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解説記事2010年05月31日 【実務解説】 有価証券報告書作成上の留意点(平成22年3月期)について(2010年5月31日号・№356)

実務解説
有価証券報告書作成上の留意点(平成22年3月期)について

 財務会計基準機構 企画部グループ長 紀太昌也

はじめに

 財務会計基準機構は有価証券報告書セミナーを、今年は4月2日から13日まで、全国9か所で11回にわたり開催した。本稿は、主に同セミナーで説明した内容をもとに、平成22年3月期に係る有価証券報告書の作成上の留意点についてまとめたものである(但し、会計基準等の早期適用及び指定国際会計基準の任意適用に関する事項は除き、コーポレート・ガバナンスの状況等について新たに加筆している。)。なお、本稿は連結財務諸表作成会社を対象としており、文中意見にわたる部分は私見であることをあらかじめお断りしておく。

Ⅰ 開示府令等の改正に関する事項
 平成21年12月11日付及び平成22年3月31日付の「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、開示府令)の改正等により、開示項目や記載事項の追加が行われている。

1 有価証券報告書の定時株主総会前提出  平成21年12月11日付の開示府令の改正等により、有価証券報告書を定時株主総会前に提出することが可能になっているが、その場合は、開示府令第三号様式(記載上の注意)(1)eの規定に従うことになる。即ち、「この報告書(=有価証券報告書)を当該事業年度に係る定時株主総会前に提出する場合であって、この報告書(=有価証券報告書)に記載した事項及びそれらの事項に関するものが当該定時株主総会又は当該定時株主総会の直後に開催が予定される取締役会の決議事項になっているときは、それぞれ該当する箇所において、その旨及びその概要を記載すること」が必要とされている。
 この場合の記載すべき「概要」とは、定時株主総会での決議予定事項については、その招集通知の決議案に記載された内容を全て記載するか、又は一部を簡略化して記載し、定時株主総会の直後の取締役会での決議予定事項についてもそれに準じて記載することになる。このような予定されている事項の記載は、定時株主総会前に有価証券報告書を提出する企業と定時株主総会後に有価証券報告書を提出する企業の情報量は原則としてそろえるべきであるという本規定の趣旨に基づくものである。
 また、「有価証券報告書に記載した事項及びそれらの事項に関するもの」については、具体的には各企業の実態に応じて様々なケースが想定されるが、例えば剰余金の配当や、役員の状況、ストックオプション制度の内容、対処すべき課題、コーポレート・ガバナンスの状況等が考えられる。
 なお、有価証券報告書に記載した定時株主総会又はその直後に開催が予定されている取締役会の決議事項が、有価証券報告書の提出後に開催された定時株主総会又はその直後の取締役会で否決又は修正された場合には、所定の事項を記載した臨時報告書の提出が必要であるとされている(開示府令19条2項9号の3)。但し、有価証券報告書の記載内容自体が誤りで訂正を要する場合には、有価証券報告書の訂正報告書の提出が必要である。
 最後に、有価証券報告書を定時株主総会後に提出するに際して提出日時点の状況についての記載が望ましいと考えられる事項については、今般、定時株主総会前に提出するにあたり、当該事項が定時株主総会又はその直後の取締役会における決議事項になっているのであれば、先に述べた本規定の趣旨に基づき、その旨及びその概要を記載する必要があることに留意されたい。

2 行使価額修正条項付新株予約権付社債券等に関する事項  平成21年12月11日付の開示府令の改正により、第4【提出会社の状況】1【株式等の状況】において、行使価額修正条項付新株予約権付社債券等に関する事項の開示項目が新設されている。
 行使価額修正条項付新株予約権付社債券等は、開示府令19条8項に規定されている定義に従えば、(i)株券型と(ii)新株予約権型の2つに大別され、その何れかによって記載箇所が異なる。
 まず、(i)株券型の場合には、(1)【株式の総数等】の②【発行済株式】に記載することになる。資料1に記載事例を示すので参照されたい。
 具体的な記載内容は、開示府令第三号様式(記載上の注意)(20)c~eで規定されている。まずcで、「会社が行使価額修正条項付新株予約権付社債券等を発行している場合には、『種類』の欄にその旨を記載すること」とされている。記載事例は、会社が優先株式を発行しており、それが行使価額修正条項付新株予約権付社債券等に該当することを示している。また、dで、「会社が行使価額修正条項付新株予約権付社債券等を発行している場合には、冒頭に、当該行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の特質を記載すること」とされており、記載事例は「内容」の欄の冒頭に行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の特質というタイトルを付して、箇条書きで記載する例を示している。但し、実務上は行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の特質を内容の欄に記載しきれない場合も想定されるため、そのような場合には、注書きで欄外に記載することもできるものと考えられる。更にeで、「会社が行使価額修正条項付新株予約権付社債券等を発行している場合には、次に掲げる事項を欄外に記載すること」とされており、e(a)~(e)に規定されている事項を記載事例のように欄外の脚注で記載することになる。
 次に、行使価額修正条項付新株予約権付社債券等が(ii)新株予約権型の場合には、(2)【新株予約権等の状況】に記載することになる。記載事項は開示府令第三号様式(記載上の注意)(21)fで規定されており、「行使価額修正条項付新株予約権付社債券等を発行している場合には、その旨、当該行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の特質及び(20)のeの(a)から(e)までに掲げる事項を欄外に記載すること」とされているように、記載内容は(i)株券型の場合と同様である。
 なお、1【株式等の状況】に(3)【行使価額修正条項付新株予約権付社債券等の行使状況】の様式が新設されているが、この様式に対応する開示府令第三号様式(記載上の注意)(21-2)は平成22年2月1日以後に開始する事業年度に係る有価証券報告書から適用されることになっている。従って、平成22年3月期の有価証券報告書では様式自体は省略せず、記載事項はない旨の記載を行うことになる。

3 従業員株式所有制度の内容  平成21年12月11日付の開示府令の改正により、第4【提出会社の状況】1【株式等の状況】において、新たに(10)【従業員株式所有制度の内容】という項目名にて当該内容を開示することとされている。記載事項は開示府令第二号様式(記載上の注意)(47- 2)aに規定されており、(a)従業員株式所有制度の概要、(b)従業員等持株会に取得させ、又は売りつける予定の株式の総数、(c)当該従業員株式所有制度による受益権その他の権利を受けることができる者の範囲を記載することになる。
 従業員株式所有制度の概要は、具体的には、当該従業員株式所有制度の仕組みや、信託を利用する場合には受益権の内容等を記載することになる。また、従業員株式所有制度は、従業員等を対象とする持株会や、持株会に限らず直接従業員等に株式を取得させるような仕組みも広く開示の対象としている。この場合の従業員等とは、提出会社の役員、使用人その他の従業員のみならず、「金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令」に規定する被支配会社等もしくは関係会社の従業員も含むこととされている。この関係会社の定義は、財務諸表等規則等において規定されている関係会社の定義とは異なることに留意されたい。
 また、開示の対象となる従業員株式所有制度は、提出会社の株式を一定の計画に従い、継続的に取得又は売り付けることを目的として、信託その他の仕組みを利用した制度となっている。さらに、従業員株式所有制度の内容については、投資家へのディスクロージャー拡充という規定の趣旨に鑑みて、事業年度末現在ではなく、提出日現在で記載することが適当と考えられる。
 なお、(47-2)bで規定されているように、提出会社が当該制度を導入していない場合には、項目名を含め記載を要しないこととされている。

4 コーポレート・ガバナンスの状況  平成22年3月31日付の開示府令の改正等により、第4【提出会社の状況】6【コーポレート・ガバナンスの状況等】(1)【コーポレート・ガバナンスの状況】において記載すべき事項が追加されている。
(1)コーポレート・ガバナンス体制  企業統治の体制の概要及び当該企業統治の体制を採用する具体的な理由、財務及び会計に関する相当程度の知見を有する監査役又は監査委員について当該知見の内容、社外取締役・社外監査役の独立性に関する考え方、社外取締役・社外監査役の選任状況についての考え方及び社外取締役・社外監査役を選任していない場合には、それに代わる体制及び当該体制を採用する理由などの記載が新たに求められている(開示府令第二号様式(記載上の注意)(57)a(a)~(c))。
(2)役員報酬  取締役(社外取締役を除く。)・監査役(社外監査役を除く。)・執行役・社外役員に区分した報酬等の総額、報酬等の種類別(基本報酬・ストックオプション・賞与・退職慰労金等の区分)の総額等、更に役員ごとの提出会社と連結子会社の役員としての報酬等(連結報酬等)の総額・連結報酬等の種類別の額等の開示(但し、役員ごとの開示については、連結報酬等の総額が1億円以上の役員に限ることができる。)が新たに求められている。また、提出日現在において報酬等の額又はその算定方法の決定方針がある場合、その内容及び決定方法の開示も求められている(開示府令第二号様式(記載上の注意)(57)a(d))。
(3)株式保有状況  提出会社が保有する株式(みなし保有株式(脚注1)を含む。)について、保有目的を純投資目的以外と純投資目的に区別し、それぞれの保有状況について所定の開示が求められている(開示府令第二号様式(記載上の注意)(57)a(e))。なお、経過措置が設けられており、特に、みなし保有株式については平成23年3月期の有価証券報告書等から適用されること、銘柄別の保有株式の開示については銀行・保険会社以外と銀行・保険会社との間で本則適用までのスケジュールが異なることなどが規定されているので、注意されたい(平成22年3月31日内閣府令第12号附則2条(同年4月23日内閣府令第24号による改正がある。))。

5 監査報酬の内容等  当該記載項目(第4【提出会社の状況】6【コーポレート・ガバナンスの状況等】(2)【監査報酬の内容等】)については、既に平成21年3月期から改正後の開示府令が適用されているが、本稿では適用2年目にあたっての記載上の留意事項について説明する。
 記載事項は開示府令第二号様式(記載上の注意)(58)a~dに規定されている。a~cの記載事項、即ち、【監査公認会計士等に対する報酬の内容】、【その他の重要な報酬の内容】及び【監査公認会計士等の提出会社に対する非監査業務の内容】については、規定上、当連結会計年度と前連結会計年度の2期分の記載が明確に求められているのに対して、dの記載事項である【監査報酬の決定方針】については、2期分の記載が特に求められていない。但し、最近2連結会計年度分の監査報酬額を比較させるという規定の趣旨に鑑みて、決定方針に変更がある場合は2期分(変更前と変更後)を記載することが望ましいと考えられる。

6 連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取組み  平成21年12月11日付の開示府令の改正で、開示府令第二号様式(記載上の注意)(59)eが追加されており、提出会社が金融商品取引法の規定により提出する連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取組みを行っている場合には、その旨及びその取組みの具体的な内容を記載することとされている。さらに「特段の取組み」については、開示ガイドライン5- 19- 2で規定されており、「①会計基準等の内容を適切に把握し、又は会計基準等の変更等について的確に対応することができる体制の整備(会計基準の内容又はその変更等についての意見発信及び普及・コミュニケーションを行う組織・団体(例えば、財務会計基準機構)への加入、会計基準設定主体等の行う研修への参加)、②指定国際会計基準による適正な財務諸表等を作成するための社内規程、マニュアル、指針等の整備及びこのための社内組織(例えば、情報管理委員会、特別に設置するタスクフォース)の設置」の2つが例示されている。
 この特段の取組みの記載については、各企業の状況に応じて適宜工夫しながら記載することとなる(資料2参照)。また、特段の取組みを行っている旨及びその取組みの具体的な内容は、第5【経理の状況】の冒頭に記載することが適当と考えられる。

Ⅱ 新会計基準等の適用
 企業会計基準委員会により公表されている新会計基準等の適用に伴い、連結財務諸表規則(以下、連結財規)及び財務諸表等規則(以下、財規)等が改正されている。

1 工事契約の会計処理に関する事項  「工事契約に関する会計基準」(企業会計基準第15号(平成19年12月27日))と「工事契約に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第18号(平成19年12月27日))及び改正後の連結財規等が、平成21年4月1日以後開始する連結会計年度から適用されている。
(1)会計方針の変更  「工事契約に関する会計基準」等は、当会計基準等を適用する最初の連結会計年度に着手する工事契約から適用することとされているが、当会計基準等を適用する最初の連結会計年度の期首に存在する工事契約を含む全ての工事契約について、一律に当会計基準等を適用することもできるとされている。このため、会計方針の変更の記載にあたっては、上記の何れの適用パターンであるかが明確になるように記載する必要がある。
(2)連結貸借対照表関係  「工事契約に関する会計基準」等を適用し、同一の工事契約に係るたな卸資産及び工事損失引当金がある場合には、重要性の乏しい場合を除き、一定の事項を注記しなければならないこととされている(財規54条の4)。たな卸資産と工事損失引当金を相殺せずに両建てで表示する場合には、その旨及び当該工事損失引当金に対応するたな卸資産の金額を、相殺表示する場合には、相殺表示している旨及び相殺表示したたな卸資産の金額をそれぞれ注記することとされている。
(3)連結損益計算書関係  「工事契約に関する会計基準」等を適用する最初の連結会計年度において、期首に存在する工事契約を含む全ての工事契約について同会計基準等を適用した場合は、その旨並びに過年度の工事の進捗度に対応する工事収益及び工事原価の額を連結損益計算書に注記しなければならないとされている(平成20年8月7日内閣府令第50号附則3条)。
 また、売上原価に含まれている工事損失引当金繰入額がある場合には、その金額を注記しなければならないとされている(連結財規52条の2、財規76条の2)。この注記については、連結財務諸表・個別財務諸表ともに記載が必要となる。

2 退職給付会計に関する事項  「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その3)」(企業会計基準第19号(平成20年7月31日))は、平成21年4月1日以後開始する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用されている。
 当会計基準の適用に伴い発生する退職給付債務の差額は、適用初年度に発生した数理計算上の差異に含めて処理されるため、会計方針の変更の影響額として、当該差額に関わる適用初年度の費用処理額及び未処理残高をそれぞれ注記することとされている。
 このため、会計方針の変更の記載にあたっては、数理計算上の差異を当連結会計年度から償却する場合には、当連結会計年度の連結財務諸表に与える影響額と未処理残高を記載し、翌連結会計年度から処理する場合には、当連結会計年度の連結財務諸表に与える影響はない旨と未処理残高を記載することになる。

3 金融商品会計に関する事項  「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号(平成20年3月10日))と「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第19号(平成20年3月10日))及び改正後の連結財規等が、平成22年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用されており、金融商品会計に関する注記事項が構成及び内容の面で従前に比べて大きく変わっている。
 構成の面では、「金融商品関係」「有価証券関係」「デリバティブ取引関係」の3つの注記から成る。「金融商品関係」において、金融商品に対する取組方針や金融商品の内容、リスク管理体制といった金融商品全体を総括した定性的情報及び時価のハイライト情報を記載し、「有価証券関係」と「デリバティブ取引関係」において追加・補足的な時価の明細情報を記載することになる。
 なお、「金融商品に関する会計基準」及び「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」の適用による影響が、連結貸借対照表や連結損益計算書上の金額に及ぶ場合には会計方針の変更に該当することになるが、その影響が注記事項における記載にとどまる場合は、会計方針の変更ではなく、追加情報として、「金融商品関係」の注記に記載することも考えられる。
(1)金融商品関係  金融商品関係の注記の内容としては、金融商品の状況に関する事項(金融商品に対する取組方針、金融商品の内容及びリスク、金融商品に係るリスク管理体制)や金融商品の時価に関する事項(連結決算日における連結貸借対照表の科目ごとの連結貸借対照表計上額と時価についてそれらの金額、連結貸借対照表計上額と時価との差額、時価の算定方法)等を注記しなければならないとされている(連結財規15条の5の2第1項)。
 また、金融商品の時価の把握が困難な場合には、その旨及びその理由、連結貸借対照表計上額を注記する(同条2項)。
 次に、同条3項及び4項で、金融資産及び金融負債の双方がそれぞれ資産の総額及び負債の総額の大部分を占めており、かつ、当該金融資産及び金融負債の双方が事業目的に照らして重要である連結会社に対して、市場リスクに関する一定の事項を注記することを求めているが、この注記については、平成23年3月31日前に終了する連結会計年度に係る連結財務諸表については記載しないことができることとされている(平成20年8月7日内閣府令第50号附則3条2項)。
 また、金銭債権及び有価証券のうち満期があるものについては、償還予定額の合計額を一定の期間に区分した金額を注記しなければならない(連結財規15条の5の2第5項)とされているが、この場合には、その他有価証券及び満期保有目的の債券の別に、それぞれ有価証券の種類ごとに注記する(財規ガイドライン8の6の2- 5)こととされている。さらに債券の場合には、債券の種類ごとの注記が必要となる。
 なお、償還予定額については、「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」の適用に伴い、「償還期限のある有価証券から得られるキャッシュ・フローをある程度予測できるように」という開示の趣旨などにより、原則として元本による記載が適当と考えられる。但し、例えば過去に減損を行っている場合など、元本で記載することが望ましくない、もしくはできないと考えられる場合には、適宜将来キャッシュ・フローの予測等の観点から適切と思われる価額により記載することが考えられる(資料3参照)。
(2)有価証券関係  有価証券関係の注記の内容は、連結財規15条の6に規定されている。
 まず、売買目的有価証券は、当連結会計年度の損益に含まれた評価差額を記載する(同条1項1号)。
 満期保有目的の債券やその他有価証券については、従来あった「時価のあるもの」という限定が取り外されており、時価の把握が極めて困難なものを除く全ての満期保有目的の債券やその他有価証券について記載することが考えられる(同条1項2号及び3号)。
 また、当連結会計年度中に売却したその他有価証券については、今回の改正により、有価証券の種類ごとの売却額等の記載が求められている(同条1項5号)。
 さらに、当連結会計年度中に有価証券の減損処理を行った場合、その旨及び減損処理額は、従来は脚注で表示することが望ましいとされていたが、今回の改正により注記しなければならないと規定されている(同条5項)。
 なお、連結財務諸表を作成している場合でも、従来同様、個別財務諸表の「有価証券関係」の注記で子会社株式及び関連会社株式についての記載が必要であるが、改正後の財規の規定(財規8条の7第1項3号)では「時価のあるもの」という限定が取り外されている。時価の把握が極めて困難な子会社株式及び関連会社株式については、連結財務諸表の「金融商品関係」の注記における時価の把握が極めて困難な金融商品の取り扱いに準じて記載することが考えられる。
(3)デリバティブ取引関係  「デリバティブ取引関係」の注記の内容は連結財規15条の7第1項に規定されているが、今回の改正により、ヘッジ会計が適用されているデリバティブ取引も含めて開示の対象となっている。
 また、従来は取引の状況に関する事項として、デリバティブ取引の内容やリスクの内容、リスク管理体制等の記載が求められていたが、今回の改正により、これらは金融商品関係の注記にまとめて記載される。
 なお、金利スワップの特例処理を行っている場合や外貨建金銭債権債務等の振当処理を行っている場合は、財規ガイドライン8の6の2- 1- 2の規定により、ヘッジ対象と一体として取扱い、当該デリバティブ取引の時価をヘッジ対象の時価に含めて記載することができるとされている(資料4参照)。
4 賃貸等不動産に関する事項  「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(企業会計基準第20号(平成20年11月28日)と「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第23号(平成20年11月28日))及び改正後の連結財規等が、平成22年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用されている。
 記載事項は、連結財規15条の24により、賃貸等不動産の概要、連結貸借対照表計上額及び当連結会計年度における主な変動、連結決算日における時価及び当該時価の算定方法、賃貸等不動産に関する損益とされている。この場合の賃貸等不動産の概要には、主な賃貸等不動産の内容、種類及び場所が含まれることに留意する(財規ガイドライン8の30-1-1)。
 なお、賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準等の適用は、会計方針の変更には該当せず、追加情報として記載することが考えられる。


脚注
1 みなし保有株式とは、純投資目的以外の目的で提出会社が信託契約その他の契約又は法律上の規定に基づき株主として議決権を行使する権限又は議決権の行使を指図する権限を有する株式(提出会社が信託財産として保有する株式及び非上場株式を除く。)をいう。

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