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解説記事2010年08月09日 【法令解説】 社債、株式等の振替に関する命令に係る平成22年2月改正の要点(2010年8月9日号・№366)

法令解説
社債、株式等の振替に関する命令に係る平成22年2月改正の要点
 法務省 民事局付 髙木弘明

Ⅰ.はじめに
 社債、株式等の振替に関する命令の一部を改正する命令(平成22年内閣府・法務省令第3号。以下「本命令」という)が平成22年2月22日に公布され、即日施行された。
 本命令は、株券電子化制度の開始後における実務の運用状況等を踏まえ、会社が取得条項付新株予約権の対価として振替社債等を交付する場合等において、当該振替社債等の交付を受ける権利者のために開設された振替を行うための口座を知ることができないときの手続について規定の明確化を図るなどのため、「社債、株式等の振替に関する法律」(平成13年法律第75号。以下「振替法」という)の委任に基づく「社債、株式等の振替に関する命令」(平成14年内閣府・法務省令第5号。以下「振替命令」という)について、所要の改正を行うものである。
 本稿では、本命令による振替命令の改正(以下、本命令による改正後の振替命令を「新振替命令」という)について、その概要を解説する。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解である。

Ⅱ.改正の内容

1.改正の趣旨・概要
 振替命令は、振替法の規定の委任に基づき、会社が特定の銘柄の振替社債、振替株式、振替新株予約権または振替新株予約権付社債(以下「振替社債等」という)を交付しようとする場合において、当該振替社債等の交付を受ける権利者の振替口座を知ることができないときの通知の相手方、その通知事項および特別口座に記載または記録された場合の失念救済の手続において救済を受けることができる者について定めている。
 本命令による改正前の振替命令は、発行会社が交付する振替社債等の種類を基準に類型化し、
(i)取得条項付株式の取得の対価として振替社債、振替新株予約権または振替新株予約権付社債を交付する場合(会社法107条2項3号ニ~へ参照)
(ii)全部取得条項付種類株式の取得の対価として振替社債等を交付する場合(同法171条1項1号イ~ニ参照)
(iii)株式会社が吸収合併消滅会社または新設合併消滅会社(以下「消滅会社」という)となる合併に際して合併の対価として振替社債等を交付する場合(同法749条1項2号イ~ニ、753条1項6号、8号イ~ハ参照)
(iv)株式交換に際して株式交換の対価として振替社債等を交付する場合(同法768条1項2(v)株式移転に際して株式移転の対価として振替社債等を交付する場合(同法773条1項5号、7号イ~ハ参照)
の各類型について規定していた。しかし、
(vi)取得条項付新株予約権の取得の対価として振替社債等を交付する場合(同法236条1項7号ニ~ト参照)
(vii)取得条項付新株予約権付社債の取得の対価として振替社債等を交付する場合(同号ニ~ト参照)
(viii)持分会社が消滅会社となる合併に際して合併の対価として振替社債等を交付する場合(同法749条1項2号イ~ニ、753条1項6号、8号イ~ハ参照)や、
(ix)合併、会社分割、株式交換または株式移転に際して、合併における消滅会社、会社分割における分割会社または株式交換もしくは株式移転における完全子会社となる会社(以下「合併における消滅会社等」という)が新株予約権を発行している場合に、当該新株予約権の新株予約権者に対して、当該新株予約権に代えて、合併における存続会社もしくは新設会社、会社分割における承継会社もしくは新設会社または株式交換もしくは株式移転における完全親会社となる会社(以下「合併における存続会社等」という)の振替新株予約権を交付するとき(同法749条1項4号等参照)
について規定がなく、これらに係る規律が明確ではなかった。
 そこで、本命令では、規律の明確化を図る観点から、発行会社が振替社債等を交付する権利者の口座を知ることができない場合の類型として、前記(i)~(v)の類型に加え、前記(vi)~(ix)の類型を追加している(参照)(脚注1)。


2.本命令による改正の内容 (1)新たに振替社債を交付する場面(振替命令6条~8条)
 ① 振替命令6条  振替命令6条は、振替法69条の2の規定の委任に基づき、会社が合併等に際して振替社債を交付する場合において、交付を受ける振替社債の社債権者または質権者の振替口座を知ることができないときの通知の相手方を定めている。
 本命令では、前記1の(vi)、(vii)および(viii)の、取得条項付新株予約権もしくは取得条項付新株予約権付社債の取得に際して取得の対価として、または持分会社が消滅会社となる合併に際して合併の対価として振替社債を交付する場合についての規定を追加している(新振替命令6条3号~5号)。
 新振替命令6条3号および4号は、無記名新株予約権(会社法249条1号参照)および無記名新株予約権付社債(同条2号参照)を特に除外していないが、その理由は次のとおりである。
 振替法69条の2第1項の通知は、発行会社における合併等の効力発生日の1か月前までにしなければならない一方、発行会社が取得条項の付された無記名新株予約権または無記名新株予約権付社債(以下「無記名式取得条項付新株予約権等」という)の取得に際して行うべき新株予約権証券の公告も、当該無記名式取得条項付新株予約権等の取得の効力発生日の1か月前までにしなければならない(会社法293条1項)。
 ここで、振替法69条の2第1項に基づく通知と会社法293条1項に基づく新株予約権証券の公告との先後関係については、法律上特に規定がないので、新株予約権証券の公告が振替法69条の2第1項に基づく通知よりも前にされる場合があり得る。
 その場合に、振替法69条の2第1項に基づく通知をする前に、新株予約権証券の公告に基づき無記名式取得条項付新株予約権等に係る新株予約権証券が提出されたときは、発行会社は、当該無記名式取得条項付新株予約権等の新株予約権者を把握している以上、当該新株予約権者に対し(脚注2)、振替法69条の2第1項に基づく通知をしなければならない。
 そこで、前記のとおり、新振替命令6条3号および4号において無記名新株予約権および無記名新株予約権付社債を除外しないこととした。
 これに対し、発行会社が無記名式取得条項付新株予約権等の取得の対価として振替社債を交付する際、当該無記名式取得条項付新株予約権等に係る新株予約権証券が提出されない場合には、発行会社は、通知をすべき相手方を把握することができない。
 振替法69条の2第1項の通知義務は、発行会社に履行の不可能な義務を課す趣旨まではないので、このような場合には、発行会社が同項の通知をしなかったとしても、発行会社が同項の通知義務に違反したとして責任を問われることはないと考えるべきである(脚注3)。
 さらに、新振替命令6条3号および4号が、取得条項付新株予約権または取得条項付新株予約権付社債の新株予約権者に加えて、「登録新株予約権質権者」(会社法270条1項)を通知の相手方として規定し、「質権者」と規定していないのは、略式質の質権者を通知の相手方から除く趣旨である。
 質権者の氏名または名称および住所が新株予約権原簿に記載され、または記録される質権者が登録新株予約権質権者であるところ(同項)、略式質の質権者については、その氏名等が新株予約権原簿に記載または記録されていないので、発行会社が略式質の質権者を把握することは著しく困難である。そうであるにもかかわらず、仮に略式質の質権者を含む「質権者」を通知の相手方として定めると、発行会社に履行の著しく困難な通知義務を課すことになりかねないからである。振替命令6条1号が、振替株式について、登録株式質権者を通知の相手方としているのと同じ趣旨である。
 また、新振替命令6条5号ロは、通知の相手方として「持分会社の社員」と規定している。同号イが「登録株式質権者」を規定しているのに対し、同号ロが持分会社の持分の質権者に関する規律を設けていないのは、持分会社の持分については質権に関する規定が会社法上存在せず、登録質に相当する制度が会社法上存在しないからである。
 ② 振替命令7条  振替命令7条は、振替法69条の2第1項4号の規定の委任に基づき、前記①の通知の通知事項を定めている。
 本命令では、新振替命令6条3号および4号の追加に伴い、取得条項付新株予約権または取得条項付新株予約権付社債の取得の対価として振替社債を交付する場合における通知事項を追加している(新振替命令7条3号・4号)。
 なお、持分会社が消滅会社となる合併に際して合併の対価として振替社債を交付する場合における通知事項については、本命令による改正前の振替命令7条3号が号ずれした新振替命令7条5号によって規定される。
 ③ 振替命令8条  振替命令8条は、振替法70条の2第2項の規定の委任に基づき、特別口座が開設された場合における、いわゆる失念救済の手続をするよう求めることのできる者(特別口座開設等請求権者)を定めている。
 本命令では、新振替命令6条3号および4号の追加に伴い、取得条項付新株予約権または取得条項付新株予約権付社債を交付する場合における特別口座開設等請求権者を定めている(新振替命令8条3号・4号)。
 これに対し、新振替命令8条には、持分会社が消滅会社となる合併に際して当該合併の対価として振替社債を交付する場合について規定を設けていない。持分会社は、定款の記載(会社法576条1項4号により、社員の氏名または名称および住所は定款記載事項である)にかかわらず、真の権利者を社員として取り扱うべきこととされているから(脚注4)、仮に、発行会社が消滅会社の定款に記載され、または記録された者のために特別口座を開設したとしても、真の権利者が発行会社の振替社債の社債権者となる(同法750条3項2号参照)ので(脚注5)、持分会社の社員についていわゆる失念救済の手続に関する規定を設ける必要性がないからである。
(2)新たに振替株式を交付する場面(振替命令14条~16条)
 ① 振替命令14条  振替命令14条は、振替法131条1項の規定の委任に基づき、会社が合併等に際して振替株式を交付する場合において、交付を受ける振替株式の株主または登録株式質権者の振替口座を知ることができないときの通知の相手方を定めている。
 本命令では、前記1の(vi)、(vii)および(viii)の、取得条項付新株予約権もしくは取得条項付新株予約権付社債の取得に際して取得の対価として、または持分会社が消滅会社となる合併に際して合併の対価として振替株式を交付する場合についての規定を追加している(新振替命令14条5号~7号)。
 ② 振替命令15条・16条  振替命令15条は、振替法131条1項4号の規定の委任に基づき、同通知の通知事項を定め、また、振替命令16条は、振替法133条2項の規定の委任に基づき、特別口座が開設された場合における、いわゆる失念救済の手続をするよう求めることのできる者(特別口座開設等請求権者)を定めている。
 本命令では、振替命令14条の改正に伴い、必要な規定の追加を行っている(新振替命令15条5号・6号、16条5号・6号)。
 ③ その他  新振替命令14条が無記名新株予約権および無記名新株予約権付社債を特に除外していない趣旨、同条が登録新株予約権質権者を通知の相手方と定めている趣旨、同条7号ロに持分会社の持分の質権者に関する規律を設けていない趣旨ならびに新振替命令16条に持分会社が消滅会社となる合併に際して当該合併の対価として振替株式を交付する場合について規定を設けていない趣旨は、前記(1)で解説したものと同様である。
(3)新たに振替新株予約権を交付する場面(振替命令28条~32条)
 ① 振替命令30条  振替命令30条は、振替法167条1項の規定の委任に基づき、発行会社が合併等に際して振替新株予約権を交付する場合において、交付を受ける権利者の振替口座を知ることができないときの通知の相手方を定めている。
 本命令では、前記1の(vi)、(vii)、(viii)および(ix)の、取得条項付新株予約権もしくは取得条項付新株予約権付社債の取得に際して取得の対価として、または持分会社が消滅会社となる合併に際して合併の対価として振替新株予約権を交付する場合や、合併、会社分割、株式交換または株式移転に際して、合併における消滅会社等が新株予約権を発行している場合に、当該新株予約権の新株予約権者に対して、当該新株予約権に代えて、合併における存続会社等の振替新株予約権を交付するときについての規定を追加している(新振替命令30条4号~9号)(脚注6)。
 ② 振替命令28条・29条  振替命令28条および29条は、振替法167条1項の規定の委任に基づき、発行会社が合併等に際して振替新株予約権を交付する場合において、交付を受ける権利者の振替口座を知ることができず、かつ、通知者となるべき者が発行会社と異なるときの具体的場面およびそのときの通知者を定めている。
 本命令では、振替命令30条において、会社分割に際し、分割会社が新株予約権を発行している場合における、当該新株予約権に代えて承継会社または新設会社(以下「承継会社等」という)の振替新株予約権を交付するときの規律を追加したことに対応して、会社分割のときには分割会社が通知者となる旨の規定を追加している(新振替命令28条、29条2号)。
 新振替命令28条は、会社分割に際して交付される振替新株予約権について「会社分割をする株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して交付するものに限る」と限定を付している。その趣旨は次のとおりである。
 合併、株式交換または株式移転について、発行会社がその新株予約権を交付する場面としては、発行会社が当該合併、株式交換または株式移転の対価として交付する場合(前記1の(iii)、(iv)および(v))に加え、合併における消滅会社または株式交換もしくは株式移転における完全子会社となる会社が新株予約権を発行している場合に、当該新株予約権の新株予約権者に対して、当該新株予約権に代えて、合併における存続会社もしくは新設会社または株式交換もしくは株式移転における完全親会社となる会社の振替新株予約権を交付するとき(前記1の(ix)。本命令により規律を追加していることは前記のとおり)がある(脚注7)。
 これに対し、会社分割においては、会社分割の対価として交付する新株予約権は分割会社に交付するから(会社法758条4号ハ、763条8号ロ参照)、承継会社等が分割会社の新株予約権者に対して新株予約権を交付する場合としては、前記1の(ix)の、会社分割に際して、分割会社が新株予約権を発行している場合に、当該新株予約権の新株予約権者に対して、当該新株予約権に代えて、承継会社等の振替新株予約権を交付するときしかない。新振替命令28条の会社分割に関する限定は、そのことを明確化する趣旨である。
 ③ 振替命令31条・32条  振替命令31条は、振替法167条1項4号の規定の委任に基づき、発行会社が発する通知に記載すべき事項を定め、また、振替命令32条は、振替法169条2項の規定の委任に基づき、特別口座が開設された場合における、いわゆる失念救済の手続をするよう求めることのできる者(特別口座開設等請求権者)を定めている。
 本命令では、振替命令30条の改正に伴い、規定の追加を行っている(新振替命令31条4号~6号、32条4号~9号)。
 ④ その他  新振替命令30条が無記名新株予約権および無記名新株予約権付社債を特に除外していない趣旨、同条が登録新株予約権質権者を通知の相手方と定めている趣旨、同条6号ロに持分会社の持分の質権者に関する規律を設けていない趣旨ならびに新振替命令32条に持分会社が消滅会社となる合併に際して当該合併の対価として振替新株予約権を交付する場合について規定を設けていない趣旨は、前記(1)で解説したものと同様である。
(4)新たに振替新株予約権付社債を交付する場面(振替命令37条~41条)
 ① 振替命令39条  振替命令39条は、振替法196条1項の規定の委任に基づき、発行会社が合併等に際して振替新株予約権付社債を交付する場合において、交付を受ける権利者の振替口座を知ることができないときの通知の相手方を定めている。
 本命令では、前記1の(vi)、(vii)、(viii)および(ix)の、取得条項付新株予約権もしくは取得条項付新株予約権付社債の取得に際して取得の対価とし、または持分会社が消滅会社となる合併に際して合併の対価として振替新株予約権付社債を交付する場合や、合併、会社分割、株式交換または株式移転に際して、合併における消滅会社等が新株予約権付社債を発行している場合に、当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者に対して、当該新株予約権付社債に代えて、合併における存続会社等の振替新株予約権付社債を交付するときについての規定を追加している(新振替命令39条4号~9号)。
 ② 振替命令37条・38条  振替命令37条および38条は、振替法196条1項の規定の委任に基づき、発行会社が合併等に際して振替新株予約権付社債を交付する場合において、交付を受ける権利者の振替口座を知ることができず、かつ、通知者となるべき者が発行会社と異なるときの具体的場面およびそのときの通知者を定めている。
 本命令では、振替命令39条において、会社分割に際し、分割会社が新株予約権付社債を発行している場合における、当該新株予約権付社債に代えて承継会社等の振替新株予約権付社債を交付するときの規律を追加したことに対応して、会社分割のときには分割会社が通知者となる旨の規定を追加している(新振替命令37条、38条2号)。
 ③ 振替命令40条・41条  振替命令40条は、振替法196条1項4号の規定の委任に基づき、発行会社が発する通知に記載すべき事項を定め、また、振替命令41条は、振替法198条2項の規定の委任に基づき、特別口座が開設された場合における、いわゆる失念救済の手続をするよう求めることのできる者(特別口座開設等請求権者)を定めている。
 本命令では、振替命令39条の改正に伴い、規定の追加を行っている(新振替命令40条4号~6号、41条4号~9号)。
 ④ その他  新振替命令39条が無記名新株予約権および無記名新株予約権付社債を特に除外していない趣旨、同条が登録新株予約権質権者を通知の相手方と定めている趣旨、同条6号ロに持分会社の持分の質権者に関する規律を設けていない趣旨ならびに新振替命令41条に持分会社が消滅会社となる合併に際して当該合併の対価として振替新株予約権を交付する場合について規定を設けていない趣旨は、前記(1)で解説したものと同様である。
 また、新振替命令37条が会社分割について「会社分割をする株式会社の新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者に対して交付するものに限る」と限定を付している趣旨は、前記(3)で解説したものと同様である。
(5)その他  本命令による振替命令14条~16条の改正に伴い、これらの規定を準用している振替命令46条および47条についても、所要の整備を行っている。

Ⅲ.経過措置
 本命令の施行に際して、経過措置は設けていない。
 このため、新振替命令は、本命令の公布の日(平成22年2月22日)から、すべて適用されている。

脚注
1 本命令では、持分会社の組織変更についての規定を追加していない。持分会社が組織変更をして株式会社となる(会社法743条)際に、当該組織変更後の株式会社の株式を上場することがあり得るものの、その場合には、当該組織変更後の株式会社の株式について通常の新規上場に係る手続に則って振替制度の適用をすれば足りるので、持分会社が株式会社に組織変更をするに際して振替株式の発行に関する規定を設ける必要性がないからである。
2 略式質の質権者は、会社に対し自らが質権者であることを対抗することができず(会社法268条1項)、また、無記名新株予約権および無記名新株予約権付社債に付された新株予約権については、登録質権者は法律上存在しない(同法269条2項)。したがって、無記名式取得条項付新株予約権等につき振替法69条の2第1項に基づく通知をする必要がある者は新株予約権者のみとなる。
3 発行会社が振替法69条の2第1項に基づく通知をした後、無記名式取得条項付新株予約権等の取得の効力発生日までの間に、発行会社に対し当該無記名式取得条項付新株予約権等に係る新株予約権証券が提出された場合には、発行会社は、その時点で当該新株予約権者に対し振替法69条の2第1項に基づく通知をすれば足りると考えるべきである。また、無記名式取得条項付新株予約権等の取得の効力発生日後に、発行会社に当該無記名式取得条項付新株予約権等に係る新株予約権証券が提出された場合には、会社法上は、その都度、発行会社が当該新株予約権者に対し当該取得の対価を交付することになる(会社法293条2項参照)。その場合において、当該新株予約権者がその振替口座を発行会社に通知しなかったときの振替法上の取扱いについては、当該新株予約権者に当該通知を義務付ける法的根拠が振替法上存在しないので、振替法69条の2の類推適用により特別口座の開設の申出が認められると考える余地もあろう。
4 株式会社の株主名簿については、株式会社が株主または登録株式質権者に対してする通知等は株主名簿に記載し、または記録した株主または登録株式質権者の住所に宛てて発すれば足りるという規定があるが(会社法126条1項、150条1項)、持分会社の定款については、そのような規定はない。
5 この場合、会社法上は、真の権利者は発行会社に対して合併の対価を交付するよう求めることができるが、その場合において、当該真の権利者がその振替口座を発行会社に通知しなかったときの振替法上の取扱いについては、当該真の権利者に当該通知を義務付ける法的根拠が振替法上存在しないので、振替法69条の2の類推適用により特別口座の開設の申出が認められると考える余地もあろう。なお、この場合において、消滅会社の定款に記載され、または記録された者(真の権利者でない者)のために開設された特別口座については、振替法72条による変更手続をすることが考えられる。
6 新振替命令30条6号~9号における「新株予約権」には、新株予約権付社債は含まれていない。会社法上、合併における存続会社等が、合併における消滅会社等の新株予約権に代わり交付することのできるものは新株予約権のみであり、新株予約権付社債を交付することはできないからである(会社法749条1項4号イ・ロ等参照)。
7 新振替命令28条の「合併」「株式交換」および「株式移転」の用語については特に改正をしていないが、本命令による改正後は、前記1の(ix)の、合併における消滅会社または株式交換もしくは株式移転における完全子会社となる会社が新株予約権を発行している場合に、当該新株予約権の新株予約権者に対して、当該新株予約権に代えて、合併における存続会社もしくは新設会社または株式交換もしくは株式移転における完全親会社となる会社の振替新株予約権を交付するときについても、同条の「合併」「株式交換」および「株式移転」に含まれることとなる(通知者に関する新振替命令29条および通知事項に関する31条についても同様である)。

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