番号(ID・パスワード)とともに、金融庁長官から当該届出者に通知される(電子開示府令2条2項)。
2 電子開示システム届出書の受理日が、たとえば平成21年4月10日である場合には、最初の基準日は平成24年4月10日であり、その次の基準日は平成27年4月10日となる。
4 ある銘柄について特例対象者に該当する者は、その者が保有する他の銘柄名について特例対象者に該当しない場合であっても、特例対象者に該当するものと考えられる。

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